漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩 中唐詩人選集【Ⅰ李商隠-150】Ⅱ韓退之(韓愈)-500Ⅶ孟郊(東野)賈島張籍柳宗元韋応物

Ⅰ李商隠は難解詩といわれている。約150首紹介済。(晩唐詩人) Ⅱ韓退之(韓愈)-約500首Ⅶ孟郊、中唐の詩人を掲載中。万物の性(さが)をテーマにした哲学的な詩。このブログは基本的に中唐詩人を中心にして掲載する予定。 韓愈詩文のこれまでの掲載分とこれから掲載予定分を時系列で整理した2014.3.29のブログに集約してそこから各年次を見ることができる  kanbuniinkai 検索で、《漢文委員会HP05》サイトあります。漢詩唐詩を理解するための総合サイト:≪漢文委員会 漢詩07≫。

権知国子博士

少し、マニアックな晩唐詩人Ⅰ-李商隠150首をまず掲載済み。中唐は盛唐詩人(孟浩然・王維、杜甫、李白)を受け継いだ多様な詩人が出ている。この時代も驚くほど詩が発展している。Ⅱ韓退之(韓愈)500首、Ⅲ柳宗元40首、Ⅳ韋応物、Ⅴ劉長卿、Ⅵ韋荘、Ⅶ孟郊(孟東野)、Ⅷ張籍、Ⅸ賈島、Ⅹ劉禹錫、ほか2012~2020年の予定で気長に進める。同じ中唐ではあるが、白居易のグループについては、李白のブログ350首(2015/6月再開~2018/夏・秋月予定)の後掲載の予定。別に杜甫詩ブログ1500首(2011/7月~2018/8月の予定で)を進行中。詩数につぃては、予定の詩数より多くなる。気まぐれなところがあるのでこの予定が少し変わる場合があり、その節はご容赦ください。                 古詩・謝霊運詩 杜甫詩 韓愈詩 花間集500首全詩 それぞれ毎日ブログしています。 このブログ、索引=語句の「検索」 参考書以上掲載。漢詩力up。

調張籍 韓退之(韓愈)詩<112-#4>Ⅱ中唐詩552 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1774

調張籍 韓退之(韓愈)詩


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各詩人の目次
謝靈運詩    http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
孟浩然の詩  http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html
李商隠詩    http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
女性詩人    http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html
孟郊詩     http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html
李商隠詩    http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html


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調張籍 韓退之(韓愈)詩<112-#4>Ⅱ中唐詩552 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1774


調張籍 
#1
李杜文章在,光焰萬丈長。不知群兒愚,那用故謗傷。
李白と杜甫はその文学が厳然ひかりと存在している、そのかがやく焔は万丈の長さにも及んでいるものである。
それにどういうわけか私にはわからないが幼稚な子供のような愚かな者たちがいることだ。それはなぜわざわざ彼らを誹謗や中傷したりするのだろう。

蚍蜉撼大樹,可笑不自量。伊我生其後,舉頸遙相望。
大蟻かもしれないが荘厳な大木をゆりうごかそうとしているのだ、そんな身の程知らずなことは笑ってやることしかないだろう。
このわたしは李白杜甫の後に生まれているのであるが、首をのばしてはるか昔まで数多の文学者たちを望んでみる。

夜夢多見之,晝思反微茫。
過去を振り返って夜、夢に出るほどの詩人は李白杜甫を多く見るのであるが、昼に今の文壇のことを評価すると此れと言って評価できる詩人はいないのである。
李杜 文章在り、光焰 万丈長し。
知らず 群児の愚かなる、那にを用ってか故さらに謗傷する。
蚍蜉 大樹を撼かす、笑うべし 自ずから量らざるを。
伊れ我れ其の後に生まれて、頸を挙げて遙かに相い望む。
夜るには夢に多くこれを見るも、昼に思えば反って微茫たり。

#2
徒觀斧鑿痕,不矚治水航。想當施手時,巨刃磨天揚。
ただ単に山峡を削り出しただけの跡を見るという語句をあれこれ議論して添削しても、禹が治水工事を完成させて船の就航が良くなったように詩歌が上手く流れないとみつめる意味がないのである。
想像するに李杜が手を加えるというそんな時は、巨大な刃が天を削り磨き上げ丸くするように振り上げられたにちがいない。

垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。惟此兩夫子,家居率荒涼。
崖であるべきところはすぽっと切りおとされ、崩されて開かれるのであり、天と地は雷鳴轟き、うちふるえたことであろう。
そうであってもこの文壇両巨頭の二人は、暮らし向きとなるといたってわびしかったのである。

帝欲長吟哦,故遣起且僵。

それは天の神がいつまでも詩を作っていさせようと思われ、わざわざ、起きては倒れ、うまくいくとすかさず難関に向かわせるようになされたのだ。

徒【いたずら】に斧鑿【ふさく】の痕【あと】を觀て,治水の航を矚【み】ず。
想うに手を施す時に當って,巨刃は揚げるをして天を磨る。
垠崖【ぎんがい】劃【かく】として崩豁【ほうかつ】たり,乾坤【けんこん】雷硠【らいろう】を擺【ふる】う。
惟れ此の兩の夫子,家居率【おおむ】ね荒涼たり。
帝長く吟哦【ぎんが】せしめんと欲し,故【こと】さらに起ち且つ僵【たお】れ遣【し】む。

剪翎送籠中,使看百鳥翔。平生千萬篇,金薤垂琳琅。
羽を切ってかごの中に送られたような六朝文学(賦、楽府)、四六駢儷文は宮廷文学は籠の中から飛び立つことはできなかった、百鳥のように朝廷文学のなかで李・杜は心ゆくままに天翔けるのを見せつけたことになる。
一生かけて千篇か万篇かの詩を作るというが、書家の金錯書また倒薤書のすぐれてたくみな文字でもって李・杜の琳琅の美しい玉の詩を垂れ字で書かれるのである。

仙官敕六丁,雷電下取將。流落人間者,太山一毫芒。
道教の神で、天帝の走り使いの任をうける六丁にみことのりをされた、雷をとどろかせ稲光をおとして、この世に下り李杜の力を奪い取って持って行ってしまったということだ。
李杜の詩はこの人の世にもれ落ちて伝えられたものである、そしてその詩は泰山の中の毛すじ一本ほどとのものでも駄作はないのだ。

我願生兩翅,捕逐出八荒。

われわれにはどうか左右両のつばさを生やしてもらい、天地のはてをこえでまで李杜の詩を世界のはてまで追っかけたいとおもうのである。

翎【はね】を剪って籠中に送り,百鳥の翔けるを看使【し】む。
平生【へいぜい】千萬篇,金薤【きんかい】琳琅【りんろう】を垂る。
仙官【せんかん】六丁【りくてい】に敕し,雷電して下りて取將【しゅしょう】せしむ。
流落せる人間の者,太山の一毫の芒。
我れ願わくば兩翅【りょうしょう】を生じ,捕逐【ほちく】して八荒【はちこう】を出でんことを。
#4
精誠忽交通,百怪入我腸。
精心誠意をもったこころがたちまち李杜の心と通いあうのである、そうして今までにないハイレベルなおびただしい幻想がわたしの腸にはいって来くるのだ。
刺手拔鯨牙,舉瓢酌天漿。
手に刃をもち、抜いた剣の切っ先を相手の方に向けるため翻して鯨の牙をひっこ抜いて、そのあとはひさごを挙げて天の酒を酌み交わすのである。
騰身跨汗漫,不著織女襄。
愛馬にうちまたがってこの身を広大無辺で計り知れない空に昇らせていく、しかし、七夕織姫の馬車のあとおっかけてついていくことはしないのだ。
顧語地上友,經營無太忙。
ふりかえってみて地上の友である張籍君に語ることにすると、「まめまめしく仕事に務め過ぎてはいないのか。」と。
乞君飛霞佩,與我高頡頏。
そして「君に飛霞の佩をあげよう、わたしといっしょに空を自由に飛びまわろうではないか。」と。
#4
精誠【せいせい】忽【たちま】ち交通し,百怪【ひゃっかい】我が腸に入らん。
刺手して鯨牙【げいが】を拔き,瓢【ひさご】を舉げて天漿を酌【くみかわ】さん。
身を騰【あ】げて汗漫【かんまん】に跨がり,織女の襄【じょう】に著【つ】かず。
顧りみて地上の友に語らく,經營【けいえい】太【はなは】だ忙がわしきこと無からんや。
君に飛霞【ひか】の佩【はい】を乞,我れと高く頡頏【けつこう】されたし。

嘉陵江111111

『調張籍』最終回 現代語訳と訳註
(本文)
#4
精誠忽交通,百怪入我腸。刺手拔鯨牙,舉瓢酌天漿。騰身跨汗漫,不著織女襄。顧語地上友,經營無太忙。乞君飛霞佩,與我高頡頏。


(下し文)#4
精誠【せいせい】忽【たちま】ち交通し,百怪【ひゃっかい】我が腸に入らん。
刺手して鯨牙【げいが】を拔き,瓢【ひさご】を舉げて天漿を酌【くみかわ】さん。
身を騰【あ】げて汗漫【かんまん】に跨がり,織女の襄【じょう】に著【つ】かず。
顧りみて地上の友に語らく,經營【けいえい】太【はなは】だ忙がわしきこと無からんや。
君に飛霞【ひか】の佩【はい】を乞,我れと高く頡頏【けつこう】されたし。


(現代語訳)
精心誠意をもったこころがたちまち李杜の心と通いあうのである、そうして今までにないハイレベルなおびただしい幻想がわたしの腸にはいって来くるのだ。
手に刃をもち、抜いた剣の切っ先を相手の方に向けるため翻して鯨の牙をひっこ抜いて、そのあとはひさごを挙げて天の酒を酌み交わすのである。
愛馬にうちまたがってこの身を広大無辺で計り知れない空に昇らせていく、しかし、七夕織姫の馬車のあとおっかけてついていくことはしないのだ。
ふりかえってみて地上の友である張籍君に語ることにすると、「まめまめしく仕事に務め過ぎてはいないのか。」と。
そして「君に飛霞の佩をあげよう、わたしといっしょに空を自由に飛びまわろうではないか。」と


(訳註)#4
精誠忽交通,百怪入我腸。
精心誠意をもったこころがたちまち李杜の心と通いあうのである、そうして今までにないハイレベルなおびただしい幻想がわたしの腸にはいって来くるのだ。
・精誠 まごころ。精心誠意。
・交通 通じあう。李白・杜甫の心と通うということであろう。
・百怪 いろいろの化け物というべき、詩的幻想をさす。今まではどうやっても思いつかないようなレベルの違う詩的幻想を云う。


刺手拔鯨牙,舉瓢酌天漿。
手に刃をもち、抜いた剣の切っ先を相手の方に向けるため翻して鯨の牙をひっこ抜いて、そのあとはひさごを挙げて天の酒を酌み交わすのである。
・刺手 手に刃を持ちひるがえすこと。この頃の剣は斬るより衝くことが基本で、抜いた剣の切っ先を相手の方に向けるため翻すことを云う。

○鯨牙 鯨の歯。鯨は、海に住む狂暴な動物として、奇怪なものとされた。
○瓢 ひさご。現在の水筒のように用いられた。
○天栄 柴は、飲みもの。天衆は、天の飲料。醍醐・ネタタルのようなもの。


騰身跨汗漫,不著織女襄。
愛馬にうちまたがってこの身を広大無辺で計り知れない空に昇らせていく、しかし、七夕織姫の馬車のあとおっかけてついていくことはしないのだ。
・騰身 からだを空にのぼらせる。
・汗漫 広い漠然としているところへ出て行くさま。広大無辺で計り知れないこと。水面などが広々としてはてしないこと。また、そのさま。『淮南子』≪‧道應訓≫「吾與汗漫期於九垓之外。」とあり、淮南子に見える天界遊行・古代の宇宙観をいう。廬敖という存在が、遠遊して世界を経巡ったと誇ったところ、ある存在がそれをまだまだ小さいことだとして高誘注で「吾与汗漫、期于九垓之上。吾不可以久(私は汗漫と九天の上で逢う約束をしている。お前の相手をしている暇はない)」として雲の彼方へ消えていった、という説話を載せる。杜甫『渼陂行』「琉利汗漫泛舟入,事殊興極憂思集。渼陂行  杜甫 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 66
李白『廬山謠寄盧侍御虛舟』「先期汗漫九垓上、願接盧敖遊太清。」孟浩然『寄天臺道士』「海上求仙客,三山望幾時。焚香宿華頂,裛露采靈芝。屢躡莓苔滑,將尋汗漫期。倘因松子去,長與世人辭。」盛唐詩 寄天台道士 孟浩然<27> Kanbuniinkai紀頌之の漢詩 李白特集350 -334
・著 くっつく。
・織女襄 織女星の馬車。「詩経」小雅「跂彼織女、終日七襄」「跂たる彼の織女は、日を終えて七たび襄る。」とある。織女星が、一日中かかって七つの星宿をめぐることをいったもの。嚢は、宿すことを意味し、星から星へ、宿場から宿場まで行くことだという。
「織女の嚢に着かず」とは、織女が星から星へと回っていくことをしないということ。


顧語地上友,經營無太忙。
ふりかえってみて地上の友である張籍君に語ることにすると、「まめまめしく仕事に務め過ぎてはいないのか。」と。
地上友 張籍をさす。
経営 まめまめしくものごとに勤めること。
無太忙 ここでは、無は反語。「……ではないか。」無は、しばしは、反語の気持ちをこめて強めのことばとして用いられる。太は、甚だしく。


乞君飛霞佩,與我高頡頏。
そして「君に飛霞の佩をあげよう、わたしといっしょに空を自由に飛びまわろうではないか。」と
・乞 人にものを与える。
・飛霞佩 飛霞は、空にただよう赤いかすみ。佩は、帯玉。腰にさげるかざりの玉。飛霞佩は、それを身につけることによって空を飛ぶ能力が生ずるものとしているのであろう。
・頡頏 上がったり下がったりして飛ぶ。上へ飛ぶことを頡といい、下へ飛ぶことを頏という。「詩経」邶風 邶風燕燕の篇に見えることば。


調張籍 韓退之(韓愈)詩<112-#3>Ⅱ中唐詩551 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1770

調張籍 韓退之(韓愈) 3/4

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李商隠詩    http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
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調張籍 韓退之(韓愈)詩<112-#3>Ⅱ中唐詩551 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1770

調張籍
李杜文章在,光焰萬丈長。不知群兒愚,那用故謗傷。
李白と杜甫はその文学が厳然ひかりと存在している、そのかがやく焔は万丈の長さにも及んでいるものである。
それにどういうわけか私にはわからないが幼稚な子供のような愚かな者たちがいることだ。それはなぜわざわざ彼らを誹謗や中傷したりするのだろう。

蚍蜉撼大樹,可笑不自量。伊我生其後,舉頸遙相望。
大蟻かもしれないが荘厳な大木をゆりうごかそうとしているのだ、そんな身の程知らずなことは笑ってやることしかないだろう。
このわたしは李白杜甫の後に生まれているのであるが、首をのばしてはるか昔まで数多の文学者たちを望んでみる。

夜夢多見之,晝思反微茫。
過去を振り返って夜、夢に出るほどの詩人は李白杜甫を多く見るのであるが、昼に今の文壇のことを評価すると此れと言って評価できる詩人はいないのである。

李杜 文章在り、光焰 万丈長し。
知らず 群児の愚かなる、那にを用ってか故さらに謗傷する。
蚍蜉 大樹を撼かす、笑うべし 自ずから量らざるを。
伊れ我れ其の後に生まれて、頸を挙げて遙かに相い望む。
夜るには夢に多くこれを見るも、昼に思えば反って微茫たり。

徒觀斧鑿痕,不矚治水航。想當施手時,巨刃磨天揚。
ただ単に山峡を削り出しただけの跡を見るという語句をあれこれ議論して添削しても、禹が治水工事を完成させて船の就航が良くなったように詩歌が上手く流れないとみつめる意味がないのである。
想像するに李杜が手を加えるというそんな時は、巨大な刃が天を削り磨き上げ丸くするように振り上げられたにちがいない。

垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。惟此兩夫子,家居率荒涼。
崖であるべきところはすぽっと切りおとされ、崩されて開かれるのであり、天と地は雷鳴轟き、うちふるえたことであろう。
そうであってもこの文壇両巨頭の二人は、暮らし向きとなるといたってわびしかったのである。

帝欲長吟哦,故遣起且僵。
それは天の神がいつまでも詩を作っていさせようと思われ、わざわざ、起きては倒れ、うまくいくとすかさず難関に向かわせるようになされたのだ。

#2
徒觀斧鑿痕,不矚治水航。想當施手時,巨刃磨天揚。
ただ単に山峡を削り出しただけの跡を見るという語句をあれこれ議論して添削しても、禹が治水工事を完成させて船の就航が良くなったように詩歌が上手く流れないとみつめる意味がないのである。
想像するに李杜が手を加えるというそんな時は、巨大な刃が天を削り磨き上げ丸くするように振り上げられたにちがいない。

垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。惟此兩夫子,家居率荒涼。
崖であるべきところはすぽっと切りおとされ、崩されて開かれるのであり、天と地は雷鳴轟き、うちふるえたことであろう。
そうであってもこの文壇両巨頭の二人は、暮らし向きとなるといたってわびしかったのである。

帝欲長吟哦,故遣起且僵。
それは天の神がいつまでも詩を作っていさせようと思われ、わざわざ、起きては倒れ、うまくいくとすかさず難関に向かわせるようになされたのだ。

徒【いたずら】に斧鑿【ふさく】の痕【あと】を觀て,治水の航を矚【み】ず。
想うに手を施す時に當って,巨刃は揚げるをして天を磨る。
垠崖【ぎんがい】劃【かく】として崩豁【ほうかつ】たり,乾坤【けんこん】雷硠【らいろう】を擺【ふる】う。
惟れ此の兩の夫子,家居率【おおむ】ね荒涼たり。
帝長く吟哦【ぎんが】せしめんと欲し,故【こと】さらに起ち且つ僵【たお】れ遣【し】む。

剪翎送籠中,使看百鳥翔。
羽を切ってかごの中に送られたような六朝文学(賦、楽府)、四六駢儷文は宮廷文学は籠の中から飛び立つことはできなかった、百鳥のように朝廷文学のなかで李・杜は心ゆくままに天翔けるのを見せつけたことになる。
平生千萬篇,金薤垂琳琅。
一生かけて千篇か万篇かの詩を作るというが、書家の金錯書また倒薤書のすぐれてたくみな文字でもって李・杜の琳琅の美しい玉の詩を垂れ字で書かれるのである。
仙官敕六丁,雷電下取將。
道教の神で、天帝の走り使いの任をうける六丁にみことのりをされた、雷をとどろかせ稲光をおとして、この世に下り李杜の力を奪い取って持って行ってしまったということだ。
流落人間者,太山一毫芒。
李杜の詩はこの人の世にもれ落ちて伝えられたものである、そしてその詩は泰山の中の毛すじ一本ほどとのものでも駄作はないのだ。
我願生兩翅,捕逐出八荒。

われわれにはどうか左右両のつばさを生やしてもらい、天地のはてをこえでまで李杜の詩を世界のはてまで追っかけたいとおもうのである。

翎【はね】を剪って籠中に送り,百鳥の翔けるを看使【し】む。
平生【へいぜい】千萬篇,金薤【きんかい】琳琅【りんろう】を垂る。
仙官【せんかん】六丁【りくてい】に敕し,雷電して下りて取將【しゅしょう】せしむ。
流落せる人間の者,太山の一毫の芒。
我れ願わくば兩翅【りょうしょう】を生じ,捕逐【ほちく】して八荒【はちこう】を出でんことを。


#4
精誠忽交通,百怪入我腸。刺手拔鯨牙,舉瓢酌天漿。騰身跨汗漫,不著織女襄。顧語地上友,經營無太忙。乞君飛霞佩,與我高頡頏。

denen03350


『調張籍』 現代語訳と訳註
(本文)

剪翎送籠中,使看百鳥翔。平生千萬篇,金薤垂琳琅。
仙官敕六丁,雷電下取將。流落人間者,太山一毫芒。
我願生兩翅,捕逐出八荒。


(下し文)
翎【はね】を剪って籠中に送り,百鳥の翔けるを看使【し】む。
平生【へいぜい】千萬篇,金薤【きんかい】琳琅【りんろう】を垂る。
仙官【せんかん】六丁【りくてい】に敕し,雷電して下りて取將【しゅしょう】せしむ。
流落せる人間の者,太山の一毫の芒。
我れ願わくば兩翅【りょうしょう】を生じ,捕逐【ほちく】して八荒【はちこう】を出でんことを


(現代語訳)
羽を切ってかごの中に送られたような六朝文学(賦、楽府)、四六駢儷文は宮廷文学は籠の中から飛び立つことはできなかった、百鳥のように朝廷文学のなかで李・杜は心ゆくままに天翔けるのを見せつけたことになる。
一生かけて千篇か万篇かの詩を作るというが、書家の金錯書また倒薤書のすぐれてたくみな文字でもって李・杜の琳琅の美しい玉の詩を垂れ字で書かれるのである。
道教の神で、天帝の走り使いの任をうける六丁にみことのりをされた、雷をとどろかせ稲光をおとして、この世に下り李杜の力を奪い取って持って行ってしまったということだ。
李杜の詩はこの人の世にもれ落ちて伝えられたものである、そしてその詩は泰山の中の毛すじ一本ほどとのものでも駄作はないのだ。
われわれにはどうか左右両のつばさを生やしてもらい、天地のはてをこえでまで李杜の詩を世界のはてまで追っかけたいとおもうのである。


(訳注)
剪翎送籠中,使看百鳥翔。
羽を切ってかごの中に送られたような六朝文学(賦、楽府)、四六駢儷文は宮廷文学は籠の中から飛び立つことはできなかった、百鳥のように朝廷文学のなかで李・杜は心ゆくままに天翔けるのを見せつけたことになる。
・剪翎 翎は、羽毛。島の羽を切って飛べないようにする。六朝文学、四六駢儷文は宮廷文学にどっぷりつかりその領域の中から出ることはなかったことを示す。
・使看百鳥翔 いろいろの鳥が存分に飛びまわっているのを見させた。この百鳥は、朝廷で高位についた人たちをいう。つまり、高官たちが威勢よくくらしているのを見せつけ、それに刺戟されて、李白と杜甫がりっはな詩を作るようにさせた、というもの。


平生千萬篇,金薤垂琳琅。
一生かけて千篇か万篇かの詩を作るというが、書家の金錯書また倒薤書のすぐれてたくみな文字でもって李・杜の琳琅の美しい玉の詩を垂れ字で書かれるのである。
○平生 つねきろ。ここは一生を通じて日常に作ったものということで、一生のこと。
〇千萬篇 千に万にも及ぶ多くの詩。千万は、多数を示す。篇は、詩を数えることばで首より広い意味を持つ。
○金薤 金は、金錯書、薤は、倒薤書、どちら篆書の書体の名で書のすぐれていることをいう。
○垂 垂れている。金錯書、倒薤書の字休が下に垂れたような形である。
○琳琅 美しい玉の名。李白・杜甫の美しい詩をたとえる。


仙官敕六丁,雷電下取將。
道教の神で、天帝の走り使いの任をうける六丁にみことのりをされた、雷をとどろかせ稲光をおとして、この世に下り李杜の力を奪い取って持って行ってしまったということだ。
・仙官 天帝の治下の神仙の世界における官吏。
・勅 勅と同じ。みことのりを下して。
・六丁 道教の神で、天帝の走り使いの任に当たる。
・雷電 雷や電をおとす。
・取将 将は、もって行く。天の機密を盗んで、この世にもらしたものは、天が再びそれを取り上げてしまうという伝説によって、李白杜甫の詩も、天の巧みをこらしたものゆえ、天がそれを去って行った、というのである。李杜以降の詩人が天から力をもらっていないことをいう。


流落人間者,太山一毫芒。
李杜の詩はこの人の世にもれ落ちて伝えられたものである、そしてその詩は泰山の中の毛すじ一本ほどとのものでも駄作はないのだ。
・流落 落ちてこぼれさまよっている。
・人間 この人の世。天上に対する。日本語の人間という意味ではない。
○太山 泰山と同じ。山東省泰安県にある中國の名山で五岳の東岳とされる。大きなものの代表としていつ品用される。
〇一毫芒 豪は、毫の字と同じ。先のとんがった毛。巴は、麦や稲の穂先にある毛。のぎ。毫芒は、ちいさく細いもの代表とされる。李白と杜甫の詩の世に流伝するものは、あの大き泰山の中の一本の毛ほどに、全作品中のごくわずかでしかない、という意。たくさん残されていることと駄作がないということを云う。


我願生兩翅,捕逐出八荒。
われわれにはどうか左右両のつばさを生やしてもらい、天地のはてをこえでまで李杜の詩を世界のはてまで追っかけたいとおもうのである。
〇両麺 二まいのつばさ。
○捕遂 おいかけまわして捕える。天上へと取り去られた李白・杜甫の詩を追いかけるのである。
〇八荒 荒は、地のはて。八荒は、八方の地のはて、つまり、この世界のかぎり。

調張籍 韓退之(韓愈)詩<112-#2>Ⅱ中唐詩550 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1766

調張籍 韓退之(韓愈) 【張籍をあざける】 

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調張籍 韓退之(韓愈)詩<112-#2>Ⅱ中唐詩550 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1766


調張籍
李杜文章在,光焰萬丈長。不知群兒愚,那用故謗傷。
李白と杜甫はその文学が厳然ひかりと存在している、そのかがやく焔は万丈の長さにも及んでいるものである。
それにどういうわけか私にはわからないが幼稚な子供のような愚かな者たちがいることだ。それはなぜわざわざ彼らを誹謗や中傷したりするのだろう。

蚍蜉撼大樹,可笑不自量。伊我生其後,舉頸遙相望。
大蟻かもしれないが荘厳な大木をゆりうごかそうとしているのだ、そんな身の程知らずなことは笑ってやることしかないだろう。
このわたしは李白杜甫の後に生まれているのであるが、首をのばしてはるか昔まで数多の文学者たちを望んでみる。

夜夢多見之,晝思反微茫。
過去を振り返って夜、夢に出るほどの詩人は李白杜甫を多く見るのであるが、昼に今の文壇のことを評価すると此れと言って評価できる詩人はいないのである。

徒觀斧鑿痕,不矚治水航。想當施手時,巨刃磨天揚。
ただ単に山峡を削り出しただけの跡を見るという語句をあれこれ議論して添削しても、禹が治水工事を完成させて船の就航が良くなったように詩歌が上手く流れないとみつめる意味がないのである。
想像するに李杜が手を加えるというそんな時は、巨大な刃が天を削り磨き上げ丸くするように振り上げられたにちがいない。

垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。惟此兩夫子,家居率荒涼。
崖であるべきところはすぽっと切りおとされ、崩されて開かれるのであり、天と地は雷鳴轟き、うちふるえたことであろう。
そうであってもこの文壇両巨頭の二人は、暮らし向きとなるといたってわびしかったのである。

帝欲長吟哦,故遣起且僵。
それは天の神がいつまでも詩を作っていさせようと思われ、わざわざ、起きては倒れ、うまくいくとすかさず難関に向かわせるようになされたのだ。

剪翎送籠中,使看百鳥翔。平生千萬篇,金薤垂琳琅。仙官敕六丁,雷電下取將。流落人間者,太山一毫芒。
我願生兩翅,捕逐出八荒。

精誠忽交通,百怪入我腸。刺手拔鯨牙,舉瓢酌天漿。騰身跨汗漫,不著織女襄。顧語地上友,經營無太忙。乞君飛霞佩,與我高頡頏。


813年元和八年、韓愈は四十六歳であったの作。長い詩なので、五聯ごとに段を分けて下し文、訳註していく。

調張籍 #2
徒觀斧鑿痕,不矚治水航。
ただ単に山峡を削り出しただけの跡を見るという語句をあれこれ議論して添削しても、禹が治水工事を完成させて船の就航が良くなったように詩歌が上手く流れないとみつめる意味がないのである。
想當施手時,巨刃磨天揚。
想像するに李杜が手を加えるというそんな時は、巨大な刃が天を削り磨き上げ丸くするように振り上げられたにちがいない。
垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。
崖であるべきところはすぽっと切りおとされ、崩されて開かれるのであり、天と地は雷鳴轟き、うちふるえたことであろう。
惟此兩夫子,家居率荒涼。
そうであってもこの文壇両巨頭の二人は、暮らし向きとなるといたってわびしかったのである。
帝欲長吟哦,故遣起且僵。

それは天の神がいつまでも詩を作っていさせようと思われ、わざわざ、起きては倒れ、うまくいくとすかさず難関に向かわせるようになされたのだ。
徒【いたずら】に斧鑿【ふさく】の痕【あと】を觀て,治水の航を矚【み】ず。
想うに手を施す時に當って,巨刃は揚げるをして天を磨る。
垠崖【ぎんがい】劃【かく】として崩豁【ほうかつ】たり,乾坤【けんこん】雷硠【らいろう】を擺【ふる】う。
惟れ此の兩の夫子,家居率【おおむ】ね荒涼たり。
帝長く吟哦【ぎんが】せしめんと欲し,故【こと】さらに起ち且つ僵【たお】れ遣【し】む。

