九辯 第九段―まとめ 宋玉 <00-#35>Ⅱもっとも影響を与えた詩文 664 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2304
第九段#1
被荷裯之晏晏兮,然潢洋而不可帶。
蓮の花葉の単衣の立派なきものを着ても、ここにみるように丈が長く、広くて身に合わず、破れ易いようなもので帯をすることもできない。
既驕美而伐武兮,負左右之耿介。
君王に美徳とすぐれた素質を誇り、武力を威張り、左右の剛毅な者をたのみにしておられるのだ。。
憎慍惀之脩美兮,好夫人之慷慨。
思慮深く聡明で、素養があり、徳あり善美な人を憎んでいるというし、あの小人の心で、昂奮して不義を憤る態度を好まれるという。
眾踥蹀而日進兮,美超遠而逾邁 。
小人どもはぞろぞろと日々に朝廷に進み用いられ、立派な人物は、はるかに遠ざかって、勢いよく去っていくのである。
荷裯【かちょう】の晏晏たるを被り、然く潢洋【こうよう】として帯す可からず。
既に美に驕りて武を伐り、左右の耿介【こうかい】たるを負む。
慍惀【うんりん】の脩美【しゅうび】を憎み、夫の人の慷慨【こうがい】を好む。
衆踥蹀【しょうちょう】として日に進み、美超遠にして逾邁【ゆまい】す。
農夫輟耕而容與兮,恐田野之蕪穢。
農夫は租税の重さに苦しみ、耕すことをやめてゆっくりと休みのである。すると、田畑野が雜草であれはて五穀は取れなくなること、これが心配である。
事綿綿而多私兮,竊悼後之危敗。
君王が細微なことばかりを仕事にされ、自分勝手がこと多いので、私はひそかにその後のことをに危くかんがえて、失敗をされるととりかえしがつかないといたむのである。
世雷同而炫曜兮,何毀譽之昧昧!
世の人々は付和雷同に呼応して響くようになんでも賛成してほめそやすので、何とあなどりと誉れとの区別することが難しいことこの上ない。
今脩飾而窺鏡兮,後尚可以竄藏。
今身を美しく飾るとすれば、鏡をのぞいて化粧を直すように、身の行ないを正しておけば、後に乱が起こったような時に、それでもやはり、世を逃れかくれて住むことができる。
農夫は耕を輟【や】めて容與【ようよ】し、田野の蕪穢【ぶあい】を恐る。
事綿綿として私多く、竊【ひそか】に後の危敗【きはい】を悼【いた】む。
世雷同【らいどう】して炫曜【げんよう】す。何ぞ毀譽【きよ】の昧昧【まいまい】たる。
今脩飾【しゅうしょく】して鏡を窺へば、後に尚以て竄藏【ざんぞう】す可し。
願寄言夫流星兮,羌儵忽而難當。
どうか、あの流れ星にこのことばをことづけたいと思うのであるが、ああ、あまりに速やすぎて、出会い難いのである。
卒壅蔽此浮雲兮,下暗漠而無光。
しまいには、この浮雲に覆われ遮られて、下界は暗くぼんやりとして光がなくなってしまう。
堯舜皆有所舉任兮,故高枕而自適。
堯や舜には皆自分から挙げ用いて、仕事をまかせた賢相がいたので、それ故、枕を高くして安らかに眠れ、気楽にして暮らせたのである。
諒無怨於天下兮,心焉取此怵惕?
このようにまことに天下の人から怨まれることがなければ、どうしてこのみな憐憫の情、可哀相と感じる心を持つことがあろう。
願はくは言を夫の流星に寄せんに、羌儵忽として當り難し。
卒に此の浮雲に壅蔽【ようへい】せられて、下暗漠【あんばく】として光無し。
堯舜は皆挙任する所有り。故に枕を高うして自適す。
諒【まこと】に天下に怨無ければ、心に焉ぞ此の怵惕【じゅつてき】を取らん。
乘騏驥之瀏瀏兮,馭安用夫強策?
千里の馬の流れるように速く走るのに乗るならば、馬を御するのにどうしてあの強い鞭を用いようか。
諒城郭之不足恃兮,雖重介之何益?
まことに城壁や外城壁が当てにできる代物でなければ鎧の数を重ねても何の益があろうか。(政事には、まず賢人を採用することが最も大切なのである。)
邅翼翼而無終兮,忳惛惛而愁約。
歩きめぐって進まずたちもどり、私はただいつまでも敬みかしこまっていて、心は憂いのために暗く、悲しみ窮している。
生天地之若過兮,功不成而無效。
この天地に生まれて、忽ち通り過ぎ去るような一生であって、仕事もなんの成果も上がらず、働きがいもない。
騏驥の瀏瀏たるに乘らば、馭するに安ぞ夫の強策を用ひん。
諒に城郭之れ恃むに足らざれば、介を重ぬと雖も之れ何の益かあらん。
達として巽巽として終無し、帽として悼惜として愁約す。
天地に生じて之れ遇ぐるが若し。功成らずして致無し。
#5
願沈滯而不見兮,尚欲布名乎天下 。
俗世間の底に沈みとどまって現われないでいたいと思うけれど、それでもやはり、わが名を天下中に広めたいと思う気持ちがあるのだ。
然潢洋而不遇兮,直怐愚而自苦。
というのも、そのように広々ととりとめのない世では、自分を知る人にも遭遇しないので、ただ愚かにも自分を苦しめているだけなのである。
