中唐詩人選集【Ⅰ李商隠-150】Ⅱ韓退之(韓愈)Ⅶ孟郊(東野)  漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩 訳注解説ブログ

Ⅰ李商隠は難解詩といわれている。約150首紹介済。(晩唐詩人) Ⅱ韓退之(韓愈)-約500首Ⅶ孟郊、中唐の詩人を掲載中。万物の性(さが)をテーマにした哲学的な詩。このブログは基本的に中唐詩人を中心にして掲載する予定。 韓愈詩文のこれまでの掲載分とこれから掲載予定分を時系列で整理した2014.3.29のブログに集約してそこから各年次を見ることができる  kanbuniinkai 検索で、《漢文委員会HP05》サイトあります。漢詩唐詩を理解するための総合サイト:≪漢文委員会 漢詩07≫。

少し、マニアックな晩唐詩人Ⅰ-李商隠150首をまず掲載済み。中唐は盛唐詩人(孟浩然・王維、杜甫、李白)を受け継いだ多様な詩人が出ている。この時代も驚くほど詩が発展している。Ⅱ韓退之(韓愈)500首、Ⅲ柳宗元40首、Ⅳ韋応物、Ⅴ劉長卿、Ⅵ韋荘、Ⅶ孟郊(孟東野)、Ⅷ張籍、Ⅸ賈島、Ⅹ劉禹錫、ほか2012~2020年の予定で気長に進める。同じ中唐ではあるが、白居易のグループについては、李白のブログ350首(2015/6月再開~2018/夏・秋月予定)の後掲載の予定。別に杜甫詩ブログ1500首(2011/7月~2018/8月の予定で)を進行中。詩数につぃては、予定の詩数より多くなる。気まぐれなところがあるのでこの予定が少し変わる場合があり、その節はご容赦ください。                 古詩・謝霊運詩 杜甫詩 韓愈詩 花間集500首全詩 それぞれ毎日ブログしています。 このブログ、索引=語句の「検索」 参考書以上掲載。漢詩力up。

燕臺詩四首

燕臺詩四首 其四 冬#2 李商隠135 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 134-#2

燕臺詩四首 其四 冬#2 李商隠135 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 134-#2


其四 冬 #1
天東日出天西下,雌鳳孤飛女龍寡。
青溪白石不相望,堂上遠甚蒼梧野。
凍壁霜華交隱起,芳根中斷香心死。
浪乘畫舸憶蟾蜍,月娥未必嬋娟子。』
#2
楚管蠻弦愁一概,空城罷舞腰支在。
宮廷では楚の曲や指南地方の少数民族の曲も演奏される、どちらも同じように憂愁を催す。滅亡した王朝の城郭には誰もいない、楽曲に合わせて舞踊もされたものだ、それも妖艶な腰の体つきで舞い姿をみせたのだ。
當時歡向掌中銷,桃葉桃根雙姊妹。」
あの頃の歓びというものは王の趣向に迎合して、この掌中で消えていくか細さを求め餓死者さえ出たのだ。あまたの王、富貴が姉妹を妾家として迎えた、あの王獻之の妾家に「桃葉復た桃葉、桃樹は桃根に連なる」といって桃葉・桃根姉妹と同時に歓びを求めた。
破鬟倭墮淩朝寒,白玉燕釵黃金蟬。
経験のない娘に無理矢理迫ったのだろう、その娘の髪は乱れ、矮墮の髪型のままが朝の寒さに耐えている、白玉の燕のかんざし、黄金の蝉の髪飾りをつけて精一杯のおめかしをしてきたのだろう。
風車雨馬不持去,蠟燭啼紅怨天曙。』

年を取ってきたり、ほかの女に気が移ると風の車も雨の車馬でさえもだれも運んでくれることはなくなるのだ。蝋燭は赤い涙を流し、声出して啼いても、明けてゆく大空への怨みを抱くだけなのだ。
右冬


○押韻 下,寡。野。野。子。/概,在。妹。/寒,蟬。/去,曙。


其の四 冬
天の東に日出でて 天の西に下る、雌鳳(しほう)は孤り飛び 女龍(じょりょう)は寡なり。
青渓と白石と相い望まず、堂中遠きこと 蒼梧(そうご)の野より甚だし。
凍壁の霜華(そうか) 交(こも)ごも隠起す、芳根(ほうこん)は中断し香心は死す。
浪乗(ろうじょう)す 画舸(がか)にりて蟾蜍(せんじょ)を憶う、月蛾末だ必ずしも嬋娟(せんけん)子ならず。

楚管(そかん) 蛮絃(ばんげん) 愁いは一概、空域 舞いを罷(や)めて腰支(ようし)在り。
当時の歓びは掌中に銷ゆ、桃葉(とうよう) 桃根(とうこん) 双姉妹。
破鬟(はかん)の倭墮(わだ)朝寒を淩(しの)ぐ,白玉の燕釵(えんさ)黃金の蟬。
風車雨馬 持ち去らず,蠟燭(ろうしょく) 啼紅(ていこう) 天の曙くる を 怨む。』


燕臺詩四首 其四 冬#2 現代語訳と訳註
(本文) 其四 冬

楚管蠻弦愁一概,空城罷舞腰支在。
當時歡向掌中銷,桃葉桃根雙姊妹。
破鬟矮墮淩朝寒,白玉燕釵黃金蟬。
風車雨馬不持去,蠟燭啼紅怨天曙。』


(下し文)
楚管(そかん) 蛮絃(ばんげん) 愁いは一概、空域 舞いを罷(や)めて腰支(ようし)在り。
当時の歓びは掌中に銷ゆ、桃葉(とうよう) 桃根(とうこん) 双姉妹。
破鬟(はかん)の矮墮(わだ)朝寒を淩(しの)ぐ,白玉の燕釵(えんさ)黃金の蟬。
風車雨馬 持ち去らず,蠟燭(ろうしょく) 啼紅(ていこう) 天の曙くる を 怨む。』
右 冬のうた


(現代語訳)
宮廷では楚の曲や指南地方の少数民族の曲も演奏される、どちらも同じように憂愁を催す。滅亡した王朝の城郭には誰もいない、楽曲に合わせて舞踊もされたものだ、それも妖艶な腰の体つきで舞い姿をみせたのだ。
あの頃の歓びというものは王の趣向に迎合して、この掌中で消えていくか細さを求め餓死者さえ出たのだ。あまたの王、富貴が姉妹を妾家として迎えた、あの王獻之の妾家に「桃葉復た桃葉、桃樹は桃根に連なる」といって桃葉・桃根姉妹と同時に歓びを求めた。
経験のない娘に無理矢理迫ったのだろう、その娘の髪は乱れ、矮墮の髪型のままが朝の寒さに耐えている、白玉の燕のかんざし、黄金の蝉の髪飾りをつけて精一杯のおめかしをしてきたのだろう。
年を取ってきたり、ほかの女に気が移ると風の車も雨の車馬でさえもだれも運んでくれることはなくなるのだ。蝋燭は赤い涙を流し、声出して啼いても、明けてゆく大空への怨みを抱くだけなのだ。


(訳注)
楚管蠻弦愁一概,空城罷舞腰支在。

宮廷では楚の曲や指南地方の少数民族の曲も演奏される、どちらも同じように憂愁を催す。滅亡した王朝の城郭には誰もいない、楽曲に合わせて舞踊もされたものだ、それも妖艶な腰の体つきで舞い姿をみせたのだ。
楚管 楚の国の哀愁を帯びる管楽器。○蠻弦 蛮絃:指南地方の少数民族の弦楽器。憂愁を催す。

河内詩二首 其一150- 126

桂林 李商隠 :anbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 42 

潭州 李商隠 :紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 41

空城 滅亡した王朝の城郭には誰もいないさま。○罷舞 舞踏はもう過去のこととなった。○腰支在 妖艶な腰の体つきで舞い姿をみせた。「宮妓」詩に「披香新殿に腰支を闘わす」というように、踊り子の動きの際立つ部位。薄絹をつけて舞う宮廷での踊りは、頽廃的に性欲に訴えるものであった。


當時歡向掌中銷,桃葉桃根雙姊妹。
あの頃の歓びというものは王の趣向に迎合して、この掌中で消えていくか細さを求め餓死者さえ出たのだ。あまたの王、富貴が姉妹を妾家として迎えた、あの王獻之の妾家に「桃葉復た桃葉、桃樹は桃根に連なる」といって桃葉・桃根姉妹と同時に歓びを求めた。
○歡向 漢・成帝の寵愛を受けた趙飛燕は体が軽く、「掌上に舞う」ことができたという(『自民六帖』など)。また梁の羊侃の妓女張浄琬は腰周りがわずか一尺六寸(四十cm弱)、「掌中の舞い」ができたという(『梁書』羊侃伝)。○桃葉桃根 桃葉は東晋・王献之の愛人。「桃葉歌二首」其二「桃葉復た桃葉、桃樹は桃根に連なる。相憐れむは兩楽事なるに、獨我をして慇懃ならしむ」(『王台新詠』巻十)。そこから後人が桃菓・桃根を姉妹とする附会の説が生まれたと漏浩はいう。『土花漠漠として頽垣を囲み、中にあり桃葉桃根の魂、夜深く踏むことあまねし階下の月、憐れなり羅襪の終に痕なきを。』
「楚王細腰を好み朝に餓人有り」
 お上の好む所に下の者が迎合するたとえで、そのために弊害が生じやすいこと。春秋時代に、楚王が腰の細い美女を好んだので、迎合する官僚、宮女たちは痩せようとして食事をとらなくなり、餓死する者が多く出たという話から。「楚王細腰を好みて宮中餓死多し」ともいう。なお、楚王については、荘王とする説と霊王とする説がある。


破鬟矮墮淩朝寒,白玉燕釵黃金蟬。
経験のない娘に無理矢理迫ったのだろう、その娘の髪は乱れ、矮墮の髪型のままが朝の寒さに耐えている、白玉の燕のかんざし、黄金の蝉の髪飾りをつけて精一杯のおめかしをしてきたのだろう。
矮墮 女性の髪型。楽府「陌上桑」に羅敷の美しさを述べて、「頭上には倭堕の髻、耳中には明月の珠」。「破贅」はそれが乱れていることをいう。悲愁のために憔悴した女性の姿を描く。○白玉 白玉の燕のかんざしのこと。燕釵:「釵頭雙白燕」。
聖女詞 
松篁臺殿蕙香幃、龍護瑤窗鳳掩扉。
無質易迷三里霧、不寒長著五銖衣。
人閒定有崔羅什、天上應無劉武威。
寄問釵頭雙白燕、毎朝珠館幾時歸。
 髪飾り。この二句は聖女詞のイメージそのままである。


風車雨馬不持去,蠟燭啼紅怨天曙。』
女が年を取ってきた、ほかの女に気が移ると風の車も雨の車馬でさえもだれも運んでくれることがなくなるのだ。寵愛を失ったもの、評価をされないもの、蝋燭は赤い涙を流し、声出して啼いても、明けてゆく大空への怨みを抱くだけなのだ。
風車雨馬 風雨が車馬となって彼女を運んではくれない。西晋・博玄「擬北楽府三首」『燕人美篇』(『王台新詠』巻九)「燕人美兮趙女佳,其室則邇兮限層崖。 云爲車兮風爲馬,玉在山兮蘭在野。 云無期兮風有止,思心多端兮誰能理。」(燕人は美なり。其室は近きも雲は車と為り風は馬と為る。) ○蠟燭啼紅 赤い蝋燭が血のような赤い涙を垂れる。じ白居易「夜宴惜別」詩に「燭暗きて紅涙 誰が為にか流す」。


