韓愈(韓退之) 《感春三首 其三》
あでやかな舞い姫が毛氈の上で舞っているが、そのきれいなまなざしは剣や戟とばかりわたしにつきささる。
私の心に浮かぶのは古いいつもの友だちのことであるが、そのひとりさえもこの宴にいあわせないのである。
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感春三首 其三 韓愈(韓退之) <115-#2>Ⅱ中唐詩674 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2354
(一)
偶坐藤樹下,暮春下旬間。
何の気もなしに藤花の木の下に坐る、それは晩春の下旬のころのことである。
藤陰已可庇,落蕊還漫漫。
日は高くなり、藤の木蔭はもう十分に日陰なってきている。花は咲き終わり、蕊まで落ちるころになり、落ちた花弁はなお地面にしきつめられている。
亹亹新葉大,瓏瓏晚花乾。
日に日に若葉は大きくなっている。おそざきの花が玉のように白っぽく旱が続き乾いている。
青天高寥寥,兩蝶飛翻翻。
からりとして何ものもない青空はむなしいまでに高い。そこに二つの蝶がひらひらと飛びまわっている。
時節適當爾,懷悲自無端。
晩春という季節がちょうどそうであるにすぎないのである。春が終わろうとするのか、悲しみがむねにわくのはわれながらどういうわけかわからない。
(二)
黄黄蕪菁花,桃李事已退。
かぶらの花は黄色、そしいて黄色くさき、桃と李は自分の受け持ちを取って代わられる。
狂風簸枯榆,狼藉九衢内。
つむじ風がからからした楡葉や楡莢をまきあげ、都大路九衢に乱れとんで街を汚す。
春序一如此,汝顏安足賴。
春の景物の移り変わりはいつもこのとおりである。君の顔でもいつまでも若さを頼りにしていることができるのだろうか。
誰能駕飛車,相從觀海外。
誰が能く空飛ぶ車を鳥にひっぱらせられるのか、そして、つれ立って海のかなたを見物に行くことのできるひとはないのであろうか。
(三)
晨游百花林,朱朱兼白白。
明け方からいろいろの花さく林を遊覧すると、あかくあかく咲く花のかたまり、また白く白い花のかたまりがある。
柳枝弱而細,懸樹垂百尺。
柳の枝はしなやかにこまやかに、柳の樹木から百尺も垂れている。
左右同來人,金紫貴顯劇。
左右にいっしょにやって来たのは、金や紫の服飾、佩び玉の色もうるわしいとても身分の高い人人である。
嬌童爲我歌,哀響跨箏笛。(#1
なまめかしい少年がわたしに歌をうたってくれたが、そのかん高くもの悲しい響きは箏琴や笛にもまざってきこえてくる。
豔姬蹋筵舞,清眸刺劍戟。
あでやかな舞い姫が毛氈の上で舞っているが、そのきれいなまなざしは剣や戟とばかりわたしにつきささる。
心懷平生友,莫一在燕席。
私の心に浮かぶのは古いいつもの友だちのことであるが、そのひとりさえもこの宴にいあわせないのである。
死者長眇芒,生者困乖隔。
死んだ者とは永遠に交渉のなくなった状態になってしまい、生きている者とこまったことにはなればなれになったままである。
少年真可喜,老大百無益。 (#2
若いときこそほんとにたのしくよろこばしいものだ。老いさらばえては何ごとにつけても益が無いのである。
晨に百花の林に遊べば、朱朱 兼ねて白白。
柳の枝は弱【なよ】やかにして細【こま】やかに、樹に懸かって垂るること百尺なり。
左右の同【とも】に来たる人は、金紫【きんし】貴顕【きけん】なること劇【はなは】だし。
