陶淵明(陶潜)《桃花源幷記》 村の人たちは、こんな男が来たと聞き、みんなやって来てあいさつする。この家のあるじはいう、「私どもの先祖は、秦の時代の世の乱れを避け、妻子や村人をひきつれて、このうき世をはなれた土地へやって来ました。それ以来ここから一歩も出ていないのです。


2013年6月16日 同じ日の紀頌之5つのブログ
●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩
Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩《擬魏太子鄴中集詩八首  平原侯值》 謝靈運 六朝詩<85-#1>平原侯值瑒 797 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2533
●唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
Ⅱ中唐詩・晩唐詩《桃花源幷記》陶淵明(陶潜)  <#3>710 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2534
●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"
Ⅲ杜甫詩1000詩集又觀打魚 楽府(七言歌行) 成都6-(17) 杜甫 <481-#1>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2535 杜甫詩1000-481-#1-701/1500
●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている
Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集
●●森鴎外の小説『魚玄機』、芸妓で高い評価を受けた『薛濤』の詩。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩
Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性送姚員外 薛濤 唐五代詞・宋詩 薛濤-198-64-#58  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2537
 
 ■今週の人気記事(漢詩の5ブログ各部門)
 ■主要詩人の一覧・詩目次・ブログindex

『楚辞・九歌』東君 屈原詩<78-#1>505 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1332http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67664757.html
『楚辞』九辯 第九段―まとめ 宋玉  <00-#35> 664 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2304
http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/archives/6471825.html
安世房中歌十七首(1) 唐山夫人 漢詩 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67710265.html
為焦仲卿妻作 序 漢詩<143>古詩源 巻三 女性詩 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67729401.html
於凊河見輓船士新婚別妻一首 曹丕(魏文帝) 魏詩 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67759129.html
朔風 (一章) 曹植 魏詩<25-#1>文選 雑詩 上  http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67780868.html
謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html 謝靈運詩 六朝期の山水詩人。この人の詩は上品ですがすがしい男性的な深みのある詩である。後世に多大な影響を残している。
謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
登永嘉緑嶂山詩 #1 謝霊運 <20> 詩集 386ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67474554.html
登池上樓 #1 謝霊運<25>#1  ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67502196.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html 孟浩然の詩 盛唐初期の詩人であるが謝霊運の詩に傾倒して山水詩人としてとてもきれいな詩を書いている。特に山水画のような病者の中で細やかな部分に動態を感じさせる表現力は素晴らしい。

李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

 



《桃花源幷記》陶淵明(陶潜)  <#3>710 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2534
韓愈 桃源圖を掲載する前に陶潜(陶淵明)『桃花源幷記』、『桃花源詩』を掲載し、王維の『桃源行』をつづけ、韓愈に繋いでゆく。

桃花源記 陶淵明(陶潜)


