韓愈  送惠師#3

茲地翔走,自然嚴且神。微風吹木石,澎湃聞韶鈞。

夜半起下視,溟波銜日輪。魚龍驚踴躍,叫嘯成悲辛。
ここは、非常に高いところで、飛禽走獣も居らず、自然に荘厳にして神神しい。その時、微風が木石を吹くと、澎湃として大きな聲を発し、さながら韶鈞という古の尊い優美な樂曲のしらべを聞く様な気がした。夜半にふと起きあがって脚底を見下してみると、海波の中に日輪が銜まれていた。水中に住む魚龍などの怪物は、海が焼けるかと思って、叫び嘯いて悲辛を為すかと疑はれたのである。

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韓愈詩-78-#3送惠師

 

年:804年貞元二十年37

卷別:    卷三三七              文體:    五言古詩

詩題:    送惠師【愈在連州,與釋景常,元惠遊。惠師即元惠也。】

作地點:              陽山(江南西道 / 連州 / 陽山)

及地點:              四明山 (江南東道 越州 會稽) 別名:四明      

天台山 (江南東道 台州 天台山)       

禹穴 (江南東道 越州 會稽)              

溫州 (江南東道 溫州 溫州) 別名:東甌         

浙江 (江南東道 越州 會稽)              

峨眉山 (劍南道北部 嘉州 峨眉山)   

岷山 (劍南道北部 茂州 岷山) 別名:西山、汶山         

廬山 (江南西道 江州 廬山) 別名:廬嶽、匡山            

羅浮山 (嶺南道東部 無第二級行政層級 羅浮山)          

連州 (江南西道 連州 連州)

九疑山 (江南西道 無第二級行政層級 九疑山) 別名:蒼梧山     

衡山 (江南西道 衡州 衡山) 別名:衡岳、南嶽、衡嶽、南岳     

洞庭湖 (江南西道 岳州 岳州) 別名:洞庭     

嵩山 (都畿道 河南府 嵩山) 別名:嵩高山、嵩、嵩丘、嵩高     

洛陽 (都畿道 河南府 洛陽) 別名:洛城、洛、東洛、洛邑、京洛、河洛、洛下   

華山 (京畿道 華州 華山) 別名:華、太華、華岳、西岳            

咸陽 (京畿道 京兆府 咸陽) 別名:秦、咸

 

交遊人物/地點:元惠          /當地交遊(江南西道 連州 連州)

 