○詩型 七言古詩。
○押韻 下,寡。野。野。子。/概,在。妹。/寒,蟬。/去,曙。


国王の趣向というものが国を滅ぼした。それは、王朝貴族がお上の好む所に下の者が迎合することにある。そのために弊害が生じやすいこと。春秋の楚王が腰の細い美女を好んだので、迎合する官僚、宮女たちは痩せようとし、周りも食事をとらせなかった。餓死する者まで多く出したという。「楚王細腰を好みて宮中餓死多し」ともいうことだ。これに王朝内で、宦官の働きが問題になることが多くあった。
網の目のように情報を集め、美女をかき集めてくるのだ。美人であれば、姉妹ごと天子のもとに送られた。生娘から十数年の間の栄華に一族揚げて送り出したのだ。李商隠は、宮女、妓女のこうした運命と自分を重ねて表現したのだ。



其四 冬 #1
天東日出天西下,雌鳳孤飛女龍寡。
青溪白石不相望,堂上遠甚蒼梧野。
凍壁霜華交隱起,芳根中斷香心死。
浪乘畫舸憶蟾蜍,月娥未必嬋娟子。』
#2
楚管蠻弦愁一概,空城罷舞腰支在。
當時歡向掌中銷,桃葉桃根雙姊妹。」
破鬟倭墮淩朝寒,白玉燕釵黃金蟬。
風車雨馬不持去,蠟燭啼紅怨天曙。』
右冬

○押韻 下,寡。野。野。子。/概,在。妹。/寒,蟬。/去,曙。


毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
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燕臺詩四首 其四 冬#1 李商隠134 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 134-#1

燕臺詩四首 其四 冬#1 李商隠134 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 134-#1


其四 冬 #1
天東日出天西下,雌鳳孤飛女龍寡。
天により冬を知らされ、東の空から日は昇り、西の空へとまもなく沈むように天子は歿されたのだ。后妃はひとり寂しく大空を飛ぶのであり、龍の女としての存在に連れ添う相手もいなくなった。
青溪白石不相望,堂上遠甚蒼梧野。
青渓の娘であった「玉環」、白石の青年「寿王」はもう向かい合うこともなく、二人の使った奥座敷はもう遠いものとなった、今度は睦まじく鳳凰が棲む蒼梧の野にかわったのだ。
凍壁霜華交隱起,芳根中斷香心死。
凍てついた壁のように何もできない、発言もできなくなった。庭の木々も霜の花をつけるように、白くなり、主張していたいろんな考えも凍ったのだ。王朝内で、改革を呼びかけている者たちが、党派の間で左遷ということで根を断ち切られ、讒言あるいは宦官の策略、宦官の薬、 香木の根も芯も断ち切られ、その芯は死に絶えた。
浪乘畫舸憶蟾蜍,月娥未必嬋娟子。』

みだりにお迎え舟のようにあでやかな船に乗ったとして月の世界を思っても無駄だ、月の婦蛾があの楊貴妃の美しさに及ぶものではない。
#2
楚管蠻弦愁一概,空城罷舞腰支在。
當時歡向掌中銷,桃葉桃根雙姊妹。」
破鬟倭墮淩朝寒,白玉燕釵黃金蟬。
風車雨馬不持去,蠟燭啼紅怨天曙。』
右冬

○押韻 下,寡。野。野。子。/概,在。妹。/寒,蟬。/去,曙。


其の四 冬
天の東に日出でて 天の西に下る、雌鳳(しほう)は孤り飛び 女龍(じょりょう)は寡なり。
青渓と白石と相い望まず、堂中遠きこと 蒼梧(そうご)の野より甚だし。
凍壁の霜華(そうか) 交(こも)ごも隠起す、芳根(ほうこん)は中断し香心は死す。
浪乗(ろうじょう)す 画舸(がか)にて蟾蜍(せんじょ)を憶う、月蛾 末だ 必ずしも嬋娟(せんけん)子ならず。

楚管(そかん) 蛮絃(ばんげん) 愁いは一概、空域 舞いを罷(や)めて腰支(ようし)在り。
当時の歓びは掌中に銷ゆ、桃葉(とうよう) 桃根(とうこん) 双姉妹。
破鬟(はかん)の倭墮(わだ)朝寒を淩(しの)ぐ,白玉の燕釵(えんさ)黃金の蟬。
風車雨馬 持ち去らず,蠟燭(ろうしょく) 啼紅(ていこう) 天の曙くる を 怨む。』




燕臺詩四首 其四 冬#1 現代語訳と訳註
(本文)
其四 冬
天東日出天西下,雌鳳孤飛女龍寡。
青溪白石不相望,堂上遠甚蒼梧野。
凍壁霜華交隱起,芳根中斷香心死。
浪乘畫舸憶蟾蜍,月娥未必嬋娟子。』


(下し文) 其の四 冬
天の東に日出でて 天の西に下る、雌鳳(しほう)は孤り飛び 女龍(じょりょう)は寡なり。
青渓と白石と相い望まず、堂中遠きこと 蒼梧(そうご)の野より甚だし。
凍壁の霜華(そうか) 交(こも)ごも隠起す、芳根(ほうこん)は中断し香心は死す。
浪乗(ろうじょう)す 画舸(がか)にりて蟾蜍(せんじょ)を憶う、月蛾末だ必ずしも嬋娟(せんけん)子ならず。


(現代語訳) 冬 #1
天により冬を知らされ、東の空から日は昇り、西の空へとまもなく沈むように天子は歿されたのだ。后妃はひとり寂しく大空を飛ぶのであり、龍の女としての存在に連れ添う相手もいなくなった。
青渓の娘であった「玉環」、白石の青年「寿王」はもう向かい合うこともなく、二人の使った奥座敷はもう遠いものとなった、今度は睦まじく鳳凰が棲む蒼梧の野にかわったのだ。
凍てついた壁のように何もできない、発言もできなくなった。庭の木々も霜の花をつけるように、白くなり、主張していたいろんな考えも凍ったのだ。王朝内で、改革を呼びかけている者たちが、党派の間で左遷ということで根を断ち切られ、讒言あるいは宦官の策略、宦官の薬、 香木の根も芯も断ち切られ、その芯は死に絶えた。
みだりにお迎え舟のようにあでやかな船に乗ったとして月の世界を思っても無駄だ、月の婦蛾があの楊貴妃の美しさに及ぶものではない。


(訳注) 其四 冬 #1
天東日出天西下,雌鳳孤飛女龍寡。

天により冬を知らされ、東の空から日は昇り、西の空へとまもなく沈むように天子は歿されたのだ。后妃はひとり寂しく大空を飛ぶのであり、龍の女としての存在に連れ添う相手もいなくなった。
天東日出 太陽が東から昇ったと思えばすぐ・天西下 西に下る。冬の日の短さをいう。○雌鳳孤飛  雌鳳は后妃、お相手の天子が死んだことを意味するもの。・女龍寡 英雄を相手に不義をしていた后妃が天子の詩に伴って、不義の相手と会えなくなったことを示す。寡は女性が連れ合いの存在がなくなったこと。 燕臺詩四首 其一 春#1 では「雄龍雌鳳」身分の違う男女交際を詠ったことが関連している。
 
青溪白石不相望,堂上遠甚蒼梧野。
青渓の娘であった「玉環、白石の青年「寿王」はもう向かい合うこともなく、二人の使った奥座敷はもう遠いものとなった、今度は睦まじく鳳凰が棲む蒼梧の野にかわったのだ。
青溪 南朝の「楽府神絃歌の青渓小姑曲のことで、ここでは梁の呉均の「続斉諧記」に出てくる齢若い仙女を指す。会稽の超文韶なる者と、つかのまの歌合せをして消え去ったという。○ 思いをやるきみ。女性が男性を呼ぶ親称。
無題(垂幡深く下ろす)
重幃深下莫愁堂、臥後清宵細細長。
紳女生涯原是夢、小姑居処本無郎。
風波不信菱枝弱、月露誰敦桂葉香。
直道相思了無益、未妨啁悵是清狂。

李商隠 10 無題(重幃深下莫愁堂) 題をつけられない詩。

(莫愁のことを詠う。)其二夏篇も参照燕臺詩四首 其二 夏#1 

白石 「白石即の曲」がある。それに借りて玄宗の子の寿王とその妃の楊環をしめす。○不相望 玄宗に見初められ女道士とならせ、太真と呼んだ。逢うことはできなくなった。○堂上遠甚 大切な座敷を意味する。○蒼梧野 仙界の蒼梧桐は鳳凰の食べ物でこれがないと住まない。玄宗と楊貴妃の愛の巢をしめす。


凍壁霜華交隱起,芳根中斷香心死。
凍てついた壁のように何もできない、発言もできなくなった。庭の木々も霜の花をつけるように、白くなり、主張していたいろんな考えも凍ったのだ。王朝内で、改革を呼びかけている者たちが、党派の間で左遷ということで根を断ち切られ、讒言あるいは宦官の策略、宦官の薬、 香木の根も芯も断ち切られ、その芯は死に絶えた。
凍壁 壁まで凍り付いて身動きが取れないさまを比喩として言う。○霜華 庭の常緑の葉に霜の花。○交隠起 くぼんだり盛り上がったり。○芳根 王朝内で、改革を呼びかけている者たちが、党派の間で左遷ということで根を断ち切られ、讒言あるいは宦官の策略、宦官の薬、 香木の根も芯も枯れる。

浪乘畫舸憶蟾蜍,月娥未必嬋娟子。』
みだりにお迎え舟のようにあでやかな船に乗ったとして月の世界を思っても無駄だ、月の婦蛾があの楊貴妃の美しさに及ぶものではない。
浪乗 浪+動詞 浪費はみだりに~を費やす。ここではみだりに舟に乗ること。○畫舸 彩色を施した船。○蟾蜍 月を指す。河内詩二首 其一 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 126
鼉鼓沈沈虬水咽、秦絲不上蠻絃絶。
常蛾衣薄不禁寒、蟾蜍夜艶秋河月。』
碧城冷落空豪煙、簾輕幕重金鉤欄。
霊香不下兩皇子、孤星直上相風竿。』
八桂林邊九芝草、短襟小鬢相逢道。
入門暗數一千春、願去閏年留月小。』
梔子交加香蓼繁、停辛佇苦留待君。』
(薬を飲んで帰られなくなった嫦娥は薄いころもをまとった月の女神となり寒さに震えている。月は蟾蜍に食べられた三日月になってはつややかに美しい、銀河と月が輝く秋の夜のできごとだ。)
〇月蛾 月のなかに住む嫦娥。李商隠 12 嫦娥詩参照。〇嬋娟 美しいこと。・嬋娟子で美女。月まで婦娥、嫦娥を連れて帰ったとしても楊貴妃の美しさと比べることさえできない。

燕臺詩四首 其三 秋#2 李商隠133 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 131-#2

燕臺詩四首 其三 秋#2 李商隠133 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 131-#2

其三 秋 -#2
月浪衡天天宇濕,涼蟾落盡疏星入。
雲屏不動掩孤嚬,西樓一夜風箏急。」
欲織相思花寄遠,終日相思卻相怨。
但聞北斗聲回環,不見長河水清淺。」
金魚鎖斷紅桂春,古時塵滿鴛鴦茵。
堪悲小苑作長道,玉樹未憐亡國人。』
瑤琴愔愔藏楚弄,越羅冷薄金泥重。
湘妃が洞庭の月夜に瑟を鼓(ひ)く、玉の琴は愔愔と静かな調べに楚の国の響きを籠められている、越のうすぎぬは秋の冷さのなかで透き通り金泥の模様は重厚なものなのだ。
簾鉤鸚鵡夜驚霜,喚起南雲繞雲夢。」
すだれの鉤のような月の夜、鸚鵡は夜の霜の降りる寒さに驚いた、思い起こすのは、南の雲のもと、仙人に招かれ雲夢の沢をめぐった日々もあった。
璫璫丁丁聯尺素,內記湘川相識處。
湘霊が奏でる五十舷の瑟のしらべ、耳飾りの音もかすかに響いてくる、耳飾りを手紙に結び、そこに瀟湘のあたりで知り合った時のことを綴る。
歌唇一世銜雨看,可惜馨香手中故。』

