原毀 韓愈(韓退之)
世の毀(そしり)の原因は、人が怠惰でありながら名声あるものを嫉妬することにあることを論じたものである。


2013年3月20日 同じ日の紀頌之5つのブログ
●古代中国の結婚感、女性感,不遇な生き方を詠う 三国時代の三曹の一人、三国時代の「詩神」である曹植の詩
Ⅰ李白と李白に影響を与えた詩棄婦篇 曹植 魏詩<56-#3> 女性詩709 漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2093
●唐を代表する中唐の韓愈の儒家としての考えのよくわかる代表作の一つ
Ⅱ中唐詩・晩唐詩原毀 韓愈(韓退之) <119-#5>Ⅱ中唐詩621 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2089
●杜甫の全作品1141首を取り上げて訳注解説 ●理想の地を求めて旅をする。"
Ⅲ杜甫詩1000詩集寒食 杜甫 <430>  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2095 杜甫詩1000-430-613/1500
●これまで分割して掲載した詩を一括して掲載・改訂掲載・特集  不遇であった詩人だがきめの細やかな山水詩をかいている
Ⅳブログ漢・唐・宋詞詩集種桑 謝霊運<19> kanbuniinkai 紀 頌之の詩詞ブログ 2096 (03/20)
●森鴎外の小説 ”激しい嫉妬・焦燥に下女を殺してしまった『魚玄機』”といわれているがこれに疑問を持ち異なる視点で解釈して行く。唐時代にここまで率直な詩を書く女性が存在した奇跡の詩
Ⅴ.唐五代詞詩・宋詞詩・女性隔漢江寄子安 魚玄機  ⅩⅫ唐五代詞・宋詩Gs-110-45-#  漢文委員会kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ2097
 
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謝靈運が傲慢で磊落だったというが彼の詩からはそれを感じさせるということは微塵もない。謝靈運、謝朓、孟浩然は好きな詩人である。
登永嘉緑嶂山詩 #1 謝霊運 <20> 詩集 386ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67474554.html
登池上樓 #1 謝霊運<25>#1  ー http://blog.livedoor.jp/kanbuniinkai10/archives/67502196.html
孟浩然の詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/209mokonen01.html 孟浩然の詩 盛唐初期の詩人であるが謝霊運の詩に傾倒して山水詩人としてとてもきれいな詩を書いている。特に山水画のような病者の中で細やかな部分に動態を感じさせる表現力は素晴らしい。
李商隠詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/3991_rishoin000.html
李商隠詩 華やかな時はほんの1年余り、残りは不遇であった。それが独特な詩を生み出した。この詩人の詩は物語であり、詩を単発で見ては面白くなく、数編から十数編のシリーズになっているのでそれを尊重して読まれることを進める。
女性詩人 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/0josei00index.html 女性詩人 古代から近世に至るまで女性の詩は書くことを許されない環境にあった。貴族の子女、芸妓だけである。残されている詩のほとんどは詞、楽府の優雅、雅なものへの媚の詞である。しかしその中に針のような痛みを感じさせるものがあるのである。
孟郊詩 http://www10.plala.or.jp/kanbuniinkai/328_moukou001.html 「文章得其微,物象由我裁。」詩人が作り出す文章は細やかなる描写表現を得ているものだ、万物の事象をも作り出すことさえも詩人自身の裁量でもってするのである。
李商隠詩 http://kanbuniinkai7.dousetsu.com/99_rishoinn150.html Ⅰ李商隠150首
 

