九辯 宋玉-#1

2013年3月28日 同じ日の紀頌之5つのブログ
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九辯 宋玉 <00-#1>もっとも影響を与えた詩文 630 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2134


王逸の序に
《九辯》者,楚大夫宋玉之所作也。辯者,變也,
謂敶道德以變說君也。
九者,陽之數,道之綱紀也。
・・・・・
宋玉者,屈原弟子也。閔惜其師,忠而放逐,
故作《九辯》以述其志。
至於漢興,劉向、王褒之徒,咸悲其文,依而作詞,
故號為「楚詞」。亦采其九以立義焉。

『九辯』は楚の大夫宋玉の作る所なり。辯は変なり。
道徳を敶べて以て君を変説するなり。
九は陽の数、道の綱紀なり。
・・・・・
宋玉は屈原の弟子なり。其の師の忠にして放逐せられしを閔惜す。
故に『九辯』を作りて以て其の志を述べしなり。
漢興るに至って、劉向・王褒の徒、咸其の文を悲しみ、依りて以て詞を作る。
故に号して「楚詞」と為す。亦其の九を采りて以て義を立つるなり。

九章説も、九の数に合わせるために無理に分けたような所もあって、確かではないが、一応旧説に準じて、九段に分けて訳注する。
「九辯」は楚辞の中でもすぐれた代表作品である。


一段目 #1
悲哉秋之為氣也!蕭瑟兮草木搖落而變衰,
悲しいしいことよ、秋の気というものは! 風はさわさわと草木に吹きさびしく鳴っている。それにより、草木は葉を落とし、吹き散り、色を変わっておとろえる。
憭慄兮若在遠行,登山臨水兮送將歸,
逝く秋には心がいたみ悲しむもので、それは遠い旅路で、山に登ったり、水辺に立ったりして、故郷に帰ろうとする人を送る時のこころにおもうことのようである。
泬寥兮天高而氣清,寂寥兮收潦而水清,
秋の眺めはむなしく雲もない。大空は高くなり、空気は清々しいものとなる。秋の野はひっそりとしてくるし、物影もなくなるのだ。長雨で出来た道の溜り水も収まり引いて、秋の水は澄んでくるのだ。
憯悽增欷兮薄寒之中人,愴怳懭悢兮去故而就新,
心は痛み悲しんで、しだいにすすり泣くのである、はだ寒い秋の気は次第に人の身にしみる寒さになるのである。そうして、物悲しくうつろな心になり、気力もうちしおれ、住みなれた土地を去って見知らぬ国に行くことになるのである。
坎廩兮貧士失職而志不平,廓落兮羇旅而無友生。
そのような境遇であれば心は楽しいものではなく、貧しい士太夫、その人は心中おだやかであるはずもない。ただ広々として寂しいのはその地も、こころもそうなのだ。その地を離れてこの旅の空に友達もいないのである。
惆悵兮而私自憐。
心は恨み嘆いており、そしてひそかに自分を憐れに思うことであろう。
#2
燕翩翩其辭歸兮,蟬寂漠而無聲。
鴈廱廱而南遊兮,鶤雞啁哳而悲鳴。
獨申旦而不寐兮,哀蟋蟀之宵征。
時亹亹而過中兮,蹇淹留而無成。


悲しいかな、秋の氣たるや。蕭瑟【しょうしつ】たり、草木搖落して變衰【へんすい】す。
憭慄【れきりつ】たり、遠行に在りて、山に登り水に臨み、將に歸らんとするを送るが若し。
泬寥【けつりょう】たり、天高くして気清し。
寂寥【せきりょう】たり、潦を収めて水清し。
憯悽【さんせい】として增ます欷【すすりな】き、薄寒之れ人に中【あた】る。
愴怳【そうこう】懭悢【こうろう】として故を去りて新に就く。
坎廩【かんらん】たり、貧士職を失ひて志 平かならず、廓落【かくらく】たり、羇旅【きりょ】にして友生無し。
惆悵たり、而して私かに自ら憐む

#2
燕は翩翩【へんぺん】として其れ辞し歸り、蝉は寂漠【せきばく】として聾無し。
雁は廱廱【ようよう】として南遊し、鶤雞【くんけい】は啁哳【ちょうたつ】として悲鳴す。
獨り旦を申ねて寐ねられず、蟋蟀【しつしゅつ】の宵征【しょうせい】を哀しむ。
時は亹亹【びび】として中を過ぎ、蹇【ああ】、淹留【えんりゅう】して成る無し。

Nature1-009

『九辯』 宋玉 現代語訳と訳註
(本文)
一段目 #1
悲哉秋之為氣也!蕭瑟兮草木搖落而變衰,
憭慄兮若在遠行,登山臨水兮送將歸,
泬寥兮天高而氣清,寂寥兮收潦而水清,
憯悽增欷兮薄寒之中人,愴怳懭悢兮去故而就新,
坎廩兮貧士失職而志不平,廓落兮羇旅而無友生。
惆悵兮而私自憐。