送惠師【愈在連州,與釋景常,元惠遊。惠師即元惠也。】#1

(惠師が洛陽、長安に行くというので、この詩を作って送った)【この時、韓愈は、連州の寺をめぐって、釋景常と元惠と一緒に遊んでいた。】#1

惠師浮屠者,乃是不羈人。

元惠上人は、仏教の僧侶ではあるが、卓犖不羈の人である。

十五愛山水,超然謝朋親。

このひとは、年わずかに十五のころから、天下の山水を愛し、超然として、朋友親戚に暇乞をなしたのである。

冠剪頭髮,遺蹤塵。

冠を脱して頭髪を剪って出家した後、自由自在に山水の間を飛び歩いて、到る処に、その足跡を留めて居る。

(惠師を送る)【案:愈 連州に在るとき,釋景常と,元惠とで遊ぶ。惠師 即ち元惠なり。】#1

惠師は浮屠の者,乃ち是れ不羈の人。

十五に山水を愛し,超然として朋親に謝す。

冠をして 頭髮を剪り,飛步して 蹤塵を遺る

#2

發跡入四明,梯空上秋旻。

かくて、第一に発跡して、四明山に人り、雲梯を躡んで、秋空に上ってゆく。

遂登天台望,眾壑皆嶙峋。

やがて天台に登って望むと、多くの谷には巌が角角しくとがっている。

夜宿最高頂,舉頭看星辰。

夜、その最高項に宿し、頭を拳げて天上の星辰を望む。

光芒相照燭,南北爭羅陳。

すると、その数は、限りなく、光茫互に照らし合って、南北に爭って列っている衆壑とたがいに映じて居る。

發跡 四明に入り,梯空 秋旻に上る。

遂に天台に登って望めば,壑 皆 嶙峋たり。

夜 最高の頂に宿し,頭を舉げて 星辰を看る。

光芒 相い照燭して,南北 爭って羅陳す。
#3

茲地翔走,自然嚴且神。

ここは、非常に高いところで、飛禽走獣も居らず、自然に荘厳にして神神しい。

微風吹木石,澎湃聞韶鈞。

その時、微風が木石を吹くと、澎湃として大きな聲を発し、さながら韶鈞という古の尊い優美な樂曲のしらべを聞く様な気がした。

夜半起下視,溟波銜日輪。

夜半にふと起きあがって脚底を見下してみると、海波の中に日輪が銜まれていた。

魚龍驚踴躍,叫嘯成悲辛。

#3

茲の地 翔走を,自然 嚴且つ神なり。

微風 木石を吹き,澎湃として 韶鈞を聞く。

夜半 起って下に視れば,溟波 日輪を銜む。

魚龍 驚いて踴躍,叫嘯して悲辛を成す。

 

 

『送惠師』 現代語訳と訳註解説

(本文) #3

茲地翔走,自然嚴且神。

微風吹木石,澎湃聞韶鈞。

夜半起下視,溟波銜日輪。

魚龍驚踴躍,叫嘯成悲辛。

(下し文)
茲の地 翔走をち,自然 嚴且つ神なり。

微風 木石を吹き,澎湃として 韶鈞を聞く。

夜半 起って下に視れば,溟波 日輪を銜む。

魚龍 驚いて踴躍,叫嘯して悲辛を成す。

(現代語訳) #3

ここは、非常に高いところで、飛禽走獣も居らず、自然に荘厳にして神神しい。

その時、微風が木石を吹くと、澎湃として大きな聲を発し、さながら韶鈞という古の尊い優美な樂曲のしらべを聞く様な気がした。

夜半にふと起きあがって脚底を見下してみると、海波の中に日輪が銜まれていた。

水中に住む魚龍などの怪物は、海が焼けるかと思って、叫び嘯いて悲辛を為すかと疑はれたのである。


(訳注) #3

送惠師【案:愈在連州,與釋景常,元惠遊。惠師即元惠也。】#2

(惠師が洛陽、長安に行くというので、この詩を作って送った)【この時、韓愈は、連州の寺をめぐって、釋景常と元惠と一緒に遊んでいた。】

この詩の#7に「自來連州寺,曾未造城闉。」とある。

 

茲地翔走,自然嚴且神。

ここは、非常に高いところで、飛禽走獣も居らず、自然に荘厳にして神神しい。

翔走 飛禽走獣。

 

微風吹木石,澎湃聞韶鈞。

その時、微風が木石を吹くと、澎湃として大きな聲を発し、さながら韶鈞という古の尊い優美な樂曲のしらべを聞く様な気がした。

澎湃 1 水がみなぎり逆巻くさま。「―たる波浪」2 物事が盛んな勢いでわき起こるさま。

韶鈞 韶:虞舜の樂名。堯の徳をうたったもの、で、鈞天廣樂という。きわめて優美な樂曲である。宋 曾鞏 《郊祀慶成》詩: “還宮動前蹕, 喜氣入韶鈞。”

 

夜半起下視,溟波銜日輪。

夜半にふと起きあがって脚底を見下してみると、海波の中に日輪が銜まれていた。

日輪 東海の海の外、甘水のほとりに義和の国があり、そこに生える世界樹・扶桑の下に住む女神である義和は、子である「十の太陽たち」を世話している。天を巡ってきてくたびれた太陽を湯谷で洗っては扶桑の枝にかけて干し、輝きを蘇らせるという。

 

魚龍驚踴躍,叫嘯成悲辛。

水中に住む魚龍などの怪物は、海が焼けるかと思って、叫び嘯いて悲辛を為すかと疑はれたのである。