太行山脈001

『調張籍 』#2 現代語訳と訳註
(本文)

調張籍 #2
徒觀斧鑿痕,不矚治水航。
想當施手時,巨刃磨天揚。
垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。
惟此兩夫子,家居率荒涼。
帝欲長吟哦,故遣起且僵。


(下し文)
徒【いたずら】に斧鑿【ふさく】の痕【あと】を觀て,治水の航を矚【み】ず。
想うに手を施す時に當って,巨刃は揚げるをして天を磨る。
垠崖【ぎんがい】劃【かく】として崩豁【ほうかつ】たり,乾坤【けんこん】雷硠【らいろう】を擺【ふる】う。
惟れ此の兩の夫子,家居率【おおむ】ね荒涼たり。
帝長く吟哦【ぎんが】せしめんと欲し,故【こと】さらに起ち且つ僵【たお】れ遣【し】む。


(現代語訳)
ただ単に山峡を削り出しただけの跡を見るという語句をあれこれ議論して添削しても、禹が治水工事を完成させて船の就航が良くなったように詩歌が上手く流れないとみつめる意味がないのである。
想像するに李杜が手を加えるというそんな時は、巨大な刃が天を削り磨き上げ丸くするように振り上げられたにちがいない。
崖であるべきところはすぽっと切りおとされ、崩されて開かれるのであり、天と地は雷鳴轟き、うちふるえたことであろう。
そうであってもこの文壇両巨頭の二人は、暮らし向きとなるといたってわびしかったのである。
それは天の神がいつまでも詩を作っていさせようと思われ、わざわざ、起きては倒れ、うまくいくとすかさず難関に向かわせるようになされたのだ。


(訳注)
調張籍 #2
徒觀斧鑿痕,不矚治水航。

ただ単に山峡を削り出しただけの跡を見るという語句をあれこれ議論して添削しても、禹が治水工事を完成させて船の就航が良くなったように詩歌が上手く流れないとみつめる意味がないのである。
徒観 この句より以下「乾坤痛雷破」の句までは、李白と杜甫の文学の制作活動を、古代の三皇五帝の禹が、洪水を治めたときのさまを以て喩える。禹は、嵩山(すうざん)のほとりを本拠としていた。妻は二人いて塗山(とざん)氏の娘で、禹は結婚4日でまた治水工事のために家を出たという。
・斧鑿痕 1 おのとのみ。また、それで細工すること。2 詩文などに技巧を凝らすこと。おのやのみのあと。ここでは、でき上がった作品についていう。禹が山河を切り開いたという神話にもとづき、「斧鑿」という。
・矚 みつめる。
・治水航 川筋を改修工事すること、改修後のスムースな舟の航行。作品を作り上げて行く過程とできあがりこれを吟じ世に広まることをいう。この治水は、禹が洪水を治めたときのことについていう。 


想當施手時,巨刃磨天揚。
想像するに李杜が手を加えるというそんな時は、巨大な刃が天を削り磨き上げ丸くするように振り上げられたにちがいない。
・施手 手を加える。
・巨刃 大きな刃。「斧整」を受けていう。
・磨天 この勝は、摩と同じく、ふれる。


垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。
崖であるべきところはすぽっと切りおとされ、崩されて開かれるのであり、天と地は雷鳴轟き、うちふるえたことであろう。
・垠崖 垠も崖も、がけ。
・劃 線を入れてすぽっと切る。
・崩豁 くずれてからっと開ける。
・乾坤 乾は天、坤は地。
・擺 振動する。ゆれ動く。
・雷硠 ごろごろととどろく音の形容。雷鳴轟く。


惟此兩夫子,家居率荒涼。
そうであってもこの文壇両巨頭の二人は、暮らし向きとなるといたってわびしかったのである。
惟此両夫子 惟は、句のはじめに来る語調をととのえることば。両夫子は、二人の先生。現代風に言えば、文壇の両巨頭というところか。李白と杜甫をさす。
夫子は、男子を尊敬して呼ぶいい方。特に孔子をさすこともあるが、ここはそうでない。
・家居 日常の家庭生活。
・率大抵。
・荒涼 わびしくさびしい。くらしのまずしかったことをいう。


帝欲長吟哦,故遣起且僵。
それは天の神がいつまでも詩を作っていさせようと思われ、わざわざ、起きては倒れ、うまくいくとすかさず難関に向かわせるようになされたのだ。
・帝 天帝。天の最高神。
・長吟哦 長は、いつまでも。時間的に長い。と。吟哦は、詩を作ること、世に出て詠われること。
・故 ゆえに。わざわざ。ことさらに。ここではわざと。
・遣 怠る。使役の助辞。
・起且僵 起きては倒れ、起きては倒れる。



調張籍 
#1
李杜文章在,光焰萬丈長。不知群兒愚,那用故謗傷。
蚍蜉撼大樹,可笑不自量。伊我生其後,舉頸遙相望。
夜夢多見之,晝思反微茫。
李杜 文章在り、光焰 万丈長し。
知らず 群児の愚かなる、那にを用ってか故さらに謗傷する。
蚍蜉 大樹を撼かす、笑うべし 自ずから量らざるを。
伊れ我れ其の後に生まれて、頸を挙げて遙かに相い望む。
夜るには夢に多くこれを見るも、昼に思えば反って微茫たり。

#2
徒觀斧鑿痕,不矚治水航。想當施手時,巨刃磨天揚。
垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。惟此兩夫子,家居率荒涼。
帝欲長吟哦,故遣起且僵。

徒【いたずら】に斧鑿【ふさく】の痕【あと】を觀て,治水の航を矚【み】ず。
想うに手を施す時に當って,巨刃は揚げるをして天を磨る。
垠崖【ぎんがい】劃【かく】として崩豁【ほうかつ】たり,乾坤【けんこん】雷硠【らいろう】を擺【ふる】う。
惟れ此の兩の夫子,家居率【おおむ】ね荒涼たり。
帝長く吟哦【ぎんが】せしめんと欲し,故【こと】さらに起ち且つ僵【たお】れ遣【し】む。

調張籍 韓退之(韓愈)詩<112-1>Ⅱ中唐詩548 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1758

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調張籍 韓退之(韓愈)詩<112-1>Ⅱ中唐詩548 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1758

調張籍
李杜文章在,光焰萬丈長。不知群兒愚,那用故謗傷。蚍蜉撼大樹,可笑不自量。伊我生其後,舉頸遙相望。
夜夢多見之,晝思反微茫。
徒觀斧鑿痕,不矚治水航。想當施手時,巨刃磨天揚。垠崖劃崩豁,乾坤擺雷硠。惟此兩夫子,家居率荒涼。帝欲長吟哦,故遣起且僵。
剪翎送籠中,使看百鳥翔。平生千萬篇,金薤垂琳琅。仙官敕六丁,雷電下取將。流落人間者,太山一毫芒。
我願生兩翅,捕逐出八荒。
精誠忽交通,百怪入我腸。刺手拔鯨牙,舉瓢酌天漿。騰身跨汗漫,不著織女襄。顧語地上友,經營無太忙。乞君飛霞佩,與我高頡頏。


813年元和八年、韓愈は四十六歳であったの作。長い詩なので、五聯ごとに段を分けて下し文、訳註していく。


調張籍 #1
李杜文章在,光焰萬丈長。
李白と杜甫はその文学が厳然ひかりと存在している、そのかがやく焔は万丈の長さにも及んでいるものである。
不知群兒愚,那用故謗傷。
それにどういうわけか私にはわからないが幼稚な子供のような愚かな者たちがいることだ。それはなぜわざわざ彼らを誹謗や中傷したりするのだろう。
蚍蜉撼大樹,可笑不自量。
大蟻かもしれないが荘厳な大木をゆりうごかそうとしているのだ、そんな身の程知らずなことは笑ってやることしかないだろう。
伊我生其後,舉頸遙相望。
このわたしは李白杜甫の後に生まれているのであるが、首をのばしてはるか昔まで数多の文学者たちを望んでみる。
夜夢多見之,晝思反微茫。

過去を振り返って夜、夢に出るほどの詩人は李白杜甫を多く見るのであるが、昼に今の文壇のことを評価すると此れと言って評価できる詩人はいないのである。

張籍を調る
李杜 文章在り、光焰 万丈長し。
知らず 群児の愚かなる、那にを用ってか故さらに謗傷する。
蚍蜉 大樹を撼かす、笑うべし 自ずから量らざるを。
伊れ我れ其の後に生まれて、頸を挙げて遙かに相い望む。
夜るには夢に多くこれを見るも、昼に思えば反って微茫たり。


『調張籍』 現代語訳と訳註
(本文)
調張籍 #1
李杜文章在,光焰萬丈長。不知群兒愚,那用故謗傷。
蚍蜉撼大樹,可笑不自量。伊我生其後,舉頸遙相望。
夜夢多見之,晝思反微茫。


(下し文) 張籍を調る #1
李杜 文章在り、光焰 万丈長し。
知らず 群児の愚かなる、那にを用ってか故さらに謗傷する。
蚍蜉 大樹を撼かす、笑うべし 自ずから量らざるを。
伊れ我れ其の後に生まれて、頸を挙げて遙かに相い望む。
夜るには夢に多くこれを見るも、昼に思えば反って微茫たり。


(現代語訳)
李白と杜甫はその文学が厳然ひかりと存在している、そのかがやく焔は万丈の長さにも及んでいるものである。
それにどういうわけか私にはわからないが幼稚な子供のような愚かな者たちがいることだ。それはなぜわざわざ彼らを誹謗や中傷したりするのだろう。
大蟻かもしれないが荘厳な大木をゆりうごかそうとしているのだ、そんな身の程知らずなことは笑ってやることしかないだろう。
このわたしは李白杜甫の後に生まれているのであるが、首をのばしてはるか昔まで数多の文学者たちを望んでみる。
過去を振り返って夜、夢に出るほどの詩人は李白杜甫を多く見るのであるが、昼に今の文壇のことを評価すると此れと言って評価できる詩人はいないのである。


(訳注)
調張籍 #1
調張籍 調は、からかう。張籍にたわむれて作ったしである。張籍は、字は文昌。韓愈の弟子で、古体詩、特に楽府にすぐれていた。官が水部員外郎を経て、国子司業にまでなったので、張水部、あるいは張司業と呼ばれる。韓愈は、張籍の地方試験のときの試験委員であったし、のち、韓愈が国子祭酒(国立大学学長)であったとき、張籍を推薦(『薦士』)して国子博士(教授)にしている。この詩の「不知群兒愚,那用故謗傷。」(知らず群児の愚かなる、那にを用ってか故さらに謗傷する。)の句が、当時有名な文学者で白居易の親友なる元稹(779-831年)が、李白杜甫を評したのに対して発したものとすれば、元稹の李杜に対する評論をふくむ「杜(甫)君墓係銘」は、813年元和八年の作であるから、それ以後、あるいは直後に、作られたものになる。813年元和八年、韓愈は四十六歳であった。長い詩であるから、五聯ごとに段を分けることにする。


李杜文章在,光焰萬丈長。
李白と杜甫はその文学が厳然ひかりと存在している、そのかがやく焔は万丈の長さにも及んでいるものである。
李杜 李白(701一762年)と杜甫(712―770年)。中国最大の二人の詩人。韓愈はしばしばこの二詩人について言及している。
『酔留東野』「昔年因讀李白杜甫詩,長恨二人不相從。」
酔留東野  韓退之(韓愈)詩<77-#1>Ⅱ中唐詩441 紀頌之の漢詩ブログ1402

『石鼓歌』「張生手持石鼓文,勸我試作石鼓歌。少陵無人謫仙死,才薄將奈石鼓何。」 (張生 手に石鼓の文を持し、我に勧めて 石鼓の歌を 試作せしむ。少陵に人無く謫仙【たくせん】死せり、才薄きに 將た石鼓を奈何せむ。)
石鼓歌 韓愈 韓退之(韓愈)詩<97-#1>Ⅱ中唐詩522 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1654

・在 はっきりと存在している。
・光焰 かがやくほのお。中国詩全般を見て全く次元の違う李杜であることは現代の評価にいたるまで変わりはしない。


不知群兒愚,那用故謗傷。
それにどういうわけか私にはわからないが幼稚な子供のような愚かな者たちがいることだ。それはなぜわざわざ彼らを誹謗や中傷したりするのだろう。
・不知群児愚 幼稚な子供のような愚かな者たちがいる。不知は、その理由が分からぬとしで、いぶかり、なじることば。群児の児は、人を軽く見たいい方。四鹿駢儷文から「詞」を提唱するものや、平易な語を使って子供にも分かる詩を作ろうとしたもの、律詩と絶句ばかり作った連中ということ。その詩人たちが李白と杜甫を間違った評価していることをいうのである。
・那用 どうして。何以と同じ意味。疑問のことば。
・故 わざと。むりに文句をつけて。
・謗傷 誹謗中傷。そしりきずつける。元稹は、「杜君墓係銘」で、杜甫を称讃して、李白を一段低いものとしたが、そのことをいうのであるとされる。李白は儒家から見ると道教的な部分を感じるために低く見た。杜甫については、自己の事を細やかに表現しすぎる、売文、頼みごと、お礼などを詩にしているため賤しいとされたことを云っている。韓愈の時代から数十年経過すると杜甫の評価はがぜん高くなる。


蚍蜉撼大樹,可笑不自量。
大蟻かもしれないが荘厳な大木をゆりうごかそうとしているのだ、そんな身の程知らずなことは笑ってやることしかないだろう。
・蚍蜉 大蟻。
・撼 ゆりうごかす。
・不自量 自分で自分の能力をはからない。自分の身の程を知らない。
 

伊我生其後,舉頸遙相望。
このわたしは李白杜甫の後に生まれているのであるが、首をのばしてはるか昔まで数多の文学者たちを望んでみる。
 これ、この。句のはじめに来る調子を整えることば。


夜夢多見之,晝思反微茫。
過去を振り返って夜、夢に出るほどの詩人は李白杜甫を多く見るのであるが、昼に今の文壇のことを評価すると此れと言って評価できる詩人はいないのである。
 句と句とが逆接することを示すことば。夜は過去のことで、よく夢を見る(李白と杜甫)のに、昼は現実のことで、韓愈の時代の文壇の詩人たちを云う。特に元稹の身の程知らずというのをここで受けている。この時代中唐期の詩人は最も多くの詩人を輩出している。大暦の十才子、孟浩然・王維を受け継ぐグループ、白居易・元稹のグループ、楽府を受け継ぎ詞の分野を開くグループ、韓愈たちのグループと多岐にわたったことをいう。中唐文学はそういった意味でも面白い時代である。
徴茫 ぼんやりとはっきりせぬさま。

秋懐詩十一首(10) 韓退之(韓愈)詩<110>Ⅱ中唐詩547 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1754

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女性詩人    http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html
孟郊詩          http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html
李商隠詩   http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html




秋懐詩十一首(10) 韓退之(韓愈)詩<110>Ⅱ中唐詩547 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1754


秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。

(十)   
暮暗來客去,群囂各收聲。
日が暮れて暗くなって来客は去って行く、そうして、さまざまのさわがしさはそれぞれの者たちが声をひそめることで収まっていく。
悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
ゆったりとした夜るのしじまの中で横になるのであるが、そうしてみると道理の微妙なところによく通じている秋の澄明・聡明さを心に抱いているのである。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。
世のわずらいがふと思いのうちに入りこんでくるし、外部的な憂れいがかくて心のおく底を侵して来るのである。
強懷張不滿,弱念缺已盈。
強く思う気持ちになっても緊張感は満ちて来ず、弱い思いがなくなったと思うともういっぱいになっている。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。
ごたごたしたことをいって言葉の落とし穴におちることを避け、とりとめのないうちにも心の中の兵隊の武器にさわってはっとするのである。
敗虞千金棄,得比寸草榮。
失敗には千金の宝もすてることになるのがつきものだと気にかかり、成功したとしても一寸の短い草の花がさきほこったとしても目立たないのである。
知恥足為勇,晏然誰汝令。

しかし、恥じを知ることはそれこそが十分に勇者というものなのだ、だからおちついていることがいい、そうすれば、誰もその人に命令するものはないというものだ。
(十)   
暮暗に來客去り,群囂【ぐんがく】各の聲を收む。
悠悠として宵の寂けきに偃し,亹亹【びび】として秋明を抱く。
世累【せるい】忽として慮に進み,外憂【がいゆう】遂に誠を侵す。
懷を強くして張れど滿たされず,念を弱くして缺けれど已に盈ちたり。
詰屈【きつくつ】として語阱【ごせい】を避け,冥茫【めいぼう】として心兵に觸【ふ】る。
敗れて虞う 千金を棄てむことを,比れを得るは寸草の榮。
恥を知るは勇を為すに足れり,晏然たり 誰か汝を令せん。

nanda019

『秋懷詩十一首』(十) 現代語訳と訳註
(本文)
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。


(下し文)
(十)
   
暮暗に來客去り,群囂【ぐんがく】各の聲を收む。
悠悠として宵の寂けきに偃し,亹亹【びび】として秋明を抱く。
世累【せるい】忽として慮に進み,外憂【がいゆう】遂に誠を侵す。
懷を強くして張れど滿たされず,念を弱くして缺けれど已に盈ちたり。
詰屈【きつくつ】として語阱【ごせい】を避け,冥茫【めいぼう】として心兵に觸【ふ】る。
敗れて虞う 千金を棄てむことを,比れを得るは寸草の榮。
恥を知るは勇を為すに足れり,晏然たり 誰か汝を令せん。


(現代語訳)
日が暮れて暗くなって来客は去って行く、そうして、さまざまのさわがしさはそれぞれの者たちが声をひそめることで収まっていく。
ゆったりとした夜るのしじまの中で横になるのであるが、そうしてみると道理の微妙なところによく通じている秋の澄明・聡明さを心に抱いているのである。
世のわずらいがふと思いのうちに入りこんでくるし、外部的な憂れいがかくて心のおく底を侵して来るのである。
強く思う気持ちになっても緊張感は満ちて来ず、弱い思いがなくなったと思うともういっぱいになっている。
ごたごたしたことをいって言葉の落とし穴におちることを避け、とりとめのないうちにも心の中の兵隊の武器にさわってはっとするのである。
失敗には千金の宝もすてることになるのがつきものだと気にかかり、成功したとしても一寸の短い草の花がさきほこったとしても目立たないのである。
しかし、恥じを知ることはそれこそが十分に勇者というものなのだ、だからおちついていることがいい、そうすれば、誰もその人に命令するものはないというものだ。


(訳注) 10   
暮暗來客去,群囂各收聲。

日が暮れて暗くなって来客は去って行く、そうして、さまざまのさわがしさはそれぞれの者たちが声をひそめることで収まっていく。
・群囂 もろもろのさわがしいもの音。


悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
ゆったりとした夜るのしじまの中で横になるのであるが、そうしてみると道理の微妙なところによく通じている秋の澄明・聡明さを心に抱いているのである。
・偃 よこになる。
・宵寂 宵は夜る。夜の静けさ。
・亹亹 道理の微妙なところによく通じているさま。
・秋明 秋の性質として清々しさと澄み切った空気澄明・聡明の明である。秋の澄明・聡明さ。


世累忽進慮,外憂遂侵誠。
世のわずらいがふと思いのうちに入りこんでくるし、外部的な憂れいがかくて心のおく底を侵して来るのである。
・世累 世間のわずらいこと。
・進慮 心の中に侵入する。
・外憂 外部的な愁い。
・侵誠 素直な心に侵入してくること。


強懷張不滿,弱念缺已盈。
強く思う気持ちになっても緊張感は満ちて来ず、弱い思いがなくなったと思うともういっぱいになっている。
・強懷 強く思う気持ち。
・張 緊張させようとする。


詰屈避語阱,冥茫觸心兵。
ごたごたしたことをいって言葉の落とし穴におちることを避け、とりとめのないうちにも心の中の兵隊の武器にさわってはっとするのである
・詰屈 ぎくしゃくとまがりくねっているさま。
・語阱 言葉の落とし穴。
・冥茫 ぼんやりとりとめなく広いさま。
心兵 兵は、武器。心の刃。


敗虞千金棄,得比寸草榮。
失敗には千金の宝もすてることになるのがつきものだと気にかかり、成功したとしても一寸の短い草の花がさきほこったとしても目立たないのである。
・敗虞千金弄 危険にぶつかれば、本質的でないものは、一見貴重に見えるものでも棄てさらねはならぬ。『荘子』山木篇、「林回棄千金之璧,負赤子而趨。或曰:‘為其布與?赤子之布寡矣;為其累與?赤子之累多矣。棄千金之璧,負赤子而趨,何也?’林回曰:‘彼以利合,此以天屬也。’夫以利合者,迫窮齷己.君子之交淡若水,小人之交甘若醴。君子淡以親,小人甘以絕。彼無故以合者,則無故以離。」
「林回、千金の壁を棄て、赤子を負ひて趨る。或人目く「……何ぞや」林回目く「彼は利を以て合ふ。此は天を以て属せり。夫れ利を以て合ふ者は窮禍患害に迫って相乗つ。天を以て属する者は窮禍患害に迫って相収む。……且つ君子の交は淡くして水の若し、小人の交は甘くして酸の若し。君子は淡くして以て親し。小人は甘くして以て絶ゆ。彼の故無くして以て合ふ者は則ち故無くして以て離る」と見える。
・寸草栄 栄は、草のはなが咲き誇る。


知恥足為勇,晏然誰汝令。
しかし、恥じを知ることはそれこそが十分に勇者というものなのだ、だからおちついていることがいい、そうすれば、誰もその人に命令するものはないというものだ。
・知恥 『礼記』の中庸に、「恥を知るは勇に近し」 の語がみえる。
・晏然 やすらぐさま。

秋懐詩十一首(9) 韓退之(韓愈)詩<109>Ⅱ中唐詩546 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1750

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秋懐詩十一首(9) 韓退之(韓愈)詩<109>Ⅱ中唐詩546 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1750



秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。


秋懷詩十一首 之九
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。
霜が降り秋風は冷たくあれだけ茂っていた梧桐の木々を侵してくる、たくさんの葉は木にくっついたままか黄葉し、乾燥して枯れてきはじめる。
空階一片下,琤若摧琅玕。
誰もいなくなったきざはしの下に一片の短冊のように舞い落ちる、すると、ちりんと玉があたって鳴る音が静寂の中ではまるで青々とした美しい竹を割裂くような響きに聞こえてくる。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。
このことは夜の気配がなくなっていることをいうのであり、月の神がその團扇であった姿を半欠けに落とされたことのように思われるのだ。
青冥無依倚,飛轍危難安。
もはや深夜の空には頼りにできるようなところがなくなり、そのすすんで飛び行く軌道は危うくて安定しないのではないだろうか。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。
そう思うと、思わずすっと立ち上がり、出入りする扉を見つめて、入り口の大黒柱に寄りかかり長いあいだはらはらと涙を流すのである。
憂愁費晷景,日月如跳丸。
これまでの愁いと先の心配事は日光も日陰もあっという間に過ぎ去って行き、太陽と月はお手玉のようにかわるがわる空をよぎって行く。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。

たとえ迷ったとしても正しい道に復帰しょうとするならそれは遠いはるかな計画ではないのだ。そのためにはわたしは私の弟子たちに馬鹿げたことに左右されるなと私の勉強の塾でとどまってもっと勉強をすることだと思う。

(九)
霜風【そうふう】梧桐【こどう】を侵【おか】し、衆葉 樹に著きて乾く。
空なる階【きざはし】に一片下り、琤【そう】として琅玕【りょうかん】を摧【くだ】くが若し。
謂【おも】えらく是れ夜気の滅えて、望舒【ぼうじょ】其の団を霣【お】とせるかと。
青冥に依り倚ること無く、飛轍【ひてつ】危うして安んじ難かるらし。
驚き起きて戸を出でて視て、楹【えい】に倚りて久しく汍瀾【がんらん】たり。
憂愁 晷景【きけい】を費し、日月 跳丸【ちょうがん】の如し。
迷復【めいふく】遠きを計らず、君が爲に塵鞍【じんあん】を駐【とど】めむ。

moon5411

『秋懷詩十一首』(九) 現代語訳と訳註
(本文)

霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。


(下し文)
霜風【そうふう】梧桐【こどう】を侵【おか】し、衆葉 樹に著きて乾く。
空なる階【きざはし】に一片下り、琤【そう】として琅玕【りょうかん】を摧【くだ】くが若し。
謂【おも】えらく是れ夜気の滅えて、望舒【ぼうじょ】其の団を霣【お】とせるかと。
青冥に依り倚ること無く、飛轍【ひてつ】危うして安んじ難かるらし。
驚き起きて戸を出でて視て、楹【えい】に倚りて久しく汍瀾【がんらん】たり。
憂愁 晷景【きけい】を費し、日月 跳丸【ちょうがん】の如し。
迷復【めいふく】遠きを計らず、君が爲に塵鞍【じんあん】を駐【とど】めむ。


(現代語訳)
霜が降り秋風は冷たくあれだけ茂っていた梧桐の木々を侵してくる、たくさんの葉は木にくっついたままか黄葉し、乾燥して枯れてきはじめる。
誰もいなくなったきざはしの下に一片の短冊のように舞い落ちる、すると、ちりんと玉があたって鳴る音が静寂の中ではまるで青々とした美しい竹を割裂くような響きに聞こえてくる。
のことは夜の気配がなくなっていることをいうのであり、月の神がその團扇であった姿を半欠けに落とされたことのように思われるのだ。
もはや深夜の空には頼りにできるようなところがなくなり、そのすすんで飛び行く軌道は危うくて安定しないのではないだろうか。
そう思うと、思わずすっと立ち上がり、出入りする扉を見つめて、入り口の大黒柱に寄りかかり長いあいだはらはらと涙を流すのである。
これまでの愁いと先の心配事は日光も日陰もあっという間に過ぎ去って行き、太陽と月はお手玉のようにかわるがわる空をよぎって行く。
たとえ迷ったとしても正しい道に復帰しょうとするならそれは遠いはるかな計画ではないのだ。そのためにはわたしは私の弟子たちに馬鹿げたことに左右されるなと私の勉強の塾でとどまってもっと勉強をすることだと思う。


(訳注)
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。
霜が降り秋風は冷たくあれだけ茂っていた梧桐の木々を侵してくる、たくさんの葉は木にくっついたままか黄葉し、乾燥して枯れてきはじめる。
・霜風 霜の気を含んだ風。
梧桐 アオギリ科の落葉高木。鳳凰は梧桐の葉が茂るところにしか棲まない。月に繁る樹木。玄宗と楊貴妃の物語、悲恋を象徴する樹木。崑崙山に繁る。


空階一片下,琤若摧琅玕。
誰もいなくなったきざはしの下に一片の短冊のように舞い落ちる、すると、ちりんと玉があたって鳴る音が静寂の中ではまるで青々とした美しい竹を割裂くような響きに聞こえてくる。
・琤 玉のあたって鳴る音。
・琅玕 1 暗緑色または青碧(せいへき)色の半透明の硬玉。また、美しいもののたとえ。2 《色が1に似るところから》青々とした美しい竹。


謂是夜氣滅,望舒霣其團。
このことは夜の気配がなくなっていることをいうのであり、月の神がその團扇であった姿を半欠けに落とされたことのように思われるのだ。
夜気 月明かりが薄れてきて、生物が次第に休養を得て再び元気を獲得することのできる暗い夜をいう。冬も春に目を出すための休養を云う。孟子にあることば。
・霣 月影の落ちること。
・団 團扇の月がかけてくること。仲秋から次第に月がかけてきて夜の明かりが次第に暗くなることを云う。


青冥無依倚,飛轍危難安。
もはや深夜の空には頼りにできるようなところがなくなり、そのすすんで飛び行く軌道は危うくて安定しないのではないだろうか。
・青冥青ぞら。
・飛轍 空中を飛ぶ月の軌道。


驚起出戶視,倚楹久汍瀾。
そう思うと、思わずすっと立ち上がり、出入りする扉を見つめて、入り口の大黒柱に寄りかかり長いあいだはらはらと涙を流すのである。
・楹 前の方の円い柱。
汍瀾 はらはら流すさま。


憂愁費晷景,日月如跳丸。
これまでの愁いと先の心配事は日光も日陰もあっという間に過ぎ去って行き、太陽と月はお手玉のようにかわるがわる空をよぎって行く。
・晷景 晷は日光。景も光のこと。
・跳丸 昔の曲芸の一首。お手玉のように丸いたままたは剣をかわるがわる投げるもののようである。