(下し文)
悲しいかな、秋の氣たるや。蕭瑟【しょうしつ】たり、草木搖落して變衰【へんすい】す。
憭慄【れきりつ】たり、遠行に在りて、山に登り水に臨み、將に歸らんとするを送るが若し。
泬寥【けつりょう】たり、天高くして気清し。
寂寥【せきりょう】たり、潦を収めて水清し。
憯悽【さんせい】として增ます欷【すすりな】き、薄寒之れ人に中【あた】る。
愴怳【そうこう】懭悢【こうろう】として故を去りて新に就く。
坎廩【かんらん】たり、貧士職を失ひて志 平かならず、廓落【かくらく】たり、羇旅【きりょ】にして友生無し。
惆悵たり、而して私かに自ら憐む。


(現代語訳)
悲しいしいことよ、秋の気というものは! 風はさわさわと草木に吹きさびしく鳴っている。それにより、草木は葉を落とし、吹き散り、色を変わっておとろえる。
逝く秋には心がいたみ悲しむもので、それは遠い旅路で、山に登ったり、水辺に立ったりして、故郷に帰ろうとする人を送る時のこころにおもうことのようである。
秋の眺めはむなしく雲もない。大空は高くなり、空気は清々しいものとなる。秋の野はひっそりとしてくるし、物影もなくなるのだ。長雨で出来た道の溜り水も収まり引いて、秋の水は澄んでくるのだ。
心は痛み悲しんで、しだいにすすり泣くのである、はだ寒い秋の気は次第に人の身にしみる寒さになるのである。そうして、物悲しくうつろな心になり、気力もうちしおれ、住みなれた土地を去って見知らぬ国に行くことになるのである。
そのような境遇であれば心は楽しいものではなく、貧しい士太夫、その人は心中おだやかであるはずもない。ただ広々として寂しいのはその地も、こころもそうなのだ。その地を離れてこの旅の空に友達もいないのである。
心は恨み嘆いており、そしてひそかに自分を憐れに思うことであろう。

doteiko012
(訳注)一段目 #1
悲哉秋之為氣也!蕭瑟兮草木搖落而變衰,
悲しいしいことよ、秋の気というものは! 風はさわさわと草木に吹きさびしく鳴っている。それにより、草木は葉を落とし、吹き散り、色を変わっておとろえる。
・悲哉秋 「悲秋」という語はこれにより生まれ、使われるようになる。秋の表現の際多くの詩人が用いる。
・蕭瑟 秋風が草木に鳴るさわさわという音。
・搖落 吹き散る。一本にこの下に今の字がある。


憭慄兮若在遠行,登山臨水兮送將歸,
逝く秋には心がいたみ悲しむもので、それは遠い旅路で、山に登ったり、水辺に立ったりして、故郷に帰ろうとする人を送る時のこころにおもうことのようである。
・憭慄 心が悲しみ痛む。憭は悟る、理解するという意味。慄然とする。恐れおののくさま。恐ろしさにぞっとするさま。
・送将帰 一年の秋を送るのが、親戚故友の帰って行こうとするのを送ると同じ気持ちで悲しい。


泬寥兮天高而氣清,寂寥兮收潦而水清,
秋の眺めはむなしく雲もない。大空は高くなり、空気は清々しいものとなる。秋の野はひっそりとしてくるし、物影もなくなるのだ。長雨で出来た道の溜り水も収まり引いて、秋の水は澄んでくるのだ。
・泬寥 雲がなく、からりと晴れわたっているさま。むなしく晴れて雲もないさま。
・寂寥 静かにさびしい。心が満ち足りず、もの寂しいこと。
・潦 雨水の溜ったもの。みずたまり。秋の長雨があったことを云う。


憯悽增欷兮薄寒之中人,愴怳懭悢兮去故而就新,
心は痛み悲しんで、しだいにすすり泣くのである、はだ寒い秋の気は次第に人の身にしみる寒さになるのである。そうして、物悲しくうつろな心になり、気力もうちしおれ、住みなれた土地を去って見知らぬ国に行くことになるのである。
・憯悽 悲痛の時の顔。
・增欷 ますますすすり泣く。増は重ねて。欷はすすり泣く。
・中人 人の身にしみる。中はあたる。傷う。
・愴怳 心が悲しみのためにぼんやりする。
・懭悢 心がむなしく愁える。
就新 妃とも寒さと餓えに苦しんだ。


坎廩兮貧士失職而志不平,廓落兮羇旅而無友生。
そのような境遇であれば心は楽しいものではなく、貧しい士太夫、その人は心中おだやかであるはずもない。ただ広々として寂しいのはその地も、こころもそうなのだ。その地を離れてこの旅の空に友達もいないのである。
(悲秋の供、貧士失職、遣客自ら憐むとは、宋玉が屈原に代わってその心中を述べる。)
・坎廩 失意。不平の気持ち。
・廓落 牢虚の貌。広々として静まり返った,がらんとした.
・友生 朋友。
・羇旅 旅路。異郷に滞留する。


惆悵兮而私自憐。
心は恨み嘆いており、そしてひそかに自分を憐れに思うことであろう。
・惆悵 心うれえてぼんやりとなる。恨み嘆くこと。。
・私 ひそかに。内心で。