桃花源記 幷記
晉太元中,武陵人捕魚爲業,縁溪行,忘路之遠近,忽逢桃花林。
晋の大元年間のこと、武陵の人で魚を捕ることを仕事にしていた男があった。
ある日谷にそって川をのぼって行ったが、どれほどの道のりをやって来たのかわからなくなったころ、突然桃の花の咲いている林に出逢った。
夾岸數百歩,中無雜樹。
両岸数百歩の間二本のほかの雜木さえもなった。
芳草鮮美,落英繽紛。
かぐわしい草はあざやかに美しく、散る花びらははらはらと乱れ飛んでいる。
漁人甚異之,復前行,欲窮其林。
漁師はたいへん不思議に思い、さらに進んで林の奥をきわめようとした。
林盡水源,便得一山。
林は川の源の所でつきてしまい、そこに一の山があった。
山有小口。髣髴若有光。
山には小差ほら穴があって、そこからほのかに光がさしているように思われた。
便舎船從口入。
漁師はそのまま船を捨て、その口から入って行った。
#2
初極狹,纔通人。
はじめはとても狭く、やっとひと一人が通れるほどしかなかった
復行數十歩,豁然開朗。
数十歩進んでゆくと、璧然眼の前はからりとひらけた。
土地平曠,屋舍儼然,有良田美池桑竹之屬。
見れば土地は平らかにびろびろとうち芸がり、豪家のたたずまいもちゃんとととのって、よく肥えた田圃や美しい池があり、桑や竹などがうわっている。
阡陌交通,鷄犬相聞
縦横に通じているあぜ道は四方にゆきかい、あちこちから鶏や犬の声が聞こえてくる。
其中往來種作,男女衣著,悉如外人。
ここを往き来しつつ畑に働く男女の服装は、みな漁師などよその土地の、ものと同じようであり、
黄髮垂髫,並怡然自樂。
白髪の老人も垂らし髪した劫な児も、みな屈託なげにそれぞれ楽しんでいる。#3
見漁人,乃大驚,問所從來。
漁師を見つけて大変おどろき、どこからやって来たのかとたずねる。
具答之,便要還家。設酒殺鷄作食。
事こまかにこれに答えると、さあおいでなさいと家へつれて帰り、酒の用意をし、鶏をころして、もてなしてくれるのだった。
村中聞有此人,咸來問訊。
村の人たちは、こんな男が来たと聞き、みんなやって来てあいさつする。
自云:先世避秦時亂,率妻子邑人來此絶境,
不復出焉。
この家のあるじはいう、「私どもの先祖は、秦の時代の世の乱れを避け、妻子や村人をひきつれて、このうき世をはなれた土地へやって来ました。それ以来ここから一歩も出ていないのです。
遂與外人間隔。問今是何世,乃不知有漢,
無論魏晉。
こうして外界の人と隔たってしまったのです」。そして「今は一体何という時代ですか」ときくのである。なんと漢という時代のあったことを知らず、そのあとの魏や晋のことなどはいうまでもない。
此人一一爲具言所聞,皆歎惋。
そこで漁師が、自分の知っていることを一一こまかに話してやると、みんなはひどく感にうたれた様子であった。
餘人各復延至其家,皆出酒食。
ほかの人たちも、それぞれまた百分の家に招待して、みな酒や食べものを出してくれた。
海棠花04#4
停數日,辭去。
此中人語云:不足爲外人道也。
既出,得其船,便扶向路,處處誌之。
及郡下,詣太守,説如此。
太守即遣人隨其往,尋向所誌, 遂迷不復得路。
南陽劉子驥,高尚士也。聞之欣然規往。
未果,尋病終。後遂無問津者。


桃花源記
晉の太元中, 武陵の人 魚を捕ふるを 業【わざ】と爲せり,
溪に縁【そ】ひて行き, 路の遠近を忘る, 忽【たちま】ち 桃花の林に 逢ふ。
岸を夾みて 數百歩, 中に雜樹 無し。
芳草 鮮美として, 落英 繽紛たり。
漁人 甚だ之れを異とす, 復た前に行き, 其の林を窮めんと欲す。
林 水源に盡き, 便ち 一山を得。
山に 小口 有り。 髣髴として光 有るが若【ごと】し。
便ち船を舎【す】てて 口 從【よ】り 入る。
#2
初め極めて狹く, 纔かに人を通すのみ。
復た行くこと數十歩, 豁然として開朗。
土地 平曠として, 屋舍 儼然たり, 良田 美池 桑竹の屬【たぐひ】有り。
阡陌 交【こもご】も通じ, 鷄犬 相ひ聞ゆ。
其の中 往來し 種え作【たがや】す, 男女 衣著, 悉【ことごと】く外人の如く, 黄髮 髫を垂るも, 並【べつ】に 怡然として自ら樂しむ。
#3
漁人 見, 乃【すなは】ち大いに驚き, 從って來たる所を問ふ。 具【つぶさ】に之に答へ, 便ち 家に還へるを要す。
酒を設け 鷄を殺して 食を作る。 村中 此の人有るを聞き,咸【み】な來りて問ひ訊ぬ。
自ら云ふ:先の世 秦時に亂を避【のが】れ,妻子 邑【むら】人を率ゐて此の絶境に來たりて, 復たとは 焉【ここ】を出ず。
遂ひに 外人と間隔つ。 今は是れ何【いづ】れの世なるかを問ふ,乃【すなは】ち 漢 有るを知らず, 無論 魏晉をや。
此の人一一 爲に具【つぶさ】に聞かるる所を言へば, 皆 歎【たんわん】す。
餘人 各【おのお】の 復【ま)た延ゐて其の家に至り, 皆 出でて酒食す。

#4
停【とどま】ること數日にして, 辭去す。 此の中の人 語りて云【いは】く:外人の爲に道【い】ふに足【た】らざる也と。
既に出で, 其の船を得, 便ち 向【さき】の路に扶【よ】りて, 處處に之を誌【しる】す。
郡下に及び, 太守に詣【いた】り, 此【かく】の如く説く。
太守 即ち 人を遣りて其の往【ゆ】けるところに隨ひて, 向【さき】に誌【しる】せる所を尋ねんとすも, 遂に迷ひて 復【ま】たとは 路を得ず。 南陽の劉子驥【き】, 高尚の士也。 之を聞き欣【きん】然として往【ゆ】くを規【くはだ】つ。
未【いま】だ果たせずして, 尋【つい】で病に終る。 後【のち】 遂【つひ】に津を問ふ者 無し。 

