〔韓愈、李正封〕《晚秋郾城夜會聯句》(26)池の蓮は、秋、実が熟して房を破り、中庭の若竹は夏にずんずん伸びて、皮が禿げるくらいになるくらい歳月は遠慮なく押し移ってゆく。願うことには、天子の五歳一度遵守せられるに陪同して、恆嶽と岱山に朝し、一年三度の狩猟にしたがって、長楊五柞、両故宮の間に宿したいというところであるし、
《晚秋郾城夜會聯句〔韓愈、李正封〕》(26)-#24韓愈(韓退之) Ⅱ中唐詩 <873> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ3349韓愈詩-220-#24
#21
山多離隱豹,野有求伸蠖。
推選閱羣材,薦延搜一鶚。(正封)
左右供諂譽,親交獻諛噱。
名聲載揄揚,權勢實熏灼。(愈)
いまの世には、群賢ことごとく朝に在るも、尚遺賢無きにしも非ずで、山には隠れていた霧の中から離れて、文彩すでに成りし豹も多く、野には、今まで屈したが、これから大いに伸びようとする尺蠖もある。
草野賢良、既に少なからざる上は、その羣材を検閲して、多くの鷥鳥の中から一羽の鶚を探り出すとおなじく、しかるべきものを推選して、蔓延せねばならない。
左右の侍者は、お気にいるようなことをいってから、相公の才徳を誉めそやして、親交の輩は、諛言を呈して笑いを献ずるが、それは、その場合に限るのであって、国家の大事に至っては掛かる手合いを相手にせず、別に相談されるべき人がいくらもあろう。
今や、相公の名声は、いよいよ上がり、権勢は、あらゆるものを薫灼せんばかり。
山には隱を離るる豹多く,野には伸ぶるをむるの蠖【わく】有り。
推選 羣材を閱し,薦延【すいえん】一鶚【いちがく】搜る。(正封)
左右 供諂譽【てんよ】をし,親交 諛噱【ゆうやく】を獻ず。
名聲 載ち揄揚【ゆよう】,權勢 實に熏灼【くんしゃく】。(愈)
#22
道舊生感激,當歌發酬酢。
羣孫輕綺紈,下客豐醴酪。(正封)
窮天貢琛異,匝海賜酺醵。
作樂鼓還槌,從禽弓始彍。(愈)
自分としては、幸いに久しい前から、知遇をかたじけのうすることによって、ありし昔のことを言いだして、感激を生じ、歌を歌って歓しく過ごすべきことに代えて、酒の献酬をしている。
相公の羣孫は、軽くして精巧なる絹物を召され、賓客中の最下なものまでも、芳醇な酒などを十分に頂戴しているのである。
そうであるから、天下を極めて、珍しき品々を献上し、海をめぐって集めた珍味を以て、饗応されたのである。
その時になって、音楽を成して、鼓をなんども拍してkれて、鳥を射撃たんとして弓を張るのである。
舊を道うて感激を生じ,歌に當って酬酢【しゅうさく】を發す。
羣孫 綺紈【きがん】を輕くし,下客 醴酪【れいらく】を豐にす。(正封)
天を窮めて琛異【らんい】を貢し,海を匝【めぐ】って酺醵【ほきゃく】を賜う。
樂を作して鼓 還た槌ち,禽を從【お】うて弓 始めて彍【は】る。(愈)
#23
取歡移日飲,求勝通宵博。
五白氣爭呼,六奇心運度。(正封)
恩澤誠布濩,嚚頑已簫勺。
告成上云亭,考古垂矩矱。(愈)
歓楽を求めて夜飲に日の遷るを忘れ、勝ちを求めて徹宵、博塞の游をなすこともある。
博塞における賽の目の五白は、気合で転がしだすのであるし、また、陳平のごとく、六度までも奇計をなして毫も窮せざる心を持って運度とするからである。
今や天子の恩沢は、布き渡らぬ隈もなく、嚚頑にして教化しがたき賊徒も追々慣れて親しむようになり、簫勺の楽を聞くようになった。
