◆◆◆2012年12月25日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆  

Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集 
古代中国の結婚感、女性感について述べる三国時代の三曹の一人、曹丕魏文帝の詩 
燕歌行二首 其二 曹丕(魏文帝) 魏詩<5>玉台新詠・文選楽府 古詩源 巻三 女性詩624 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1713 
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Ⅱ.中唐詩・晩唐詩 
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ 
秋懐詩十一首(2) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<102>Ⅱ中唐詩537 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1714 
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Ⅲ.杜甫詩1000詩集 
"●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説するブログ 
●詩人として生きていくことを決めた杜甫が理想の地を求めてっ旅をする
●人生としては4/5前で、全詩1/3を掲載済。" 
杜甫詩 成都紀行まとめ(詩index)  <353> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1715 杜甫詩 700- 528 
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Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集 
元和聖徳詩 韓退之(韓愈)詩<80-#10> (12/25) 
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Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩 
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。 
『酒泉子』 四首(三) 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-23-3-#3 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1716 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/archives/21374297.html
 
謝靈運詩   http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html
李商隠詩   http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
女性詩人   http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html

秋懐詩十一首(2) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<102>Ⅱ中唐詩537 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1714


秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。

3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。

岳陽樓003

秋懐詩十一首 其二(2) 韓愈 韓退之(韓愈)詩
白露下百草,蕭蘭共雕悴。
白露がにわの百草におりはじめれば、蓬も蘭もいっしょにしおれるし、枯れるものである。
青青四牆下,已複生滿地。
しかし春になるとまた四方の士べいの根もとに、青靑と地面いっぱい生い茂るのである。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。
ひぐらしぜみがしばらく鳴かなくなって静寂になるとこんどは、こおろぎがせいいっぱい鳴きまくるのである。
運行無窮期,稟受氣苦異。
天地万物の廻り行き、時の流れは突き詰めると正確無比に決まっているわけではない、天から授かるものはめいめいが受けている精気が大変ちがっていて、本質的に大きなちがいがあるのである。
適時各得所,松柏不必貴。

それぞれの季節によくあっていて、おのおのその場所を得さえすれば、松も東で檜は西がよいとすればこれらだけを貴ぶことはないのである。

白露 百草に下り,蕭蘭【しょうらん】共に雕悴【ちょうすい】す。
青青たり四牆【ししょう】の下,已に複た生じて地に滿つる。
寒蟬【かんぜん】暫く寂寞【せきばく】たるに,蟋蟀【しつしゅつ】自ら恣しいままに鳴く。
運行窮期無く,稟受【ひんじゅ】氣 苦【はなは】だ異る。
時に適【かな】いて各の所を得れば,松柏 必ずしも貴しとせず。


『秋懐詩十一首 其二』 現代語訳と訳註
(本文)

白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。

(下し文)
白露 百草に下り,蕭蘭【しょうらん】共に雕悴【ちょうすい】す。
青青たり四牆【ししょう】の下,已に複た生じて地に滿つる。
寒蟬【かんぜん】暫く寂寞【せきばく】たるに,蟋蟀【しつしゅつ】自ら恣しいままに鳴く。
運行窮期無く,稟受【ひんじゅ】氣 苦【はなは】だ異る。
時に適【かな】いて各の所を得れば,松柏 必ずしも貴しとせず。


(現代語訳)
白露がにわの百草におりはじめれば、蓬も蘭もいっしょにしおれるし、枯れるものである。
しかし春になるとまた四方の士べいの根もとに、青靑と地面いっぱい生い茂るのである。
ひぐらしぜみがしばらく鳴かなくなって静寂になるとこんどは、こおろぎがせいいっぱい鳴きまくるのである。
天地万物の廻り行き、時の流れは突き詰めると正確無比に決まっているわけではない、天から授かるものはめいめいが受けている精気が大変ちがっていて、本質的に大きなちがいがあるのである。
それぞれの季節によくあっていて、おのおのその場所を得さえすれば、松も東で檜は西がよいとすればこれらだけを貴ぶことはないのである。