口ずさむ歌、いつまでも涙ながらに読み続けることだろう。しかし無念にも手紙にかき込められた香は、手のなかでしだいに失せていくのだ。


入。急。」/遠,怨。淺。」/春,茵。人。』/弄,重。夢。/素,處。故。』

其の三 秋
月浪(げつろう) 天を衡(う)ち 天宇(てんう)湿る、涼蟾(りょせん) 落ち盡くして疏星(そせい)入る。
雲屏は不動かず 孤嚬(こひん)を掩う,西樓 一夜 風箏 急なり。」
相思の花を織りて遠くに寄せんと欲するも、終日相い思えば却って相い怨む。
但だ北斗の声の廻環するを聞き、長河の水の清浅なるを見ず。
金魚の鎖は断つ 紅桂の春、古時の塵は満つ 鴛鴦(えんおう)の茵(しとね)。
悲しむに堪えん小苑 長道と作るを,玉樹未だ憐まず 亡国の人。』
揺瑟(ようしつ)愔愔(いんいん)として楚弄(そろう)藏す,越羅(えつら)冷薄にして金泥は重し。
簾鉤(れんこう)鸚鵡(おうむ) 夜 霜に驚き,喚び起こす 南雲 雲夢(うんぼう)を繞(めぐ) るを。」
璫璫(とうとう)丁丁(ちょうちょう) 尺素に聯(つら)なる,內には記(しる)す 湘川(しょうせん) 相 識る處。
歌唇 一世 雨を銜(ふく)みて看ん,惜むべし 馨香(けいこう) 手中に故(ふる)びたり。」


燕臺詩四首 其三 秋#2 現代語訳と訳註
(本文)
其三 秋-#2
瑤琴愔愔藏楚弄,越羅冷薄金泥重。
簾鉤鸚鵡夜驚霜,喚起南雲繞雲夢。」
璫璫丁丁聯尺素,內記湘川相識處。
歌唇一世銜雨看,可惜馨香手中故。』



(下し文) 其の三 秋-#2
揺瑟(ようしつ)愔愔(いんいん)として楚弄(そろう)藏す,越羅(えつら)冷薄にして金泥は重し。
簾鉤(れんこう)鸚鵡(おうむ) 夜 霜に驚き,喚び起こす 南雲 雲夢(うんぼう)を繞(めぐ) るを。」
璫璫(とうとう)丁丁(ちょうちょう) 尺素に聯(つら)なる,內には記(しる)す 湘川(しょうせん) 相 識る處。
歌唇 一世 雨を銜(ふく)みて看ん,惜むべし 馨香(けいこう) 手中に故(ふる)びたり。」

(現代語訳)
湘妃が洞庭の月夜に瑟を鼓(ひ)く、玉の琴は愔愔と静かな調べに楚の国の響きを籠められている、越のうすぎぬは秋の冷さのなかで透き通り金泥の模様は重厚なものなのだ。
すだれの鉤のような月の夜、鸚鵡は夜の霜の降りる寒さに驚いた、思い起こすのは、南の雲のもと、仙人に招かれ雲夢の沢をめぐった日々もあった。
湘霊が奏でる五十舷の瑟のしらべ、耳飾りの音もかすかに響いてくる、耳飾りを手紙に結び、そこに瀟湘のあたりで知り合った時のことを綴る。
口ずさむ歌、いつまでも涙ながらに読み続けることだろう。しかし無念にも手紙にかき込められた香は、手のなかでしだいに失せていくのだ。



(訳注) 秋のうた#2
瑤琴愔愔藏楚弄,越羅冷薄金泥重。
湘妃が洞庭の月夜に瑟を鼓(ひ)く、玉の琴は愔愔と静かな調べに楚の国の響きを籠められている、越のうすぎぬは秋の冷さのなかで透き通り金泥の模様は重厚なものなのだ。
瑤琴 玉で装飾した瑟。美しい玉。また、玉のように美しい。湘妃が洞庭の月夜に瑟を鼓くという古伝説○愔愔 穏やかな音の形容。『左氏伝』昭公十二年に「其の詩に目く、祈招の愔愔たる、式て徳音を昭らかにす」。○楚弄 楚の国の曲。「弄」は演奏することから楽曲をいう。○越羅 越の国の羅(薄い絹織物)は蜀の錦とならぶ名品とされた。○金泥 金の顔料。金泥で羅の衣に図案を描く。
涙  李商隠

(劉蕡・賈誼について)
簾鉤鸚鵡夜驚霜,喚起南雲繞雲夢。」
すだれの鉤のような月の夜、鸚鵡は夜の霜の降りる寒さに驚いた、思い起こすのは、南の雲のもと、仙人に招かれ雲夢の沢をめぐった日々もあった。
南雲 南の空の雲。遠く南方にいる親しい人を思う気持ちをあらわす。西晋・陸機「親を思う賦」 に「南雲を指して款を寄す」。○雲夢 雲夢の沢。夢澤 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-72 (楚王の戦争への負担、豪奢、趣向などによる人民の苦しみを与えたことへ批判したものである。)

七月二十八日夜與王鄭二秀才聽雨後夢作 李商隠  : 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-79


璫璫丁丁聯尺素,內記湘川相識處。
湘霊が奏でる五十舷の瑟のしらべ、耳飾りの音もかすかに響いてくる、耳飾りを手紙に結び、そこに瀟湘のあたりで知り合った時のことを綴る。
璫璫 一対の耳飾り。○丁丁 玉が触れ合う音。○尺素 手紙をいう詩語。長さ一尺のしろぎぬに書いたので尺素という。古楽府「飲馬長城窟行」に「児を呼びて鯉魚を君れば、中に尺素の書有り」。○湘川相識処 湘水のあたりで知り合った時のこと。
参照 李商隠「潭州」、「涙」

安定城樓  紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-75

楚宮 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 55


歌唇一世銜雨看,可惜馨香手中故。」
口ずさむ歌、いつまでも涙ながらに読み続けることだろう。しかし無念にも手紙にかき込められた香は、手のなかでしだいに失せていくのだ。
歌唇一世 手紙の歌をいつまでも口ずさみながら読む。「一生」はいつまでも。○馨香 ここでは箋紙に付いた
香り。二人の恋が過去のものとなっていくことを象徴する。正当な発言も時とともに色あせ、忘れ去られていく。○手中故


(解説)

○詩型・押韻 七言古詩。
○押韻 入。急。」/遠,怨。淺。」/春,茵。人。』/弄,重。夢。/素,處。故。』

此の篇は李商隠「安定城樓」のイメージを異なった言い回しで詠っている。李商隠の王朝批判のせんとうにあるものの基本は宦官による讒言に対して、なすすべを持たない天子、高級官僚たちに向けられている。諸悪の根源を宦官としている。この宦官が日に日に増殖してゆくアメーバ―の様なものである。そのジレンマの中で牛李の闘争がなされている。天子はそれを直視しないで奢侈、頽廃に耽っていく。歴代の王朝が辿って来た道も、同様なものである。


燕臺詩四首 其三 秋 #1と#2

其三 秋
月浪衡天天宇濕,涼蟾落盡疏星入。
雲屏不動掩孤嚬,西樓一夜風箏急。」
欲織相思花寄遠,終日相思卻相怨。
但聞北斗聲回環,不見長河水清淺。」
金魚鎖斷紅桂春,古時塵滿鴛鴦茵。
堪悲小苑作長道,玉樹未憐亡國人。』
瑤琴愔愔藏楚弄,越羅冷薄金泥重。
簾鉤鸚鵡夜驚霜,喚起南雲繞雲夢。」
璫璫丁丁聯尺素,內記湘川相識處。
歌唇一世銜雨看,可惜馨香手中故。」

入。急。」/遠,怨。淺。」/春,茵。人。』/弄,重。夢。/素,處。故。』



其の三 秋
月浪(げつろう) 天を衡(う)ち 天宇(てんう)湿る、涼蟾(りょせん) 落ち盡くして疏星(そせい)入る。
雲屏は不動かず 孤嚬(こひん)を掩う,西樓 一夜 風箏 急なり。」
相思の花を織りて遠くに寄せんと欲するも、終日相い思えば却って相い怨む。
但だ北斗の声の廻環するを聞き、長河の水の清浅なるを見ず。
金魚の鎖は断つ 紅桂の春、古時の塵は満つ 鴛鴦(えんおう)の茵(しとね)。
悲しむに堪えん小苑 長道と作るを,玉樹未だ憐まず 亡国の人。』
揺瑟(ようしつ)愔愔(いんいん)として楚弄(そろう)藏す,越羅(えつら)冷薄にして金泥は重し。
簾鉤(れんこう)鸚鵡(おうむ) 夜 霜に驚き,喚び起こす 南雲 雲夢(うんぼう)を繞(めぐ) るを。」
璫璫(とうとう)丁丁(ちょうちょう) 尺素に聯(つら)なる,內には記(しる)す 湘川(しょうせん) 相 識る處。
歌唇 一世 雨を銜(ふく)みて看ん,惜むべし 馨香(けいこう) 手中に故(ふる)びたり。」


(現代語訳)
月の光が江の上にかかり、北斗七星の第五星「玉衡」は、天空を濡らしている。そうしていると秋の月は沈んでしまった、夜の明けきらぬ早朝の内に宮中に入る。
雲母の屏風がある、身じろぎもせず、口などをゆがめ、眉をひそめた顔に包まれた。そしてその夜の間西の高楼台に、風雲急を告げる凧があげられた。
相思樹の花を織り込んで遠くのあの人に送りたいけれど、一日中織り込んでいて思い続ければ、かえって怨みが募る。
今はただ聞こえてくるのは天子の座を示す北斗星あり、その周りを玉環の魂や、天牢六星が冤魄をともなって回っている、悲しみの声がするのだ、これだけ多くの行きたいという魂が多いと天の川が渡れるほど浅くなっているのは見たことがないだろう。
黄金の魚型の錠前が鎖されて金木犀の咲きほこった庭にだれもいない、かつて伴にした鴛鴦の褥には塵が厚く積もっている。
悲しみを耐えていたあの宮殿の中庭が今では大通りに変わってしまったのだ。陳の後主は「玉樹後庭歌」のように宮女ばかりにかまけて国を亡ぼした人に憐れを覚えるはずがない。
湘妃が洞庭の月夜に瑟を鼓(ひ)く、玉の琴は愔愔と静かな調べに楚の国の響きを籠められている、越のうすぎぬは秋の冷さのなかで透き通り金泥の模様は重厚なものなのだ。
すだれの鉤のような月の夜、鸚鵡は夜の霜の降りる寒さに驚いた、思い起こすのは、南の雲のもと、仙人に招かれ雲夢の沢をめぐった日々もあった。
湘霊が奏でる五十舷の瑟のしらべ、耳飾りの音もかすかに響いてくる、耳飾りを手紙に結び、そこに瀟湘のあたりで知り合った時のことを綴る。
口ずさむ歌、いつまでも涙ながらに読み続けることだろう。しかし無念にも手紙にかき込められた香は、手のなかでしだいに失せていくのだ。

参考---------------------------------
○湘妃 鼓宏舜の妻、蛾皇・女英の二人が舜王のあとを追いかけ湘水までゆき、舜の死んだことをきき、湘水に身をなげて死に、湘水の女神となった。それが湘妃であり、この湘妃が洞庭の月夜に瑟を鼓くという古伝説がある。○斑竹 斑紋のある竹、湘水の地方に産する。その竹は湘妃が涙を流したあとに生じたものであるとの伝説がある。○江 湘江をさす。 

蛾皇と女英の故事にもとづく。古代の帝王舜は南方巡行の途中、蒼梧(湖南省寧遠県付近の山)で残した。二人の妃、蛾皇と女英は舜を追い求めて湘江のあたりまで来たが、二人の涙がこぼれた。竹はまだらに染まった。そのためこの地の竹には斑紋がついているという(『博物志』、『述異記』)。湘江は長抄の西を通って洞庭湖に注ぐ。「浅深」はあるいは浅くあるいは深く、まだらになっていることをいう。