『桃花源記 幷記』 現代語訳と訳註

海棠花002
(本文) #3
見漁人,乃大驚,問所從來。
具答之,便要還家。設酒殺鷄作食。
村中聞有此人,咸來問訊。
自云:先世避秦時亂,率妻子邑人來此絶境,不復出焉。
遂與外人間隔。問今是何世,乃不知有漢,無論魏晉。
此人一一爲具言所聞,皆歎惋。
餘人各復延至其家,皆出酒食。


(下し文) #3
漁人 見, 乃【すなは】ち大いに驚き, 從って來たる所を問ふ。 具【つぶさ】に之に答へ, 便ち 家に還へるを要す。
酒を設け 鷄を殺して 食を作る。 村中 此の人有るを聞き,咸【み】な來りて問ひ訊ぬ。
自ら云ふ:先の世 秦時に亂を避【のが】れ,妻子 邑【むら】人を率ゐて此の絶境に來たりて, 復たとは 焉【ここ】を出ず。
遂ひに 外人と間隔つ。 今は是れ何【いづ】れの世なるかを問ふ,乃【すなは】ち 漢 有るを知らず, 無論 魏晉をや。
此の人一一 爲に具【つぶさ】に聞かるる所を言へば, 皆 歎【たんわん】す。
餘人 各【おのお】の 復【ま)た延ゐて其の家に至り, 皆 出でて酒食す。


(現代語訳)
漁師を見つけて大変おどろき、どこからやって来たのかとたずねる。
事こまかにこれに答えると、さあおいでなさいと家へつれて帰り、酒の用意をし、鶏をころして、もてなしてくれるのだった。
村の人たちは、こんな男が来たと聞き、みんなやって来てあいさつする。
この家のあるじはいう、「私どもの先祖は、秦の時代の世の乱れを避け、妻子や村人をひきつれて、このうき世をはなれた土地へやって来ました。それ以来ここから一歩も出ていないのです。
こうして外界の人と隔たってしまったのです」。そして「今は一体何という時代ですか」ときくのである。なんと漢という時代のあったことを知らず、そのあとの魏や晋のことなどはいうまでもない。
そこで漁師が、自分の知っていることを一一こまかに話してやると、みんなはひどく感にうたれた様子であった。
ほかの人たちも、それぞれまた百分の家に招待して、みな酒や食べものを出してくれた。


(訳注) #3
見漁人,乃大驚,問所從來。
漁師を見つけて大変おどろき、どこからやって来たのかとたずねる。


具答之,便要還家。設酒殺鷄作食。
事こまかにこれに答えると、さあおいでなさいと家へつれて帰り、酒の用意をし、鶏をころして、もてなしてくれるのだった。
・具:つぶさに。詳しく。ありのままに。具体的に。


村中聞有此人,咸來問訊。
村の人たちは、こんな男が来たと聞き、みんなやって来てあいさつする。


自云:先世避秦時亂,率妻子邑人來此絶境,不復出焉。
この家のあるじはいう、「私どもの先祖は、秦の時代の世の乱れを避け、妻子や村人をひきつれて、このうき世をはなれた土地へやって来ました。それ以来ここから一歩も出ていないのです。
・避秦時亂:秦の戦乱を避けて。虞美人、劉邦等が輩出した、天下大乱の時代を指している。
・焉:ここに。これ。ここ。
・不復出焉:ここを二度とは出なかった。ここを一度も出なかったということ。前出『老子』の「鷄犬之聲相聞,民至老死,不相往來。」のこと。 ・不復…:二度とは…ない。一度も…ない。似た表現で「復不…」は、またもや…ない。二度目も…でない、になる。


遂與外人間隔。問今是何世,乃不知有漢,無論魏晉。
こうして外界の人と隔たってしまったのです」。そして「今は一体何という時代ですか」ときくのである。なんと漢という時代のあったことを知らず、そのあとの魏や晋のことなどはいうまでもない。
・不知有漢,無論魏晉:漢は云うまでもなく魏や晉の各代を知らない。諸葛亮、劉備、周瑜、曹操、曹植、桓温、王謝の一族が出てくる時代である。


此人一一爲具言所聞,皆歎惋。
そこで漁師が、自分の知っていることを一一こまかに話してやると、みんなはひどく感にうたれた様子であった。
・歎惋:嘆き驚く。


餘人各復延至其家,皆出酒食。
ほかの人たちも、それぞれまた百分の家に招待して、みな酒や食べものを出してくれた。
桃園001