迷複不計遠,為君駐塵鞍。
たとえ迷ったとしても正しい道に復帰しょうとするならそれは遠いはるかな計画ではないのだ。そのためにはわたしは私の弟子たちに馬鹿げたことに左右されるなと私の勉強の塾でとどまってもっと勉強をすることだと思う。
・迷複  迷いつつ正しきにかえる。『易経』復の卦の語。
不計遠 『易経』の同じ卦に「遠からずして復す」 の語がみえる。
・塵鞍 世の中のつまらないことを大げさに馬で行き来するようなバカげたこと。この時代朝廷内では改革派と守旧派の対立が日常的に行われ、その上一方では宦官が暗躍し、白居易の盟友元稹など謀の上、左遷されている。

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秋懐詩十一首(8) 韓退之(韓愈)詩<108-#2>Ⅱ中唐詩545 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1746



秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。

8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。
くるくると葉を地に落としている、風がおもうままに軒端のさきを走りぬけて行く。
風の吹き叫ぶ声は意志を持っているかのようである、そしてひっくりかえし次々におっかけて行く。
人気のない座敷きをつつむ黄昏どきのことである、わたしは腰かけたままで、ただ、だまってなにもいわない。
召使のわらべが門外からはいって来て、灯をつけてくれてわたしのまん前に進み出て來る。
わたしに問いかけたがわたしは答えない、わたしに食事を持って来たがわたしは食べようとはしないのだ。
#2
退坐西壁下,讀詩盡數編。作者非今士,相去時已千。
其言有感觸,使我複淒酸。顧謂汝童子,置書且安眠。
丈夫屬有念,事業無窮年。
召使のわらべは反対側の西壁の下までひき下がって腰をかけて、その場で数編の詩をおわりまで読んだ。
その詩の作者は今の人ではなく、今からはもう千年もすぎさった時のものだ。
そのことばはわたしの心に感じるものがあり、わたしをまた傷み悲しませる苦い思いのものであった。
わたしはふりかえって「おいわらべの君、書物はやめにしてひとまずゆっくり寝たまえ。」といってやった。
男子たるものとしての考え事をしておる所なのだ、この男の仕事には何年とかいう限りがないもので、終わることのないものなのだ。


8    
卷卷たり地に葉を落し,風に隨いて軒を前に走る。
鳴聲して意有るが若く,顛倒して相い追奔す。
空堂 黃昏の暮れ,我坐して默して言わず。
童子 外より至り,燈を吹いて我が前に當る。
我れに問えども我に應えず,我に饋【すす】むれど我れ餐せず。
#2
退いて西壁の下に坐し,詩を讀んで數編を盡す。
作者 今の士に非ず,相い去ること時已に千なり。
其の言 感じ觸れしむる有りと,我をして複た淒酸たらしむ。
顧りみて謂う汝童子,書を置きて且つ安眠せよ。
丈夫 屬【たまた】ま念有り,事業は窮まる年無し。



DCF00216


『秋懐詩十一首』八 現代語訳と訳註
(本文
) 8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。

#2
退坐西壁下,讀詩盡數編。作者非今士,相去時已千。
其言有感觸,使我複淒酸。顧謂汝童子,置書且安眠。
丈夫屬有念,事業無窮年。


(下し文)
退いて西壁の下に坐し,詩を讀んで數編を盡す。
作者 今の士に非ず,相い去ること時已に千なり。
其の言 感じ觸れしむる有りと,我をして複た淒酸たらしむ。
顧りみて謂う汝童子,書を置きて且つ安眠せよ。
丈夫 屬【たまた】ま念有り,事業は窮まる年無し。


(現代語訳)
召使のわらべは反対側の西壁の下までひき下がって腰をかけて、その場で数編の詩をおわりまで読んだ。
その詩の作者は今の人ではなく、今からはもう千年もすぎさった時のものだ。
そのことばはわたしの心に感じるものがあり、わたしをまた傷み悲しませる苦い思いのものであった。
わたしはふりかえって「おいわらべの君、書物はやめにしてひとまずゆっくり寝たまえ。」といってやった。
男子たるものとしての考え事をしておる所なのだ、この男の仕事には何年とかいう限りがないもので、終わることのないものなのだ。


(訳注) #2
退坐西壁下,讀詩盡數編。
召使のわらべは反対側の西壁の下までひき下がって腰をかけて、その場で数編の詩をおわりまで読んだ。
退坐 自分の席につく。


作者非今士,相去時已千。
その詩の作者は今の人ではなく、今からはもう千年もすぎさった時のものだ。
相去 作者の時代と現在とのへだたり。
 千年。


其言有感觸,使我複淒酸。
そのことばはわたしの心に感じるものがあり、わたしをまた傷み悲しませる苦い思いのものであった。
・感触 感動させる。
・淒酸 にがいおもい.


顧謂汝童子,置書且安眠。
わたしはふりかえって「おいわらべの君、書物はやめにしてひとまずゆっくり寝たまえ。」といってやった。
顧謂 童子をふりかえっていう。このあと、安眠せよ、までが、そのことば。


丈夫屬有念,事業無窮年。
男子たるものとしての考え事をしておる所なのだ、この男の仕事には何年とかいう限りがないもので、終わることのないものなのだ。
・属 たまたまその時。
・事業 仕事。
・窮 おわる。

秋懐詩十一首(8) 韓退之(韓愈)詩<108-#1>Ⅱ中唐詩544 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1742

秋懐詩十一首(8) 韓退之(韓愈)詩<108-#1>Ⅱ中唐詩544 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1742

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秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。

8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。
くるくると葉を地に落としている、風がおもうままに軒端のさきを走りぬけて行く。
鳴聲若有意,顛倒相追奔。
風の吹き叫ぶ声は意志を持っているかのようである、そしてひっくりかえし次々におっかけて行く。
空堂黃昏暮,我坐默不言。
人気のない座敷きをつつむ黄昏どきのことである、わたしは腰かけたままで、ただ、だまってなにもいわない。
童子自外至,吹燈當我前。
召使のわらべが門外からはいって来て、灯をつけてくれてわたしのまん前に進み出て來る。
問我我不應,饋我我不餐。
わたしに問いかけたがわたしは答えない、わたしに食事を持って来たがわたしは食べようとはしないのだ。
#2
退坐西壁下,讀詩盡數編。作者非今士,相去時已千。
其言有感觸,使我複淒酸。顧謂汝童子,置書且安眠。
丈夫屬有念,事業無窮年。

8    
卷卷たり地に葉を落し,風に隨いて軒を前に走る。
鳴聲して意有るが若く,顛倒して相い追奔す。
空堂 黃昏の暮れ,我坐して默して言わず。
童子 外より至り,燈を吹いて我が前に當る。
我れに問えども我に應えず,我に饋【すす】むれど我れ餐せず。

#2
退いて西壁の下に坐し,詩を讀んで數編を盡す。
作者 今の士に非ず,相い去ること時已に千なり。
其の言 感じ觸れしむる有りと,我をして複た淒酸たらしむ。
顧りみて謂う汝童子,書を置きて且つ安眠せよ。
丈夫 屬【たまた】ま念有り,事業は窮まる年無し。


『秋懐詩十一首』八 現代語訳と訳註
(本文)
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。
#2
退坐西壁下,讀詩盡數編。作者非今士,相去時已千。
其言有感觸,使我複淒酸。顧謂汝童子,置書且安眠。
丈夫屬有念,事業無窮年。


(下し文) 8    
卷卷たり地に葉を落し,風に隨いて軒を前に走る。
鳴聲して意有るが若く,顛倒して相い追奔す。
空堂 黃昏の暮れ,我坐して默して言わず。
童子 外より至り,燈を吹いて我が前に當る。
我れに問えども我に應えず,我に饋【すす】むれど我れ餐せず。


(現代語訳)
くるくると葉を地に落としている、風がおもうままに軒端のさきを走りぬけて行く。
風の吹き叫ぶ声は意志を持っているかのようである、そしてひっくりかえし次々におっかけて行く。
人気のない座敷きをつつむ黄昏どきのことである、わたしは腰かけたままで、ただ、だまってなにもいわない。
召使のわらべが門外からはいって来て、灯をつけてくれてわたしのまん前に進み出て來る。
わたしに問いかけたがわたしは答えない、わたしに食事を持って来たがわたしは食べようとはしないのだ。


(訳注) 8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。

くるくると葉を地に落としている、風がおもうままに軒端のさきを走りぬけて行く。
・巻巻 くるくる。
隨風 風のふくままに。
前軒 軒端のさき。


鳴聲若有意,顛倒相追奔。
風の吹き叫ぶ声は意志を持っているかのようである、そしてひっくりかえし次々におっかけて行く。
・鳴声 なる音。
顛倒 ひっくりかえる。
追奔 おいかける。


空堂黃昏暮,我坐默不言。
人気のない座敷きをつつむ黄昏どきのことである、わたしは腰かけたままで、ただ、だまってなにもいわない。
・空堂 人けのない部屋。
・黄嘗 たそがれ。唇は昏と同じ。


童子自外至,吹燈當我前。
召使のわらべが門外からはいって来て、灯をつけてくれてわたしのまん前に進み出て來る。
童子 めしつかい。中国の士人は身の回りの用をたすために、少年や少女を使っていた。
・吹燈 あかりをつけること。
・当 対する。


問我我不應,饋我我不餐。
わたしに問いかけたがわたしは答えない、わたしに食事を持って来たがわたしは食べようとはしないのだ。
・饋 食事をすすめる。


秋懐詩十一首(7) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<107>Ⅱ中唐詩542 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1734


◆◆◆2012年12月26日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆

Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集
古代中国の結婚感、女性感について述べる三国時代の三曹の一人、曹丕魏文帝の詩
至廣陵於馬上作 曹丕(魏文帝) 魏詩<8-#2>古詩源 巻五 女性詩629 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1733
http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67765496.html

Ⅱ.中唐詩・晩唐詩
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
秋懐詩十一首(7) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<107>Ⅱ中唐詩542 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1734
http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-rihakujoseishi/archives/6162341.html

Ⅲ.杜甫詩1000詩集
"●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説 
●理想の地を求めて旅をする
●全詩1/3を掲載済。"
成都(1)浣花渓の草堂(4) 蕭八明府實處覓桃栽 杜甫 <355>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1735 杜甫詩 700- 533
http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-tohoshi/archives/67764563.html

Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集
元和聖徳詩 韓退之(韓愈)詩<80-#15> (12/30) http://kanshi100x100.blog.fc2.com/blog-entry-583.html

Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。
『南歌子七首』(一) 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-30-5-#8 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1736
http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/archives/21534541.html


謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
謝靈運詩 六朝期の山水詩人。この人の詩は上品ですがすがしい男性的な深みのある詩である。後世に多大な影響を残している。

孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html
盛唐初期の詩人であるが謝霊運の詩に傾倒して山水詩人としてとてもきれいな詩を書いている。特に山水画のような病者の中で細やかな部分に動態を感じさせる表現力は素晴らしい。

李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html
古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。

孟郊詩  http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html
「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。

李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


秋懐詩十一首(7) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<107>Ⅱ中唐詩542 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1734


秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。


秋懷詩十一首7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。
秋の夜長はいつまでも夜が明けないが、秋の昼間はとてもすぐに暗くなる。
我無汲汲志,何以有此憾。
わたしにはせっせと励む志を持っていないというのに、どうして夜が長いことなどを云うことが出来ようか。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。
凍えそうな鶏はむなしくすごもりしたままであり、二十日月が気になって何度も望めやる。
有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
琴に徽も絃もそろえ、ととのえられ、ひけばひくほどその音色は淡薄である。
#2
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。

秋懷詩十一首 #1
秋夜は晨となる可からず、秋日は苦だ暗れ易し。
我に汲汲の志無し、何を以てか此の憾有る。
寒雞 空しく棲に在り、缺月【けつげつ】屢【しばし】ば瞰【み】ることを煩はす。
琴有り 徽弦【きげん】を具【そな】ふ、再び鼓いて聴けば愈よ淡し。

#2
古聾は久しく埋滅し、真濫【しんかん】を見るに由無し。
心を低くして時の趨くを逐ひ、苦しみ勉むるも紙だ暫くを能くするのみ。
風に乗る船の一たび縱【はな】てば纜【つな】ぐ可からざるが如き有り。
如かず 文字を覷て、丹鉛もて點勘を事とせむには。
豈に必ずしも贏餘を求めむや、要むる所は石と甔とのみ。

DCF00202

『秋懷詩十一首』 現代語訳と訳註
(本文)
7  #1 
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
#2
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。


(下し文) 7   
秋夜は晨となる可からず、秋日は苦だ暗れ易し。
我に汲汲の志無し、何を以てか此の憾有る。
寒雞 空しく棲に在り、缺月【けつげつ】屢【しばし】ば瞰【み】ることを煩はす。
琴有り 徽弦【きげん】を具【そな】ふ、再び鼓いて聴けば愈よ淡し。


(現代語訳)
秋の夜長はいつまでも夜が明けないが、秋の昼間はとてもすぐに暗くなる。
わたしにはせっせと励む志を持っていないというのに、どうして夜が長いことなどを云うことが出来ようか。
凍えそうな鶏はむなしくすごもりしたままであり、二十日月が気になって何度も望めやる。
琴に徽も絃もそろえ、ととのえられ、ひけばひくほどその音色は淡薄である。


(訳注)
秋夜不可晨,秋日苦易暗。
秋の夜長はいつまでも夜が明けないが、秋の昼間はとてもすぐに暗くなる。
・不可晨 なかなか夜明けとならない。


我無汲汲志,何以有此憾。
わたしにはせっせと励む志を持っていないというのに、どうして夜が長いことなどを云うことが出来ようか。
・汲汲 休まず勉めるさま。せっせせっせというほどの意。
此憾 秋の夜のあけがたく、秋の日のくれやすいこと。つまり勉める時間の少ないこと。


寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。
凍えそうな鶏はむなしくすごもりしたままであり、二十日月が気になって何度も望めやる。
・寒雞 さむそうな姿のにわとり。
・棲 ねぐら。『詩経』王風の君子于役「君子于役、不知其期、曷至哉 雞棲於塒羊牛下來。」(君子役に于【ゆ】く、其の期を知らず、 曷(いつ)か至らんや. 雞 塒(ねぐら)に棲む 日之夕矣 日の夕べ 羊牛下り來り雞は塒に棲り、日は夕べとなり、羊と牛とは下り来る。)の句がみえる。
・欠月 かけた月。満月から次第にかけていく月で別れることの象徴で気になるということから、二十日月をいう。
・煩屢瞰 見たくもないのにしばしは見なければならない。


有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
琴に徽も絃もそろえ、ととのえられ、ひけばひくほどその音色は淡薄である。
・具徽絃 ことじと、こといととを、ちゃんとととのえてある。陶淵明は白木の琴を一張もっていたが、ことじも、いとも、なかった、といわれる。
・鼓 ひく。ことはつま弾く,鼓くという。
・淡 音調が淡薄であることをさす。

秋懐詩十一首(6) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<106>Ⅱ中唐詩541 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1730

秋懐詩十一首 六

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秋懐詩十一首(6) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<106>Ⅱ中唐詩541 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1730


秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。

6秋懷詩十一首 六
今晨不成起,端坐盡日景。
今朝は横になったまま起き上がってもいない。そのあときちんと坐わり直し、日がな一日座り通しである。
蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
やがて虫が鳴いて部屋は暗くひっそりしてくる、そして月がすっと出てくると窓はあかるくなる。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。
目標を失っていて心はかきくれて道にまよったかのようにぼんやりしている、こんな時のとりとめのない考えというものは棘がささったままを我慢しているよりもひどくいためつけられるものだ。
塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
くだらない人間関係の世であるが.人に取り入ることなどする気はない、その代りに詩文、散文を文字に起こすことばかりをやたらにやっている。
尚須勉其頑,王事有朝請。

それでもこれからは自分の世間から外れの考えをつとめておさえねばならないし、天子様の御用事について出仕の義務があることには違いない。
   
今晨【こんしん】起つことを成さず、端坐【たんざ】して日景【じつけい】を尽くす。
虫鳴いて室幽幽【ゆうゆう】たり、月吐いて窗【まど】冏冏【かいかい】たり。
喪しないし懐いは方に迷うが若く、浮【あだ】しき念いは梗【とげ】を含むよりも劇だし。
塵挨【じんあい】伺候【しこう】するに慵【ものう】く、文字 浪【みだり】りに馳騁【ちてい】す
尚お須【すべ】からく其の頑なるを勉むべし、王事には朝請【ちょうせい】有り。



『秋懷詩十一首』 六 現代語訳と訳註
(本文)
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。


(下し文)
今晨【こんしん】起つことを成さず、端坐【たんざ】して日景【じつけい】を尽くす。
虫鳴いて室幽幽【ゆうゆう】たり、月吐いて窗【まど】冏冏【かいかい】たり。
喪しないし懐いは方に迷うが若く、浮【あだ】しき念いは梗【とげ】を含むよりも劇だし。
塵挨【じんあい】伺候【しこう】するに慵【ものう】く、文字 浪【みだり】りに馳騁【ちてい】す
尚お須【すべ】からく其の頑なるを勉むべし、王事には朝請【ちょうせい】有り。


(現代語訳)
今朝は横になったまま起き上がってもいない。そのあときちんと坐わり直し、日がな一日座り通しである。
やがて虫が鳴いて部屋は暗くひっそりしてくる、そして月がすっと出てくると窓はあかるくなる。
目標を失っていて心はかきくれて道にまよったかのようにぼんやりしている、こんな時のとりとめのない考えというものは棘がささったままを我慢しているよりもひどくいためつけられるものだ。
くだらない人間関係の世であるが.人に取り入ることなどする気はない、その代りに詩文、散文を文字に起こすことばかりをやたらにやっている。
それでもこれからは自分の世間から外れの考えをつとめておさえねばならないし、天子様の御用事について出仕の義務があることには違いない。


(訳注) 6   
今晨不成起,端坐盡日景。
今朝は横になったまま起き上がってもいない。そのあときちんと坐わり直し、日がな一日座り通しである。
・今晨 けさ。晨は、朝。
・成起 ちゃんと起きてしまう。成は、ものごとの完成する意。
・端坐 きちんとすわる。端は、端正。
・日景 景は影と同じ。ここでは光りの意。日景とは日光であり、昼のあいだのことをさす。


蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
やがて虫が鳴いて部屋は暗くひっそりしてくる、そして月がすっと出てくると窓はあかるくなる。
・幽幽 人けなくくらいさま。くらくひっそりしている。
・月吐 月が山からぬっと出ること。杜甫大歴2年の作で五言律詩『月』の詩にも、「四更山吐月,. 殘夜水明樓。 塵匣元開鏡,. 風簾自上鉤。」(四更山は月を吐き、残夜水は桟に明きらかなり。)とある。
・冏冏 煌煌、烔烔と同じく、光りのあきらかな形容。


喪懷若迷方,浮念劇含梗。
目標を失っていて心はかきくれて道にまよったかのようにぼんやりしている、こんな時のとりとめのない考えというものは棘がささったままを我慢しているよりもひどくいためつけられるものだ。
・喪懐 心を失しなう。ぼんやりする。
・迷方 どうしてよいか分からず方向に迷うこと。
・浮念 とりとめのない考え。
・含梗 梗は、草木のとげ。したがって含梗は、のどに何かがひかかっていること。とげが刺さって抜けていない状況。


塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
くだらない人間関係の世であるが.人に取り入ることなどする気はない、その代りに詩文、散文を文字に起こすことばかりをやたらにやっている。
・塵埃 ちりとほこり。世間のいろいろうるさいことがらを象徴する。くだらない人間関係。
・伺候 御機嫌うかがいをする。
・浪 むやみに。やたらに。
・馳騁 はやく走る。騁は逓。


尚須勉其頑,王事有朝請。
それでもこれからは自分の世間から外れの考えをつとめておさえねばならないし、天子様の御用事について出仕の義務があることには違いない。
・頑 頑固者。ものの道理にくらく片意地をはること。
・朝請 天子に奉仕すること、すなわち官吏として出勤すること。元来、地方の諸侯が天子の御撥嫌うかがいに都へ来ることで、春のときは朝といい、秋のときは請といった。


秋懐詩十一首(5) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<105>Ⅱ中唐詩540 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1726

Ⅱ.中唐詩・晩唐詩
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
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秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。

6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。


5 秋懷詩十一首 五  
離離掛空悲,戚戚抱虛警。
秋が深まると離離としていたいたしくもとりとめない悲しみに歎き、気がかりなことや警戒すべき理由のないのにびくびくするものである。
露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
いつもより高かく感じる色づいた秋の木樹に露はこぼれおち、虫は冷え込が強く永い夜を、弔意を示すかのように鳴いている。
斂退就新懦,趨營悼前猛。
さっと退いては新しい臆病な態度をとってしまうし、こんどはあくせく走りまわったりする以前のむこうみずを悲しく思うのである。
歸愚識夷塗,汲古得修綆。
愚かさに帰結し、そこに平穏な道のあることを認識する、それはむかしのことを汲み、量るためにふさわしく長いつるべも手に入れたということだ。
浮猶有恥,味薄真自幸。
そして、実が伴わず名前だけひとりあるきすることは、なお恥じなければいけないことであり、世俗への関心(欲得)の度合いがうすくすることこそほんとうに自分を幸福するものなのだということだ。
庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
どうか願うこととしてはこのような悔いることとか、咎めだてすることはすべて忘れて、ここをそのまま隠棲の地か、隠れ家にしたいと思うのである。
   
離離【りり】として空悲【くうひ】を掛け、戚戚【せきせき】として虛警【きょけい】を抱く。
露は秋樹【しゅうじゅ】の高きを泫【うる】おし、虫は寒夜の永きを弔う。
斂退【れんたい】して新懦【しんだ】に就き、趨営【すうえい】して前猛【ぜんもう】を悼【いた】む。
愚に帰って夷塗【いと】を識り、古を汲んで修綆【しゅうこう】を得たり。
名の浮しきは猶お恥ずること有り、味の薄きは真に自ずから幸いなるなり。
庶幾【こいねが】わくは悔尤【かいゆう】を遺【わす】れて、即ち此こに是れ幽屏【ゆうへい】せん。


DCF00205

『秋懷詩十一首』五 現代語訳と訳註
(本文)
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。


(下し文)
離離【りり】として空悲【くうひ】を掛け、戚戚【せきせき】として虛警【きょけい】を抱く。
露は秋樹【しゅうじゅ】の高きを泫【うる】おし、虫は寒夜の永きを弔う。
斂退【れんたい】して新懦【しんだ】に就き、趨営【すうえい】して前猛【ぜんもう】を悼【いた】む。
愚に帰って夷塗【いと】を識り、古を汲んで修綆【しゅうこう】を得たり。
名の浮しきは猶お恥ずること有り、味の薄きは真に自ずから幸いなるなり。
庶幾【こいねが】わくは悔尤【かいゆう】を遺【わす】れて、即ち此こに是れ幽屏【ゆうへい】せん。


(現代語訳)
秋が深まると離離としていたいたしくもとりとめない悲しみに歎き、気がかりなことや警戒すべき理由のないのにびくびくするものである。
いつもより高かく感じる色づいた秋の木樹に露はこぼれおち、虫は冷え込が強く永い夜を、弔意を示すかのように鳴いている。
さっと退いては新しい臆病な態度をとってしまうし、こんどはあくせく走りまわったりする以前のむこうみずを悲しく思うのである。
愚かさに帰結し、そこに平穏な道のあることを認識する、それはむかしのことを汲み、量るためにふさわしく長いつるべも手に入れたということだ。
そして、実が伴わず名前だけひとりあるきすることは、なお恥じなければいけないことであり、世俗への関心(欲得)の度合いがうすくすることこそほんとうに自分を幸福するものなのだということだ。
どうか願うこととしてはこのような悔いることとか、咎めだてすることはすべて忘れて、ここをそのまま隠棲の地か、隠れ家にしたいと思うのである。


(訳注) 5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。
秋が深まると離離としていたいたしくもとりとめない悲しみに歎き、気がかりなことや警戒すべき理由のないのにびくびくするものである。
・離離 心のきれぎれになるさま。
・掛 心にかける。掛心・掛念(心配する)の掛である。
・空悲 あてどない悲しみ。はっきり悲しむべき対象もないのに何となしに悲しいこと。
・戚戚 気がかりなさま。
・虚警 いわれのない警戒心。警戒すべき理由のないのにびくびくすること。


露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
いつもより高かく感じる色づいた秋の木樹に露はこぼれおち、虫は冷え込が強く永い夜を、弔意を示すかのように鳴いている。
・泫 涙を流すさま。ここでは、蕗が下りていることをいう。謝靈運『從斤竹澗越嶺溪行詩』「猿鳴誠知曙。穀幽光未顯。巌下雲方合。花上露猶泫。逶迤傍隈隩。迢遞陟陘峴。」とみえる。


斂退就新懦,趨營悼前猛。
さっと退いては新しい臆病な態度をとってしまうし、こんどはあくせく走りまわったりする以前のむこうみずを悲しく思うのである。
斂退 ひっこみ退く。さっと退く。
新儒 新しい臆病な態度、自分の態度についていう。
趨営 あくせく走りまわる。
前猛 以前の無鉄砲なはげしさ。新儒とともに自分についていう。


歸愚識夷塗,汲古得修綆。
愚かさに帰結し、そこに平穏な道のあることを認識する、それはむかしのことを汲み、量るためにふさわしく長いつるべも手に入れたということだ。
・夷塗 平らかなみち。塗は途と同じ。
・修綆 修はながい。綆はつるべのなわ。古代のことを知るに適当な方法をさす。


名浮猶有恥,味薄真自幸。
そして、実が伴わず名前だけひとりあるきすることは、なお恥じなければいけないことであり、世俗への関心(欲得)の度合いがうすくすることこそほんとうに自分を幸福するものなのだということだ。
・名浮 名だけがうわすべりして。実が伴わず名前だけ一人歩きする。
・味薄 味は、世味。世俗への関心(欲得)の度合い。


庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
どうか願うこととしてはこのような悔いることとか、咎めだてすることはすべて忘れて、ここをそのまま隠棲の地か、隠れ家にしたいと思うのである。
・悔尤 後悔やとがめ。悔は、自分の心で悪かったと悔いること。尤は、人が自分の悪い所をとがめること。
・幽屏 人から見えないところにかくれしりぞく。幽は隠棲する。屏は隠れ家にする。

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1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
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2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。


『秋懐詩十一首』(4)
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。
秋のけはいが日ましに心に刺されたようにいたみ悲しくなるという、秋の空は日々に高くすみきって行く。
上無枝上蜩,下無盤中蠅。
上の方の枝にあれだけ鳴いていたせみももうい無くなって、下には皿に真っ黒になってあれだけ集っていた蠅もい無い。
豈不感時節,耳目去所憎。
どういうわけか時の移り変わりというものにはひどく心をゆすぶられる、耳に聞こえる騒がしい音や目に入ってくるわずらわしいものが嫌でないところへ行きたかったであった。
清曉卷書坐,南山見高棱。
あけがたに書物を読み終えて坐りなおしてみると、終南山はその高い稜線をくっきりとあらわしたのである。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。
終南山のすそのの澄み切った池の水の中では、みずちも凍えて網ですくえるようになっているだろう。
惜哉不得往,豈謂吾無能。
だが惜しいことにわたしは出かけて行くことができないのだ、それというのもわたしに蚊を捕える能力がないのだといってもどうしようもないことだ。

秋氣 日びに惻惻とし,秋空 日びに淩淩たり。
上に 枝上の蜩【せみ】無く,下に 盤中の蠅【はえ】無し。
豈に時節に感ぜざらん,耳目して憎き所を去らんとす。
清曉【せいぎょう】書を卷いて坐するに,南山 高棱を見【あらわ】す。
其下 澄湫【ちょうしゅう】の水,蛟 寒に罾すべきもの有り。
惜しい哉 往くことを得ず,豈に吾れ能くする無しと謂はんや。


『秋懐詩十一首』(4) 現代語訳と訳註
(本文)
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。


(下し文) 4   
秋氣 日びに惻惻とし,秋空 日びに淩淩たり。
上に 枝上の蜩【せみ】無く,下に 盤中の蠅【はえ】無し。
豈に時節に感ぜざらん,耳目して憎き所を去らんとす。
清曉【せいぎょう】書を卷いて坐するに,南山 高棱を見【あらわ】す。
其下 澄湫【ちょうしゅう】の水,蛟 寒に罾すべきもの有り。
惜しい哉 往くことを得ず,豈に吾れ能くする無しと謂はんや。


(現代語訳)
秋のけはいが日ましに心に刺されたようにいたみ悲しくなるという、秋の空は日々に高くすみきって行く。
上の方の枝にあれだけ鳴いていたせみももうい無くなって、下には皿に真っ黒になってあれだけ集っていた蠅もい無い。
どういうわけか時の移り変わりというものにはひどく心をゆすぶられる、耳に聞こえる騒がしい音や目に入ってくるわずらわしいものが嫌でないところへ行きたかったであった。
あけがたに書物を読み終えて坐りなおしてみると、終南山はその高い稜線をくっきりとあらわしたのである。
終南山のすそのの澄み切った池の水の中では、みずちも凍えて網ですくえるようになっているだろう。
だが惜しいことにわたしは出かけて行くことができないのだ、それというのもわたしに蚊を捕える能力がないのだといってもどうしようもないことだ。