安定城樓
迢逓高城百尺樓、綠楊枝外盡汀洲。
賈生年少虚垂涕、王粲春來更遠遊。
永憶江湖歸白髪、欲廻天地人扁舟。
不知腐鼠成滋味、猜意鴛雛竟未休。



燕臺詩四首 其三 秋#1 李商隠132 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 131-#1

燕臺詩四首 其三 秋#1 李商隠132 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 131-#1


其三 秋
月浪衡天天宇濕,涼蟾落盡疏星入。
月の光が江の上にかかり、北斗七星の第五星「玉衡」は、天空を濡らしている。そうしていると秋の月は沈んでしまった、夜の明けきらぬ早朝の内に宮中に入る。
雲屏不動掩孤嚬,西樓一夜風箏急。」
雲母の屏風がある、身じろぎもせず、口などをゆがめ、眉をひそめた顔に包まれた。そしてその夜の間西の高楼台に、風雲急を告げる凧があげられた。
欲織相思花寄遠,終日相思卻相怨。
相思樹の花を織り込んで遠くのあの人に送りたいけれど、一日中織り込んでいて思い続ければ、かえって怨みが募る。
但聞北斗聲回環,不見長河水清淺。」
今はただ聞こえてくるのは天子の座を示す北斗星あり、その周りを玉環の魂や、天牢六星が冤魄をともなって回っている、悲しみの声がするのだ、これだけ多くの行きたいという魂が多いと天の川が渡れるほど浅くなっているのは見たことがないだろう。
金魚鎖斷紅桂春,古時塵滿鴛鴦茵。
黄金の魚型の錠前が鎖されて金木犀の咲きほこった庭にだれもいない、かつて伴にした鴛鴦の褥には塵が厚く積もっている。
堪悲小苑作長道,玉樹未憐亡國人。』-
#1
悲しみを耐えていたあの宮殿の中庭が今では大通りに変わってしまったのだ。陳の後主は「玉樹後庭歌」のように宮女ばかりにかまけて国を亡ぼした人に憐れを覚えるはずがない。
瑤琴愔愔藏楚弄,越羅冷薄金泥重。
簾鉤鸚鵡夜驚霜,喚起南雲繞雲夢。」
璫璫丁丁聯尺素,內記湘川相識處。
歌唇一世銜雨看,可惜馨香手中故。』-
#2

入。急。」/遠,怨。淺。」/春,茵。人。』/弄,重。夢。/素,處。故。』

其の三 秋
月浪(げつろう)  衡天(こうてん) 天宇(てんう)湿る、涼蟾(りょせん) 落ち盡(つく)して 疏星(そせい)に入る。
雲屏は不動かず 孤嚬(こひん)を掩う,西樓 一夜 風箏 急なり。」
相思の花を織り 遠くに寄せんと欲するも、終日 相思 却って相怨なる。
但 北斗 廻環する声を聞き、長河 水 清浅 を見(おぼえ)ず。
金魚の鎖は断つ 紅桂の春、古時の塵は満つ 鴛鴦(えんおう)の茵(しとね)。
悲しむに堪えん小苑 長道と作る,玉樹未だ憐まず 亡国の人。』-#1
揺瑟(ようしつ)愔愔として楚弄(そろう)藏す,越羅冷薄にして金泥は重し。
簾鉤(ちょうら)鸚鵡(おうむ) 夜 霜に驚き,喚び起こす 南雲 雲夢(うんぼう)を繞(めぐ) るを。」
璫璫(とうとう)丁丁(ちょうちょう) 尺素に聯(つら)なる,內には記(しる)す 湘川(しょうせん) 相 識る處。
歌唇 一世 雨を銜(ふく)みて看ん,惜むべし 馨香(けいこう) 手中に故(ふる)びたり。」


燕臺詩四首 其三 現代語訳と訳註
(本文)
 秋-#1
月浪衡天天宇濕,涼蟾落盡疏星入。
雲屏不動掩孤嚬,西樓一夜風箏急。」
欲織相思花寄遠,終日相思卻相怨。
但聞北斗聲回環,不見長河水清淺。」
金魚鎖斷紅桂春,古時塵滿鴛鴦茵。
堪悲小苑作長道,玉樹未憐亡國人。』-#1

(下し文)
月浪(げつろう)  衡天(こうてん) 天宇(てんう)湿る、涼蟾(りょせん) 落ち盡(つく)して 疏星(そせい)に入る。
雲屏は不動かず 孤嚬(こひん)を掩う,西樓 一夜 風箏 急なり。」
相思の花を織り 遠くに寄せんと欲するも、終日 相思 却って相怨なる。
但 北斗 廻環する声を聞き、長河 水 清浅 を見(おぼえ)ず。
金魚の鎖は断つ 紅桂の春、古時の塵は満つ 鴛鴦(えんおう)の茵(しとね)。
悲しむに堪えん小苑 長道と作る,玉樹未だ憐まず 亡国の人。』-#1

(現代語訳)
月の光が江の上にかかり、北斗七星の第五星「玉衡」は、天空を濡らしている。そうしていると秋の月は沈んでしまった、夜の明けきらぬ早朝の内に宮中に入る。
雲母の屏風がある、身じろぎもせず、口などをゆがめ、眉をひそめた顔に包まれた。そしてその夜の間西の高楼台に、風雲急を告げる凧があげられた。
相思樹の花を織り込んで遠くのあの人に送りたいけれど、一日中織り込んでいて思い続ければ、かえって怨みが募る。
今はただ聞こえてくるのは天子の座を示す北斗星あり、その周りを玉環の魂や、天牢六星が冤魄をともなって回っている、悲しみの声がするのだ、これだけ多くの行きたいという魂が多いと天の川が渡れるほど浅くなっているのは見たことがないだろう。
黄金の魚型の錠前が鎖されて金木犀の咲きほこった庭にだれもいない、かつて伴にした鴛鴦の褥には塵が厚く積もっている。
悲しみを耐えていたあの宮殿の中庭が今では大通りに変わってしまったのだ。陳の後主は「玉樹後庭歌」のように宮女ばかりにかまけて国を亡ぼした人に憐れを覚えるはずがない。


(訳注) 秋のうた#1
太和9年11月晩秋、「甘露の変」「楊貴妃」「陳の後主」
月浪衡天天宇濕,涼蟾落盡疏星入。
月の光が江の上にかかり、北斗七星の第五星「玉衡」は、天空を濡らしている。そうしていると秋の月は沈んでしまった、夜の明けきらぬ早朝の内に宮中に入る。
月浪 月の光が江の上にかかる。李商隠「贈劉司戸蕡」*-1参照 を連想させる。
衡天 北斗七星の第五星は玉衡を示すもの。王座ののこと。○天宇 天空。西普・左思「魂都賦」(『文選』巻六)に「天宇骸き、地塵驚く」。○涼蟾 秋の月をいう。月のなかには轄蛤(ひきがえる)がいると考えられたことから、「蟾」は月の別称に用いられる。○疏星 まばらな星。夜の明けきらぬ早朝。宮中で臣下を集めて催す行事朝礼。
*李商隠は首聯が詩題の舞台、この詩の舞台設定をあらわすように使用している。この朝礼で、「瑞兆として甘露が降った」と上奏し、宦官が確認に行くのでその時、宦官を一網打尽にするという策略を示す

雲屏不動掩孤嚬,西樓一夜風箏急。」
雲母の屏風がある、身じろぎもせず、口などをゆがめ、眉をひそめた顔に包まれた。そしてその夜の間、西の高楼台(鳳翔)に、風雲急を告げる凧があげられた。
雲屏 雲母の屏風。「常蛾」詩参照。
雲母屏風燭影深、長河漸落暁星沈。
嫦娥應悔倫塞薬、碧海青天夜夜心。
西亭 李商隠30 西亭に関する新解釈
孤噸 ひとり、眉をひそめた顔。嚬:ひそむ=顰む. 1 口などがゆがむ。2 べそをかく。○西樓 鄭注が鳳翔より兵を率いて粛清する予定であったことをしめす。○風箏 凧のこと。客家の八角風箏と呼ばれる凧。

欲織相思花寄遠,終日相思卻相怨。
相思樹の花を織り込んで遠くのあの人に送りたいけれど、一日中織り込んでいて思い続ければ、かえって怨みが募る。
相思花 相思樹の花。相思樹は蝿蝶鶏麝鸞鳳等 成篇 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集-84(蝿蝶鶏蔚鸞鳳等もて篇を成す)詩注参照。
蝿蝶鶏蔚鸞鳳等成篇
韓蝶翻羅幕、曹蝿沸給囱。
闘鶏廻玉勒、融麝暖金紅。
玳瑁明書閣、琉璃冰酒缸。
畫樓多有主、鸞鳳各雙雙。


但聞北斗聲回環,不見長河水清淺。」
今はただ聞こえてくるのは天子の座を示す北斗星あり、その周りを玉環の魂や、天牢六星が冤魄をともなって回っている、悲しみの声がするのだ、これだけ多くの行きたいという魂が多いと天の川が渡れるほど浅くなっているのは見たことがないだろう。
聲回環 北斗星が北極星のまわりを回る。廻環は死んだ楊貴妃(玉環)が回る。 また、天牢六星が冤魄をともなって回っている。 *-2
長河水清淺 牽牛と織女が天の川を隔てて見つめ合い、「河漢清くして且つ浅し、相い去ること復た幾許ぞ」と、すぐそこにあって水かさも浅いのに渡れないという思いをうたうが、ここでも男女を隔てる川を渡るすべもないことをいうが、冤魄うずまき、水深が浅くなったことをいう。

金魚鎖斷紅桂春,古時塵滿鴛鴦茵。
黄金の魚型の錠前が鎖されて金木犀の咲きほこった庭にだれもいない、かつて伴にした鴛鴦の褥には塵が厚く積もっている。
金魚鎖斷 「金魚」は金色に輝く魚のかたちをした錠前。○紅桂春 紅桂は丹桂、キンモクセイで秋の季語。春は回春の情をいう。○古時 陳の後宮、かつての時。「鴛鴦薗」はおしどりの刺繍をほどこしたしとね。会わなくなって久しいことをいう。河内詩二首
 
堪悲小苑作長道,玉樹未憐亡國人。』
悲しみを耐えていたあの宮殿の中庭が今では大通りに変わってしまったのだ。陳の後主は「玉樹後庭歌」のように宮女ばかりにかまけて国を亡ぼした人に憐れを覚えるはずがない。
堪悲小苑 悲しみを知っている、ともに過ごした思い出のある宮殿の庭が、今では人の行き交う道になってしまっている。○玉樹 「玉樹」は歓楽に溺れ国を亡ぼした陳の後主が作った「玉樹後庭歌」。「南朝(玄武湖中)」南朝(梁・元帝) 李商隠 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 47南 朝 (南斉の武帝と陳の後主)李商隠 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 46(宋・南斉・陳の宮廷における逸楽を繰り広げるが、この「南朝」詩は梁を舞台とする。)
また隋宮 李商隠 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 49

----- *-1 *-2 --------------------------------

*-1 贈劉司戸蕡
江風揚浪動雲根、重碇危檣白日昏。
已断燕鴻初起勢、更驚騒客後歸魂。
漢廷急詔誰先入、楚路高歌自欲翻。
寓里相逢歓復泣、鳳巣西隔九重門。

はげしく大江を吹く風は、波を措きあげ、遠く水平線で水と接する雲の裾も、その波に揺れ動く。舟の重量しい錨、高い帆柱も、ものすさまじい風に翻弄されて真昼にもなおうす暗い危険な船旅に託するようにして去っていった。
ふるさとの燕の国から飛び立たんとしたその鴻の初めの威勢よい翼も、陰険な世の風にへし折られてしまった。その上、更に南の柳州に追いやる命令がきて、昔、むなしく南方にとどまっていつまでも都へ帰れなかった屈原の亡魂を、驚かすというようなことになった。宦官の巣食った漢の朝廷でも、いや唐の朝廷は一体誰を呼び戻そうとするのだろう。
誰よりも先に、漢の孝文帝が賈誼をよび戻したように、よび戻す人物は君であるはずだ。都を離れた楚の地方から柳州まで行く道すがら、かつて接輿がいつわり狂ってそうしたように、ただひとり声高らかに歌う君の声が風にひるがえり大空に飛び散ることだろう。