うであればその成功を告げ封禅の義を行って、雲亭二山に登ることもあるべく、古の興亡盛衰を考えて、法度を天下後世に垂れるようにしたいのである。
#24
前堂清夜吹,東第良晨酌。
わたしとしても、またその通りで前堂に置いては、清夜に管を吹き、東第においては、良晨に酒を酌み朝夕優遊しているのであるが、
池蓮拆秋房,院竹飜夏籜。(正封)
池の蓮は、秋、実が熟して房を破り、中庭の若竹は夏にずんずん伸びて、皮が禿げるくらいになるくらい歳月は遠慮なく押し移ってゆく。
五狩朝恆岱,三畋宿楊柞。
願うことには、天子の五歳一度遵守せられるに陪同して、恆嶽と岱山に朝し、一年三度の狩猟にしたがって、長楊五柞、両故宮の間に宿したいというところであるし、
農書乍討論,馬法長懸格。(愈)
乱を起こした賊共は既に平定されて、世は清平になったから、農業に関する古書を討論し、司馬法などの兵書は、今後全く不要になってしまった。
『晚秋郾城夜會聯句』〔韓愈、李正封〕 現代語訳と訳註
(本文)#24
前堂清夜吹,東第良晨酌。
池蓮拆秋房,院竹飜夏籜。(正封)
五狩朝恆岱,三畋宿楊柞。
農書乍討論,馬法長懸格。(愈)
(下し文) #24
前堂 清夜の吹,東第 良晨の酌。
池蓮 秋房を拆り,院竹 夏籜【かたく】を飜す。(正封)
五狩 恆岱【こうだい】朝し,三畋【さんぶん】楊柞に宿す。
農書 乍【たちま】ち討論,馬法【ばほう】長く懸格【けんかく】。(愈)
(現代語訳)
わたしとしても、またその通りで前堂に置いては、清夜に管を吹き、東第においては、良晨に酒を酌み朝夕優遊しているのであるが、
池の蓮は、秋、実が熟して房を破り、中庭の若竹は夏にずんずん伸びて、皮が禿げるくらいになるくらい歳月は遠慮なく押し移ってゆく。
願うことには、天子の五歳一度遵守せられるに陪同して、恆嶽と岱山に朝し、一年三度の狩猟にしたがって、長楊五柞、両故宮の間に宿したいというところであるし、
乱を起こした賊共は既に平定されて、世は清平になったから、農業に関する古書を討論し、司馬法などの兵書は、今後全く不要になってしまった。
(訳注) #24
前堂清夜吹,東第良晨酌。
わたしとしても、またその通りで前堂に置いては、清夜に管を吹き、東第においては、良晨に酒を酌み朝夕優遊しているのであるが、
・清夜吹 清夜に管楽器を吹くこと。
・良晨酌 良晨に酒を酌み朝夕優遊する。
池蓮拆秋房,院竹飜夏籜。(正封)
池の蓮は、秋、実が熟して房を破り、中庭の若竹は夏にずんずん伸びて、皮が禿げるくらいになるくらい歳月は遠慮なく押し移ってゆく。
・夏籜 夏にずんずん伸びて、皮が禿げるくらいになるくらい歳月は遠慮なく押し移ってゆく
五狩朝恆岱,三畋宿楊柞。
願うことには、天子の五歳一度遵守せられるに陪同して、恆嶽と岱山に朝し、一年三度の狩猟にしたがって、長楊五柞、両故宮の間に宿したいというところであるし、
・恆岱 五岳(ごがく)道教の聖地である5つの山の北岳と東岳のこと。恒山(北嶽;2,016,m山西省大同市渾源県)と泰山(東嶽;1,545m山東省泰安市泰山区)のこと。
・楊柞 長楊宮。もと秦の離宮で、漢代に修理された。五柞宮も漢代の故宮。
農書乍討論,馬法長懸格。(愈)
乱を起こした賊共は既に平定されて、世は清平になったから、農業に関する古書を討論し、司馬法などの兵書は、今後全く不要になってしまった。