(訳注) 4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。

秋のけはいが日ましに心に刺されたようにいたみ悲しくなるという、秋の空は日々に高くすみきって行く。
側側 人にせまるようにはげしく感傷を要させる形容。かなしみいたむさま。側は心に刺されたようにいたみ悲しむこと。
凌凌 高いさま。犯しがたきをもって高く高くすみわたっているさま。


上無枝上蜩,下無盤中蠅。
上の方の枝にあれだけ鳴いていたせみももうい無くなって、下には皿に真っ黒になってあれだけ集っていた蠅もい無い。
・蜩 ひぐらし。ここではひろく夏から秋懸けて泣いていた蝉一般をさす。
・盤中曜 皿にたかるはえ。かつての中国では、皿にたかる蝿は、まっ黒になって、皿の中のものが見えないほどだった。唐の段成式の『酉陽雑爼』に「長安の秋は蝿が多い」といってそのさまをくわしくえがいている。うまいから、毒が盛られていないことで蠅を極端には嫌わなかった。ここでは最も厭なものとされている。


豈不感時節,耳目去所憎。
どういうわけか時の移り変わりというものにはひどく心をゆすぶられる、耳に聞こえる騒がしい音や目に入ってくるわずらわしいものが嫌でないところへ行きたかったであった。
・所憎 憎たらしいもの。やかましい蝉と、うるさい蝿。


清曉卷書坐,南山見高棱。
あけがたに書物を読み終えて坐りなおしてみると、終南山はその高い稜線をくっきりとあらわしたのである。
・巻書 読んでいた巻物の本を、まきおさめる。読書、勉学が終わること。
南山 南の方の山。ここではたぶん長安の南にある終南山。
高稜 高い山かど。終南山の稜線。


其下澄湫水,有蛟寒可罾。
終南山のすそのの澄み切った池の水の中では、みずちも凍えて網ですくえるようになっているだろう。
澄漱水 澄んだ池の水。終南山には炭谷鰍という池があり、そこには竜が住む、といい伝えられた。
 水竜。
 よっであみで捕える。


惜哉不得往,豈謂吾無能。
だが惜しいことにわたしは出かけて行くことができないのだ、それというのもわたしに蚊を捕える能力がないのだといってもどうしようもないことだ。
無能 蚊を捕える能力がない。

秋懐詩十一首(3) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<103>Ⅱ中唐詩538 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1718

◆◆◆2012年12月26日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆  

Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集 
古代中国の結婚感、女性感について述べる三国時代の三曹の一人、曹丕魏文帝の詩 
雑詩二首(一) 曹丕(魏文帝) 魏詩<6-#1>文選 雑詩 上 625 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1717
http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67762520.html


Ⅱ.中唐詩・晩唐詩 
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ 
秋懐詩十一首(3) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<103>Ⅱ中唐詩538 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1718 
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Ⅲ.杜甫詩1000詩集 
"●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説するブログ 
●詩人として生きていくことを決めた杜甫が理想の地を求めてっ旅をする
●人生としては4/5前で、全詩1/3を掲載済。" 
成都(1)浣花渓の草堂(0)  杜甫詩 index 杜甫 <353>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1719 杜甫詩 700- 529
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Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集 
元和聖徳詩 韓退之(韓愈)詩<80-#11> (12/26) 
http://kanshi100x100.blog.fc2.com/blog-entry-579.html
 
Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩 
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。 
『酒泉子』四首(四) 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-24-3-#4 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1720 
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謝靈運詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/1901_shareiun000.html
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秋懐詩十一首(3) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<103>Ⅱ中唐詩538 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1718


秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。

3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。


太行山脈001
3 秋懷詩十一首 其三   
彼時何卒卒,我志何曼曼。
振り返ればあの時間経過は何とあわただしいことなのだろうかと思うし、わたしの志について考えると何とはるばる長く遠いものなのだ。
犀首空好飲,廉頗尚能飯。
故事にある犀首は自分のなすべき仕事が与えられず、閑職のままにおかれていることが不満で酒に気をまぎらせたというし、「史記」廉頗藺相如列伝に見える廉頗は老いてもなお食欲は盛んだといったものだ。
學堂日無事,驅馬適所願。
私も教室で学んでおるには犀首の思いと同じで日々、問題事が無いし、馬を走らせて好き勝手なところへ行こうとねがっているのだ。
茫茫出門路,欲去聊自勸。
門を出て行けば道はひろびろとひろがっているのだが、わたしはこの不愉快な職をやめ隠遁したいと思ったが、まあ何とかはやる気持ちを抑えるように自制することを勧めたのである。
歸還閱書史,文字浩千萬。
そうして自宅に帰ってきて書史の書物をひろげて見返してみると、文字数は途方なものでなんと千万と数えられるものではない。
陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
書物というものは、結局むかしの人のあとをだれもがほかに尋ねて行くということで、書物の中で、つまらぬものとか好なものというのは、貴いお方へ献上しようとするものではないのだ。(勉学は誰かのためにするものではない。)
丈夫意有在,女子乃多怨。
男子はしっかりした意志をもっているということで存在するもので、女子が怨みごとを多くするというのとは違うというものだ。

秋の懷い詩 十一首 其の三   
彼の時何ぞ卒卒たらん,我が志 何ぞ曼曼たらんや。犀首【さいしゅ】空しく好飲【こういん】し,廉頗【れんぱ】尚お能飯【のうはん】す。
堂に學ぶは日びに事無く,馬を驅って願う所に適かん。茫茫たり門を出ずる路,去らんと欲すれぞ聊【いささ】か自ら勸む。
歸還【きかん】して書史を閱【けみ】するに,文字は浩として千萬。
陳跡【ちんせき】は竟に誰か尋ねん,賤嗜【せんし】は貴獻【きけん】に非ず。
丈夫は意有【いゆう】在り,女子は乃ち怨み多し。



『秋懷詩十一首』 其三 現代語訳と訳註
(本文)

彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。


(下し文)
秋の懷い詩 十一首 其の三   
彼の時何ぞ卒卒たらん,我が志 何ぞ曼曼たらんや。犀首【さいしゅ】空しく好飲【こういん】し,廉頗【れんぱ】尚お能飯【のうはん】す。
堂に學ぶは日びに事無く,馬を驅って願う所に適かん。茫茫たり門を出ずる路,去らんと欲すれぞ聊【いささ】か自ら勸む。
歸還【きかん】して書史を閱【けみ】するに,文字は浩として千萬。
陳跡【ちんせき】は竟に誰か尋ねん,賤嗜【せんし】は貴獻【きけん】に非ず。
丈夫は意有【いゆう】在り,女子は乃ち怨み多し。


(現代語訳)
振り返ればあの時間経過は何とあわただしいことなのだろうかと思うし、わたしの志について考えると何とはるばる長く遠いものなのだ。
故事にある犀首は自分のなすべき仕事が与えられず、閑職のままにおかれていることが不満で酒に気をまぎらせたというし、「史記」廉頗藺相如列伝に見える廉頗は老いてもなお食欲は盛んだといったものだ。
私も教室で学んでおるには犀首の思いと同じで日々、問題事が無いし、馬を走らせて好き勝手なところへ行こうとねがっているのだ。
門を出て行けば道はひろびろとひろがっているのだが、わたしはこの不愉快な職をやめ隠遁したいと思ったが、まあ何とかはやる気持ちを抑えるように自制することを勧めたのである。
そうして自宅に帰ってきて書史の書物をひろげて見返してみると、文字数は途方なものでなんと千万と数えられるものではない。
書物というものは、結局むかしの人のあとをだれもがほかに尋ねて行くということで、書物の中で、つまらぬものとか好なものというのは、貴いお方へ献上しようとするものではないのだ。(勉学は誰かのためにするものではない。)
男子はしっかりした意志をもっているということで存在するもので、女子が怨みごとを多くするというのとは違うというものだ。


(訳注)
彼時何卒卒,我志何曼曼。

振り返ればあの時間経過は何とあわただしいことなのだろうかと思うし、わたしの志について考えると何とはるばる長く遠いものなのだ。
・卒卒 あわただしい形容。ばたばたするさま。
・曼曼 長く遠い形容。はるばる。


犀首空好飲,廉頗尚能飯。
故事にある犀首は自分のなすべき仕事が与えられず、閑職のままにおかれていることが不満で酒に気をまぎらせたというし、「史記」廉頗藺相如列伝に見える廉頗は老いてもなお食欲は盛んだといったものだ。
犀首空好欽 犀首は、戦国時代(前四世紀―前三世紀)の魏の国の官名で、公孫衍という人が、その官になっていた。楚の使者陳軫が魏の都の梁を通りすぎて、犀首すなわち公孫衍にたずねた。
司馬遷『史記』巻七十 張儀列伝第十 陳軫と犀首
陳軫者、游説之士。与張儀倶事秦惠王。皆貴重、争寵。
・・・
過梁、欲見犀首。犀首謝弗見。
軫曰「吾為事来、公不見軫、軫将行、不得待異日。」犀首見之。
陳軫曰「公何好飲也。」犀首曰「無事也。」
曰「吾請令公厭事可乎。」曰「奈何。」
・・・
梁を過り、犀首を見んと欲す。犀首、謝. して見ず。軫曰く、「吾、事の為に来たれり。公、軫を見ず。軫将に行か. んとす。異日を待つを得ず。」犀首、之を見る。陳軫曰く、「公何ぞ飲を. 好むや。」犀首曰く、「事無ければなり。」
つまり自分のなすべき仕事が与えられず、閑職のままにおかれていることが不満で酒に気をまぎらしていることをいったものである。
簾頗尚能飯 『史記、廉頗藺相如列伝』にみえる戦国時代、趙の国の将軍である簾頗の故事。天下統一をねらう秦は白起を中心に他国への侵略を開始。廉頗と相如が健在であるうちは秦に侵攻されなかった趙も、この頃になると相如は病に倒れ、廉頗も高齢となっていた。そのため趙は廉頗のもとに使者を送って帰参を許そうと図る。廉頗は年老いても「一飯に斗米、肉十斤、甲を被り馬に上り」といわれるほどに元気な姿を使者に見せて帰参を承知した。だが廉頗が趙にいた頃から不仲だった奸臣である郭開の謀略で使者が買収されてしまう。そして趙王が廉頗の様子を伺うと、使者は「三度遺失」と讒言した。このため趙王は廉頗が高齢で使いものにならないとして諦めたという。ここでは「廉将軍老いたりと雖も、尚善く飯す。」「史記」廉頗藺相如列伝に見える。年は取ってもまだ役に立つということを意味する。


學堂日無事,驅馬適所願。
私も教室で学んでおるには犀首の思いと同じで日々、問題事が無いし、馬を走らせて好き勝手なところへ行こうとねがっているのだ。
 学校の教室。このことばから韓愈が国子監で数えていたときのことであることが分かる。
日無事 日は毎日の何の問題ごとも無く過ごす。犀首曰「無事也。」と同じ心境であることを云う。
適所願 適は、最適、適材適所、あるきまった好みの場所に行くこと。


茫茫出門路,欲去聊自勸。
門を出て行けば道はひろびろとひろがっているのだが、わたしはこの不愉快な職をやめ隠遁したいと思ったが、まあ何とかはやる気持ちを抑えるように自制することを勧めたのである。
茫茫 はてしなくひろがっている形容。
出門 真の仕事をしたい、仕事欲をあらわす。官を辞して隠遁したいという事を意味する。
欲去聊自勸 この不愉快な職をやめ隠遁したいと思ったが、まあ何とかはやる気持ちを抑えるように自制することを勧めたこと。


歸還閱書史,文字浩千萬。
そうして自宅に帰ってきて書史の書物をひろげて見返してみると、文字数は途方なものでなんと千万と数えられるものではない。
・閱 目をとおす。見返してみる。閲覧。
・書史 書籍。王朝正史、史記、四庫全書など。
・浩 ものの多い形容。


陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
書物というものは、結局むかしの人のあとをだれもがほかに尋ねて行くということで、書物の中で、つまらぬものとか好なものというのは、貴いお方へ献上しようとするものではないのだ。(勉学は誰かのためにするものではない。))
・陳跡 むかしの人の行った事跡。
・戚嗜 下品な好み。
・貴献 食い入へのささげもの。この「餞嗜非貴献」とは、自分ですきだからといっても、つまらないもので、立派な人に献納できる与ったものではない、という零


丈夫意有在,女子乃多怨。
男子はしっかりした意志をもっているということで存在するもので、女子が怨みごとを多くするというのとは違うというものだ。
・丈夫 一人前のおとこ。男たるものというほどの意味。人間のおとなの身のたけが、むかしのものさしで一丈だったからだという。
・意有在 考えが一つのしっかりしたものを持っているということで初めて存在意義があるということ。。
・女子 おんな。
・乃 かえって。~の方こそ。
・多怨 女性の存在価値が低いこと。心情を通わすことで存在しているとしている。子を通じての夫、一族を考える存在。

秋懐詩十一首(2) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<102>Ⅱ中唐詩537 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1714


◆◆◆2012年12月25日紀頌之の5つの漢文ブログ◆◆◆  

Ⅰ.李白と李白に影響を与えた詩集 
古代中国の結婚感、女性感について述べる三国時代の三曹の一人、曹丕魏文帝の詩 
燕歌行二首 其二 曹丕(魏文帝) 魏詩<5>玉台新詠・文選楽府 古詩源 巻三 女性詩624 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1713 
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Ⅱ.中唐詩・晩唐詩 
 唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ 
秋懐詩十一首(2) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<102>Ⅱ中唐詩537 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1714 
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Ⅲ.杜甫詩1000詩集 
"●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説するブログ 
●詩人として生きていくことを決めた杜甫が理想の地を求めてっ旅をする
●人生としては4/5前で、全詩1/3を掲載済。" 
杜甫詩 成都紀行まとめ(詩index)  <353> 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1715 杜甫詩 700- 528 
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Ⅳ.漢詩・唐詩・宋詞詩詩集 
元和聖徳詩 韓退之(韓愈)詩<80-#10> (12/25) 
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Ⅴ.晩唐五代詞詩・宋詞詩 
 森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”彼女の詩の先生として登場する 晩唐期の詩人 温庭筠(おんていいん)の作品を訳註解説する。 
『酒泉子』 四首(三) 温庭筠  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-23-3-#3 花間集 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1716 http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10-godaisoui/archives/21374297.html
 
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李商隠詩   http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
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秋懐詩十一首(2) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<102>Ⅱ中唐詩537 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1714


秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。

3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。

岳陽樓003

秋懐詩十一首 其二(2) 韓愈 韓退之(韓愈)詩
白露下百草,蕭蘭共雕悴。
白露がにわの百草におりはじめれば、蓬も蘭もいっしょにしおれるし、枯れるものである。
青青四牆下,已複生滿地。
しかし春になるとまた四方の士べいの根もとに、青靑と地面いっぱい生い茂るのである。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。
ひぐらしぜみがしばらく鳴かなくなって静寂になるとこんどは、こおろぎがせいいっぱい鳴きまくるのである。
運行無窮期,稟受氣苦異。
天地万物の廻り行き、時の流れは突き詰めると正確無比に決まっているわけではない、天から授かるものはめいめいが受けている精気が大変ちがっていて、本質的に大きなちがいがあるのである。
適時各得所,松柏不必貴。

それぞれの季節によくあっていて、おのおのその場所を得さえすれば、松も東で檜は西がよいとすればこれらだけを貴ぶことはないのである。

白露 百草に下り,蕭蘭【しょうらん】共に雕悴【ちょうすい】す。
青青たり四牆【ししょう】の下,已に複た生じて地に滿つる。
寒蟬【かんぜん】暫く寂寞【せきばく】たるに,蟋蟀【しつしゅつ】自ら恣しいままに鳴く。
運行窮期無く,稟受【ひんじゅ】氣 苦【はなは】だ異る。
時に適【かな】いて各の所を得れば,松柏 必ずしも貴しとせず。


『秋懐詩十一首 其二』 現代語訳と訳註
(本文)

白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。

(下し文)
白露 百草に下り,蕭蘭【しょうらん】共に雕悴【ちょうすい】す。
青青たり四牆【ししょう】の下,已に複た生じて地に滿つる。
寒蟬【かんぜん】暫く寂寞【せきばく】たるに,蟋蟀【しつしゅつ】自ら恣しいままに鳴く。
運行窮期無く,稟受【ひんじゅ】氣 苦【はなは】だ異る。
時に適【かな】いて各の所を得れば,松柏 必ずしも貴しとせず。


(現代語訳)
白露がにわの百草におりはじめれば、蓬も蘭もいっしょにしおれるし、枯れるものである。
しかし春になるとまた四方の士べいの根もとに、青靑と地面いっぱい生い茂るのである。
ひぐらしぜみがしばらく鳴かなくなって静寂になるとこんどは、こおろぎがせいいっぱい鳴きまくるのである。
天地万物の廻り行き、時の流れは突き詰めると正確無比に決まっているわけではない、天から授かるものはめいめいが受けている精気が大変ちがっていて、本質的に大きなちがいがあるのである。
それぞれの季節によくあっていて、おのおのその場所を得さえすれば、松も東で檜は西がよいとすればこれらだけを貴ぶことはないのである。


(訳注)
白露下百草,蕭蘭共雕悴。

白露がにわの百草におりはじめれば、蓬も蘭もいっしょにしおれるし、枯れるものである。
・白露下 白露の下るのは、秋になったしるしである。『礼記』月令篇孟秋月「涼風至,白露降,寒蟬鳴,鷹乃祭鳥,用始行戮。」とある。宋玉『九辨』に、
悲哉秋之為氣也!蕭瑟兮草木搖落而變衰,
憭慄兮若在遠行,登山臨水兮送將歸,
泬寥兮天高而氣清,寂寥兮收潦而水清,
憯悽欷兮薄寒之中人,愴怳懭悢兮去故而就新,
坎廩兮貧士失職而志不平,廓落兮羇旅而無友生。
惆悵兮而私自憐。
燕翩翩其辭歸兮,蝉寂漠而無聲。
鴈廱廱而南遊兮,鶤鵾雞啁哳而悲鳴。
獨申旦而不寐兮,哀蟋蟀之宵征。
時亹亹而過中兮,蹇淹留而無成。
・・・・
皇天平分四时兮,窃独悲此凛秋。白露既下降百草兮,奄离披此梧楸。去白日之昭昭兮,袭长夜之悠悠。
・蕭蘭 蕭はよもぎ。つまり雑草の代表である。謂蘭は、よもぎのようなつまらぬ草も蘭のようなよいかおりのするりっはな草も、というほどの意味。 
・共 いっしょに。ひとまとめに。
・雕悴 しおれるしこと、おとろえること。


青青四牆下,已複生滿地。
しかし春になるとまた四方の士べいの根もとに、青靑と地面いっぱい生い茂るのである。
青青 五行思想で春は青である。
四牆 まわりの土べい。


寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。
ひぐらしぜみがしばらく鳴かなくなって静寂になるとこんどは、こおろぎがせいいっぱい鳴きまくるのである。
寒蟬 ひぐらし。つくづくぼうし。『礼記』月令篇孟秋月「涼風至,白露降,寒蟬鳴,鷹乃祭鳥,用始行戮。」とある。
・蟋蟀 こおろぎ。宋玉九弁は上記。『詩経』豳風七月こおろぎ。古詩十九首之第十二首『』「晨風懷苦心,蟋蟀傷局促。」

『詩経・唐風、蟋蟀』の篇名。晋の僖公が倹約に過ぎるのをそしった詩。今楽しまなければ月日はサッサと去って行く。勤勉で油断をしない人になれという内容のもの。

詩経・唐風、蟋蟀詩経・唐風、蟋蟀 
蟋蟀在堂、歲聿其莫。 今我不樂、日月其除。
無已大康、職思其居。 好樂無荒、良士瞿瞿。

蟋蟀在堂、歲聿其逝。 今我不樂、日月其邁。
無已大康、職思其外。 好樂無荒、良士蹶蹶。

蟋蟀在堂、役車其休。 今我不樂、日月其慆。
無已大康、職思其憂。 好樂無荒.良士休休。


運行無窮期,稟受氣苦異。
天地万物の廻り行き、時の流れは突き詰めると正確無比に決まっているわけではない、天から授かるものはめいめいが受けている精気が大変ちがっていて、本質的に大きなちがいがあるのである。
・運行 万物の時の流れ、天地自然のめぐり行き。「太陽星君、日宮炎光太陽星君」,「大明之神」,「太陽帝君」、「太陽公」いうが、「太陽帝君乃陽剛之神,司日之運行,掌火焰之輕重,日由東升,再由西墜,光熙普照大地」
・稟受 めいめい天から授けられていること。
・気苦異 めいめいが受けている精気が大変ちがっていて、本質的に大きなちがいがある。


適時各得所,松柏不必貴。
それぞれの季節によくあっていて、おのおのその場所を得さえすれば、松も東で檜は西がよいとすればこれらだけを貴ぶことはないのである。
・適時 その時節によくあっていて。
・得所 自分に過当な場所を得る。
・松柏 まつやひのきは、冬でも青いが、それは天から授けられた精気のちがいで、めいめいその自分自分に与えられた時節に存分にすごし、自分の安んずべき位置を得ていれば、それがよいので、冬青いからといって特に尊重する必要はないというのである。「論語」子罕篇に「子曰、歳寒、然後知松柏之後彫也。」(子曰く、歳寒くして、然る後、松柏の彫むに後るるを知る。)と儒家は松柏を尊ぶものとしているが、それをここでは否定している。


秋懐詩十一首(1)-#2 韓愈 韓退之(韓愈)詩<101>Ⅱ中唐詩536 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1710

秋懐詩十一首(1)-#2 韓退之(韓愈)詩

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秋懐詩十一首(1)-#2 韓退之(韓愈)詩<101>Ⅱ中唐詩536 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1710

終南山03

秋懐詩十一首(1) #1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一披拂,策策鳴不已。
書斎の窓の前の二本の見事な樹があり、茂りあった葉がキラキラいきいきと輝いている。
それでも秋風の突風がぴゅうっと吹きつけはじめると、ざわわざわわ木の葉を鳴らし、いつまでも鳴りやまない。

微燈照空牀,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。

ほの暗いともしびが人気のない寝床を照らしている。今夜の夜ふけに風の音がことさらに耳について眠れない。
過去の愁いと先の心配事がどういうわけか気になって離れない、胸にせまってくるそれらの思いであたまがさえおきあがって坐り直してしまうのだ。
#2
天明視顏色,與故不相似。
天が明るくなったので自分の顔かたちをじっと見つめて視る。どういうわけか、今まで自分と似ても似つかない顔である。
羲和驅日月,疾急不可恃。
義和の神も、その馭者もが日月の馬車を速く走らせてしまうので、それがあまりに急に進むので、この世の時間をあてにはできないのである。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。
当てにできないのは不安定な人生にもいえて、多種多様な道があるというけれども、死に着くところは両車輪のあいだの轍の上を通ってきたのと同じことなのだ。
胡為浪自苦,得酒且歡喜。
だからどうしてそうむやみに自分を苦しめるのだろうか、酒を手にして、まあ、歓談し、愉快にやろうではないか。


秋の懐の詩
窗前【そうぜん】の両好樹、衆葉光って薿薿【ぎぎ】たり。
秋風一たび披沸【ひふつ】すれば、策策として鳴り己まず。
微燈 空牀【くうしょう】を照し、夜半【やはん】 偏に耳に入る。
愁憂 端無くも来り、感歎して坐起を成す。
#2
天明けて顔色を視るに、故【もよ】と相似ず。
義和の日月を駆るは、疾急にして恃【たの】むべからず。
浮生 多塗なりと雖も、死に趨【おもむ】くは惟れ軌を一にす。
胡【なん】すれぞ浪【みだり】に自ら苦むや、酒を得ては且つ歓喜せよ。



『秋懐詩十一首』(1) 現代語訳と訳註
(本文)
#2
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。


(下し文) #2
天明けて顔色を視るに、故【もよ】と相似ず。
義和の日月を駆るは、疾急にして恃【たの】むべからず。
浮生 多塗なりと雖も、死に趨【おもむ】くは惟れ軌を一にす。
胡【なん】すれぞ浪【みだり】に自ら苦むや、酒を得ては且つ歓喜せよ。


(現代語訳)
天が明るくなったので自分の顔かたちをじっと見つめて視る。どういうわけか、今まで自分と似ても似つかない顔である。
義和の神も、その馭者もが日月の馬車を速く走らせてしまうので、それがあまりに急に進むので、この世の時間をあてにはできないのである。
当てにできないのは不安定な人生にもいえて、多種多様な道があるというけれども、死に着くところは両車輪のあいだの轍の上を通ってきたのと同じことなのだ。
だからどうしてそうむやみに自分を苦しめるのだろうか、酒を手にして、まあ、歓談し、愉快にやろうではないか。


(訳注) #2
天明視顏色,與故不相似。
天が明るくなったので自分の顔かたちをじっと見つめて視る。どういうわけか、今まで自分と似ても似つかない顔である。
○顏色 韓愈の自分の顔色。
〇故もとの状態。


羲和驅日月,疾急不可恃。
義和の神も、その馭者もが日月の馬車を速く走らせてしまうので、それがあまりに急に進むので、この世の時間をあてにはできないのである。
○義和 日の神であり、日を乗せる馬車の御者とも考えられ、更には、二つの名に分けて、暦法を定めた人ともされた。「山海経」に記載のある太陽の母神であり、炎帝に属し東夷人の先祖にあたる帝俊の妻。東海の海の外、甘水のほとりに義和の国があり、そこに生える世界樹・扶桑の下に住む女神である義和は、子である「十の太陽たち」を世話している。天を巡ってきてくたびれた太陽を湯谷で洗っては扶桑の枝にかけて干し、輝きを蘇らせるという。ここでは日の御者としての義和とすると、時間を進める御者として、義和をいっているから、日月といってもそう矛盾を感じないものである。


浮生雖多塗,趨死惟一軌。
当てにできないのは不安定な人生にもいえて、多種多様な道があるというけれども、死に着くところは両車輪のあいだの轍の上を通ってきたのと同じことなのだ。
○浮生 浮世暮らし。不安定なこの人生。
○塗 みち。途と同じ。
一軌 軌は両車輪のあいだのはば。それからその通る路線。一軌は同じコースをたどること。


胡為浪自苦,得酒且歡喜。
だからどうしてそうむやみに自分を苦しめるのだろうか、酒を手にして、まあ、歓談し、愉快にやろうではないか。
○胡為 なぜ。どういうわけで。
○浪 むやみに。むだぼねを折って。
○且 まあ、と。

秋懐詩十一首(1) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<100>Ⅱ中唐詩535 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1706

秋懐詩十一首(1) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<100>Ⅱ中唐詩535 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1706


秋懷詩十一首
1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一拂披,策策鳴不已。
微燈照空床,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。
2   
白露下百草,蕭蘭共雕悴。青青四牆下,已複生滿地。
寒蟬暫寂寞,蟋蟀鳴自恣。運行無窮期,稟受氣苦異。
適時各得所,松柏不必貴。
3   
彼時何卒卒,我志何曼曼。犀首空好飲,廉頗尚能飯。
學堂日無事,驅馬適所願。茫茫出門路,欲去聊自勸。
歸還閱書史,文字浩千萬。陳跡竟誰尋,賤嗜非貴獻。
丈夫意有在,女子乃多怨。
4   
秋氣日惻惻,秋空日淩淩。上無枝上蜩,下無盤中蠅。
豈不感時節,耳目去所憎。清曉卷書坐,南山見高棱。
其下澄湫水,有蛟寒可罾。惜哉不得往,豈謂吾無能。
5   
離離掛空悲,戚戚抱虛警。露泫秋樹高,蟲吊寒夜永。
斂退就新懦,趨營悼前猛。歸愚識夷塗,汲古得修綆。
名浮猶有恥,味薄真自幸。庶幾遺悔尤,即此是幽屏。
6   
今晨不成起,端坐盡日景。蟲鳴室幽幽,月吐窗冏冏。
喪懷若迷方,浮念劇含梗。塵埃慵伺候,文字浪馳騁。
尚須勉其頑,王事有朝請。
7   
秋夜不可晨,秋日苦易暗。我無汲汲志,何以有此憾。
寒雞空在棲,缺月煩屢瞰。有琴具徽弦,再鼓聽愈淡。
古聲久埋滅,無由見真濫。低心逐時趨,苦勉祗能暫。
有如乘風船,一縱不可纜。不如覷文字,丹鉛事點勘。
豈必求贏餘,所要石與甔。
8    
卷卷落地葉,隨風走前軒。鳴聲若有意,顛倒相追奔。
空堂黃昏暮,我坐默不言。童子自外至,吹燈當我前。
問我我不應,饋我我不餐。退坐西壁下,讀詩盡數編。
作者非今士,相去時已千。其言有感觸,使我複淒酸。
顧謂汝童子,置書且安眠。丈夫屬有念,事業無窮年。
9   
霜風侵梧桐,眾葉著樹乾。空階一片下,琤若摧琅玕。
謂是夜氣滅,望舒霣其團。青冥無依倚,飛轍危難安。
驚起出戶視,倚楹久汍瀾。憂愁費晷景,日月如跳丸。
迷複不計遠,為君駐塵鞍。
10   
暮暗來客去,群囂各收聲。悠悠偃宵寂,亹亹抱秋明。
世累忽進慮,外憂遂侵誠。強懷張不滿,弱念缺已盈。
詰屈避語阱,冥茫觸心兵。敗虞千金棄,得比寸草榮。
知恥足為勇,晏然誰汝令。
11   
鮮鮮霜中菊,既晚何用好。揚揚弄芳蝶,爾生還不早。
運窮兩值遇,婉孌死相保。西風蟄龍蛇,眾木日凋槁。
由來命分爾,泯滅豈足道。