万里の彼方で、偶然めぐり会って涙ながらに歓んだのに、また万里の僻地に別離の涙を流している。天子を宦官たちに取り巻かれた朝廷は、もはや無縁のものとして遙か西の方に隔絶されてしまった。その九重の門によって閉ざしてしまった。

*-2
○天牢鎖冤魄 古代中国には、「太陽星」「太陰星」「先天五行星」「九宫星」「黄道十二守護星」「南斗七星」「北斗七星」「二十八宿群星」「天罡三十六星」「地煞七十二星」「三百六十五大周天星斗」および十万八千の副星によって天(宇宙)が形成されている、という考えがあった。それぞれの星に神がいて名前を持っている、とされており、当然「天罡三十六星」「地煞七十二星」にも名前がある。天罡星のひとつに天牢星がある。『晋書』天文志に「天牢六星は北斗の魁(星の名)の下に在り、貴人の牢なり」。・冤塊は本来無実の罪で死んだ人の魂。非業の死を遂げた者の魂。張飛は配下の武将の手によって業半ばで殺された、また、全戦全勝の武将であるのに身分差別に不当な仕打ちを受けたことが李商隠と重なる。死んだのちに劉備に報いた話もある。
李商隠 無 題
萬里風波一葉舟、憶歸初罷更夷猶。
碧江地没元相引、黄鶴沙邊亦少留。
益徳冤魂終報主、阿童高義鎮横秋。
人生豈得長無謂、懐古思郷共白頭。

燕臺詩四首 其一
春#1
風光冉冉東西陌,幾日嬌魂尋不得。
蜜房羽客類芳心,冶葉倡條遍相識。』
暖藹輝遲桃樹西,高鬟立共桃鬟齊。
雄龍雌鳳杳何許?絮亂絲繁天亦迷。』
醉起微陽若初曙,映簾夢斷聞殘語。
愁將鐵網罥珊瑚,海闊天寬迷處所。』
衣帶無情有寬窄,春煙自碧秋霜白。
研丹擘石天不知,願得天牢鎖冤魄。』
夾羅委篋單綃起,香肌冷襯琤琤珮。
今日東風自不勝,化作幽光入西海。』

燕臺詩四首 其二 夏#2 李商隠131 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 130-#2

燕臺詩四首 其二 夏#2 李商隠131 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 130-#2

燕臺詩(えんだいし) 四首 李商隠

棄てられた芸妓のこと、思いが伝わらない芸妓、そのやるせない思いは政治の中で正当に評価されなかったものとおなじなのだ。舞台は燕の国の王朝、実際には唐王朝の淫乱、頽廃、そして陰湿な讒言など、四季に分けて詠っている。恋歌とみせかけ、その裏にこっそりと王朝批判をしている。


其 二
前閣雨簾愁不巻、後堂芳樹陰陰見。
石城景物類黄泉、夜半行郎空柘彈。」
綾扇喚風閶闔天、軽帷翠幕波淵旋。
蜀魂寂寞有伴未、幾夜瘴花開木棉。』-
#1
桂宮流影光難取、嫣薫蘭破軽軽語。
月の宮から月影は漏れるけれどその光に触れることはもうできない。あの楊貴妃のかぐわしい蘭は微笑み、ひそやかな言葉「七夕笑牽牛」(七夕に牽牛を笑う)とつぶやいたのだ。の宮から月影は漏れるけれどその光に触れることはもうできない。あの楊貴妃のかぐわしい蘭は微笑み、ひそやかな言葉をつむぎ出す。
直教銀漢堕懐中、未遣星妃鎭來去。」
牽牛と織姫の伝説はあるが、いっそのこと、自分の子の妃である織姫を銀河ごと自分の懐中に引き込ませた玄宗であった、そしてそのまま織女をなんにもなかったかのようにずっと引き留めておいたのだ。
濁水清波何異源、済河水清黄河渾。
濁流も清流もその源になんの違いがあるのか。それなのに済河の流れは清く黄河は濁っているというのだろう。
安得薄霧起緗裙、手接雲輧呼大君。』-
#2
どうすれば叶うのだろう、浅黄色の裳にうっすらと霞がおおっているなかに立つ人がいる、空翔る車に娘を差出し、親しく「太君」と呼びかけている。
右夏

巻、見。彈。/天、旋。棉。』/取、語。去。/源、渾。君。

其の二
前閣の雨簾 愁いて巻かず、後堂の芳樹 陰陰として見ゆ。
石城の景物 黄泉に類し、夜半の行郎 空しく柘彈(しゃだん)す。
綾扇(りょうせん) 風を喚ぶ 閶闔(しょうこう)の天、軽帷(けいい) 翠幕(すいばく) 波 淵旋(えんせん)す。
蜀魂(しょくこん) 寂寞(せきばく)たり 伴有るや未だしや、幾夜か 瘴花(しょうか)を 木棉(もくめん)を開く。』

#2
桂宮 影を流すも光は取り難し、嫣薫(えんくん)として蘭は破る 軽軽たる語。
直 (ただ) 銀漢(ぎんかん)をして懐中に堕とさしめ、未だ星妃(せいひ)をして鎭(とわ)に来去(らいきょ)せしめず。
濁水(だくすい) 清波(せいは) 何ぞ源を異にするや、済河(せいか)は水清く 黄河は渾(にご)る。
安くんぞ得ん 薄霧(はくむ) 緗裙(しょうくん)に起こり、手ずから雲輧(うんべい)に接して太君と呼ぶを。
右夏

燕臺詩四首 其二 夏#2 現代語訳と訳註
(本文)

桂宮流影光難取、嫣薫蘭破軽軽語。
直教銀漢堕懐中、未遣星妃鎭來去。」
濁水清波何異源、済河水清黄河渾。
安得薄霧起緗裙、手接雲輧呼大君。』-#2
右夏

(下し文) #2
桂宮 影を流すも光は取り難し、嫣薫(えんくん)として蘭は破る 軽軽たる語。
直 (ただ) 銀漢(ぎんかん)をして懐中に堕とさしめ、未だ星妃(せいひ)をして鎭(とわ)に来去(らいきょ)せしめず。
濁水(だくすい) 清波(せいは) 何ぞ源を異にするや、済河(せいか)は水清く 黄河は渾(にご)る。
安くんぞ得ん 薄霧(はくむ) 緗裙(しょうくん)に起こり、手ずから雲輧(うんべい)に接して太君と呼ぶを。


(現代語訳) (桂宮は玄宗と楊貴妃の宮殿、 梧桐の葉のもとで)
月の宮から月影は漏れるけれどその光に触れることはもうできない。あの楊貴妃のかぐわしい蘭は微笑み、ひそやかな言葉「七夕笑牽牛」(七夕に牽牛を笑う)とつぶやいたのだ。牽牛と織姫の伝説はあるが、いっそのこと、自分の子の妃である織姫を銀河ごと自分の懐中に引き込ませた玄宗であった、そしてそのまま織女をなんにもなかったかのようにずっと引き留めておいたのだ。
濁流も清流もその源になんの違いがあるのか。それなのに済河の流れは清く黄河は濁っているというのだろう。
どうすれば叶うのだろう、浅黄色の裳にうっすらと霞がおおっているなかに立つ人がいる、空翔る車に娘を差出し、親しく「太君」と呼びかけている。



(訳注)#2
桂宮流影光難取、嫣薫蘭破軽軽語。

月の宮から月影は漏れるけれどその光に触れることはもうできない。あの楊貴妃のかぐわしい蘭は微笑み、ひそやかな言葉「七夕笑牽牛」(七夕に牽牛を笑う)とつぶやいたのだ。
桂宮 月の中には桂の木があると伝えられることから月の宮をいう。梧桐の葉に棲む鳳凰のつがい。玄宗と楊貴妃。○嫣薫 色あざやなに香高イランのような女性が微笑む。 嫣:にっこりほほえむ。色あざやかなさま。美女の笑うさま。薫り高い蘭の花が開くのと女性がにっこりほほえみながら口を開くのとを重ねる。楊貴妃を言う。「七夕笑牽牛」李商隠『馬嵬』馬嵬二首(絶句) 李商隠 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 50


直教銀漢堕懐中、未遣星妃鎭來去。」
牽牛と織姫の伝説はあるが、いっそのこと、自分の子の妃である織姫を銀河ごと自分の懐中に引き込ませた玄宗であった、そしてそのまま織女をなんにもなかったかのようにずっと引き留めておいたのだ。
銀漢 天の川。○星妃 織女。○ 常に、永遠に。二句は天の川を懐中に入れることによって織女を自分のもとに引き留めておきたいの意。

濁水清波何異源、済河水清黄河渾。
濁流も清流もその源になんの違いがあるのか。なのに済河の流れは清く黄河は濁っているというのだろう。
済河水清 済水と黄河は古代の四溝(四つの大河)に数えられる。済水は清く黄河は濁っていたとされる。『戦国策』燕策に「斉に清済と濁河有り」。済水は河南省済源県に発して東流し、海に流れ込んでいたが、のちに黄河と重なって、今では一部がのこるのみ。済水(さいすい)は、中国河南省済源市区西北に源を発している。済源市の名称はまさにここからきている。俗称は大清河。済水は、古来はほかの大河と交わらず海に流れており、江水(長江)、河水(黄河)、淮水(淮河)とともに「華夏四瀆」と称された。済水の水源地は、済源市の済瀆廟(さいとくびょう)。黄河が流れを変えた為、今日の黄河下流は当時の済水の河道である。済水の流れは済源市を発し済南市で黄河に交わる。
現在の黄河と渭水の合流点でも清濁、はっきりしている。どちらにしても王朝内の清濁は儒教者の精に対して、淫乱、頽廃の宮廷は濁水ということである。


安得薄霧起緗裙、手接雲輧呼太君。』
どうすれば叶うのだろう、浅黄色の裳にうっすらと霞がおおっているなかに立つ人がいる、空翔る車に娘を差出し、親しく「太君」と呼びかけている。
緗裙 浅黄色の絹でこしらえた裳。○雲輧 雲輧はとばりで囲った女性の乗る車。仙女にみたてるので「雲」の語を冠する。○太君 高級官僚の妻の称号であるが、ここでは仙女の意味で用いる。楊貴妃は女道士「太真」と呼ばれてその後「貴妃」となった。
縑緗 書物の表装に使う薄い絹。また、書物・書籍。
「天宝十五載六月十四日、近衛兵は禍の根は楊貴妃にあると、憤怒していっせいに馬を駐め、楊貴妃がくびり殺されるまで、もはや前に進もうとはしなかった。かつて七夕の宵、高楼によりそいつつ、玄宗と場景妃は、一年に一度しか織女にあえぬ牽牛の運命を笑い、瀬世夫婦となって共に住もうと誓い合ったのだったが。」
右 夏のうた

○詩型 七言古詩。
○押韻 巻、見。彈。/天、旋。棉。』/取、語。去。/源、渾。君。



鸞鳳 現代語訳と訳註 解説
(本文)
舊鏡鸞何處、衰桐鳳不棲。
金銭饒孔雀、錦段落山雞。
王子調清管、天人降紫泥。
豈無雲路分、相望不應迷。

舊鏡鸞何處、衰桐鳳不棲。
古い曇った鏡がある、そこに姿を映して鳴き続けていた鸞はどこへ行ったのだろうか。枯れ衰えた桐には、もう鳳凰が棲みつくことなどありはしないのだ。
○舊鏡鸞何處 ・鸞という鳥は鐘に映った自分の姿を見て絶命するまで鳴き続ける。