原毀 韓愈(韓退之) <119-#5>Ⅱ中唐詩621 漢文委員会kanbuniinkai 紀頌之の漢詩ブログ2089


#5三段目-(1)
其於人也,曰:「彼人也,
その古代の君子が人に対するときにはいうのである、「あの人の事である。」
能有是,是足為良人矣。
「あの人には、ここにいう善事があることである。これが善良な人とするに十分なことなのである。」
能善是,是足為藝人矣。」
「この仕事を上手にすることができたということ。これは、多芸の人ということとするには十分である」ということなのだ。
取其一,不責其二;
「その一つを取りあげて、うまいか、うまくいかないか、その二つについて責めを問うことをしない。」
即其新,不究其舊;
「その人が努力して新しく進んだところについて見て、その過去のいたらなかったところを追究しないことである。」
恐恐然惟懼其人之不得為善之利。
「心おそれてなにもできないでいることは、その人が善事をなす利便を得ないかもしれないことを心配することになる。」
#4三段目-(2)
一善易修也,一藝易能也;
一つの善事はよく行いやすいものなのである。一つの技芸はできやすいものである。
其於人也,乃曰:
それなのに、その人が他人に対するときにこういう。
「能有是,是亦足矣!」
「あの人にはこの能力があることができたのだから、これもまたこれだけで十分である」という。
曰:「能善是,是亦足矣。」
そしていう、「これを立派におこなうことができたのだから、これでもまた十分である。」と。
不亦待於人者輕以約乎。
これが他の人に期待することが軽くしてひかえめなことではなかろうか

nat0021其の人に於けるや,曰く:「彼の人や,
能く是れ有り,是れ良人と為すに足る。
能く是れを善くす,是れ藝人と為すに足ると。」
其の一を取りて,其の二を責めず;
其の新に即【つ】いて,其の舊を究めず;
恐恐然として惟だ其の人の善を為すの利を得ざらんことを懼る

#5三段目-(2)
一善は修め易きなり,一藝は能くし易きなり;
其の人に於けるや,乃ち曰く:
「能く是れ有り,是れも亦た足れり!」と。
曰く:「能く是れを善くし,是れも亦た足れり。」と。
不亦た人を待つ者、輕くして以って約ならずや。


『原毀』 現代語訳と訳註
(本文)
#5三段目-(2)
韓愈0015原毀一善易修也,一藝易能也;
其於人也,乃曰:
「能有是,是亦足矣!」
曰:「能善是,是亦足矣。」
不亦待於人者輕以約乎。


(下し文)
一善は修め易きなり,一藝は能くし易きなり;
其の人に於けるや,乃ち曰く:
「能く是れ有り,是れも亦た足れり!」と。
曰く:「能く是れを善くし,是れも亦た足れり。」と。
不亦た人を待つ者、輕くして以って約ならずや。


(現代語訳)
一つの善事はよく行いやすいものなのである。一つの技芸はできやすいものである。
それなのに、その人が他人に対するときにこういう。
「あの人にはこの能力があることができたのだから、これもまたこれだけで十分である」という。
そしていう、「これを立派におこなうことができたのだから、これでもまた十分である。」と。
これが他の人に期待することが軽くしてひかえめなことではなかろうか。


(訳注) #5三段目-(2)
一善易修也,一藝易能也;
一つの善事はよく行いやすいものなのである。一つの技芸はできやすいものである。
○芸 技能。一芸に秀でる。746年天宝六載 玄宗は天下にたいし、一芸に秀で通ずるものを長安に集めて試験した。しかし、李林甫、文学の士を嫌っており、全員を落第させた。杜甫の応援者(ブログ杜甫20、21)であった李邕が、正月、李林甫により殺される。これがほんの50年前の出来事である。


其於人也,乃曰:
それなのに、その人が他人に対するときにこういう。


「能有是,是亦足矣!」
「あの人にはこの能力があることができたのだから、これもまたこれだけで十分である」という。


曰:「能善是,是亦足矣。」
そしていう、「これを立派におこなうことができたのだから、これでもまた十分である。」と。
○能善是 是は技術、このわざを上手にすることができた。


不亦待於人者輕以約乎。
これが他の人に期待することが軽くしてひかえめなことではなかろうか。
○軽 軽く少ない。
○約 つつましい。簡略。ひかえめ。
したがって「輕以約,故人樂為善。」“人に期待することが軽くてひかえめであるから、それゆえ人々は善をなすことを楽しむことができるのである。”である。○楽為善 楽しんで善いことをする。