終南山03

秋懐詩十一首(1) 韓愈 韓退之(韓愈)詩<100>


秋懐詩十一首(1) #1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。
書斎の窓の前の二本の見事な樹があり、茂りあった葉がキラキラいきいきと輝いている。
秋風一披拂,策策鳴不已。
それでも秋風の突風がぴゅうっと吹きつけはじめると、ざわわざわわ木の葉を鳴らし、いつまでも鳴りやまない。
微燈照空牀,夜半偏入耳。
ほの暗いともしびが人気のない寝床を照らしている。今夜の夜ふけに風の音がことさらに耳について眠れない。
愁憂無端來,感歎成坐起。
過去の愁いと先の心配事がどういうわけか気になって離れない、胸にせまってくるそれらの思いであたまがさえおきあがって坐り直してしまうのだ。
#2
天明視顏色,與故不相似。羲和驅日月,疾急不可恃。
浮生雖多塗,趨死惟一軌。胡為浪自苦,得酒且歡喜。

秋の懐の詩
窗前【そうぜん】の両好樹、衆葉光って薿薿【ぎぎ】たり。
秋風一たび披沸【ひふつ】すれば、策策として鳴り己まず。
微燈 空牀【くうしょう】を照し、夜半【やはん】 偏に耳に入る。
愁憂 端無くも来り、感歎して坐起を成す。

#2
天明けて顔色を視るに、故【もよ】と相似ず。
義和の日月を駆るは、疾急にして恃【たの】むべからず。
浮生 多塗なりと雖も、死に趨【おもむ】くは惟れ軌を一にす。
胡【なん】すれぞ浪【みだり】に自ら苦むや、酒を得ては且つ歓喜せよ。


『秋懐詩十一首』(1) 現代語訳と訳註
(本文)
1 #1   
窗前兩好樹,眾葉光薿薿。秋風一披拂,策策鳴不已。
微燈照空牀,夜半偏入耳。愁憂無端來,感歎成坐起。


(下し文) 秋の懐の詩
窗前【そうぜん】の両好樹、衆葉光って薿薿【ぎぎ】たり。
秋風一たび披沸【ひふつ】すれば、策策として鳴り己まず。
微燈 空牀【くうしょう】を照し、夜半【やはん】 偏に耳に入る。
愁憂 端無くも来り、感歎して坐起を成す。


(現代語訳)
書斎の窓の前の二本の見事な樹があり、茂りあった葉がキラキラいきいきと輝いている。
それでも秋風の突風がぴゅうっと吹きつけはじめると、ざわわざわわ木の葉を鳴らし、いつまでも鳴りやまない。
ほの暗いともしびが人気のない寝床を照らしている。今夜の夜ふけに風の音がことさらに耳について眠れない。
過去の愁いと先の心配事がどういうわけか気になって離れない、胸にせまってくるそれらの思いであたまがさえおきあがって坐り直してしまうのだ。


(訳注) 1 #1   
秋懐詩十一首(1)
秋の自然の衰え行くに感じて作った詩。連作の形式をとっている。阮籍(210-263年)の詠懐持、謝惠連(397-433年)の秋懐詩など先行の詩の影響が強い。806年元和元年の作とも812年元和七年の作ともいわれるが、内容からいって、元和七年、四十五歳のとき、職方員外郎から、ある事件に関係したため、国子博士に降任させられたときの作とする方が妥当なようである。


窗前兩好樹,眾葉光薿薿。
書斎の窓の前の二本の見事な樹があり、茂りあった葉がキラキラいきいきと輝いている。
・窗 窓と同じ。下の句から東、東南の日が射す窓であるから書斎のまどである。
・薿薿 草木のいきおいよく生えているさま。


秋風一披拂,策策鳴不已。
それでも秋風の突風がぴゅうっと吹きつけはじめると、ざわわざわわ木の葉を鳴らし、いつまでも鳴りやまない。
・披払 吹き払う。ぴゅうっと風のふきつけるさま。
・策策 風が木の葉をさらさらと鳴らすおと。


微燈照空牀,夜半偏入耳。
ほの暗いともしびが人気のない寝床を照らしている。今夜の夜ふけに風の音がことさらに耳について眠れない。
・偏 そればかりがむやみと。


愁憂無端來,感歎成坐起。
過去の愁いと先の心配事がどういうわけか気になって離れない、胸にせまってくるそれらの思いであたまがさえおきあがって坐り直してしまうのだ。
・無端 どういうわけかわからないが。ゆくりなく。
・成 その状態(ここでは坐起)が完成することをいう。

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石佛谷 皇甫湜 詩<94-#3>Ⅱ中唐詩502 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1585


卷 別: 卷三六九
詩 題: 石佛谷


石佛谷
漫澶太行北,千里一塊石。
心を揺さぶるような太行山脈は北に続いている。それは千里にわたって一塊の岩場で続いている。
平腹有壑谷,深廣數百尺。
頂に至るその中腹に深い谷がある、そこは深く広くそこの広さは百尺である。
土僧何為者,老草毛髮白。
この山にいる僧侶は何をしているのだろう。その人は歳をとって白髪姿である。
寢處容身龕,足膝隱成跡。

寝所と云えば、石龕の中に身を置くのである。足を使いひざを折って山に入りそのあともわからなくなる隠遁生活をしている。

金仙琢靈象,相好倚北壁。
ここに隠遁され修業されるものは不思議な現象を起して岩に刻みを残す。刻まれた仏の顔と表情はその谷の北の壁によってある。
花座五雲扶,玉毫六虛射。
そして蓮華の花の台座を敷き、五色の雲にまかれている、そこから出る輝ける閃光は人の六虚を射ぬくのである。
文人留紀述,時事可辨析。
文人であるのならば昔から起こることのべられることすべて書きとどめておくものであり、そしてときとしての出来事、仕事を分析し解析しなければならないのだ。
鳥跡巧均分,龍骸極臞瘠。
鳥の足跡を見て文字を考案し、巧みに振り分けられるものであり、龍であってもむくろになったならきわめてやせ細りカスカスになるというものだ。

枯松間槎櫱,猛獸恣騰擲。
枯れた松の間から孫生えの若芽が出て來るようなところもあるし、猛獣が好き勝手に飛んだり跳ねたりしているような岩場もある。
蛣屋蟲食縱,懸垂露凝滴。
木喰虫が縦に食い散らかし、露がしたたり落ちてつららのようになっている。
精藝貫古今,窮巖誰愛惜。
精魂込めていにしえから今日まで芸術を貫き通して作られているし、究極の岩場をだれもが愛し、惜しんでいるのである。
託師禪誦餘,勿使塵埃積。
これだけの場所である以上、禅師に託して、禅宗のお経を有り余るほど唱えるのである、そうすれば俗世間の事柄は問題のないことになってしまうであろう。

石佛谷
漫澶【まんたん】たる太行の北,千里一塊の石。
平腹に壑谷【がくこく】有り,深廣 數百尺。
土僧 何為【なんす】る者ぞ,老草 毛髮 白し。
寢處 身を容るる龕,足膝 成跡を隱せり。
#2
金仙【きんせん】靈象【れいしょう】琢【きざ】み,相好 北壁に倚る。
花座 五雲 扶【たす】け,玉毫【ぎょくごう】六虛の射。
文人 紀述を留め,時事 辨析すべし。
鳥跡 巧に均分し,龍骸 極めて臞瘠【くせ】せり。
#3
枯松 槎櫱【さげつ】を間【まじ】え,猛獸 騰擲【とうてい】を恣【ほしいまま】にす 。
蛣〔虫+屋〕【きつおく】蟲 縱に食し,懸垂 露 滴を凝らす。
精藝【せいげい】古今を貫くも,窮巖 誰か愛惜せむ。
師に託さむ 禪誦の餘,塵埃をして積らしむる勿れ。

 


現代語訳と訳註
(本文)

枯松間槎櫱,猛獸恣騰擲。
蛣屋蟲食縱,懸垂露凝滴。
精藝貫古今,窮巖誰愛惜。
託師禪誦餘,勿使塵埃積。


(下し文)#3
枯松 槎櫱【さげつ】を間【まじ】え,猛獸 騰擲【とうてい】を恣【ほしいまま】にす 。
蛣屋【きつおく】蟲 縱に食し,懸垂 露 滴を凝らす。
精藝【せいげい】古今を貫くも,窮巖 誰か愛惜せむ。
師に託さむ 禪誦の餘,塵埃をして積らしむる勿れ。


(現代語訳)
枯れた松の間から孫生えの若芽が出て來るようなところもあるし、猛獣が好き勝手に飛んだり跳ねたりしているような岩場もある。
木喰虫が縦に食い散らかし、露がしたたり落ちてつららのようになっている。
精魂込めていにしえから今日まで芸術を貫き通して作られているし、究極の岩場をだれもが愛し、惜しんでいるのである。
これだけの場所である以上、禅師に託して、禅宗のお経を有り余るほど唱えるのである、そうすれば俗世間の事柄は問題のないことになってしまうであろう。


(訳注)
枯松間槎櫱,猛獸恣騰擲。

枯松 槎櫱【さげつ】を間【まじ】え,猛獸 騰擲【とうてき】を恣【ほしいまま】にす 。
枯れた松の間から孫生えの若芽が出て來るようなところもあるし、猛獣が好き勝手に飛んだり跳ねたりしているような岩場もある。
・槎櫱 斜めにそぎ切った木から生ずる芽。樹木の切り株や根元から生えてくる若芽のこと。 太い幹に対して、孫(ひこ)に見立てて「ひこばえ(孫生え)」という。
騰擲 とびあがりなげうつ。韓愈『謁衡獄廟遂宿獄寺題門樓』「紫蓋連延接天柱,石廩騰擲堆祝融。」


蛣〔虫+屋〕蟲食縱,懸垂露凝滴。
蛣屋【きつおく】蟲 縱に食し,懸垂 露 滴を凝らす。
木喰虫が縦に食い散らかし、露がしたたり落ちてつららのようになっている。
蛣〔虫+屋〕きくいむし。やどかりむし。


精藝貫古今,窮巖誰愛惜。
精藝【せいげい】古今を貫くも,窮巖 誰か愛惜せむ。
精魂込めていにしえから今日まで芸術を貫き通して作られているし、究極の岩場をだれもが愛し、惜しんでいるのである。


託師禪誦餘,勿使塵埃積。
師に託さむ 禪誦の餘,塵埃をして積らしむる勿れ。
これだけの場所である以上、禅師に託して、禅宗のお経を有り余るほど唱えるのである、そうすれば俗世間の事柄は問題のないことになってしまうであろう。
塵埃 1 ちりとほこり。「―にまみれる」 2 世の中の、もろもろの汚れたもの。俗世間の事柄。
 

石佛谷 皇甫湜 詩<94-#2>Ⅱ中唐詩501 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1582

 
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石佛谷 皇甫湜 詩<94-#2>Ⅱ中唐詩501 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1582


石佛谷
漫澶太行北,千里一塊石。
心を揺さぶるような太行山脈は北に続いている。それは千里にわたって一塊の岩場で続いている。
平腹有壑谷,深廣數百尺。
頂に至るその中腹に深い谷がある、そこは深く広くそこの広さは百尺である。
土僧何為者,老草毛髮白。
この山にいる僧侶は何をしているのだろう。その人は歳をとって白髪姿である。
寢處容身龕,足膝隱成跡。

寝所と云えば、石龕の中に身を置くのである。足を使いひざを折って山に入りそのあともわからなくなる隠遁生活をしている。

金仙琢靈象,相好倚北壁。
ここに隠遁され修業されるものは不思議な現象を起して岩に刻みを残す。刻まれた仏の顔と表情はその谷の北の壁によってある。
花座五雲扶,玉毫六虛射。
そして蓮華の花の台座を敷き、五色の雲にまかれている、そこから出る輝ける閃光は人の六虚を射ぬくのである。
文人留紀述,時事可辨析。
文人であるのならば昔から起こることのべられることすべて書きとどめておくものであり、そしてときとしての出来事、仕事を分析し解析しなければならないのだ。
鳥跡巧均分,龍骸極臞瘠。

鳥の足跡を見て文字を考案し、巧みに振り分けられるものであり、龍であってもむくろになったならきわめてやせ細りカスカスになるというものだ。

枯松間槎櫱,猛獸恣騰擲。
蛣〔虫+屋〕蟲食縱,懸垂露凝滴。
精藝貫古今,窮巖誰愛惜。
託師禪誦餘,勿使塵埃積。

石佛谷
漫澶【まんたん】たる太行の北,千里一塊の石。
平腹に壑谷【がくこく】有り,深廣 數百尺。
土僧 何為【なんす】る者ぞ,老草 毛髮 白し。
寢處 身を容るる龕,足膝 成跡を隱せり。
#2
金仙【きんせん】靈象【れいしょう】琢【きざ】み,相好 北壁に倚る。
花座 五雲 扶【たす】け,玉毫【ぎょくごう】六虛の射。
文人 紀述を留め,時事 辨析すべし。
鳥跡 巧に均分し,龍骸 極めて臞瘠【くせ】せり。

#3
枯松 槎櫱【さげつ】を間【まじ】え,猛獸 騰擲【とうてき】を恣【ほしいまま】にす 。
蛣〔虫+屋〕【きつおく】蟲 縱に食し,懸垂 露 滴を凝らす。
精藝【せいげい】古今を貫くも,窮巖 誰か愛惜せむ。
師に託さむ 禪誦の餘,使塵埃をして積らしむる勿れ。

太行山脈001

現代語訳と訳註
(本文)

金仙琢靈象,相好倚北壁。
花座五雲扶,玉毫六虛射。
文人留紀述,時事可辨析。
鳥跡巧均分,龍骸極臞瘠。


(下し文)
#2
金仙【きんせん】靈象【れいしょう】琢【きざ】み,相好 北壁に倚る。
花座 五雲 扶【たす】け,玉毫【ぎょくごう】六虛の射。
文人 紀述を留め,時事 辨析すべし。
鳥跡 巧に均分し,龍骸 極めて臞瘠【くせ】せり。


(現代語訳)
ここに隠遁され修業されるものは不思議な現象を起して岩に刻みを残す。刻まれた仏の顔と表情はその谷の北の壁によってある。
そして蓮華の花の台座を敷き、五色の雲にまかれている、そこから出る輝ける閃光は人の六虚を射ぬくのである。
文人であるのならば昔から起こることのべられることすべて書きとどめておくものであり、そしてときとしての出来事、仕事を分析し解析しなければならないのだ。
鳥の足跡を見て文字を考案し、巧みに振り分けられるものであり、龍であってもむくろになったならきわめてやせ細りカスカスになるというものだ。


(訳注)
金仙琢靈象,相好倚北壁。
金仙【きんせん】靈象【れいしょう】琢【きざ】み,相好 北壁に倚る。
ここに隠遁され修業されるものは不思議な現象を起して岩に刻みを残す。刻まれた仏の顔と表情はその谷の北の壁によってある。
・金仙 仏陀のこと。また、釈迦(しゃか)のこと。仙:1 山中で修行して不老不死の術を修めた人。「仙境・仙骨・仙術・仙女(せんにょ・せんじょ)・仙人/神仙・謫仙(たくせん)・登仙」2 世俗にとらわれない人。非凡な才能を持つ
・靈象 不思議な現象。『魏志、文帝紀』「靈象變于上、羣瑞應于下。」
・相好 1 仏の身体に備わっている特徴。32の相と80種の好の総称。 2 顔かたち。顔つき。表情。


花座五雲扶,玉毫六虛射。
花座 五雲 扶【たす】け,玉毫【ぎょくごう】六虛の射。
そして蓮華の花の台座を敷き、五色の雲にまかれている、そこから出る輝ける閃光は人の六虚を射ぬくのである。
・花座 蓮華座(れんげざ). 如来や菩薩、愛染明王などの明王の一部が蓮台に乗ることが出来る一番下の框台は蓮華が咲く泥沼の水面を表す。蓮台と反花(かえりばな)、框台だけの簡単なものを大仏座という。
・五雲 1 仙人や天女が遊ぶ所にかかるという5色の雲。2 「五雲の車」の略。
・玉毫 1 細い毛。「毫毛/白毫(びゃくごう)」 2 ごくわずかなもの。「毫末/一毫・寸毫」 3 小数の名。一厘の十分の一。「毫釐(ごうり)」 4 毛筆。「揮毫」
・六虛 虚無/盈虚(えいきょ)・空虚」 2 うわべだけで中身がない。「虚栄・虚飾・虚勢・虚名・虚礼」 3 うそ。いつわり。「虚偽・虚言・虚構・虚実・虚報・虚妄」 4 気力や精気が足りない。「虚弱・虚脱/腎虚(じんきょ)」 5 備えがないこと。すき。「虚虚実実」 6 邪心を持たない。


文人留紀述,時事可辨析。
文人 紀述を留め,時事 辨析すべし。
文人であるのならば昔から起こることのべられることすべて書きとどめておくものであり、そしてときとしての出来事、仕事を分析し解析しなければならないのだ。
・辨析 みわける。はんだんする。


鳥跡巧均分,龍骸極臞瘠。
鳥跡 巧に均分し,龍骸 極めて臞瘠【くせ】せり。
鳥の足跡を見て文字を考案し、巧みに振り分けられるものであり、龍であってもむくろになったならきわめてやせ細りカスカスになるというものだ。
鳥跡 1 鳥の足跡。 2 《中国で、黄帝の時、蒼頡(そうけつ)が鳥の足跡を見て文字を考案したという故事から》漢字。また、文字。立つ鳥跡を濁さず。
龍骸 龍のなきがら。首のない胴体だけの死体。
臞瘠 二字ともやせる。

石佛谷 皇甫湜 詩<94-#1>Ⅱ中唐詩498 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1573

 
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石佛谷 皇甫湜 詩<94-#1>Ⅱ中唐詩498 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1573


作者: 皇甫湜(こうほしょく)777—835,中国中唐代散文家。字は持正,唐の睦州新安の人(今浙江建德淳安)。牛李黨派に属す。韓愈門下で,韓愈の唱える學古文復活に随う。


韓愈(かんゆ)①   韓退之 768年~824年 韓愈:中唐の文人、政治家。768年(大暦三年)~824年(長慶四年)。洛陽の西北西100キロメートルの河陽(現・河南省孟県)の人。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)44-45ページ「唐 都畿道 河南道」。字は退之。諡は文公。四六駢儷文を批判し、古文復興を倡えた。仏舎利が宮中に迎えられることに対して韓愈は、『論仏骨表』を帝(憲宗)に奉ったが、却って帝の逆鱗に触れ、潮州刺史に左遷された。その時の詩 。唐宋八大家の一人。


卷 別: 卷三六九
詩 題: 石佛谷



石佛谷
漫澶太行北,千里一塊石。
心を揺さぶるような太行山脈は北に続いている。それは千里にわたって一塊の岩場で続いている。
平腹有壑谷,深廣數百尺。
頂に至るその中腹に深い谷がある、そこは深く広くそこの広さは百尺である。
土僧何為者,老草毛髮白。
この山にいる僧侶は何をしているのだろう。その人は歳をとって白髪姿である。
寢處容身龕,足膝隱成跡。

寝所と云えば、石龕の中に身を置くのである。足を使いひざを折って山に入りそのあともわからなくなる隠遁生活をしている。
金仙琢靈象,相好倚北壁。
花座五雲扶,玉毫六虛射。
文人留紀述,時事可辨析。
鳥跡巧均分,龍骸極臞瘠。

枯松間槎櫱,猛獸恣騰擲。
蛣〔虫+屋〕蟲食縱,懸垂露凝滴。
精藝貫古今,窮巖誰愛惜。
託師禪誦餘,勿使塵埃積。

石佛谷
漫澶【まんたん】たる太行の北,千里一塊の石。
平腹に壑谷【がくこく】有り,深廣 數百尺。
土僧 何為【なんす】る者ぞ,老草 毛髮 白し。
寢處 身を容るる龕,足膝 成跡を隱せり。

#2
金仙【きんせん】靈象【れいしょう】琢【きざ】み,相好 北壁に倚る。
花座 五雲 扶【たす】け,玉毫【ぎょくごう】六虛の射。
文人 紀述を留め,時事 辨析すべし。
鳥跡 巧に均分し,龍骸 極めて臞瘠【くせ】せり。
#3
枯松 槎櫱【さげつ】を間【まじ】え,猛獸 騰擲【とうてき】を恣【ほしいまま】にす 。
蛣〔虫+屋〕【きつおく】蟲 縱に食し,懸垂 露 滴を凝らす。
精藝【せいげい】古今を貫くも,窮巖 誰か愛惜せむ。
師に託さむ 禪誦の餘,塵埃をして積らしむる勿れ。

 太行山脈001

現代語訳と訳註
(本文)
石佛谷
漫澶太行北,千里一塊石。
平腹有壑谷,深廣數百尺。
土僧何為者,老草毛髮白。
寢處容身龕,足膝隱成跡。


(下し文)
石佛谷
漫澶【まんたん】たる太行の北,千里一塊の石。
平腹に壑谷【がくこく】有り,深廣 數百尺。
土僧 何為【なんす】る者ぞ,老草 毛髮 白し。
寢處 身を容るる龕,足膝 成跡を隱せり。


(現代語訳)
心を揺さぶるような太行山脈は北に続いている。それは千里にわたって一塊の岩場で続いている。
頂に至るその中腹に深い谷がある、そこは深く広くそこの広さは百尺である。
この山にいる僧侶は何をしているのだろう。その人は歳をとって白髪姿である。
寝所と云えば、石龕の中に身を置くのである。足を使いひざを折って山に入りそのあともわからなくなる隠遁生活をしている。


(訳注)
石佛谷

河北贊皇縣,有世界最大的天然迴音壁。五台山は文殊菩薩、峨眉山は普賢菩薩、九華山はお地蔵様、普陀山は観音様の住む聖地とされている。
五台山の五台とは5つの平らな峰という意味で、平均海抜は1000m以上あり、風が強く、背の高い木は育っていない。道も険しく、五月でも綿入れの上着を着るほど寒いところ。また、ラマ教徒の聖地にもなっている。


漫澶太行北,千里一塊石。
漫澶【まんたん】たる太行の北,千里一塊の石。
心を揺さぶるような太行山脈は北に続いている。それは千里にわたって一塊の岩場で続いている。
漫澶 ほしいままなさま。澶漫 『莊子•馬蹄篇』「澶漫為樂,摘辟為禮,而天下始分矣。」
太行 太行山脈山西省、河南省、河北省の三つの省の境界部分に位置する。太行山脈は東の華北平野と西の山西高原(黄土高原の最東端)の間に、北東から南西へ400kmにわたり伸びており、平均標高は1,500mから2,000mである。最高峰は河北省張家口市の小五台山で、標高2,882m。山脈の東にある標高1,000mほどの蒼岩山は自然の奇峰や歴史ある楼閣などの多い風景区となっている。山西省・山東省の地名は、この太行山脈の西・東にあることに由来する。


平腹有壑谷,深廣數百尺。
平腹に壑谷【がくこく】有り,深廣 數百尺。
頂に至るその中腹に深い谷がある、そこは深く広くそこの広さは百尺である。


土僧何為者,老草毛髮白。
土僧 何為【なんす】る者ぞ,老草 毛髮 白し。
この山にいる僧侶は何をしているのだろう。その人は歳をとって白髪姿である。


寢處容身龕,足膝隱成跡。
寢處 身を容るる龕,足膝 成跡を隱せり。
寝所と云えば、石龕の中に身を置くのである。足を使いひざを折って山に入りそのあともわからなくなる隠遁生活をしている。

陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 詩<93-#6>Ⅱ中唐詩499 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1576

 
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#4
谽呀钜壑頗黎盆,豆登五山瀛四尊。
その肉の山と大きな谷を頗黎盆に取り大口を開いて食うのだ。肉を盛る祭器はまるで五岳であり、瀛山を浮かべる四海をさかずきにしたようなものだ。
熙熙釂酬笑語言,雷公擘山海水翻。
なごやかに喜びあい、酒を酌み交わし、笑い、談義を尽くす。雷様は山に堕ち、海の水を翻している。
齒牙嚼齧舌齶反,電光殲磹赬目厖,
歯をむき出し、牙むく、そして舌を出したりひるがえしたり、電光が炸裂するかと思えば、きらめく光で目玉を大きくするのである。
頊冥收威避玄根,斥棄輿馬背厥孫。
水の神とされる顓頊・玄冥は威勢あがらずみずのそこにいる。乗用の車や馬、御輿を棄ててしまったのか 火の神までがでてこないのである。
縮身潛喘拳肩跟,君臣相憐加愛恩。
身をかがめて知事困り、息をころして、かたとくるぶしをくっつけていて水底にすまいしていて、顓頊・玄冥の家来どもは互いに哀れんで御恩を感謝している。

谽呀【かんか】たる钜壑【きょがく】は頗黎【はり】の盆,五山を豆登して 瀛【うみ】は四尊【しそん】。
熙熙【きき】として釂酬【しょうしゅう】し 笑って語言す,雷公 山を擘【つんざ】き海水翻る。
齒牙もて嚼齧【しゃくげつ】舌齶【ぜつがく】反【かえ】る,電光 殲磹【せんてん】し赬目【ていもく】厖【おおい】なり,
頊冥【ぎょくめい】威を收めて 玄根に避け,輿馬【よば】を斥棄【せきき】して厥【そ】の孫に背く。
身を縮め 潛かに喘いで肩跟【けんこん】を拳ぐ,君臣 相憐みて 愛恩を加える。


#5
命黑螭偵焚其元,天闕悠悠不可援。
なんとかしようと螭に命じて偵察させたのだけれど頭に火傷おってしまった。天の関門は遠いはるかなところにあり攀じ登ることはできはしない。
夢通上帝血面論,側身欲進叱於閽。
夢で天子に拝謁して上訴を行ったのはよいが、御傍に寄ろうとしたら臣官にどなられたのだ。
帝賜九河湔涕痕,又詔巫陽反其魂。
天帝はあわれにおもわれて世界の九河の水で涙洗わせてもらったのだ。そして 巫女つかわして「招魂」によって魂を呼び戻された。
徐命之前問何冤,火行於冬古所存。
魂は呼びもどされてその訴え聞いてくれた。そして 言われた「冬になれば昔から、火の神というものは存分にはたらくものだ。」
我如禁之絕其飧,女丁婦壬傳世婚。
われわれがそれを止めれば夕食の煮たきもできない、そうであれば「溫泉之神」といわれるといわれるものだけが結婚できるというものだ。

黑螭【こくち】に命じて偵【うかが】わしむるに其の元を焚かる,天闕 悠悠 援づ可からず。
夢に上帝に通じて血面もて論じ,身を側て進まむと欲するに閽に叱せらる。
帝 九河を賜うて涕痕【ていこん】を湔【そそ】がしめ,又 巫陽に詔【みことのり】して其の魂を反さしむ。
徐【おもむろ】に之を命じ 前【すす】めましめて問う 何の冤ぞ,火の冬に行くは古より存する所。
我 如【も】し 之を禁せば 其の飧【そん】を絕たん,女丁は壬に婦となり 世を傳えて婚す。


#6
一朝結讎奈後昆,時行當反慎藏蹲。
ある朝それを始めたとしたらやるか止めるか子々孫々までの喧嘩をするようなものだ、御時勢にあわないというならばひっそりと隠居でもするか。
視桃著花可小騫,月及申酉利複怨。
二月三月、桃の花が咲くころには気分も高まってくるというもの、やがて7月八月になれば大水が出て何もかも怨みというものを洗い流して晴らしてくれる。
助汝五龍從九鯤,溺厥邑囚之昆崙。
そして五頭立ての天を駆け巡る竜の御車と海を行くには九鯤に乗ることによって君を助ける、それでもぐずぐず言うようであればそいつらを束にしてとらえて崑崙山に押しこめてしまう。」
皇甫作詩止睡昏,辭誇出真遂上焚。
皇甫湜君のために眠気覚ましに作った詩であるというのに、「真実を吐き出した愛での事」とうぬぼれたことをいっている。(韓愈が皇甫湜を持ち上げて作ったことに対して皇甫湜が自惚れたことの返事をしたということ。)
要餘和增怪又煩,雖欲悔舌不可捫。