陳後宮 李商隠:kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 53
○衰桐鳳不棲 鳳凰は梧桐の木に棲むとされる。『詩経』大雅・巻阿に「鳳凰鳴けり、彼の高岡に。梧桐生ぜり、彼の朝陽に」。その鄭玄の箋に「鳳凰の性は、梧桐に非ざれは棲まず。竹の実に非ざれは食わず」。
・梧桐 こどう 立秋の日に初めて葉を落とす。大きな葉を一閒一枚落としてゆく青桐は凋落を象徴するもの。特に井戸の辺の梧桐は砧聲と共に秋の詩には欠かせない。李煜「采桑子其二」李煜「烏夜啼」温庭筠「更漏子」李白「贈舎人弟台卿江南之」李賀「十二月楽詞」などおおくある。玄宗と楊貴妃を喩える場合もある。


牡丹 
錦幃初巻衛夫人、繍被猶堆越鄂君。
垂手亂翻雕玉佩、折腰争舞鬱金裙。
石家蝋燭何曾剪、筍令香櫨可待薫。
我是夢中傳彩筆、欲書花片寄朝雲。

牡丹 李商隠22七言律詩


馬嵬二首 李商隠
馬嵬 絶句
冀馬燕犀動地来、自埋紅粉自成灰。
君王若道能傾国、玉輦何由過馬嵬。

馬嵬
海外徒聞更九州、他生未卜此生休。
空間虎旅鳴宵拆、無復鶏人報暁籌。
此日六軍同駐馬、當時七夕笑牽牛。
如何四紀為天子、不及慮家有莫愁。
唐というこの九州よりなる大世界の外に、神仙世界の九州さらにあると玄宗は道教の修験者から聞いていた。だがそれは聞いただけのこと、次の未来生のどこで生れかわるかわからいままに、ここで人生は終わってしまった。
落ち伸びたこの馬蒐の地で兵士たちに迫られて、来世をともに誓った愛妃をうしない、王車守衛の兵士のならす宵の拍子木をも、むなしく一人で聞かねはならなかった。朝になっても、逃げ延びる最中でのことゆえ鶏をかたどった朱の冠をかむり寝所にまで夜明けの時を知らせる守衛の者もいなかった。
この日、天宝十五載六月十四日、近衛兵は禍の根は楊貴妃にあると、憤怒していっせいに馬を駐め、楊貴妃がくびり殺されるまで、もはや前に進もうとはしなかった。かつて七夕の宵、高楼によりそいつつ、玄宗と場景妃は、一年に一度しか織女にあえぬ牽牛の運命を笑い、瀬世夫婦となって共に住もうと誓い合ったのだったが。
四紀、凡そ五十年にわたる年月の間、天子として九州に君臨しておりながら、どうしたことか、洛陽の富家、盧姓の者が、「十五にして嫁し十六にして子を産んだ。」と古い歌謡にも歌われる、その名もめでたき莫愁なる美女を迎え入れて過したその幸福さに及ばないのは。

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燕臺詩四首 其二 夏#1 李商隠130 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 130-#1

燕臺詩四首 其二 夏#1 李商隠130 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 130-#1

燕臺詩(えんだいし) 四首 李商隠


棄てられた芸妓のこと、思いが伝わらない芸妓、そのやるせない思いは政治の中で正当に評価されなかったものとおなじなのだ。舞台は燕の国の王朝、実際には唐王朝の淫乱、頽廃、そして陰湿な讒言など、四季に分けて詠っている。恋歌とみせかけ、その裏にこっそりと王朝批判をしている。



其 二
前閣雨簾愁不巻、後堂芳樹陰陰見。
向こう側に楼閣がある雨は簾となって鬱々と降り注ぎやむことがない、その後方の奥の離れ座敷には芳しい木々の陰湿でくらい影が映っている。
石城景物類黄泉、夜半行郎空柘彈。」
ここ石城を舞台にして数々の悲劇がおこされた、その風景は黄泉の国なのだ、そんなところに深夜になっても遊客の一人はせっかく打ったはじきが空しくおわっている。
綾扇喚風閶闔天、軽帷翠幕波淵旋。
あや絹の扇は「天下を治めるところ」というおつげの風を呼びおこしている閶闔門は天界の門となる、奥の座敷では軽やかなとばり、翡翠のとばりの中に淵が波を打っている大皿が回っている。
蜀魂寂寞有伴未、幾夜瘴花開木棉。』-#1

蜀の望帝の春を思う心は、血を吐いて悲しげになく杜鵑に魂を托し、そんな血を吐きながら啼く思いにお供をする者がおりはしない。幾晩も、南国の地から来た花は木綿の実をひらかせたのだ。
桂宮流影光難取、嫣薫蘭破軽軽語。
直教銀漢堕懐中、未遣星妃鎭來去。」
濁水清波何異源、済河水清黄河渾。
安得薄霧起緗裙、手接雲輧呼大君。』-#2
右夏

巻、見。彈。/天、旋。棉。』/取、語。去。/源、渾。君。

其の二
前閣の雨簾 愁(うれい)て巻かず、後堂の芳樹 陰陰として 見 ゆ。
石城の景物 黄泉に類し、夜半の行郎 空しく柘彈(しゃだん)す。
綾扇(りょうせん) 風を喚(よぶ) 閶闔(しょうこう)の天、軽帷(けいい) 翠幕(すいばく) 波 淵旋(えんせん)す。
蜀魂(しょくこん) 寂寞(せきばく)たり 伴有るや未だしや、幾夜か 瘴花(しょうか)を 木棉(もくめん)を開く。』
#2
桂宮 影を流すも光は取り難し、嫣薫として蘭は破る 軽軽たる語。
直だ銀漢をして懐中に堕(おと)さしめ、未だ星妃をして鎭に来去せしめず。
濁水 清波 何ぞ源を異にするや、済河は水清く 黄河は渾る。
安くんぞ得ん 薄霧 緗裙に起こり、手ずから雲輧に接して太君と呼ぶを。
右夏


燕臺詩四首 其二-#1 現代語訳と訳註
(本文)其二-#1

前閣雨簾愁不巻、後堂芳樹陰陰見。
石城景物類黄泉、夜半行郎空柘彈。」
綾扇喚風閶闔天、軽帷翠幕波淵旋。
蜀魂寂寞有伴未、幾夜瘴花開木棉。』
 
(下し文)
前閣の雨簾 愁(うれい)て巻かず、後堂の芳樹 陰陰として 見 ゆ。
石城の景物 黄泉に類し、夜半の行郎 空しく柘彈(しゃだん)す。
綾扇(りょうせん) 風を喚(よぶ) 閶闔(しょうこう)の天、軽帷(けいい) 翠幕(すいばく) 波 淵旋(えんせん)す。
蜀魂(しょくこん) 寂寞(せきばく)たり 伴有るや未だしや、幾夜か 瘴花(しょうか)を 木棉(もくめん)を開く。』

(現代語訳)
向こう側に楼閣がある雨は簾となって鬱々と降り注ぎやむことがない、その後方の奥の離れ座敷には芳しい木々の陰湿でくらい影が映っている。
ここ石城を舞台にして数々の悲劇がおこされた、その風景は黄泉の国なのだ、そんなところに深夜になっても遊客の一人はせっかく打ったはじきが空しくおわっている。
あや絹の扇は「天下を治めるところ」というおつげの風を呼びおこしている閶闔門は天界の門となる、奥の座敷では軽やかなとばり、翡翠のとばりの中に淵が波を打っている大皿が回っている。
蜀の望帝の春を思う心は、血を吐いて悲しげになく杜鵑に魂を托し、そんな血を吐きながら啼く思いにお供をする者がおりはしない。幾晩も、南国の地から来た花は木綿の実をひらかせたのだ。


(訳注)其 二 夏
前閣雨簾愁不巻、後堂芳樹陰陰見。
向こう側に楼閣がある雨は簾となって鬱々と降り注ぎやむことがない、その後方の奥の離れ座敷には芳しい木々の陰湿でくらい影が映っている。
前閣右 向こう側にある雨の降り込める様子を簾にたとえ、簾にたとえたので雨が降り続くのを巻き上げないと比喩する。○陰陰 薄暗い様子。

南 朝   李商隠
地險悠悠天險長、金陵王気應瑤光。
休誇此地分天下、只得徐妃半面粧。

景陽井
景陽宮井剰堪悲、不盡龍鸞誓死期。
腸断呉王宮外水、濁泥猶得葬西施。


陳後宮   李商隠
茂苑城如畫、閶門瓦欲流。
還依水光殿、更起月華棲。
侵夜鸞開鏡、迎冬雉獻裘。
従臣皆牛酔、天子正無愁。


石城景物類黄泉、夜半行郎空柘彈。」
石城を舞台にして数々の悲劇がおこされた、その風景は黄泉の国なのだ、そんなところに深夜になっても遊客の一人はせっかく打ったはじきが空しくおわっている。
石城 南京郊外の200年頃孫権によって作られた石頭城。石城の意味は、それから150年後の六朝の莫愁にかかわるもの。ここでは。
無名氏の楽府「莫愁楽」其一
莫愁在何処。莫愁は何処にありや。
莫愁石城西。莫愁は石城の西にあり。
艇子打両槳、艇子、両槳(りょうしょう)を打して、
催送莫愁来。莫愁を催送して来たれ。

其二
聞勧下揚州、勧(きみ)が揚州に下ると聞きて、
相送楚山頭。相送る 楚山の頭(ほとり)。
探手抱腰看、手を探りて腰を抱き看よ、
江水断不流。江水、断じて流れず。


李商隠『無題』
重帷深下莫愁堂、臥後清宵細細長。
紳女生涯原是夢、小姑居処本無郎。
風波不信菱枝弱、月露誰敦桂葉香。
直道相思了無益、未妨啁悵是清狂。


莫愁 古くから楽府に歌われる郢州(湖北省)石城の美女の名であるが、李商隠は梁の武帝蕭衍(464-549)の楽府によると蘆氏に嫁いだ洛陽の女児のこと。○黄泉 死者の住む地底の世界。○行郎 行人、遊客。石城の莫愁と対になる男。妓女をまっている。○柘彈 柘(ヤマグワ)の枝で作ったはじき。


綾扇喚風閶闔天、軽帷翠幕波淵旋。
あや絹の扇は「天下を治めるところ」というおつげの風を呼びおこしている閶闔門は天界の門となる、奥の座敷では軽やかなとばり、翡翠のとばりの中に淵が波を打っている大皿が回っている。
綾扇 あやぎぬの扇。夏に結びつく物。○閶闔 天界の門。閶闔門は蘇州城(呉城)の西北門で、「閶闔門」(しょうこうもん)が正式の名。この門は運河を舟で来た人が蘇州に入る場合の正門で、城楼から城内を見わたすと、眼下に蘇州一の賑やかな街並みが見下ろせる。門外は渡津になっており、運河を航行してきた舟がひしめき合って停泊する。呉の都の門。陳後宮 李商隠:kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集 53
河内詩二首其二(湖中) 抜粋
閶門日下呉歌遠、陂路淥菱香満満。
後渓暗起鯉魚風、船旗閃断芙蓉幹。』

河内詩二首 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 126
李商隠はこの語を使用するのに展開との辛味で使っていない。商売で交通する船、遊郭に入っていく船を意味する場合に使っている。○軽帷翠幕 李商隠「無題』「重帷深下莫愁堂」と囲って出られない重いとばりでなく軽いとばり、「帷」も「幕」も布の仕切りで暖簾、幔幕。「帷」はベッドの周囲に、「幕」は部屋の周囲に垂らす。○波淵 大皿の淵が波を打っているもの李商隠はイメージを作るための道具、比喩として用いる。