莽洋洋而無極兮,忽翱翔之焉薄?
草木が茂り、広々とはてしない原野があり、そこで急に飛びまわってもどこまで行こうかと、四方の他国にも行くべきところがないのである。
國有驥而不知乘兮,焉皇皇而更索?
この国に、千里の馬がいるのに、それを用いて乗ることを知らないでいる。どうして右往左往して落ち着かないで、改めて駿馬をさがし求めようとするのか。
沈滞【ちんたい】して見ざらんと雖も、尚お名を天下に布【し】かんと欲す。
然く潢洋【こうよう】として遇はず、直 怐愚【こうぐ】として自ら苦しむのみ。
莽【ぼう】として洋洋として極りなく、忽まち翱翔【こうしょう】して之れ焉【いづ】くにか薄【いた】る。
國に驥【き】有れども乘るを知らず、焉くんか皇皇【こうこう】として更【あらた】め索【もと】むる。
#6
甯戚謳於車下兮,桓公聞而知之。
昔斉の甯戚は車の下で飯牛の歌をうたっていたら、桓公は聞いて勝れた人物であると知って用いた。
無伯樂之善相兮,今誰使乎譽之。
よく馬の良し悪しを見わけた伯楽がいないとすれば、今は誰に品定めをさせればよいのか。
罔流涕以聊慮兮,惟著意而得之。
心もむなしく、涕を流して深く思えば、意を明らかに志を立て堅持してこそ、それができるのだと考えた。
紛純純之願忠兮,妒被離而鄣之。
心をくだき、純粋に、ただ、真心を尽くしたいと願っているのであるが、私をねたむ者どもが立ち並んでこれをさまたげるのである。
甯戚【ねいせき】車下に謳ひて、桓公【かんこう】聞きて之を知る。
伯楽の善く相する無し。今誰にか之を譽らしめん。
罔として流涕して以て聊慮【れんりょ】し、意を著はして之を得んと惟ふ。
紛として純純として之れ忠を願へども、妒被【とひ】離として之を鄣【さえぎ】る。
#7
願賜不肖之軀而別離兮,放遊志乎雲中。
願うことなら愚かな私自身、朝廷を辞して自由になることをお許し頂き、お別れをしたいのです。愁いの心を雲の中に存分にあそばせたいのです。
乘精氣之摶摶兮,騖諸神之湛湛。
天地陰陽の純粋な気の真ん丸となった太陽と月に乗り、もろもろの神々霊魂が満ち満ちてよりあつまっていっしょに駆けさせるのです。
驂白霓之習習兮,歷群靈之豐豐。
習々と飛ぶ白い虹を添え馬とし、多くむらがるあらゆる神霊の星の宿りを次々に過ぎて行くのです。
左朱雀之茇茇兮,右蒼龍之躣躣。
南方の霊鳥朱雀の飛び揚がるのを左に従え、東方の神獣である蒼竜の進み行くのを右に控えさせ、空を縦横に走らせる用意をするのです。
願はくは不肖【ふしょう】の躯【み】を賜はりて別離し、志を雲中に放遊【ほうゆう】せしめん。
精気【せいき】の摶摶【たんたん】たるに乘り、諸神【しょしん】の湛湛【ゆうゆう】たるを騖【は】せ。
白霓【はくげい】の習習たるを鯵【さん】とし、軍霊【ぐんれい】の豊豊たるを歴【へ】ん。
朱雀【すじゃく】の茇茇【はいはい】たるを左にし、蒼龍【そうりゅう】の躍躍【くく】たるを右にす。
#8
屬雷師之闐闐兮,通飛廉之衙衙。
雷神が鳴り響く中を後に列をなして続いてゆかせ、風神である飛廉の通り過ぎさせて、それを先導させていくのである。
前輊輬之鏘鏘兮,後輜乘之從從。
軽い車の鈴がのしゃんしゃんと鳴るのを前に馳しらせ、幌ある車のじゃんじゃんと鳴るのを後に従える。
載雲旗之委蛇兮,扈屯騎之容容。
雲の旗のうねりなびくのを立て、集まる騎馬の従者が列をなして続くのを従えて行こうと思う。
計專專之不可化兮,願遂推而為臧。
しかし、思いはかなものであり、私の専ら単純な志は変えることができない。どうかこのまま推し進めて善い方向に行ないたいものである。
賴皇天之厚德兮,還及君之無恙。
天の厚いめぐみを頼んで、国に還って、君王のまだお元気なうちに間に合いたいものである。
雷師【らいし】の闐闐【てんてん】たるを屬し,飛廉【ひれん】の衙衙【えいえい】たるを通らしめん。
輊輬【ちりょう】の鏘鏘【しょうしょう】たるを前に,輜乘【しじょう】の從從【じゅうじゅう】たるを後【したが】えん。
雲旗【うんき】の委蛇【いい】たるを載て,屯騎【とんき】の容容たるを扈【したが】えん。
計るに專專は之を化す可からず,願わくば遂に推して臧【ぞう】を為さん。
皇天【こうてん】の厚德に賴りて,還りて君の恙【つつが】無きに及ばん。
被荷裯之晏晏兮,然潢洋而不可帶。
(本文)
願沈滯而不見兮,尚欲布名乎天下 。
願沈滯而不見兮,尚欲布名乎天下 。





(本文)
そこで手綱を取る者を見てみると、それにふさわしい人ではないということで、それ故に、駿馬が跳ねて飛び上がってそのまま遠くに去ってしまう。

竊悲夫蕙華之曾敷兮,紛旖旎乎都房。

#2
第二段




(訳注) #8六段目