わしにも要求したのはこの増長に合わせろと言い、怪しんだりうたがったりするなという、こんなことをしろと言われても舌を噛んで我慢しないといけないが、でも行ってしまったので、もう追っつきはしないことだ。
一朝にして 讎【あた】を結ばは後昆を奈【いかん】せん,時行 反するに當っては慎んで藏蹲【ぞうそん】せよ。
桃の花を著【つ】くるを視ば小【すこ】し騫【あ】ぐべし,月 申酉【しんゆう】に及わば怨を複するに利あらん。
汝を助けて五龍を九鯤に從わしめん,厥の邑を溺らせ之を昆崙に囚えよ。
皇甫の詩を作るは止睡昏【すいこん】をめるためなるに,辭に真に出づるを誇り 遂に上焚【じょうふん】す。
餘【われ】の和して增怪と煩とを要【もと】む,悔いむと欲すと雖も 舌 捫【な】づべからず。

現代語訳と訳註
(本文) #6

一朝結讎奈後昆,時行當反慎藏蹲。
視桃著花可小騫,月及申酉利複怨。
助汝五龍從九鯤,溺厥邑囚之昆崙。
皇甫作詩止睡昏,辭誇出真遂上焚。
要餘和增怪又煩,雖欲悔舌不可捫。


(下し文)
 一朝にして 讎【あた】を結ばは後昆を奈【いかん】せん,時行 反するに當っては慎んで藏蹲【ぞうそん】せよ。
桃の花を著【つ】くるを視ば小【すこ】し騫【あ】ぐべし,月 申酉【しんゆう】に及わば怨を複するに利あらん。
汝を助けて五龍を九鯤に從わしめん,厥の邑を溺らせ之を昆崙に囚えよ。
皇甫の詩を作るは止睡昏【すいこん】をめるためなるに,辭に真に出づるを誇り 遂に上焚【じょうふん】す。
餘【われ】の和して增怪と煩とを要【もと】む,悔いむと欲すと雖も 舌 捫【な】づべからず。


(現代語訳)
ある朝それを始めたとしたらやるか止めるか子々孫々までの喧嘩をするようなものだ、御時勢にあわないというならばひっそりと隠居でもするか。
二月三月、桃の花が咲くころには気分も高まってくるというもの、やがて7月八月になれば大水が出て何もかも怨みというものを洗い流して晴らしてくれる。
そして五頭立ての天を駆け巡る竜の御車と海を行くには九鯤に乗ることによって君を助ける、それでもぐずぐず言うようであればそいつらを束にしてとらえて崑崙山に押しこめてしまう。」
皇甫湜君のために眠気覚ましに作った詩であるというのに、「真実を吐き出した愛での事」とうぬぼれたことをいっている。(韓愈が皇甫湜を持ち上げて作ったことに対して皇甫湜が自惚れたことの返事をしたということ。)
わしにも要求したのはこの増長に合わせろと言い、怪しんだりうたがったりするなという、こんなことをしろと言われても舌を噛んで我慢しないといけないが、でも行ってしまったので、もう追っつきはしないことだ。


(訳注) #6
一朝結讎奈後昆,時行當反慎藏蹲。
ある朝それを始めたとしたらやるか止めるか子々孫々までの喧嘩をするようなものだ、御時勢にあわないというならばひっそりと隠居でもするか。
・後昆 のちの子孫。
・藏蹲 かくれうずくまる。


視桃著花可小騫,月及申酉利複怨。
二月三月、桃の花が咲くころには気分も高まってくるというもの、やがて7月八月になれば大水が出て何もかも怨みというものを洗い流して晴らしてくれる。
 頭をあげる。
申酉 中は七月、酉は八月。このころは大水の季節。


助汝五龍從九鯤,溺厥邑囚之昆崙。
そして五頭立ての天を駆け巡る竜の御車と海を行くには九鯤に乗ることによって君を助ける、それでもぐずぐず言うようであればそいつらを束にしてとらえて崑崙山に押しこめてしまう。」
五竜 五頭立ての天を駆け巡る馬車の馬の変わりに龍が引いてゆくこと。
九鯤 『荘子、逍遥遊』中国古代の想像上の大魚。北方の大海にすみ、大きさは幾千里だかわからないという。
・昆崙 中国古代の伝説上の山岳。崑崙山・崑崙丘・崑崙虚ともいう。中国の西方にあり、黄河の源で、玉を産出し、仙女の西王母がいるとされた。


皇甫作詩止睡昏,辭誇出真遂上焚。
皇甫湜君のために眠気覚ましに作った詩であるというのに、「真実を吐き出した愛での事」とうぬぼれたことをいっている。(韓愈が皇甫湜を持ち上げて作ったことに対して皇甫湜が自惚れたことの返事をしたということ。)
睡昏 ねむけ。
上焚 焚いて天に告げる。うぬぼれること。


要餘和增怪又煩,雖欲悔舌不可捫。
わしにも要求したのはこの増長に合わせろと言い、怪しんだりうたがったりするなという、こんなことをしろと言われても舌を噛んで我慢しないといけないが、でも行ってしまったので、もう追っつきはしないことだ。
悔舌 舌が動くのをひねってとめる。
しゃべらないようにする。うっかり皇甫湜めにつられて、こんな詩をつくって、ここまできて、やれしまったとおもってももうおそく、舌をつねってみても、どうにもならない、という意味だが、難しい七言の詩でもって冗談を繰り返す韓愈の多才な一面を見せつけたというところ詩である

陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 詩<93-#5>Ⅱ中唐詩498 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1573

 
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陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 詩<93-#5>Ⅱ中唐詩498 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1573


#4
谽呀钜壑頗黎盆,豆登五山瀛四尊。
その肉の山と大きな谷を頗黎盆に取り大口を開いて食うのだ。肉を盛る祭器はまるで五岳であり、瀛山を浮かべる四海をさかずきにしたようなものだ。
熙熙釂酬笑語言,雷公擘山海水翻。
なごやかに喜びあい、酒を酌み交わし、笑い、談義を尽くす。雷様は山に堕ち、海の水を翻している。
齒牙嚼齧舌齶反,電光殲磹赬目厖,
歯をむき出し、牙むく、そして舌を出したりひるがえしたり、電光が炸裂するかと思えば、きらめく光で目玉を大きくするのである。
頊冥收威避玄根,斥棄輿馬背厥孫。
水の神とされる顓頊・玄冥は威勢あがらずみずのそこにいる。乗用の車や馬、御輿を棄ててしまったのか 火の神までがでてこないのである。
縮身潛喘拳肩跟,君臣相憐加愛恩。
身をかがめて知事困り、息をころして、かたとくるぶしをくっつけていて水底にすまいしていて、顓頊・玄冥の家来どもは互いに哀れんで御恩を感謝している。

谽呀【かんか】たる钜壑【きょがく】は頗黎【はり】の盆,五山を豆登して 瀛【うみ】は四尊【しそん】。
熙熙【きき】として釂酬【しょうしゅう】し 笑って語言す,雷公 山を擘【つんざ】き海水翻る。
齒牙もて嚼齧【しゃくげつ】舌齶【ぜつがく】反【かえ】る,電光 殲磹【せんてん】し赬目【ていもく】厖【おおい】なり,
頊冥【ぎょくめい】威を收めて 玄根に避け,輿馬【よば】を斥棄【せきき】して厥【そ】の孫に背く。
身を縮め 潛かに喘いで肩跟【けんこん】を拳ぐ,君臣 相憐みて 愛恩を加える。


#5
命黑螭偵焚其元,天闕悠悠不可援。
なんとかしようと螭に命じて偵察させたのだけれど頭に火傷おってしまった。天の関門は遠いはるかなところにあり攀じ登ることはできはしない。
夢通上帝血面論,側身欲進叱於閽。
夢で天子に拝謁して上訴を行ったのはよいが、御傍に寄ろうとしたら臣官にどなられたのだ。
帝賜九河湔涕痕,又詔巫陽反其魂。
天帝はあわれにおもわれて世界の九河の水で涙洗わせてもらったのだ。そして 巫女つかわして「招魂」によって魂を呼び戻された。
徐命之前問何冤,火行於冬古所存。
魂は呼びもどされてその訴え聞いてくれた。そして 言われた「冬になれば昔から、火の神というものは存分にはたらくものだ。」
我如禁之絕其飧,女丁婦壬傳世婚。
われわれがそれを止めれば夕食の煮たきもできない、そうであれば「溫泉之神」といわれるといわれるものだけが結婚できるというものだ。

黑螭【こくち】に命じて偵【うかが】わしむるに其の元を焚かる,天闕 悠悠 援づ可からず。
夢に上帝に通じて血面もて論じ,身を側て進まむと欲するに閽に叱せらる。
帝 九河を賜うて涕痕【ていこん】を湔【そそ】がしめ,又 巫陽に詔【みことのり】して其の魂を反さしむ。
徐【おもむろ】に之を命じ 前【すす】めましめて問う 何の冤ぞ,火の冬に行くは古より存する所。
我 如【も】し 之を禁せば 其の飧【そん】を絕たん,女丁は壬に婦となり 世を傳えて婚す。


#6
一朝結讎奈後昆,時行當反慎藏蹲。
視桃著花可小騫,月及申酉利複怨。
助汝五龍從九鯤,溺厥邑囚之昆崙。
皇甫作詩止睡昏,辭誇出真遂上焚。
要餘和增怪又煩,雖欲悔舌不可捫。

一朝にして 讎【あた】を結ばは後昆を奈【いかん】せん,時行 反するに當っては慎んで藏蹲【ぞうそん】せよ。
桃の花を著【つ】くるを視ば小【すこ】し騫【あ】ぐべし,月 申酉【しんゆう】に及わば怨を複するに利あらん。
汝を助けて五龍を九鯤に從わしめん,厥の邑を溺らせ之を昆崙に囚えよ。
皇甫の詩を作るは止睡昏【すいこん】をめるためなるに,辭に真に出づるを誇り 遂に上焚【じょうふん】す。
餘【われ】の和して增怪と煩とを要【もと】む,悔いむと欲すと雖も 舌 捫【な】づべからず。


現代語訳と訳註
(本文)
#5
命黑螭偵焚其元,天闕悠悠不可援。
夢通上帝血面論,側身欲進叱於閽。
帝賜九河湔涕痕,又詔巫陽反其魂。
徐命之前問何冤,火行於冬古所存。
我如禁之絕其飧,女丁婦壬傳世婚。


(下し文)
黑螭【こくち】に命じて偵【うかが】わしむるに其の元を焚かる,天闕 悠悠 援づ可からず。
夢に上帝に通じて血面もて論じ,身を側て進まむと欲するに閽に叱せらる。
帝 九河を賜うて涕痕【ていこん】を湔【そそ】がしめ,又 巫陽に詔【みことのり】して其の魂を反さしむ。
徐【おもむろ】に之を命じ 前【すす】めましめて問う 何の冤ぞ,火の冬に行くは古より存する所。
我 如【も】し 之を禁せば 其の飧【そん】を絕たん,女丁は壬に婦となり 世を傳えて婚す。

(現代語訳)
なんとかしようと螭に命じて偵察させたのだけれど頭に火傷おってしまった。天の関門は遠いはるかなところにあり攀じ登ることはできはしない。
夢で天子に拝謁して上訴を行ったのはよいが、御傍に寄ろうとしたら臣官にどなられたのだ。
天帝はあわれにおもわれて世界の九河の水で涙洗わせてもらったのだ。そして 巫女つかわして「招魂」によって魂を呼び戻された。
魂は呼びもどされてその訴え聞いてくれた。そして 言われた「冬になれば昔から、火の神というものは存分にはたらくものだ。」
われわれがそれを止めれば夕食の煮たきもできない、そうであれば「溫泉之神」といわれるといわれるものだけが結婚できるというものだ。


(訳注) #5
命黑螭偵焚其元,天闕悠悠不可援。

なんとかしようと螭に命じて偵察させたのだけれど頭に火傷おってしまった。天の関門は遠いはるかなところにあり攀じ登ることはできはしない。
・天闕 天の関門。天帝の宮殿の門。また、宮城の門。宮門。禁闕。閶闔門。
・援 よじのぼる。


夢通上帝血面論,側身欲進叱於閽。
夢で天子に拝謁して上訴を行ったのはよいが、御傍に寄ろうとしたら臣官にどなられたのだ。
・血面 血まみれの顔。
・閽 周時代の官名。王宮の門の開閉を任務とする臣官。


帝賜九河湔涕痕,又詔巫陽反其魂。
天帝はあわれにおもわれて世界の九河の水で涙洗わせてもらったのだ。そして 巫女つかわして「招魂」によって魂を呼び戻された。
巫陽 天帝のむすめ。宋玉の「招魂」に、屈原の魂塊が離散したのを天帝があわれみ、むすめの巫陽にさがさせ、よびかえしてやった、という話がみえる。


徐命之前問何冤,火行於冬古所存。
魂は呼びもどされてその訴え聞いてくれた。そして 言われた「冬になれば昔から、火の神というものは存分にはたらくものだ。」


我如禁之絕其飧,女丁婦壬傳世婚。
われわれがそれを止めれば夕食の煮たきもできない、そうであれば「溫泉之神」といわれるといわれるものだけが結婚できるというものだ。
 夕食のことだが、ここでは煮たきした食
事というほどの意。
女丁婦壬 #4に登場した「頊冥收威避玄根」顓頊と玄冥の玄冥の子が壬夫安で祝融氏のむすめが丁芊という共に「水仙」を学んで習得したので「溫泉之神」とされた。日本でいう釜戸の神というところであろう。『東山少連』「玄冥之子曰壬夫安,祝融氏之女曰丁芊,俱學水仙,是為溫泉之神。」

陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 韓退之(韓愈)詩<93-#4>Ⅱ中唐詩497 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1570

 
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#3
攢雜啾嚄沸篪塤,彤幢絳旃紫纛幡。
竹製の横笛をふき、土笛を吹き鳴らして沸き立ち、ざわめくのであり、赤丹を塗った旗矛あり、柄の曲がった旗があり、紫の旗まであるのだ。
炎官熱屬朱冠褌,髹其肉皮通髀臀。
炎の神の従属の者たちは赤い帽子にふんどし、スカート姿でいるし、皮膚の肉には赤漆を塗りつけていて肩から尻まで塗っているのを見せつけている。
頹胸垤腹車掀轅,緹顏靺股豹兩鞬。
肉のたれ下った胸、ふくれ上った腹をゆすって 車の長柄棒をかき上げふりあげて、黒ずんだ赤ら顔、あかねぞめの革の股引、弓袋ふりわけ、きめている。
霞車虹靷日轂轓,丹蕤縓蓋緋繙鰭。
霞の中を虹の手綱をつけて、日輪の車にこしきと被いをつけて鞭うつのである、そしてあかい旗かざり、赤の幌、緋の旗ひれをゆすってすすむ。
紅帷赤幕羅脤膰,衁池波風肉陵屯。
赤の幔幕の内側には祭に供える肉がはるか向こうまで並べられており、血の池には風がそよいでなみがたち、肉の山はそびえるほど高いのである。

啾嚄【しゅうかく】を攢雜【さんざつ】して篪塤【ちけん】沸く,彤幢【とうどう】絳旃【こうせん】紫纛幡【しとうばん】。
炎官 熱屬 冠褌【かんこん】を朱にし,其の肉皮を髹【きゅう】にし 髀臀【ひどん】に通ず。
頹胸【たいきょう】垤腹【てつふく】車 轅【ながえ】を掀【かか】ぐ,緹顏【ていがん】靺股【ばつこ】豹の兩鞬【りょうけん】。
霞車【かしゃ】虹靷【こういん】日の轂轓【こくへん】,丹蕤【たんすき】縓蓋【せんがい】緋に鰭【ひれ】を繙【ひるが】えす。
紅帷 赤幕 脤膰【はり】の羅【つら】ぬ,衁池【こうち】波風 肉の陵屯。

#4
谽呀钜壑頗黎盆,豆登五山瀛四尊。
その肉の山と大きな谷を頗黎盆に取り大口を開いて食うのだ。肉を盛る祭器はまるで五岳であり、瀛山を浮かべる四海をさかずきにしたようなものだ。
熙熙釂酬笑語言,雷公擘山海水翻。
なごやかに喜びあい、酒を酌み交わし、笑い、談義を尽くす。雷様は山に堕ち、海の水を翻している。
齒牙嚼齧舌齶反,電光殲磹赬目厖,
歯をむき出し、牙むく、そして舌を出したりひるがえしたり、電光が炸裂するかと思えば、きらめく光で目玉を大きくするのである。
頊冥收威避玄根,斥棄輿馬背厥孫。
水の神とされる顓頊・玄冥は威勢あがらずみずのそこにいる。乗用の車や馬、御輿を棄ててしまったのか 火の神までがでてこないのである。
縮身潛喘拳肩跟,君臣相憐加愛恩。
身をかがめて知事困り、息をころして、かたとくるぶしをくっつけていて水底にすまいしていて、顓頊・玄冥の家来どもは互いに哀れんで御恩を感謝している。
谽呀【かんか】たる钜壑【きょがく】は頗黎【はり】の盆,五山を豆登して 瀛【うみ】は四尊【しそん】。
熙熙【きき】として釂酬【しょうしゅう】し 笑って語言す,雷公 山を擘【つんざ】き海水翻る。
齒牙もて嚼齧【しゃくげつ】舌齶【ぜつがく】反【かえ】る,電光 殲磹【せんてん】し赬目【ていもく】厖【おおい】なり,
頊冥【ぎょくめい】威を收めて 玄根に避け,輿馬【よば】を斥棄【せきき】して厥【そ】の孫に背く。
身を縮め 潛かに喘いで肩跟【けんこん】を拳ぐ,君臣 相憐みて 愛恩を加える。


#5
命黑螭偵焚其元,天闕悠悠不可援。
夢通上帝血面論,側身欲進叱於閽。
帝賜九河湔涕痕,又詔巫陽反其魂。
徐命之前問何冤,火行於冬古所存。
我如禁之絕其飧,女丁婦壬傳世婚。

黑螭【こくち】に命じて偵【うかが】わしむるに其の元を焚かる,天闕 悠悠 援づ可からず。
夢に上帝に通じて血面もて論じ,身を側て進まむと欲するに閽に叱せらる。
帝 九河を賜うて涕痕【ていこん】を湔【そそ】がしめ,又 巫陽に詔【みことのり】して其の魂を反さしむ。
徐【おもむろ】に之を命じ 前【すす】めましめて問う 何の冤ぞ,火の冬に行くは古より存する所。
我 如【も】し 之を禁せば 其の飧【そん】を絕たん,女丁は壬に婦となり 世を傳えて婚す。


#6
一朝結讎奈後昆,時行當反慎藏蹲。
視桃著花可小騫,月及申酉利複怨。
助汝五龍從九鯤,溺厥邑囚之昆崙。
皇甫作詩止睡昏,辭誇出真遂上焚。
要餘和增怪又煩,雖欲悔舌不可捫。

一朝にして 讎【あた】を結ばは後昆を奈【いかん】せん,時行 反するに當っては慎んで藏蹲【ぞうそん】せよ。
桃の花を著【つ】くるを視ば小【すこ】し騫【あ】ぐべし,月 申酉【しんゆう】に及わば怨を複するに利あらん。
汝を助けて五龍を九鯤に從わしめん,厥の邑を溺らせ之を昆崙に囚えよ。
皇甫の詩を作るは止睡昏【すいこん】をめるためなるに,辭に真に出づるを誇り 遂に上焚【じょうふん】す。
餘【われ】の和して增怪と煩とを要【もと】む,悔いむと欲すと雖も 舌 捫【な】づべからず。


現代語訳と訳註
(本文)
#4
谽呀钜壑頗黎盆,豆登五山瀛四尊。
熙熙釂酬笑語言,雷公擘山海水翻。
齒牙嚼齧舌齶反,電光殲磹赬目厖,
頊冥收威避玄根,斥棄輿馬背厥孫。
縮身潛喘拳肩跟,君臣相憐加愛恩。


(下し文)
谽呀【かんか】たる钜壑【きょがく】は頗黎【はり】の盆,五山を豆登して 瀛【うみ】は四尊【しそん】。
熙熙【きき】として釂酬【しょうしゅう】し 笑って語言す,雷公 山を擘【つんざ】き海水翻る。
齒牙もて嚼齧【しゃくげつ】舌齶【ぜつがく】反【かえ】る,電光 殲磹【せんてん】し赬目【ていもく】厖【おおい】なり,
頊冥【ぎょくめい】威を收めて 玄根に避け,輿馬【よば】を斥棄【せきき】して厥【そ】の孫に背く。
身を縮め 潛かに喘いで肩跟【けんこん】を拳ぐ,君臣 相憐みて 愛恩を加える。


(現代語訳)
その肉の山と大きな谷を頗黎盆に取り大口を開いて食うのだ。肉を盛る祭器はまるで五岳であり、瀛山を浮かべる四海をさかずきにしたようなものだ。
なごやかに喜びあい、酒を酌み交わし、笑い、談義を尽くす。雷様は山に堕ち、海の水を翻している。
歯をむき出し、牙むく、そして舌を出したりひるがえしたり、電光が炸裂するかと思えば、きらめく光で目玉を大きくするのである。
水の神とされる顓頊・玄冥は威勢あがらずみずのそこにいる。乗用の車や馬、御輿を棄ててしまったのか 火の神までがでてこないのである。
身をかがめて知事困り、息をころして、かたとくるぶしをくっつけていて水底にすまいしていて、顓頊・玄冥の家来どもは互いに哀れんで御恩を感謝している。


(訳注) #4
谽呀鉅壑頗黎盆,豆登五山瀛四尊。
その肉の山と大きな谷を頗黎盆に取り大口を開いて食うのだ。肉を盛る祭器はまるで五岳であり、瀛山を浮かべる四海をさかずきにしたようなものだ。
・谽呀 谷の大いにひらけたさま。パックリとひらいた、というほどの意。
・鉅壑 大きな谷。
・頗黎 赤玉。
・豆登 肉を盛る祭器。


熙熙釂酬笑語言,雷公擘山海水翻。
なごやかに喜びあい、酒を酌み交わし、笑い、談義を尽くす。雷様は山に堕ち、海の水を翻している。
熙熙【きき】. なごやかに喜びあうさま。 「衆人熙熙として楽しむ」. 【熙熙攘攘】ききじょうじょう. 大勢の人が賑やかに行き交うさま。 「熙熙」は喜んで楽しむさま。「攘攘」は入り乱れるさま、多いさま。 「攘攘」は「壌壌」とも書く。 【熙笑】きしょう. なごやかに笑うこと。
・釂酬 のみほしたり、返杯したりする。


齒牙嚼齧舌齶反,電光殲磹赬目厖,
歯をむき出し、牙むく、そして舌を出したりひるがえしたり、電光が炸裂するかと思えば、きらめく光で目玉を大きくするのである。
殲磹 きらめく。
・暖/〔暖に偏が目〕 目の大きなさま.


頊冥收威避玄根,斥棄輿馬背厥孫。
水の神とされる顓頊・玄冥は威勢あがらずみずのそこにいる。乗用の車や馬、御輿を棄ててしまったのか 火の神までがでてこないのである。
・頊冥 顓頊と玄冥。顓頊は中国古代の伝説上の天子。玄冥はどちらの文字も北を示し北方の神。顓頊・玄冥いずれも冬をつかさどり、水の神とされる。
・玄根 『列子』天瑞篇に「玄牝の門はこれ天地の根」 の語がみえる。ここでは、幽玄なものの根元ということで、水底をさすのであろう。万物生々流転、疑独=道を窮(きわ)む
・斥棄 すてさる。
・輿馬 乗用の車や馬。
・背厭孫 中国の五行説では、水は木を生じ、木から火が生まれる。いま、水の神の前項や玄英が、その孫にあたる火の神の祝融たちをおそれて逃げかくれしているので、その孫に背くという。

 五行関係図

縮身潛喘拳肩跟,君臣相憐加愛恩。
身をかがめて知事困り、息をころして、かたとくるぶしをくっつけていて水底にすまいしていて、顓頊・玄冥の家来どもは互いに哀れんで御恩を感謝している。
肩跟 かたとくるぶし。
・君臣 顧頚と玄冥とをさす。

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陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 韓退之(韓愈)詩<93-#3>Ⅱ中唐詩496 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1567


#3
攢雜啾嚄沸篪塤,彤幢絳旃紫纛幡。
竹製の横笛をふき、土笛を吹き鳴らして沸き立ち、ざわめくのであり、赤丹を塗った旗矛あり、柄の曲がった旗があり、紫の旗まであるのだ。
炎官熱屬朱冠褌,髹其肉皮通髀臀。
炎の神の従属の者たちは赤い帽子にふんどし、スカート姿でいるし、皮膚の肉には赤漆を塗りつけていて肩から尻まで塗っているのを見せつけている。
頹胸垤腹車掀轅,緹顏靺股豹兩鞬。
肉のたれ下った胸、ふくれ上った腹をゆすって 車の長柄棒をかき上げふりあげて、黒ずんだ赤ら顔、あかねぞめの革の股引、弓袋ふりわけ、きめている。
霞車虹靷日轂轓,丹蕤縓蓋緋繙鰭。
霞の中を虹の手綱をつけて、日輪の車にこしきと被いをつけて鞭うつのである、そしてあかい旗かざり、赤の幌、緋の旗ひれをゆすってすすむ。
紅帷赤幕羅脤膰,衁池波風肉陵屯。
赤の幔幕の内側には祭に供える肉がはるか向こうまで並べられており、血の池には風がそよいでなみがたち、肉の山はそびえるほど高いのである。

啾嚄【しゅうかく】を攢雜【さんざつ】して篪塤【ちけん】沸く,彤幢【とうどう】絳旃【こうせん】紫纛幡【しとうばん】。
炎官 熱屬 冠褌【かんこん】を朱にし,其の肉皮を髹【きゅう】にし 髀臀【ひどん】に通ず。
頹胸【たいきょう】垤腹【てつふく】車 轅【ながえ】を掀【かか】ぐ,緹顏【ていがん】靺股【ばつこ】豹の兩鞬【りょうけん】。
霞車【かしゃ】虹靷【こういん】日の轂轓【こくへん】,丹蕤【たんすき】縓蓋【せんがい】緋に鰭【ひれ】を繙【ひるが】えす。
紅帷 赤幕 脤膰【はり】の羅【つら】ぬ,衁池【こうち】波風 肉の陵屯。


現代語訳と訳註
(本文)
#3
攢雜啾嚄沸篪塤,彤幢絳旃紫纛幡。
炎官熱屬朱冠褌,髹其肉皮通髀臀。
頹胸垤腹車掀轅,緹顏靺股豹兩鞬。
霞車虹靷日轂轓,丹蕤縓蓋緋繙鰭。
紅帷赤幕羅脤膰,衁池波風肉陵屯。


(下し文)
啾嚄【しゅうかく】を攢雜【さんざつ】して篪塤【ちけん】沸く,彤幢【とうどう】絳旃【こうせん】紫纛幡【しとうばん】。
炎官 熱屬 冠褌【かんこん】を朱にし,其の肉皮を髹【きゅう】にし 髀臀【ひどん】に通ず。
頹胸【たいきょう】垤腹【てつふく】車 轅【ながえ】を掀【かか】ぐ,緹顏【ていがん】靺股【ばつこ】豹の兩鞬【りょうけん】。
霞車【かしゃ】虹靷【こういん】日の轂轓【こくへん】,丹蕤【たんすき】縓蓋【せんがい】緋に鰭【ひれ】を繙【ひるが】えす。
紅帷 赤幕 脤膰【はり】の羅【つら】ぬ,衁池【こうち】波風 肉の陵屯。


(現代語訳)
竹製の横笛をふき、土笛を吹き鳴らして沸き立ち、ざわめくのであり、赤丹を塗った旗矛あり、柄の曲がった旗があり、紫の旗まであるのだ。
炎の神の従属の者たちは赤い帽子にふんどし、スカート姿でいるし、皮膚の肉には赤漆を塗りつけていて肩から尻まで塗っているのを見せつけている。
肉のたれ下った胸、ふくれ上った腹をゆすって 車の長柄棒をかき上げふりあげて、黒ずんだ赤ら顔、あかねぞめの革の股引、弓袋ふりわけ、きめている。
霞の中を虹の手綱をつけて、日輪の車にこしきと被いをつけて鞭うつのである、そしてあかい旗かざり、赤の幌、緋の旗ひれをゆすってすすむ。
赤の幔幕の内側には祭に供える肉がはるか向こうまで並べられており、血の池には風がそよいでなみがたち、肉の山はそびえるほど高いのである。