蜀魂寂寞有伴未、幾夜瘴花開木棉。』
蜀の望帝の春を思う心は、血を吐いて悲しげになく杜鵑に魂を托し、そんな血を吐きながら啼く思いにお供をする者がおりはしない。幾晩も、南国の地から来た花は木綿の実をひらかせたのだ。
蜀魂 蜀の望帝の化身である「啼いて血を吐く杜鵑。」「李商隠1錦瑟」詩注参照。
錦瑟無端五十弦、一弦一柱思華年。
莊生曉夢迷蝴蝶、望帝春心托杜鵑。
滄海月明珠有涙、藍田日暖玉生煙。
此情可待成追憶、只是當時已惘然。

古代中国・蜀の望帝が、臣下の妻に恋して、その為に亡びた時、 ほととぎすが啼いたので人々は ほととぎすを蜀帝の魂の化した 鳥として、こう記す。○瘴花 熱帯の花。瘴は瘴癘、南方熱帯の地に満ちる気。○木綿 花が咲き実できその身が割れると真っ白な素肌が出てくる。

燕臺詩四首 其一 春#2 李商隠129 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 128-#2

燕臺詩四首 其一 春#2 李商隠129 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 128-#2
燕臺詩(えんだいし) 四首 李商隠

棄てられた芸妓のこと、思いが伝わらない芸妓、そのやるせない思いは政治の中で正当に評価されなかったものとおなじなのだ。舞台は燕の国の王朝、実際には唐王朝の淫乱、頽廃、そして陰湿な讒言など、四季に分けて詠っている。恋歌とみせかけ、その裏にこっそりと王朝批判をしている。


燕臺詩四首 其一
春#1
風光冉冉東西陌,幾日嬌魂尋不得。
蜜房羽客類芳心,冶葉倡條遍相識。』
暖藹輝遲桃樹西,高鬟立共桃鬟齊。
雄龍雌鳳杳何許?絮亂絲繁天亦迷。』

#2
醉起微陽若初曙,映簾夢斷聞殘語。
浅い酔いから醒めれば、残照が暁のやわらかい光のようである、御簾に映しているその光に夢と現実がいりまじるようだが、夢のなかでの会話の名残が耳にのこっている。
愁將鐵網罥珊瑚,海闊天寬迷處所。』
愁いがある。鉄の網を海に沈めて珊瑚を取るようにつれてゆかれたのだ。それを海にひろくさせ、大空をも 果てしなく拡がらせた、それを掻い潜るにはどこに居たらいいのか惑うこの身なのだ。
衣帶無情有寬窄,春煙自碧秋霜白。
着物と帯、一対のものだが同じものではない。情けがある場合とない場合、色恋に情けはいらないのか。 ゆるやかと窮屈、自由な恋なのか、囲われて窮屈な色恋なのか。春には霞というけれど、春いつも霞があるわけではない。でも春になるとおのずと緑に包まれる。秋には秋霜があり、おのずと白いのだ。
研丹擘石天不知,願得天牢鎖冤魄。』
丹砂は磨いてさらに赤くするものであり、石はくだいても壁になるべきもの、これが自然界の法則であるのに、天は知らぬことというのだろうか。もし望みがかなうというなら、天牢の星に、かき集められた生娘の魂、多くの無実の罪で死んだ人の魂、不当に評価された人の魂、迷える魂を閉じこめてもらいたいものだ。
夾羅委篋單綃起,香肌冷襯琤琤珮。
袷の衣を箱に収める、かき集められた美女は単衣の着物のように取りかえた、香しき肌が少し汗ばんで単衣のうす絹がぴったりと張り付く、そして凧玉の音がじゃらじゃらと音を立てている。
今日東風自不勝,化作幽光入西海。』

今日の春の風というものは、自分のこころの中から生まれた色恋に勝るものはない、化身してかすかな光を頼りに西王母のいる仙界に入るのだ。


陌,得。識。/西,齊。迷。/曙,語。所。/窄,白。魄。/珮。海。

燕台詩四首 其の一
風光 冉冉(ぜんぜん)たり東西の陌、幾日か嬌魂(きょうこん) 尋ぬるも得ず。
蜜房の羽客 芳心に類し、冶葉(やよう) 倡条 偏く相い識る。』
暖藹(だんあい)輝遅(きち)たり 桃樹の西、高鬟 立ちて桃髪と斉し。
雄龍 雌鳳 杏として何許ぞ、絮は乱れ糸は繁く 天も亦た迷う。』

#2
酔いより起きれば 微陽 初めて曙くるが若く、簾に映じて夢断たれ残語を聞く。
愁いて鉄網を将って珊瑚に胃くるも、海は開く天は寛く処所に迷う
衣帯は情無く寛窄有り、春煙は自ら碧く秋霜は白し。
丹を研き石を撃くも天は知らず、願わくは天牢の冤晩を鎖すを得ん。
爽羅 笹に委ねて単純起く、香肌 冷やかに破く 尊嘩たる珮。
今日 東風 自ら勝(まさ)らず、化して幽光と作り西海に人らん。
右春


燕台詩四首 其の一 #2 現代語訳と訳註
(本文) 春#2

醉起微陽若初曙,映簾夢斷聞殘語。
愁將鐵網罥珊瑚,海闊天寬迷處所。』
衣帶無情有寬窄,春煙自碧秋霜白。
研丹擘石天不知,願得天牢鎖冤魄。』
夾羅委篋單綃起,香肌冷襯琤琤珮。
今日東風自不勝,化作幽光入西海。』

(下し文)
酔いより起きれば 微陽 初めて曙くるが若く、簾に映じて夢断たれ残語を聞く。
愁いて鉄網を将って珊瑚に胃くるも、海は開く天は寛く処所に迷う
衣帯は情無く寛窄有り、春煙は自ら碧く秋霜は白し。
丹を研き石を撃くも天は知らず、願わくは天牢の冤晩を鎖すを得ん。
爽羅 笹に委ねて単純起く、香肌 冷やかに破く 尊嘩たる珮。
今日 東風 自ら勝えず、化して幽光と作り西海に人らん。
右春

 (現代語訳)
#1 春の景色のなか、芽を吹くものすべて柔らかでしな垂れているのであり、都の東西の道には流転、蓬飄が満ちている。来る日も来る日も生娘の魂もたずねても得られないのだ。
蜜房にいる人、神仙となって空を飛ぶ人、身分の違いあれ春の芳心はある。艶めかしい葉、か細い枝を示している、それぞれのことを互いに何もかも知っている。
のどかな春の日、柔らかなかすみに包まれた暮れなずむ桃樹林の西は金色にかわる、輪のかたちに結いあげた桃型の髪、桃型髪の様な桃花、共に立っている。
雄の龍、雌の鳳、結ばれない筈の二人は今どこにいったのか。柳架が乱れ飛び、遊糸が浮かぶ春の空、ここの世界は乱れていて、天もどうなっているのか迷ってしまう。


#2
浅い酔いから醒めれば、残照が暁のやわらかい光のようである、御簾に映しているその光に夢と現実がいりまじるようだが、夢のなかでの会話の名残が耳にのこっている。
愁いがある。鉄の網を海に沈めて珊瑚を取るようにつれてゆかれたのだ。それを海にひろくさせ、大空をも 果てしなく拡がらせた、それを掻い潜るにはどこに居たらいいのか惑うこの身なのだ。
着物と帯、一対のものだが同じものではない。情けがある場合とない場合、色恋に情けはいらないのか。 ゆるやかと窮屈、自由な恋なのか、囲われて窮屈な色恋なのか。春には霞というけれど、春いつも霞があるわけではない。でも春になるとおのずと緑に包まれる。秋には秋霜があり、おのずと白いのだ。
丹砂は磨いてさらに赤くするものであり、石はくだいても壁になるべきもの、これが自然界の法則であるのに、天は知らぬことというのだろうか。もし望みがかなうというなら、天牢の星に、かき集められた生娘の魂、多くの無実の罪で死んだ人の魂、不当に評価された人の魂、迷える魂を閉じこめてもらいたいものだ。
袷の衣を箱に収める、かき集められた美女は単衣の着物のように取りかえた、香しき肌が少し汗ばんで単衣のうす絹がぴったりと張り付く、そして凧玉の音がじゃらじゃらと音を立てている。
今日の春の風というものは、自分のこころの中から生まれた色恋に勝るものはない、化身してかすかな光を頼りに西王母のいる仙界に入るのだ。


(訳注)
燕台詩四首 #2
醉起微陽若初曙,映簾夢斷聞殘語。
浅い酔いから醒めれば、残照が暁のやわらかい光のようである、御簾に映しているその光に夢と現実がいりまじるようだが、夢のなかでの会話の名残が耳にのこっている。
微陽 眠りから覚め、薄い日の光。朝なのか、夕暮れなのかわからないのでこのような表現になる。官僚として出発したての頃が夢のようだったということを連想させる。このイメージは下句につながる。


愁將鐵網罥珊瑚,海闊天寬迷處所。』
愁いがある。鉄の網を海に沈めて珊瑚を取るようにつれてゆかれたのだ。それを海にひろくさせ、大空をも 果てしなく拡がらせた、それを掻い潜るにはどこに居たらいいのか惑うこの身なのだ。
愁将 鐵網 ・ わなをかけてとる。珊瑚は鉄の網を海中に沈め、それに着床させて引き上げたという。美女狩りも網の目のように張り巡らし、見つけたものに褒美を取らせた。李商隠 13 「恋の無題詩」碧城三首


衣帶無情有寬窄,春煙自碧秋霜白。
着物と帯、一対のものだが同じものではない。情けがある場合とない場合、色恋に情けはいらないのか。 ゆるやかと窮屈、自由な恋なのか、囲われて窮屈な色恋なのか。春には霞というけれど、春いつも霞があるわけではない。でも春になるとおのずと緑に包まれる。秋には秋霜があり、おのずと白いのだ。
衣帯 着物と帯、一対のものだが同じではない。○無情 情けがある場合とない場合。色恋に情けはいらないのか。 ○寛窄 ゆるやかと窮屈。自由な恋なのか、囲われて窮屈な色恋なのか。○春煙 春霞。○自碧 春になるとおのずと緑に包まれる。○秋霜白 秋霜はおのずと白い。


研丹擘石天不知,願得天牢鎖冤魄。』
丹砂は磨いてさらに赤くするものであり、石はくだいても壁になるべきもの、これが自然界の法則であるのに、天は知らぬことというのだろうか。もし望みがかなうというなら、天牢の星に、多くの無実の罪で死んだ人の魂、不当に評価された人の魂、迷える魂を閉じこめてもらいたいものだ。
研丹擘石 丹砂は磨いてさらに赤くするものであり、石はくだいても壁になるべきもの。・:丹砂、・:巌。 『呂氏春秋』誠廉に「石は破るべきなるも、堅を奪うべからず。丹は磨くべきなるも、赤を奪うべからず」とあるのにもとづく。○天牢鎖冤魄 古代中国には、「太陽星」「太陰星」「先天五行星」「九宫星」「黄道十二守護星」「南斗七星」「北斗七星」「二十八宿群星」「天罡三十六星」「地煞七十二星」「三百六十五大周天星斗」および十万八千の副星によって天(宇宙)が形成されている、という考えがあった。それぞれの星に神がいて名前を持っている、とされており、当然「天罡三十六星」「地煞七十二星」にも名前がある。天罡星のひとつに天牢星がある。『晋書』天文志に「天牢六星は北斗の魁(星の名)の下に在り、貴人の牢なり」。・冤塊は本来無実の罪で死んだ人の魂。非業の死を遂げた者の魂。張飛は配下の武将の手によって業半ばで殺された、また、全戦全勝の武将であるのに身分差別に不当な仕打ちを受けたことが李商隠と重なる。死んだのちに劉備に報いた話もある。
李商隠 無 題
萬里風波一葉舟、憶歸初罷更夷猶。
碧江地没元相引、黄鶴沙邊亦少留。
益徳冤魂終報主、阿童高義鎮横秋。
人生豈得長無謂、懐古思郷共白頭。
無題(萬里風波一葉舟)  李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 125参照