嬌童【きょうどう】我が為に歌い、哀しき響きは箏笛【そうてき】に跨【こ】ゆ。
豔姬【えんぎ】筵を傷んで舞い、清き眸【ひとみ】は剣戟【けんげき】を刺す。
心に平生の友を懐うに、一【ひとり】も燕席に在ること莫し。
死せる者は長【とこしえ】に眇芒【びょうぼう】たり、生ける者は乖隔【かくかく】するに困しむ。
少年は真に喜ぶべし、老大【ろうだい】百ながら益無【えきな】し。
『感春三首 其三』 現代語訳と訳註
(本文) (#2
豔姬蹋筵舞,清眸刺劍戟。
心懷平生友,莫一在燕席。
死者長眇芒,生者困乖隔。
少年真可喜,老大百無益。
(下し文)
豔姬【えんぎ】筵を傷んで舞い、清き眸【ひとみ】は剣戟【けんげき】を刺す。
心に平生の友を懐うに、一【ひとり】も燕席に在ること莫し。
死せる者は長【とこしえ】に眇芒【びょうぼう】たり、生ける者は乖隔【かくかく】するに困しむ。
少年は真に喜ぶべし、老大【ろうだい】百ながら益無【えきな】し。
(現代語訳)
あでやかな舞い姫が毛氈の上で舞っているが、そのきれいなまなざしは剣や戟とばかりわたしにつきささる。
私の心に浮かぶのは古いいつもの友だちのことであるが、そのひとりさえもこの宴にいあわせないのである。
死んだ者とは永遠に交渉のなくなった状態になってしまい、生きている者とこまったことにはなればなれになったままである。
若いときこそほんとにたのしくよろこばしいものだ。老いさらばえては何ごとにつけても益が無いのである。
(訳注)
感春 816年元和十一年三月、韓愈四十九歳、中書舎人なったころの作。
豔姬蹋筵舞,清眸刺劍戟。
あでやかな舞い姫が毛氈の上で舞っているが、そのきれいなまなざしは剣や戟とばかりわたしにつきささる。
〇豔姬 あでやかな舞い姫。
〇清眸刺劍戟 清らかな視線は剣や戦をつきさすようにわたしを射る。
心懷平生友,莫一在燕席。
私の心に浮かぶのは古いいつもの友だちのことであるが、そのひとりさえもこの宴にいあわせないのである。
○燕席 燕は宴と同じ。宴会の席。
死者長眇芒,生者困乖隔。
死んだ者とは永遠に交渉のなくなった状態になってしまい、生きている者とこまったことにはなればなれになったままである。
〇眇芒 紗茫と同じ。はるかなかなたへ行って、自分と交渉のなくなった状態をいう。
〇乖隔 はなればなれになる。
少年真可喜,老大百無益。
若いときこそほんとにたのしくよろこばしいものだ。老いさらばえては何ごとにつけても益が無いのである。
〇百無益 何ごとにつけても益が無い。
(三)
晨游百花林,朱朱兼白白。
柳枝弱而細,懸樹垂百尺。
左右同來人,金紫貴顯劇。
嬌童爲我歌,哀響跨箏笛。(#1
豔姬蹋筵舞,清眸刺劍戟。
心懷平生友,莫一在燕席。
死者長眇芒,生者困乖隔。
少年真可喜,老大百無益。(#2
晨に百花の林に遊べば、朱朱 兼ねて白白。
柳の枝は弱【なよ】やかにして細【こま】やかに、樹に懸かって垂るること百尺なり。
左右の同【とも】に来たる人は、金紫【きんし】貴顕【きけん】なること劇【はなは】だし。
嬌童【きょうどう】我が為に歌い、哀しき響きは箏笛【そうてき】に跨【こ】ゆ。
豔姬【えんぎ】筵を傷んで舞い、清き眸【ひとみ】は剣戟【けんげき】を刺す。
心に平生の友を懐うに、一【ひとり】も燕席に在ること莫し。
死せる者は長【とこしえ】に眇芒【びょうぼう】たり、生ける者は乖隔【かくかく】するに困しむ。
少年は真に喜ぶべし、老大【ろうだい】百ながら益無【えきな】し。
晨游百花林,朱朱兼白白。
(本文)