(訳注) #3
攢雜啾嚄沸篪塤,彤幢絳旃紫纛幡。

竹製の横笛をふき、土笛を吹き鳴らして沸き立ち、ざわめくのであり、赤丹を塗った旗矛あり、柄の曲がった旗があり、紫の旗まであるのだ。
篪塤 竹製の横笛と、土笛。
彤幢 赤丹を塗った旗矛。幢:1 昔、儀式または軍隊の指揮などに用いた旗の一種。彩色した布で作り、竿の先につけたり、柱に懸けたりした。はたほこ。 2 魔軍を制する仏・菩薩(ぼさつ)のしるし。また、仏堂の装飾とするたれぎぬ。
・絳旃 濃い赤色の練り絹の旗の靡く所に着けた柄の曲がった旗。
紫纛幡 むらさきで染められ飾られた旗。


炎官熱屬朱冠褌,髹其肉皮通髀臀。
炎の神の従属の者たちは赤い帽子にふんどし、スカート姿でいるし、皮膚の肉には赤漆を塗りつけていて肩から尻まで塗っているのを見せつけている。
・炎官熱屬 炎の神の従属の者たち。
朱冠 赤い帽子。
 ふんどし。スカート。
 赤漆を塗りつける。
・髀臀 肩から尻まで。


頹胸垤腹車掀轅,緹顏靺股豹兩鞬。
肉のたれ下った胸、ふくれ上った腹をゆすって 車の長柄棒をかき上げふりあげて、黒ずんだ赤ら顔、あかねぞめの革の股引、弓袋ふりわけ、きめている。
・頹胸垤腹 肉のたれ下った胸、ふくれ上った腹。
緹顏 黒ずんだ赤ら顔。
・靺股 あかねぞめの革の股引。
・鞬 弓ぶくろ。


霞車虹靷日轂轓,丹蕤縓蓋緋繙鰭。
霞の中を虹の手綱をつけて、日輪の車にこしきと被いをつけて鞭うつのである、そしてあかい旗かざり、赤の幌、緋の旗ひれをゆすってすすむ。
・虹靷 虹のひきづな。
轂轓 車のこしきと被い。
・丹蕤 あかい旗かざり。
縓蓋 うすあかいろのおおい。
 〔怨の心の部分が巾〕ひれ。


帷赤幕羅脤膰,衁池波風肉陵屯。
赤の幔幕の内側には祭に供える肉がはるか向こうまで並べられており、血の池には風がそよいでなみがたち、肉の山はそびえるほど高いのである。
・脤膰 ひもろぎ。祭に供える肉。
・衁池 血の池。
・陵屯 おか。

陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 韓退之(韓愈)詩<93-#2>Ⅱ中唐詩495 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1564

 
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陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 韓退之(韓愈)詩<93-#2>Ⅱ中唐詩495 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1564


#2
三光弛隳不複暾,虎熊麋豬逮猴猿。
日月星辰 天にあるものすべてものが地に堕ちてくる。地にいる虎 熊 鹿 猪 猿猴のたぐいも一緒になる。
水龍鼉龜魚與黿,鴉鴟雕鷹雉鵠鹍。
水の中に住む、水竜【みずち】鼉【すっぽん】亀【かめ】魚【うお】黿【やもり】たちに、鳥の鴉【からす】鴟【とび】雕【わし】鷹【たか】雉【きじ】鵠【くぐい】鹍【とおまる】がいる。
燖炰煨爊孰飛奔,祝融告休酌卑尊,
それを焼いたり、焦がしたり、蒸されたり、そして、みんな飛び出したのだ。火をつかさどる神はこのあたりで攻撃をやめよと命令するとむれいこうとなってさかもりにうつるのである。
錯陳齊玫辟華園,芙蓉披猖塞鮮繁。
火の玉を松明代わりにならべた花園で宴はひらけられている、紅蓮の花束は目も鮮かにかざられている。
千鍾萬鼓咽耳喧。
千の鐘をならし、万の鼓をとどろきわたり耳をつんざくばかりなのだ。


三光 弛隳【しき】して 復た暾【あきら】かならず、
水龍 鼉 龜 魚と黿と,鴉 鴟 雕 鷹 雉 鵠 鹍。
燖炰【じんぽう】煨爊【わいおう】孰【いづ】れか飛奔【ひほん】する,祝融【しゅくゆう】休を告げ 卑尊【ひそん】に酌む,
齊玫【せいばい】錯陳【さくちん】し 華園【かえん】を辟【ひら】く,芙蓉 披猖【ひしょう】し塞って鮮繁【せんぱん】。
千鍾 萬鼓 耳に咽【むせ】んで喧【かますび】す。


現代語訳と訳註
(本文)
#2
三光弛隳不複暾,虎熊麋豬逮猴猿。
水龍鼉龜魚與黿,鴉鴟雕鷹雉鵠鹍。
燖炰煨爊孰飛奔,祝融告休酌卑尊,
錯陳齊玫辟華園,芙蓉披猖塞鮮繁。
千鍾萬鼓咽耳喧。


(下し文)
三光 弛隳【しき】して 復た暾【あきら】かならず、
水龍 鼉 龜 魚と黿と,鴉 鴟 雕 鷹 雉 鵠 鹍。
燖炰【じんぽう】煨爊【わいおう】孰【いづ】れか飛奔【ひほん】する,祝融【しゅくゆう】休を告げ 卑尊【ひそん】に酌む,
齊玫【せいばい】錯陳【さくちん】し 華園【かえん】を辟【ひら】く,芙蓉 披猖【ひしょう】し塞って鮮繁【せんぱん】。
千鍾 萬鼓 耳に咽【むせ】んで喧【かますび】す。


(現代語訳)
日月星辰 天にあるものすべてものが地に堕ちてくる。地にいる虎 熊 鹿 猪 猿猴のたぐいも一緒になる。
水の中に住む、水竜【みずち】鼉【すっぽん】亀【かめ】魚【うお】黿【やもり】たちに、鳥の鴉【からす】鴟【とび】雕【わし】鷹【たか】雉【きじ】鵠【くぐい】鹍【とおまる】がいる。
それを焼いたり、焦がしたり、蒸されたり、そして、みんな飛び出したのだ。火をつかさどる神はこのあたりで攻撃をやめよと命令するとむれいこうとなってさかもりにうつるのである。
火の玉を松明代わりにならべた花園で宴はひらけられている、紅蓮の花束は目も鮮かにかざられている。
・錯陳 まぜならべる。
千の鐘をならし、万の鼓をとどろきわたり耳をつんざくばかりなのだ。


(訳注) #2
三光弛隳不複暾,虎熊麋豬逮猴猿。

日月星辰 天にあるものすべてものが地に堕ちてくる。地にいる虎 熊 鹿 猪 猿猴のたぐいも一緒になる。
三光 日・月・星。
・弛隳 ゆるみくずれる。
・麋 大鹿。
・豬 一つの毛穴から三本の毛が生えているぶた。ここでは野豬すなわち、いのしし、のこと。


水龍鼉龜魚與黿,鴉鴟雕鷹雉鵠鵾。
水の中に住む、水竜【みずち】鼉【すっぽん】亀【かめ】魚【うお】黿【やもり】たちに、鳥の鴉【からす】鴟【とび】雕【わし】鷹【たか】雉【きじ】鵠【くぐい】鹍【とおまる】がいる。
 わにの一種。
黿 あおうみがめ。山の中にわにやうみがめなどいるものではないが、この詩た動物名はとって来て、遠慮なしに使っているのである。これをいちいち動物図
鑑にあたって、九世紀中国には陸上にこんな動物がいたのかなどと驚く必要はない。こうした羅列法は仏典によく見える。特に七言句なので面白さを強調することになる。
 とうまる。大型の鷄。


燖炰煨爊孰飛奔,祝融告休酌卑尊,
それを焼いたり、焦がしたり、蒸されたり、そして、みんな飛び出したのだ。火を司る神はこのあたりで攻撃をやめよと命令すると無礼講となって酒盛りにうつるのである
・燖炰 煮ることと焼くこと。
・煨爊 うずめ焼くこと。これらの文字も、一字一字せんさくする必要はない。おそらく、韓愈のその時の気分で火に関係のある文字は、杏古な感じのするものなら、手あたりしだいに使用されるだろう。
・祝融 火をつかさどる神。
・告休 ふつう休暇をとるという意味だが、ここでは攻撃をやめよと命令する、というほどの意で使われているのであろう。
・卑尊 身分のひくいもの高いもの。火の神の手下をさす。


錯陳齊玫辟華園,芙蓉披猖塞鮮繁。
火の玉を松明代わりにならべた花園で宴はひらけられている、紅蓮の花束は目も鮮かにかざられている。
錯陳 まぜならべる。
斉玫 火をふき出す南方産の珠。
・華園 火のもえさかっているところを花園と見たてたのだ。
芙蓉 紅蓮、これも火。
披猖 みだれる。


千鍾萬鼓咽耳喧。
千の鐘をならし、万の鼓をとどろきわたり耳をつんざくばかりなのだ。
千鐘万鼓 鐘や太鼓でドンチャソ騒ぎをやりだした。

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陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 韓退之(韓愈)詩<93-#1>Ⅱ中唐詩494 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1561


陸渾山火和皇甫湜用其韻
    (湜時為陸渾尉)#1
皇甫補官古賁渾,時當玄冬澤乾源。
皇甫君の任地は 古代の賁渾といわれたところである、今、季節は厳冬であるが水源の地でさえも乾ききっている。
山狂穀很相吐吞,風怒不休何軒軒。
山は狂ったような音を立て、谷も狂ってせめぎあっている、互いに吐き出して、呑みこんでいる。そしてケンケンと怒って、風も怒って荒れてやまない。
擺磨出火以自燔,有聲夜中驚莫原。
切り開き取り除きながら摩擦してとうとう火を吹き 燃え出しきている。大声にびっくりし、夜中に調査して驚き、どうしたのかもともとのことしらべてもしらべようがない。
天跳地踔顛乾坤,赫赫上照窮崖垠。
天は跳り、地はとび上がることでてんちはひっくりかえる。空のはてまでまっ赤にこがし、かがやき照らしている。
截然高周燒四垣,神焦鬼爛無逃門。
高い空を東西南北に向かって焼けて、引き裂けるのであり、鬼、神、靈も爛れてしまって、逃げるに道ないのである。
陸渾山【りくこんさん】火 皇甫湜【こうほしょく】に和し其の韻を用う。(湜時に陸渾の尉と為す)
#1
皇甫 官に補せらる、古の賁渾【りくこん】、時 玄冬に當って澤は源を乾かす。
山狂ひ 谷很【たけ】り 相吐呑【とどん】す、風怒って休まず 何ぞ軒軒たる。
擺磨【はいま】して火を出し 以て自ら燔く、聾有り 夜中驚いて原【たづ】ぬる莫し。
天跳り 地踔【あが】り 乾坤を顛【くつがえ】す、赫赫として上照し 崖垠【がいぎん】を窮む。
截然【せつぜん】として高く周【めぐ】って四垣【しえん】を焼く、神 焦【こが】れ 鬼 爛【ただ】れ 逃るる門無し。

終南山03


現代語訳と訳註
(本文)
陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉)#1
皇甫補官古賁渾,時當玄冬澤乾源。
山狂穀很相吐吞,風怒不休何軒軒。
擺磨出火以自燔,有聲夜中驚莫原。
天跳地踔顛乾坤,赫赫上照窮崖垠。
截然高周燒四垣,神焦鬼爛無逃門。


(下し文)
陸渾山【りくこんさん】火 皇甫湜【こうほしょく】に和し其の韻を用う。(湜時に陸渾の尉と為す)
#1
皇甫 官に補せらる、古の賁渾【りくこん】、時 玄冬に當って澤は源を乾かす。
山狂ひ 谷很【たけ】り 相吐呑【とどん】す、風怒って休まず 何ぞ軒軒たる。
擺磨【はいま】して火を出し 以て自ら燔く、聾有り 夜中驚いて原【たづ】ぬる莫し。
天跳り 地踔【あが】り 乾坤を顛【くつがえ】す、赫赫として上照し 崖垠【がいぎん】を窮む。
截然【せつぜん】として高く周【めぐ】って四垣【しえん】を焼く、神 焦【こが】れ 鬼 爛【ただ】れ 逃るる門無し。


(現代語訳)
皇甫君の任地は 古代の賁渾といわれたところである、今、季節は厳冬であるが水源の地でさえも乾ききっている。
山は狂ったような音を立て、谷も狂ってせめぎあっている、互いに吐き出して、呑みこんでいる。そしてケンケンと怒って、風も怒って荒れてやまない。
切り開き取り除きながら摩擦してとうとう火を吹き 燃え出しきている。大声にびっくりし、夜中に調査して驚き、どうしたのかもともとのことしらべてもしらべようがない。
天は跳り、地はとび上がることでてんちはひっくりかえる。空のはてまでまっ赤にこがし、かがやき照らしている。
高い空を東西南北に向かって焼けて、引き裂けるのであり、鬼、神、靈も爛れてしまって、逃げるに道ないのである。


(訳注)
陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉)#1

詩の背景については #0を参照。

皇甫補官古賁渾,時當玄冬澤乾源。
皇甫君の任地は 古代の賁渾といわれたところである、今、季節は厳冬であるが水源の地でさえも乾ききっている。
賁渾 陸渾の古名。『春秋公羊伝』宣公三年に「楚子は賁渾の戒を伐つ」とあり、陸徳明の『経典釈文』にこの貴について、旧音はリク、あるいは音はホン、としている。普通の人が陸渾と書くところを賁渾とかかずにいられないところが、韓愈の趣味であり、また詩法であった。
極端に古いものは極端に新しいものでありうるのであり、普通の人の知識や判断力から遠ざかることも、新しいものでありうる。韓愈の文学の新しさは、それを意識的に方法としたものであった。杜甫は陸渾としている。
玄冬 冬。五行思想。青・赤・白・黒の四色を春・夏・秋・冬に配当する習慣がある。玄は黒。


山狂穀很相吐吞,風怒不休何軒軒。
山は狂ったような音を立て、谷も狂ってせめぎあっている、互いに吐き出して、呑みこんでいる。
そしてケンケンと怒って、風も怒って荒れてやまない。
・很 せめぎあらそう。
軒軒 吹きまくるさま。


擺磨出火以自燔,有聲夜中驚莫原。
切り開き取り除きながら摩擦してとうとう火を吹き 燃え出しきている。大声にびっくりし、夜中に調査して驚き、どうしたのかもともとのことしらべてもしらべようがない
擺磨 切り開き取り除きながら摩擦する。
莫原 どうしたのかもともとのことしらべてもしらべようがない。


天跳地踔顛乾坤,赫赫上照窮崖垠。
天は跳り、地はとび上がることでてんちはひっくりかえる。空のはてまでまっ赤にこがし、かがやき照らしている。
・綽 とび上がる。
乾坤 天地。
赫赫 まっ赤にかがやくさま。
崖根 四海にいたる果て。地の果てには崖で海に至る。


截然高周燒四垣,神焦鬼爛無逃門。
高い空を東西南北に向かって焼けて、引き裂けるのであり、鬼、神、靈も爛れてしまって、逃げるに道ないのである。
截然 ひきさけるさま。
神焦鬼爛 神鬼焦欄と同じ、鬼、神、靈もやけただれる。


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陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 韓退之(韓愈)詩<93-#0>Ⅱ中唐詩493 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1558

陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉) 韓退之(韓愈)詩<93-#0>Ⅱ中唐詩493 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1558


陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉)
 #1
  皇甫補官古賁渾,時當玄冬澤乾源。
  山狂穀很相吐吞,風怒不休何軒軒。
  擺磨出火以自燔,有聲夜中驚莫原。
  天跳地踔顛乾坤,赫赫上照窮崖垠。
  截然高周燒四垣,神焦鬼爛無逃門。
#2
  三光弛隳不複暾,虎熊麋豬逮猴猿。
  水龍鼉龜魚與黿,鴉鴟雕鷹雉鵠鹍。
  燖炰煨爊孰飛奔,祝融告休酌卑尊,
  錯陳齊玫辟華園,芙蓉披猖塞鮮繁。
  千鍾萬鼓咽耳喧。
#3
  攢雜啾嚄沸篪塤,彤幢絳旃紫纛幡。
  炎官熱屬朱冠褌,髹其肉皮通髀臀。
  頹胸垤腹車掀轅,緹顏靺股豹兩鞬。
  霞車虹靷日轂轓,丹蕤縓蓋緋繙鰭。
  紅帷赤幕羅脤膰,衁池波風肉陵屯。
#4
  谽呀钜壑頗黎盆,豆登五山瀛四尊。
  熙熙釂酬笑語言,雷公擘山海水翻。
  齒牙嚼齧舌齶反,電光殲磹赬目厖,
  頊冥收威避玄根,斥棄輿馬背厥孫。
  縮身潛喘拳肩跟,君臣相憐加愛恩。
#5
  命黑螭偵焚其元,天闕悠悠不可援。
  夢通上帝血面論,側身欲進叱於閽。
  帝賜九河湔涕痕,又詔巫陽反其魂。
  徐命之前問何冤,火行於冬古所存。
  我如禁之絕其飧,女丁婦壬傳世婚。
#6
  一朝結讎奈後昆,時行當反慎藏蹲。
  視桃著花可小騫,月及申酉利複怨。
  助汝五龍從九鯤,溺厥邑囚之昆崙。
  皇甫作詩止睡昏,辭誇出真遂上焚。
  要餘和增怪又煩,雖欲悔舌不可捫。


山火事をうたった奇怪な詩「陸渾山火、皇甫湜(こうほしょく、777—835)に和し、其の韻を用う」はこの年の冬の作である。皇甫湜、字は持正・睦州新安の人で、806年元和元年進士試験を通過し、陸渾県の尉となり、元和三年、さらに上級の賢良方正能直言極諌科に及第し、すこぶる意気があがっていた。韓愈にとっては11歳年下の友人でもあり弟子でもあったひとである。皇甫湜は、その任地でおこった大きな山火事を「陸渾山火」という長詩に仕立てて、韓愈におくった。皇甫湜は散文にはひいでた才能をもっているくせに、詩となるとてんで見ばえがしない。

「こんないい材料をもちながら、きみはまた、なんという詩をのたくる男なんだ」韓魚が笑うと、「なんだって、このリアリズムの極致に対して、よくもそんなことがほざけるもんだ。じゃあ、ひとつ、あなたもつくってみるといい、碌なもののできないことは、はじめからわかっているが、ものはためしだ」
結局、韓愈の作がのこって、皇甫湜の原作はのこっていない。

この詩も諷意が濃い。皇甫湜が賢良方正能璽一還諌科の試験に提出した答案は、内容が、当時の宰相李吉帝の施策を手きびしく批判したものであったため、宰相の憎しみをうけ、試験委員であったかれの叔父王涯は情実で甥を及第させたとの疑いで、瀞林学士から舐州司馬に乾せられ、さらに豪州刺史に遣った。
「璽一品諌」すべきものが、その任務をはたしたことによって、こうしたむくいをえ、おのれの任務に忠実でない宰相が栄えている事実に対するいきどおりが、皇甫湜の詩の中で、山火事にかこつけてうたわれていたのであろう。相似た感慨をもつ韓愈が、同感唱和して、この奇怪な諷詩の出現となったものと思われる。


陸渾山火和皇甫湜用其韻(湜時為陸渾尉)#1
皇甫補官古賁渾,時當玄冬澤乾源。
山狂穀很相吐吞,風怒不休何軒軒。
擺磨出火以自燔,有聲夜中驚莫原。
天跳地踔顛乾坤,赫赫上照窮崖垠。
截然高周燒四垣,神焦鬼爛無逃門。

陸渾山【りくこんさん】火 皇甫湜【こうほしょく】に和し其の韻を用う。(湜時に陸渾の尉と為す)
#1
皇甫 官に補せらる、古の賁渾【りくこん】、時 玄冬に當って澤は源を乾かす。
山狂ひ 谷很【たけ】り 相吐呑【とどん】す、風怒って休まず 何ぞ軒軒たる。
擺磨して火を出し 以て自ら燔く、聾有り 夜中驚いて原【たづ】ぬる莫し。
天跳り 地踔【あが】り 乾坤を顛【くつがえ】す、赫赫として上照し 崖垠【がいぎん】を窮む。
截然【せつぜん】として高く周【めぐ】って四垣【しえん】を焼く、神 焦【こが】れ 鬼 爛【ただ】れ 逃るる門無し。


#2
三光弛隳不複暾,虎熊麋豬逮猴猿。
水龍鼉龜魚與黿,鴉鴟雕鷹雉鵠鹍。
燖炰煨爊孰飛奔,祝融告休酌卑尊,
錯陳齊玫辟華園,芙蓉披猖塞鮮繁。
千鍾萬鼓咽耳喧。

三光 弛隳【しき】して 復た暾【あきら】かならず、
水龍 鼉 龜 魚と黿と,鴉 鴟 雕 鷹 雉 鵠 鹍。
燖炰【じんぽう】煨爊【わいおう】孰【いづ】れか飛奔【ひほん】する,祝融【しゅくゆう】休を告げ 卑尊【ひそん】に酌む,
齊玫【せいばい】錯陳【さくちん】し 華園【かえん】を辟【ひら】く,芙蓉 披猖【ひしょう】し塞って鮮繁【せんぱん】。
千鍾 萬鼓 耳に咽【むせ】んで喧【かますび】す。


#3
攢雜啾嚄沸篪塤,彤幢絳旃紫纛幡。
炎官熱屬朱冠褌,髹其肉皮通髀臀。
頹胸垤腹車掀轅,緹顏靺股豹兩鞬。
霞車虹靷日轂轓,丹蕤縓蓋緋繙鰭。
紅帷赤幕羅脤膰,衁池波風肉陵屯。

啾嚄【しゅうかく】を攢雜【さんざつ】して篪塤【ちけん】沸く,彤幢【とうどう】絳旃【こうせん】紫纛幡【しとうばん】。
炎官 熱屬 冠褌【かんこん】を朱にし,其の肉皮を髹【きゅう】にし 髀臀【ひどん】に通ず。
頹胸【たいきょう】垤腹【てつふく】車 轅【ながえ】を掀【かか】ぐ,緹顏【ていがん】靺股【ばつこ】豹の兩鞬【りょうけん】。
霞車【かしゃ】虹靷【こういん】日の轂轓【こくへん】,丹蕤【たんすき】縓蓋【せんがい】緋に鰭【ひれ】を繙【ひるが】えす。
紅帷 赤幕 脤膰【はり】の羅【つら】ぬ,衁池【こうち】波風 肉の陵屯。


#4
谽呀钜壑頗黎盆,豆登五山瀛四尊。
熙熙釂酬笑語言,雷公擘山海水翻。
齒牙嚼齧舌齶反,電光殲磹赬目厖,
頊冥收威避玄根,斥棄輿馬背厥孫。
縮身潛喘拳肩跟,君臣相憐加愛恩。

谽呀【かんか】たる钜壑【きょがく】は頗黎【はり】の盆,五山を豆登して 瀛【うみ】は四尊【しそん】。
熙熙【きき】として釂酬【しょうしゅう】し 笑って語言す,雷公 山を擘【つんざ】き海水翻る。
齒牙もて嚼齧【しゃくげつ】舌齶【ぜつがく】反【かえ】る,電光 殲磹【せんてん】し赬目【ていもく】厖【おおい】なり,
頊冥【ぎょくめい】威を收めて 玄根に避け,輿馬【よば】を斥棄【せきき】して厥【そ】の孫に背く。
身を縮め 潛かに喘いで肩跟【けんこん】を拳ぐ,君臣 相憐みて 愛恩を加える。


#5
命黑螭偵焚其元,天闕悠悠不可援。
夢通上帝血面論,側身欲進叱於閽。
帝賜九河湔涕痕,又詔巫陽反其魂。
徐命之前問何冤,火行於冬古所存。
我如禁之絕其飧,女丁婦壬傳世婚。


黑螭【こくち】に命じて偵【うかが】わしむるに其の元を焚かる,天闕 悠悠 援づ可からず。
夢に上帝に通じて血面もて論じ,身を側て進まむと欲するに閽に叱せらる。
帝 九河を賜うて涕痕【ていこん】を湔【そそ】がしめ,又 巫陽に詔【みことのり】して其の魂を反さしむ。
徐【おもむろ】に之を命じ 前【すす】めましめて問う 何の冤ぞ,火の冬に行くは古より存する所。
我 如【も】し 之を禁せば 其の飧【そん】を絕たん,女丁は壬に婦となり 世を傳えて婚す。


#6
一朝結讎奈後昆,時行當反慎藏蹲。
視桃著花可小騫,月及申酉利複怨。
助汝五龍從九鯤,溺厥邑囚之昆崙。
皇甫作詩止睡昏,辭誇出真遂上焚。
要餘和增怪又煩,雖欲悔舌不可捫。

一朝にして 讎【あた】を結ばは後昆を奈【いかん】せん,時行 反するに當っては慎んで藏蹲【ぞうそん】せよ。
桃の花を著【つ】くるを視ば小【すこ】し騫【あ】ぐべし,月 申酉【しんゆう】に及わば怨を複するに利あらん。
汝を助けて五龍を九鯤に從わしめん,厥の邑を溺らせ之を昆崙に囚えよ。
皇甫の詩を作るは止睡昏【すいこん】をめるためなるに,辭に真に出づるを誇り 遂に上焚【じょうふん】す。
餘【われ】の和して增怪と煩とを要【もと】む,悔いむと欲すと雖も 舌 捫【な】づべからず。

送湖南李正字歸 韓退之(韓愈)詩<92-#2>Ⅱ中唐詩492 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1555

 
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送湖南李正字歸 韓退之(韓愈)詩<92-#2>Ⅱ中唐詩492 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1555


送湖南李正字歸 韓愈 唐詩
 底本巻四

送湖南李正字歸
長沙入楚深,洞庭值秋晚。
人隨鴻雁少,江共蒹葭遠。
曆曆餘所經,悠悠子當返。
孤游懷耿介,旅宿夢婉娩。
風土稍殊音,魚蝦日異飯。
親交俱在此,誰與同息偃。



doteiko012
送湖南李正字歸
長沙入楚深,洞庭值秋晚。
洞庭湖を南下して湘江に入っていくと長沙があり、そこは江南の楚地方の深く入ったところとなる。洞庭湖は秋の真っただ中で日が暮れていく。
人隨鴻雁少,江共蒹葭遠。
ひとは大鳥や雁と同じように秋になって少なくなってしいるのだろう。湘江は葭とともにはるかとおくなっている。
曆曆餘所經,悠悠子當返。
月日を漫然と私の門下で儒者としての道をすごしてきたけれど、こうして、君ははるか遠い先に帰っていくのだ。
孤游懷耿介,旅宿夢婉娩。
独り行く旅人として孤独であっても堅く志を守っていってほしいと思うのであるが、旅先の宿では、艶めかし事は夢の中だけにしておくことだね。
風土稍殊音,魚蝦日異飯。
気候風土が違うと言葉も違っているものだ、魚やエビについても毎日違った食べ物を食べるということになるのだ。
親交俱在此,誰與同息偃。

今この宴席においては共に腹を割って親交を深めるのであり、談議、団欒は誰でも君に対して同じようにするものである。

湖南の李正字が帰るを送る
長沙【ちょうさ】楚の深きに入り、洞庭【どうてい】秋の晩【おそ】きに値ふ。
人は鴻雁【こうがん】に随って少に、江は蒹葭【けんか】と共に遠し。
歴歴【れきれき】として余が経し所、悠悠【ゆうゆう】として子【きみ】當【まさ】に返るべし。
孤游【こゆう】 耿介【こうかい】を懐き、旅宿 夢 婉娩【えんばん】たらん。
風土は稍【やや】に音を殊【こと】にし、魚蝦【ぎょか】は日びに飯を異にせむ。
親交 俱に 此に在り、誰と與【とも】にか息偃【そくえん】を同じうせむ。


韓愈の地図01

現代語訳と訳註
(本文)
送湖南李正字歸
長沙入楚深,洞庭值秋晚。
人隨鴻雁少,江共蒹葭遠。
曆曆餘所經,悠悠子當返。
孤游懷耿介,旅宿夢婉娩。
風土稍殊音,魚蝦日異飯。
親交俱在此,誰與同息偃。


(下し文)
湖南の李正字が帰るを送る
長沙【ちょうさ】楚の深きに入り、洞庭【どうてい】秋の晩【おそ】きに値ふ。
人は鴻雁【こうがん】に随って少に、江は蒹葭【けんか】と共に遠し。
歴歴【れきれき】として余が経し所、悠悠【ゆうゆう】として子【きみ】當【まさ】に返るべし。
孤游【こゆう】 耿介【こうかい】を懐き、旅宿 夢 婉娩【えんばん】たらん。
風土は稍【やや】に音を殊【こと】にし、魚蝦【ぎょか】は日びに飯を異にせむ。
親交 俱に 此に在り、誰と與【とも】にか息偃【そくえん】を同じうせむ。