夾羅委篋單綃起,香肌冷襯琤琤珮。
袷の衣を箱に収める、かき集められた美女は単衣の着物のように取りかえた、香しき肌が少し汗ばんで単衣のうす絹がぴったりと張り付く、そして凧玉の音がじゃらじゃらと音を立てている。
爽羅 うすぎぬのあわせ。○委篋 大切なものを入れておく箱に見捨てること。この語は新しい女性の手をつけ、囲いものの女を部屋に閉じこめることを意味する。○単綿 絹のひとえ。春から夏へ移行する時期をいうように女性をあしらっているさま。○香肌冷襯 香しき肌が少し汗ばんで単衣のうす絹がぴったりと張り付くさま。襯は肌にぴったりくっつく。○琤琤珮 琤琤は玉の触れ合う音。珮は腰に帯びる玉。性交をしめす。


今日東風自不勝,化作幽光入西海。』
今日の春の風というものは、自分のこころの中から生まれた色恋に勝るものはない、化身してかすかな光を頼りに西王母のいる仙界に入るのだ。
西海 西の果てに海がある。古来中国では四方の行き着くところ海とされていた。ここでは西王母の仙界をいう。

右 春のうた


○詩型 七言古詩。
○押韻 陌,得。識。/西,齊。迷。/曙,語。所。/窄,白。魄。/珮。海。

燕臺詩四首 其一 春#1 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 128

燕臺詩四首 春#1 李商隠 紀頌之の漢詩ブログ李商隠特集150- 128

燕臺詩(えんだいし) 四首 李商隠

棄てられた芸妓のこと、思いが伝わらない芸妓、そのやるせない思いは政治の中で正当に評価されなかったものとおなじなのだ。舞台は燕の国の王朝、実際には唐王朝の淫乱、頽廃、そして陰湿な讒言など、四季に分けて詠っている。この詩は、恋歌とみせかけ、その裏にこっそりと王朝批判をしている。




燕臺詩四首 其一
春#1
風光冉冉東西陌,幾日嬌魂尋不得。
春の景色のなか、芽を吹くものすべて柔らかでしな垂れているのであり、都の東西の道には流転、蓬飄が満ちている。来る日も来る日も生娘の魂もたずねても得られないのだ。
蜜房羽客類芳心,冶葉倡條遍相識。』
蜜房にいる人、神仙となって空を飛ぶ人、身分の違いあれ春の芳心はある。艶めかしい葉、か細い枝を示している、それぞれのことを互いに何もかも知っている。
暖藹輝遲桃樹西,高鬟立共桃鬟齊。
のどかな春の日、柔らかなかすみに包まれた暮れなずむ桃樹林の西は金色にかわる、輪のかたちに結いあげた桃型の髪、桃型髪の様な桃花、共に立っている。
雄龍雌鳳杳何許?絮亂絲繁天亦迷。』

雄の龍、雌の鳳、結ばれない筈の二人は今どこにいったのか。柳架が乱れ飛び、遊糸が浮かぶ春の空、ここの世界は乱れていて、天もどうなっているのか迷ってしまう。
#2
醉起微陽若初曙,映簾夢斷聞殘語。
愁將鐵網罥珊瑚,海闊天寬迷處所。』
衣帶無情有寬窄,春煙自碧秋霜白。
研丹擘石天不知,願得天牢鎖冤魄。』
夾羅委篋單綃起,香肌冷襯琤琤珮。
今日東風自不勝,化作幽光入西海。』


陌,得。識。/西,齊。迷。/曙,語。所。/窄,白。魄。/珮。珮。


燕台詩四首
其の一
風光 冉冉(ぜんぜん)たり東西の陌、幾日か嬌魂(きょうこん) 尋ぬるも得ず。
蜜房の羽客 芳心に類し、冶葉(やよう) 倡条 偏く相い識る。』
暖藹(だんあい)輝遅(きち)たり 桃樹の西、高鬟 立ちて桃髪と斉し。
雄龍 雌鳳 杏として何許ぞ、絮は乱れ糸は繁く 天も亦た迷う。』

酔いより起きれば 微陽 初めて曙くるが若く、簾に映じて夢断たれ残語を聞く。
愁いて鉄網を将って珊瑚に胃くるも、海は開く天は寛く処所に迷う
衣帯は情無く寛窄有り、春煙は自ら碧く秋霜は白し。
丹を研き石を撃くも天は知らず、願わくは天牢の冤晩を鎖すを得ん。
爽羅 笹に委ねて単純起く、香肌 冷やかに破く 尊嘩たる珮。
今日 東風 自ら勝えず、化して幽光と作り西海に人らん。
右春


燕台詩四首 其の一 #1 現代語訳と訳註
(本文) 春#1

風光冉冉東西陌,幾日嬌魂尋不得。
蜜房羽客類芳心,冶葉倡條遍相識。』
暖藹輝遲桃樹西,高鬟立共桃鬟齊。
雄龍雌鳳杳何許?絮亂絲繁天亦迷。』


(下し文) 其の一#1
風光 冉冉(ぜんぜん)たり東西の陌、幾日か嬌魂(きょうこん) 尋ぬるも得ず。
蜜房の羽客 芳心に類し、冶葉(やよう) 倡条 偏く相い識る。』
暖藹(だんあい)輝遅(きち)たり 桃樹の西、高鬟 立ちて桃髪と斉し。
雄龍 雌鳳 杏として何許ぞ、絮は乱れ糸は繁く 天も亦た迷う。』

(現代語訳)
春の景色のなか、芽を吹くものすべて柔らかでしな垂れているのであり、都の東西の道には流転、蓬飄が満ちている。来る日も来る日も生娘の魂もたずねても得られないのだ。
蜜房にいる人、神仙となって空を飛ぶ人、身分の違いあれ春の芳心はある。艶めかしい葉、か細い枝を示している、それぞれのことを互いに何もかも知っている。
のどかな春の日、柔らかなかすみに包まれた暮れなずむ桃樹林の西は金色にかわる、輪のかたちに結いあげた桃型の髪、桃型髪の様な桃花、共に立っている。
雄の龍、雌の鳳、結ばれない筈の二人は今どこにいったのか。柳架が乱れ飛び、遊糸が浮かぶ春の空、ここの世界は乱れていて、天もどうなっているのか迷ってしまう。



(訳注)
燕台詩四首

燕台 周代、春秋時代、戦国時代にわたって存在した国。春秋十二列国の一つ、また戦国七雄の一つ。河北省北部、現在の北京を中心とする土地を支配した。戦国時代、燕の国の昭王が全国から賢人を集めた楼台。それが詩の内容とどのような繋がりをもつかはわからない。節度使の幕下を指し、そこで避返した女性との恋をうたうとの説もある。
「柳枝五首」詩の序を抜粋。
他日春曾陰,讓山下馬柳枝南柳下,詠余燕臺詩,柳枝驚問:“誰人有此?誰人為是?”讓山謂曰:“此吾里中少年叔耳。” 
ある春の重く曇った日、譲山は柳枝の家の南の柳に馬を繋いだ、わたしの「燕台の詩」を口ずさんでいる。
柳枝がびっくりして尋ねてきた。
「今口ずさんだ詩はどなたのものですか?この詩はどなたが作られたのですか?」と。
譲山は答えた。
「これはわたしの里の若いいとこの作だ」と。
「柳枝五首」詩の序を参照。


風光冉冉東西陌,幾日嬌魂尋不得。
春の景色のなか、芽を吹くものすべて柔らかでしな垂れているのであり、都の東西の道には流転、蓬飄が満ちている。来る目も来る目も生娘の魂もたずねてもえられない。
風光 春の景色。杜甫『曲江二首』「傳語風光共流転」○冉冉 柔らかでしな垂れるさま。曹操『美女篇』「柔條粉冉冉」とある。○東西陌 曹植『吁嗟篇』「東西經七陌」(東西 七陌を経て)に基づく。李白『古風 其二十四』「大車揚飛塵。 亭午暗阡陌。」(長安の街では、大きな車がほこりを巻きあげて通り、正午という時間帯であるのに街路が暗くしている。)○阡陌 阡:たて南北。陌:よこ東西のみち。[陌(はく)とは、中国の晋から南北朝時代(魏晋南北朝時代)にかけて使われた通貨単位である。銭貨100枚を1陌とした。]○嬌魂 生娘のたましい。李賀「感諷」五首の二、「嬬魂 回風(つむじ風)に従い、死処に郷月懸かる」の句に出る語。この連作詩は李質の詩と表現の類似が目立つ。李商隠『獨居有懐』、『賈生』「可憐夜半虚前席、不問蒼生問鬼神。」
*上の句は流転、蓬飄、東西黄河の上流と下流、都の東西の道。使用されている語がいずれも燕の朝廷のことではなくそれ以降のこと。
*下の句は親を亡くして、諸侯に無理やり連れて行かれた柳枝の生娘の思い、それに答えてやれなかったこと。李賀の賈誼のことを題材にした詩に基づいている。


蜜房羽客類芳心,冶葉倡條遍相識。』
蜜房にいる人、神仙となって空を飛ぶ人、身分の違いあれ春の芳心はある。艶めかしい葉、か細い枝をしめしている、それぞれのことを互いに何もかも知っている。
蜜房 蜂の巣。『柳枝五首』其の一「花房與蜜脾,雄蜂蛺蝶雌。」○羽客 神仙となって空をとべるようになった人。仙人。仙客。「羽客は霞に乗りて至り、仙人は月を玩(もてあそ)ぶ」〈宴曲集・四〉○芳心:花香る春の情感であるが、女性の心でもある。李白「古風」四十九首に「皓齒終不發、芳心空自持。」(賠歯終に発かず、芳心空しく自ら持す)。○冶葉倡條 葉、条(枝)に艶麗な語。・冶:1 金属や鉱石をとかしてある形につくる。「冶金/鍛冶(たんや)」 2 人格を練りあげる。「陶冶」3 心をとろけさせる。なまめかしい。「艶冶(えんや)」「天下理、夫倡婦随」「倡」となえる、いう。・:細い枝。


暖藹輝遲桃樹西,高鬟立共桃鬟齊。
のどかな春の日、柔らかなかすみに包まれた暮れなずむ桃樹林の西は金色にかわる、輪のかたちに結いあげた桃型の髪、桃型髪の様な桃花、共に立っている。
暖藹 暖藹はのどかな春のもや。・:かすみ。草木が茂っている。おだやかなさま。○輝遅 春の陽光が暮れなずむようすをいう。『詩経』幽風・七月に「春日輝遅たり」とある。○桃樹西 桃樹林の西は金色にかわる・西 五行思想で、西は色:白で、金。○高鬟 鬟のような桃の花を女の髪に見立てる。○ 輪のかたちに結いあげた髪。○桃鬟 まげのように盛り上がって咲く桃の花。若い女性の美しさを桃の花にたとえるのは『詩経』周南・桃夫「桃の大夫たる、灼灼たる其の華」以来、習熟した比喩。


雄龍雌鳳杳何許?絮亂絲繁天亦迷。』
雄の龍、雌の鳳、結ばれない筈の二人は今どこにいったのか。柳架が乱れ飛び、遊糸が浮かぶ春の空、ここの世界は乱れていて、天もどうなっているのか迷ってしまう。
雄龍雌鳳 オスの龍とメスの鳳凰、雄士の男と、高貴な女性であっても絶対に結ばれないはずの二人を意味する。勲功をあげた英雄が後宮の后妃と密会すること、宦官と后妃の密会などの淫乱なことを意味するものと考える。・杳 くらい○絮亂 柳絮、・遊糸:空中に浮遊するクモの糸、心の乱れを柳絮や遊糸などの春の景物に繋げて言う。後宮ではいろんな伝言手段があったことを意味する。

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