(訳注)
白露下百草,蕭蘭共雕悴。

白露がにわの百草におりはじめれば、蓬も蘭もいっしょにしおれるし、枯れるものである。
・白露下 白露の下るのは、秋になったしるしである。『礼記』月令篇孟秋月「涼風至,白露降,寒蟬鳴,鷹乃祭鳥,用始行戮。」とある。宋玉『九辨』に、
悲哉秋之為氣也!蕭瑟兮草木搖落而變衰,
憭慄兮若在遠行,登山臨水兮送將歸,
泬寥兮天高而氣清,寂寥兮收潦而水清,
憯悽欷兮薄寒之中人,愴怳懭悢兮去故而就新,
坎廩兮貧士失職而志不平,廓落兮羇旅而無友生。
惆悵兮而私自憐。
燕翩翩其辭歸兮,蝉寂漠而無聲。
鴈廱廱而南遊兮,鶤鵾雞啁哳而悲鳴。
獨申旦而不寐兮,哀蟋蟀之宵征。
時亹亹而過中兮,蹇淹留而無成。
・・・・
皇天平分四时兮,窃独悲此凛秋。白露既下降百草兮,奄离披此梧楸。去白日之昭昭兮,袭长夜之悠悠。
・蕭蘭 蕭はよもぎ。つまり雑草の代表である。謂蘭は、よもぎのようなつまらぬ草も蘭のようなよいかおりのするりっはな草も、というほどの意味。 
・共 いっしょに。ひとまとめに。
・雕悴 しおれるしこと、おとろえること。


青青四牆下,已複生滿地。
しかし春になるとまた四方の士べいの根もとに、青靑と地面いっぱい生い茂るのである。
青青 五行思想で春は青である。
四牆 まわりの土べい。


寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。
ひぐらしぜみがしばらく鳴かなくなって静寂になるとこんどは、こおろぎがせいいっぱい鳴きまくるのである。
寒蟬 ひぐらし。つくづくぼうし。『礼記』月令篇孟秋月「涼風至,白露降,寒蟬鳴,鷹乃祭鳥,用始行戮。」とある。
・蟋蟀 こおろぎ。宋玉九弁は上記。『詩経』豳風七月こおろぎ。古詩十九首之第十二首『』「晨風懷苦心,蟋蟀傷局促。」

『詩経・唐風、蟋蟀』の篇名。晋の僖公が倹約に過ぎるのをそしった詩。今楽しまなければ月日はサッサと去って行く。勤勉で油断をしない人になれという内容のもの。

詩経・唐風、蟋蟀詩経・唐風、蟋蟀 
蟋蟀在堂、歲聿其莫。 今我不樂、日月其除。
無已大康、職思其居。 好樂無荒、良士瞿瞿。

蟋蟀在堂、歲聿其逝。 今我不樂、日月其邁。
無已大康、職思其外。 好樂無荒、良士蹶蹶。

蟋蟀在堂、役車其休。 今我不樂、日月其慆。
無已大康、職思其憂。 好樂無荒.良士休休。


運行無窮期,稟受氣苦異。
天地万物の廻り行き、時の流れは突き詰めると正確無比に決まっているわけではない、天から授かるものはめいめいが受けている精気が大変ちがっていて、本質的に大きなちがいがあるのである。
・運行 万物の時の流れ、天地自然のめぐり行き。「太陽星君、日宮炎光太陽星君」,「大明之神」,「太陽帝君」、「太陽公」いうが、「太陽帝君乃陽剛之神,司日之運行,掌火焰之輕重,日由東升,再由西墜,光熙普照大地」
・稟受 めいめい天から授けられていること。
・気苦異 めいめいが受けている精気が大変ちがっていて、本質的に大きなちがいがある。


適時各得所,松柏不必貴。
それぞれの季節によくあっていて、おのおのその場所を得さえすれば、松も東で檜は西がよいとすればこれらだけを貴ぶことはないのである。
・適時 その時節によくあっていて。
・得所 自分に過当な場所を得る。
・松柏 まつやひのきは、冬でも青いが、それは天から授けられた精気のちがいで、めいめいその自分自分に与えられた時節に存分にすごし、自分の安んずべき位置を得ていれば、それがよいので、冬青いからといって特に尊重する必要はないというのである。「論語」子罕篇に「子曰、歳寒、然後知松柏之後彫也。」(子曰く、歳寒くして、然る後、松柏の彫むに後るるを知る。)と儒家は松柏を尊ぶものとしているが、それをここでは否定している。