(現代語訳)
洞庭湖を南下して湘江に入っていくと長沙があり、そこは江南の楚地方の深く入ったところとなる。洞庭湖は秋の真っただ中で日が暮れていく。
ひとは大鳥や雁と同じように秋になって少なくなってしいるのだろう。湘江は葭とともにはるかとおくなっている。
月日を漫然と私の門下で儒者としての道をすごしてきたけれど、こうして、君ははるか遠い先に帰っていくのだ。
独り行く旅人として孤独であっても堅く志を守っていってほしいと思うのであるが、旅先の宿では、艶めかし事は夢の中だけにしておくことだね。
気候風土が違うと言葉も違っているものだ、魚やエビについても毎日違った食べ物を食べるということになるのだ。
今この宴席においては共に腹を割って親交を深めるのであり、談議、団欒は誰でも君に対して同じようにするものである。


(訳注)
送湖南李正字歸
 洞庭湖。
李正字 李生則の子。韓愈の門下。

長沙入楚深,洞庭值秋晚。
洞庭湖を南下して湘江に入っていくと長沙があり、そこは江南の楚地方の深く入ったところとなる。洞庭湖は秋の真っただ中で日が暮れていく。
長沙 春秋戦国時代には楚国に属し、成王のとき黔中郡が置かれたことに始まる。秦代に秦36郡のひとつとして長沙郡が設置されている。漢代初には呉芮を封じて臨湘県を都とする長沙王国が設置され、5代46年間続いた。長沙王国の相である軑侯利蒼一族の墓所として有名な馬王堆漢墓を今に伝える。隋唐代から清末にかけて潭州の中心として発展した。
 楚(そ)は、中国の王朝名、地名。地名としての楚は、現在の湖南省・湖北省を指す。


人隨鴻雁少,江共蒹葭遠。
ひとは大鳥や雁と同じように秋になって少なくなってしいるのだろう。湘江は葭とともにはるかとおくなっている。
鴻雁 おおとりと雁。おおとりは雁に似て大形の鳥。
蒹葭 ひめよし。


曆曆餘所經,悠悠子當返。
月日を漫然と私の門下で儒者としての道をすごしてきたけれど、こうして、君ははるか遠い先に帰っていくのだ。
・歴歴 分明のさま、また行列のさま。次々に並ぶさまや明白なさま。曆曆は月日を漫然と過ごしていったことをいう。


孤游懷耿介,旅宿夢婉娩。
独り行く旅人として孤独であっても堅く志を守っていってほしいと思うのであるが、旅先の宿では、艶めかし事は夢の中だけにしておくことだね。
孤訪 ひとりたび。
耿介 堅く志を守ること、転じて孤独なこと。
・婉娩 しなやかなさま。まとわりつくさま。ここではふるさとのことなどが夢の中にまといついてくることを指す。


風土稍殊音,魚蝦日異飯。
気候風土が違うと言葉も違っているものだ、魚やエビについても毎日違った食べ物を食べるということになるのだ。
殊音 こと.ほがちがち㌔
魚蝦 魚やえび。
異飯 食べものがかわる。


親交俱在此,誰與同息偃。
今この宴席においては共に腹を割って親交を深めるのであり、談議、団欒は誰でも君に対して同じようにするものである。
息偃 だんらん。偃息する。

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送湖南李正字歸 韓愈 唐詩
   底本巻四

送湖南李正字歸
長沙入楚深,洞庭值秋晚。
人隨鴻雁少,江共蒹葭遠。
曆曆餘所經,悠悠子當返。
孤游懷耿介,旅宿夢婉娩。
風土稍殊音,魚蝦日異飯。
親交俱在此,誰與同息偃。


元和四年八〇九六月、韓愈は、国子博士から都官員外郎に転任し、ひきつづき洛陽に勤務していた。都官は刑獄をつかさどる。長官は郎中で、員外邸はそのすぐ下であるから、地位としては悪くほない。けれども、仕事は、かれにとって好もしいものではなかった。かれは、その仕事場で、孤独を感ずることがあったのではないか。ふしぎにデリケイトな味わいをもった「晩菊」の詩は、たぶん、このころの作品であろう。「湖南の李正字の帰るを送る」もまた、都官員外郎時代の作品だが、送別の宴でかれが書いた散文「湖南の李正字を送る序」は、この時代のかれの感情をよくえがいており、送詩を説明してもいるので引いておこう。

送湖南李正字序
貞元中,愈從太傅隴西公平汴州,李生之尊府以侍禦史管汴之鹽鐵,日為酒殺羊享賓客,李生則尚與其弟學讀書,習文辭,以舉進士為業。愈於太傅府年最少,故得交李生父子間。

公薨軍亂,軍司馬從事皆死,侍禦亦被讒為民日南。其後五年,愈又貶陽山令,今愈以都官郎守東都省,侍禦自衡州刺史為親王長史,亦留此掌其府事。

李生自湖南從事請告來覲。於時太傅府之士,惟愈與河南司錄周君巢獨存,其外則李氏父子,相與為四人。離十三年,幸而集處,得燕而舉一觴相屬,此天也,非人力也。

侍禦與周君,於今為先輩成德,李生溫然為君子,有詩八百篇,傳詠於時。惟愈也業不益進,行不加修,顧惟未死耳。往拜侍禦,謁周君,抵李生,退未嚐不發愧也。

往時侍禦有無盡費於朋友,及今則又不忍其三族之寒饑,聚而館之,疏遠畢至,祿不足以養。李生雖欲不從事於外,其勢不可得已也。

重李生之還者皆為詩,愈最故,故又為序雲。

現代語訳
貞元中,愈從太傅隴西公平汴州,李生之尊府以侍禦史管汴之鹽鐵,日為酒殺羊享賓客,李生則尚與其弟學讀書,習文辭,以舉進士為業。愈於太傅府年最少,故得交李生父子間。
貞元中、わたしは太傳隴西公が宜武節度使として汴州に赴任されたとき、その属僚となった。李君のご尊父は侍御史として汴州の塩と鉄とを管理しておられたが、日々、酒を準備し、羊をつぶして、お客を接待されたものだった。李君はというと、まだ弟さんといっしょに、読書をまなび、文章をならって、進士の受験勉強中だった。わたしは、太侍の役所ではもっとも年少だった。だから李君の父子おふたりと交際することができたのだ。

公薨軍亂,軍司馬從事皆死,侍禦亦被讒為民日南。其後五年,愈又貶陽山令,今愈以都官郎守東都省,侍禦自衡州刺史為親王長史,亦留此掌其府事。
公が死去されると軍は乱れ、軍の司馬も従事もみな死んでしまった。侍御もまた讒言され、日南地方に流された。その後五年、わたしもまた陽山の令に貶められた。いま、わたしは都官郎の職で洛陽勤務となり、侍御は衡州刺史から、親王の長史となって、またこの他に滞在し、府の仕事をやっていらっしゃる。

李生自湖南從事請告來覲。於時太傅府之士,惟愈與河南司錄周君巢獨存,其外則李氏父子,相與為四人。離十三年,幸而集處,得燕而舉一觴相屬,此天也,非人力也。
李生は湖南の従事をしていたが、休暇をもらって、洛陽におとうさんの見舞いにやってこられた。このとき太傳の府にいたひとでは、ただわたしと河南司録の周愿君だけがのこっていて、そのほかでは李君父子だけ、あわせて四人なのだ。十三年間も離れはなれになっていて、さいわいこうして集い、宴をひらいて一献かわす。これは天のはからいであって、人間の力でできることではない。

侍禦與周君,於今為先輩成德,李生溫然為君子,有詩八百篇,傳詠於時。惟愈也業不益進,行不加修,顧惟未死耳。往拜侍禦,謁周君,抵李生,退未嚐不發愧也。

侍御と周君とは、今こそいよいよ先輩として、あおぐべき徳をつまれた。李君はおっとりとした君子で、その詩八百篇は、ひとびとに伝称されている。わたしばかりは、学業は一向すすまず、といって、何一つ仕事らしい仕事をしたわけでもない。かえりみて、ただ死ななかったというだけのこと。侍御におめにかかり、周君にお会いし、李君をたずねて帰ってくると、はずかしくなって、顔のあからまないこととてはないのだ。

往時侍禦有無盡費於朋友,及今則又不忍其三族之寒饑,聚而館之,疏遠畢至,祿不足以養。李生雖欲不從事於外,其勢不可得已也。
むかしは、侍御がどんなに朋友のためにつくされても、その範囲はさほどでもなく、従って、それで経済的にどうこういうことはなかったようだ。ところが、今の地位になられると、親戚縁者の困っているひとたちをほおっておくこともできず、集めて家族同様にめんどうをみていらっしゃるので、疎遠だったひとたちまで、みなやって来て、さすがの御俸禄でも、なかなかの負担だ。こうなると、李君が、家を外にしての仕事につきたくなくとも、そうせずにはすまないのだ。

重李生之還者皆為詩,愈最故,故又為序雲。
李君が勤務先に帰られるにあたって、知友みな詩をつくっておくることとした。わたしは、君ともっとも親しいので、序文を書くこととなった。


doteiko012
送湖南李正字歸
長沙入楚深,洞庭值秋晚。
洞庭湖を南下して湘江に入っていくと長沙があり、そこは江南の楚地方の深く入ったところとなる。洞庭湖は秋の真っただ中で日が暮れていく。
人隨鴻雁少,江共蒹葭遠。
ひとは大鳥や雁と同じように秋になって少なくなってしいるのだろう。湘江は葭とともにはるかとおくなっている。
曆曆餘所經,悠悠子當返。
月日を漫然と私の門下で儒者としての道をすごしてきたけれど、こうして、君ははるか遠い先に帰っていくのだ。
孤游懷耿介,旅宿夢婉娩。
独り行く旅人として孤独であっても堅く志を守っていってほしいと思うのであるが、旅先の宿では、艶めかし事は夢の中だけにしておくことだね。
風土稍殊音,魚蝦日異飯。
気候風土が違うと言葉も違っているものだ、魚やエビについても毎日違った食べ物を食べるということになるのだ。
親交俱在此,誰與同息偃。

今この宴席においては共に腹を割って親交を深めるのであり、談議、団欒は誰でも君に対して同じようにするものである。

湖南の李正字が帰るを送る
長沙【ちょうさ】楚の深きに入り、洞庭【どうてい】秋の晩【おそ】きに値ふ。
人は鴻雁【こうがん】に随って少に、江は蒹葭【けんか】と共に遠し。
歴歴【れきれき】として余が経し所、悠悠【ゆうゆう】として子【きみ】當【まさ】に返るべし。
孤游【こゆう】 耿介【こうかい】を懐き、旅宿 夢 婉娩【えんばん】たらん。
風土は稍【やや】に音を殊【こと】にし、魚蝦【ぎょか】は日びに飯を異にせむ。
親交 俱に 此に在り、誰と與【とも】にか息偃【そくえん】を同じうせむ。


韓愈の地図01

現代語訳と訳註
(本文)
送湖南李正字歸
長沙入楚深,洞庭值秋晚。
人隨鴻雁少,江共蒹葭遠。
曆曆餘所經,悠悠子當返。
孤游懷耿介,旅宿夢婉娩。
風土稍殊音,魚蝦日異飯。
親交俱在此,誰與同息偃。


(下し文)
湖南の李正字が帰るを送る
長沙【ちょうさ】楚の深きに入り、洞庭【どうてい】秋の晩【おそ】きに値ふ。
人は鴻雁【こうがん】に随って少に、江は蒹葭【けんか】と共に遠し。
歴歴【れきれき】として余が経し所、悠悠【ゆうゆう】として子【きみ】當【まさ】に返るべし。
孤游【こゆう】 耿介【こうかい】を懐き、旅宿 夢 婉娩【えんばん】たらん。
風土は稍【やや】に音を殊【こと】にし、魚蝦【ぎょか】は日びに飯を異にせむ。
親交 俱に 此に在り、誰と與【とも】にか息偃【そくえん】を同じうせむ。


(現代語訳)
洞庭湖を南下して湘江に入っていくと長沙があり、そこは江南の楚地方の深く入ったところとなる。洞庭湖は秋の真っただ中で日が暮れていく。
ひとは大鳥や雁と同じように秋になって少なくなってしいるのだろう。湘江は葭とともにはるかとおくなっている。
月日を漫然と私の門下で儒者としての道をすごしてきたけれど、こうして、君ははるか遠い先に帰っていくのだ。
独り行く旅人として孤独であっても堅く志を守っていってほしいと思うのであるが、旅先の宿では、艶めかし事は夢の中だけにしておくことだね。
気候風土が違うと言葉も違っているものだ、魚やエビについても毎日違った食べ物を食べるということになるのだ。
今この宴席においては共に腹を割って親交を深めるのであり、談議、団欒は誰でも君に対して同じようにするものである。


(訳注)
送湖南李正字歸
 洞庭湖。
李正字 李生則の子。韓愈の門下。
 

長沙入楚深,洞庭值秋晚。
洞庭湖を南下して湘江に入っていくと長沙があり、そこは江南の楚地方の深く入ったところとなる。洞庭湖は秋の真っただ中で日が暮れていく。
長沙 春秋戦国時代には楚国に属し、成王のとき黔中郡が置かれたことに始まる。秦代に秦36郡のひとつとして長沙郡が設置されている。漢代初には呉芮を封じて臨湘県を都とする長沙王国が設置され、5代46年間続いた。長沙王国の相である軑侯利蒼一族の墓所として有名な馬王堆漢墓を今に伝える。隋唐代から清末にかけて潭州の中心として発展した。
 楚(そ)は、中国の王朝名、地名。地名としての楚は、現在の湖南省・湖北省を指す。


人隨鴻雁少,江共蒹葭遠。
ひとは大鳥や雁と同じように秋になって少なくなってしいるのだろう。湘江は葭とともにはるかとおくなっている。
鴻雁 おおとりと雁。おおとりは雁に似て大形の鳥。
蒹葭 ひめよし。


曆曆餘所經,悠悠子當返。
月日を漫然と私の門下で儒者としての道をすごしてきたけれど、こうして、君ははるか遠い先に帰っていくのだ。
・歴歴 分明のさま、また行列のさま。次々に並ぶさまや明白なさま。曆曆は月日を漫然と過ごしていったことをいう。


孤游懷耿介,旅宿夢婉娩。
独り行く旅人として孤独であっても堅く志を守っていってほしいと思うのであるが、旅先の宿では、艶めかし事は夢の中だけにしておくことだね。
孤訪 ひとりたび。
耿介 堅く志を守ること、転じて孤独なこと。
・婉娩 しなやかなさま。まとわりつくさま。ここではふるさとのことなどが夢の中にまといついてくることを指す。


風土稍殊音,魚蝦日異飯。
気候風土が違うと言葉も違っているものだ、魚やエビについても毎日違った食べ物を食べるということになるのだ。
殊音 こと.ほがちがち㌔
魚蝦 魚やえび。
異飯 食べものがかわる。


親交俱在此,誰與同息偃。
今この宴席においては共に腹を割って親交を深めるのであり、談議、団欒は誰でも君に対して同じようにするものである。
息偃 だんらん。偃息する。


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晚菊(唐•韓愈)
少年飲酒時,踊躍見菊花。
青年のころの酒をのんだ時の事であるが、飲んで、踊り、飛び上がって、躍り、菊の花を見たものだ。
今來不復飲,每見恒咨嗟。
しかし最近ではもう酒を飲むことがなく、見るたびに いつも「ああ」となげくのだ。
佇立摘滿手,行行把歸家。
たたずんでは摘み、手にいっぱいにするのである、あちらにいって、こちらにもゆき、そして束ねて家に帰えるのである。
此時無與語,棄置奈悲何。

このとき菊を見るのに共に語りあうひとがいないのだ、菊の束をすててしまうことは悲しみをどうしていいかわからないのである。(日が短い、晩秋、衰えてきた、悲愁の秋となったのだ。)
少年にして酒を飲みし時、踊躍【ようやく】して菊花【きくか】を見き。
今来【きんらい】復た飲まず、見る毎【ごと】に恒【つね】に咨嗟【しさ】す。
佇立【ちょりつ】して摘みて手に満ち、行き行きて把りて家に歸る。
此の時 興【とも】に語る無し、棄置【きち】せば悲を奈何【いかん】せん。

晩菊002

現代語訳と訳註
(本文)
晚菊
少年飲酒時,踊躍見菊花。
今來不復飲,每見恒咨嗟。
佇立摘滿手,行行把歸家。
此時無與語,棄置奈悲何。


(下し文)
少年にして酒を飲みし時、踊躍【ようやく】して菊花【きくか】を見き。
今来【きんらい】復た飲まず、見る毎【ごと】に恒【つね】に咨嗟【しさ】す。
佇立【ちょりつ】して摘みて手に満ち、行き行きて把りて家に歸る。
此の時 興【とも】に語る無し、棄置【きち】せば悲を奈何【いかん】せん。


(現代語訳)
青年のころの酒をのんだ時の事であるが、飲んで、踊り、飛び上がって、躍り、菊の花を見たものだ。
しかし最近ではもう酒を飲むことがなく、見るたびに いつも「ああ」となげくのだ。
たたずんでは摘み、手にいっぱいにするのである、あちらにいって、こちらにもゆき、そして束ねて家に帰えるのである。
このとき菊を見るのに共に語りあうひとがいないのだ、菊の束をすててしまうことは悲しみをどうしていいかわからないのである。(日が短い、晩秋、衰えてきた、悲愁の秋となったのだ。)


 (訳注)
晚菊

韓愈、底本巻四。おくれ咲きの菊。菊を愛した東晉詩人陶淵明の境地を味わっているのだろうか。陶淵明の隠遁者の雰囲気は全くない、韓愈らしい教育者が一歳とって若者に現在の心境を詠ったものである。


少年飲酒時,踊躍見菊花。
青年のころの酒をのんだ時の事であるが、飲んで、踊り、飛び上がって、躍り、菊の花を見たものだ。
少年 年少。ここではこどもというのではなく、若いころ、というほどの意。
踊躍 おどりあがる。菊を見ると、うれしくなって、おどりまわったものだ、というのである。


今來不復飲,每見恒咨嗟。
しかし最近ではもう酒を飲むことがなく、見るたびに いつも「ああ」となげくのだ。
・今来 このごろ。最近では。
・咨嗟 なげく。「ああ」となげく。


佇立摘滿手,行行把歸家。
たたずんでは摘み、手にいっぱいにするのである、あちらにいって、こちらにもゆき、そして束ねて家に帰えるのである。
佇立 たたずむ。
摘満手 手にいっぱいになるまでつむ(・行行把帰家 あちらこちらへ行ったが、そのゆく先々で、とった菊を上げるべき人もなく、といって、その菊を棄てさることもできず、手にもったままで帰るという意。


此時無與語,棄置奈悲何。
このとき菊を見るのに共に語りあうひとがいないのだ、菊の束をすててしまうことは悲しみをどうしていいかわからないのである。(日が短い、晩秋、衰えてきた、悲愁の秋となったのだ。)
棄置 これは、つんだ菊を棄てる、というのではなく、おくれ咲きの菊を見すててつみもしなかったならば、というのであろう。
奈悲何 咲き残って、衰えようとする菊の花のほかに、語るものさえないかなしみを、躍りあがって咲き盛る花にたわむれた日のおのれを背景にして、じっとーみつめているのである。



晚菊(唐•韓愈)
少年飲酒時,踊躍見菊花。
今來不復飲,每見恒咨嗟。
佇立摘滿手,行行把歸家。
此時無與語,棄置奈悲何。

少年にして酒を飲みし時、踊躍【ようやく】して菊花【きくか】を見き。
今来【きんらい】復た飲まず、見る毎【ごと】に恒【つね】に咨嗟【しさ】す。
佇立【ちょりつ】して摘みて手に満ち、行き行きて把りて家に歸る。
此の時 興【とも】に語る無し、棄置【きち】せば悲を奈何【いかん】せん。


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新竹 韓退之(韓愈)詩<90>#2Ⅱ中唐詩488 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1543

 
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新竹 韓退之(韓愈)詩<90>#2Ⅱ中唐詩488 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ1543


新竹#1 
筍添南階竹,日日成清閟。
たけのこはのびて御陵の南側の階段に竹を添えている。日日に伸び、清らかな静けさと閉じられた中の静かさを加えてゆく。
縹節已儲霜,黄苞猶掩翠。
青竹の節はすでに霜のように白い粉をふきはじめているが、黄色のたけのこの皮はいまだにその翠の肌をおおいかくしている。
出欄抽五六,當戶羅三四。
五、六本はすでに欄干をこえて抜きん出ているし、三、四本は戸口にならんでいる。
高標陵秋嚴,貞色奪春媚。
高く抜きん出ている姿は、秋のきびしさを凌ぐものであり、季節が変わっても変わらぬ靑色は春のなまめかしさをひとりじめにする。

#2
稀生巧補林,並出疑爭地。
すこしだけ生えたのが竹林のすきまをうまくふさいでいる、ならび出たところは縄張り争いをしているのかと疑いたくなる。
縱横乍依行,爛熳忽無次。
縦横に伸びており、たちまち列をつくりだしている、さかんであふれひろがり、やがて順序もなにも なくなってしまう。
風枝未飄吹,露粉先涵淚。
風にあたって枝はいまだひるがえすほどの葉がでてはいない、青竹の露と粉ふく幹はしとどに涙をながしているようだ。
何人可擕玩,清景空瞪視。
いったいどんな人が、どれだけのひとが、たずさえて もてあそぶことになるのだろう、清らかなこの景色を むなしくまじまじと見つめるはかりである。

筍【じゅん】は添へ南階の竹、日日 清閟【せいひ】を成す。
縹節【ひょうせつ】は己に霜を儲【たくわ】へ、黄苞【こうほう】は猶お翠を掩【おお】う。
欄を出でて五六を抽【ぬ】き、戸に当たって三四を羅【つら】ぬ。
高標【こうひょう】秋を陵【しの】いで厳たり、貞色 【ていしょく】春を奪って媚【こ】ぶ。
稀に生じたるは巧に林を補ひ、併せ出でたるは地を爭ふかと疑ふ。
縦横 乍【たちま】ち行に依り、爛漫【らんまん】 忽【たちま】ち次無し。
風枝は未だ吹を飄【ひるがえ】さず、露粉【ろふん】は先づ涙を涵【うるお】す。
何人か擕【たずさ】へ 翫【もてあそ】ぶべき、清景 空しく瞪視【とうし】す。

真竹002

現代語訳と訳註
(本文)
#2
稀生巧補林,並出疑爭地。
縱横乍依行,爛熳忽無次。
風枝未飄吹,露粉先涵淚。
何人可擕玩,清景空瞪視。


(下し文)
稀に生じたるは巧に林を補ひ、併せ出でたるは地を爭ふかと疑ふ。
縦横 乍【たちま】ち行に依り、爛漫【らんまん】 忽【たちま】ち次無し。
風枝は未だ吹を飄【ひるがえ】さず、露粉【ろふん】は先づ涙を涵【うるお】す。
何人か擕【たずさ】へ 翫【もてあそ】ぶべき、清景 空しく瞪視【とうし】す。


(現代語訳)
すこしだけ生えたのが竹林のすきまをうまくふさいでいる、ならび出たところは縄張り争いをしているのかと疑いたくなる。
縦横に伸びており、たちまち列をつくりだしている、さかんであふれひろがり、やがて順序もなにも なくなってしまう。
風にあたって枝はいまだひるがえすほどの葉がでてはいない、青竹の露と粉ふく幹はしとどに涙をながしているようだ。
いったいどんな人が、どれだけのひとが、たずさえて もてあそぶことになるのだろう、清らかなこの景色を むなしくまじまじと見つめるはかりである。


(訳注) #2
稀生巧補林,並出疑爭地。

すこしだけ生えたのが竹林のすきまをうまくふさいでいる、ならび出たところは縄張り争いをしているのかと疑いたくなる。


縱横乍依行,爛熳忽無次。
縦横に伸びており、たちまち列をつくりだしている、さかんであふれひろがり、やがて順序もなにも なくなってしまう。
爛熳 繁茂した, うっそうとしたさま。光り輝くさま。さかんであふれるさま。きえちらばるさま。


風枝未飄吹,露粉先涵淚。
風にあたって枝はいまだひるがえすほどの葉がでてはいない、青竹の露と粉ふく幹はしとどに涙をながしているようだ。


何人可擕玩,清景空瞪視。
いったいどんな人が、どれだけのひとが、たずさえて もてあそぶことになるのだろう、清らかなこの景色を むなしくまじまじと見つめるはかりである。


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新竹#1 
筍添南階竹,日日成清閟。
たけのこはのびて御陵の南側の階段に竹を添えている。日日に伸び、清らかな静けさと閉じられた中の静かさを加えてゆく。
縹節已儲霜,黄苞猶掩翠。
青竹の節はすでに霜のように白い粉をふきはじめているが、黄色のたけのこの皮はいまだにその翠の肌をおおいかくしている。
出欄抽五六,當戶羅三四。
五、六本はすでに欄干をこえて抜きん出ているし、三、四本は戸口にならんでいる。
高標陵秋嚴,貞色奪春媚。
高く抜きん出ている姿は、秋のきびしさを凌ぐものであり、季節が変わっても変わらぬ靑色は春のなまめかしさをひとりじめにする。
#2
稀生巧補林,並出疑爭地。
縱横乍依行,爛熳忽無次。
風枝未飄吹,露粉先涵淚。
何人可擕玩,清景空瞪視。

筍【じゅん】は添へ南階の竹、日日 清閟【せいひ】を成す。
縹節【ひょうせつ】は己に霜を儲【たくわ】へ、黄苞【こうほう】は猶お翠を掩【おお】う。
欄を出でて五六を抽【ぬ】き、戸に当たって三四を羅【つら】ぬ。
高標【こうひょう】秋を陵【しの】いで厳たり、貞色 【ていしょく】春を奪って媚【こ】ぶ。
稀に生じたるは巧に林を補ひ、併せ出でたるは地を爭ふかと疑ふ。
縦横 乍【たちま】ち行に依り、爛漫【らんまん】 忽【たちま】ち次無し。
風枝は未だ吹を飄【ひるがえ】さず、露粉【ろふん】は先づ涙を涵【うるお】す。
何人か擕【たずさ】へ 翫【もてあそ】ぶべき、清景 空しく瞪視【とうし】す。


現代語訳と訳註
(本文)
新竹#1 
筍添南階竹,日日成清閟。
縹節已儲霜,黄苞猶掩翠。
出欄抽五六,當戶羅三四。
高標陵秋嚴,貞色奪春媚。


(下し文)
筍【じゅん】は添へ南階の竹、日日 清閟【せいひ】を成す。
縹節【ひょうせつ】は己に霜を儲【たくわ】へ、黄苞【こうほう】は猶お翠を掩【おお】う。
欄を出でて五六を抽【ぬ】き、戸に当たって三四を羅【つら】ぬ。
高標【こうひょう】秋を陵【しの】いで厳たり、貞色 【ていしょく】春を奪って媚【こ】ぶ。


(現代語訳)
たけのこはのびて御陵の南側の階段に竹を添えている。日日に伸び、清らかな静けさと閉じられた中の静かさを加えてゆく。
青竹の節はすでに霜のように白い粉をふきはじめているが、黄色のたけのこの皮はいまだにその翠の肌をおおいかくしている。
五、六本はすでに欄干をこえて抜きん出ているし、三、四本は戸口にならんでいる。
高く抜きん出ている姿は、秋のきびしさを凌ぐものであり、季節が変わっても変わらぬ靑色は春のなまめかしさをひとりじめにする。


(訳注)
新竹
#1 
全唐詩 卷339_22  、氏本巻四。
まだ、どこか、ひよわいところも残っているが、日ましにぐんぐんのびはびこる若竹のむれを、少年期から青年期に移ろうとする詩である。
豊かでもないのに、つねに門弟の数人を家に養い、食事の間もかれらを教え、また、かれらを官界に送り出す労を惜しまなかった。


筍添南階竹,日日成清閟。
たけのこはのびて御陵の南側の階段に竹を添えている。日日に伸び、清らかな静けさと閉じられた中の静かさを加えてゆく。
・南階 南に面した階段。
・清閟 清らかな静けさと閉じられた中の静かさをいう。『詩経』清廟之什「於穆清廟、粛雝顕相。」祖霊祭祀を中心とした歌。「清静清也。」「清静寂也。」『詩経』の「閟宮」(ひきゅう)の神楽歌「閟宮有侐、実実枚枚。」「閟閑也。」  


縹節已儲霜,黄苞猶掩翠。
青竹の節はすでに霜のように白い粉をふきはじめているが、黄いろいたけのこの皮はいまだにその翠の肌をおおいかくしている。
・縹節 縹(はなだ)もしくは縹色(花田色、はなだいろ)とは、明度が高い薄青色のこと。後漢時代の辞典によると「縹」は「漂」(薄青色)と同義であるとある。花色、月草色、千草色、露草色などの別名があり、すなわち青白色の、竹の節。
・黄苞 きいろい竹の皮。


出欄抽五六,當戶羅三四。
五、六本はすでに欄干をこえて抜きん出ているし、三、四本は戸口にならんでいる。


高標陵秋嚴,貞色奪春媚。
高く抜きん出ている姿は、秋のきびしさを凌ぐものであり、季節が変わっても変わらぬ靑色は春のなまめかしさをひとりじめにする。
高標 高く抜きん出ている。
貞色 さだまった色。青は五行で春である。

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