杜甫《太子張舍人遺織成褥段―#4》そういうことなので、錦の鯨を巻いてお客どのにおかえしした。それでやっと心が平和になった気持ちになりました。そうしてお粗末な一席として、その座の塵を振り払って、お客どのにはあかぎ汁をたべさせるしかないほどで、これはお客に対して、おはずかしいことであります。
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太子張舍人遺織成褥段#1
(太子舎人張某が「しとね」にする毛織の絨段をくれたことをよんだ詩。広徳二年、成都にあっての作。)#1
客從西北來,遺我翠織成。
シルクロード通過して西北の地方から来たひとりの客が自分に翠色の毛織物をくれた。
開緘風濤湧,中有掉尾鯨。
はこの封緘を開くと風涛が湧きおこり、なかに尾をうごかしている鯨がみえる。
逶迤羅水族,瑣細不足名。
また魚類がうねうねとつづいているがそんな小さなものはとりたてていうほどのこともない。
客雲充君褥,承君終宴榮。
客が云うには、“此の品はあなたの「しとね」にあててください、あなたが宴席のとき始終しいてくださるご光栄を頂きたいものでございます。”
空堂魑魅走,高枕形神清。
“これをおしきになればさびしい座敷でも怪物でさえも逃げ出し、この上は、高枕でおやすみになれば身体も心もすがすがしくなるとおもいます。”と。
#2
領客珍重意,顧我非公卿。
自分はこれに答えていう、「あなたの貴いお心持ちは受け入れるのですが、冷静に顧みて、わたくしは三公九卿、高位の臣ではありません。
留之懼不祥,施之混柴荊。
このようないい物をもら貰うことは身に余るもので、今度は不吉こと起りはしないかと懼れてしますのです。これほどのものをこのあばら家に敷きこんだとしても、他のものとごちゃごちゃにしてしまうことになる。
服飾定尊卑,大哉萬古程。
人の服飾というものはこれによって身分の尊卑をきめるものであり、大切な万古の昔から永久の決まりというべきものです。
今我一賤老,裋褐更無營。
今わたくしは一介のいやしい老人で粗末な毛織のうわチョッキを着て満足しておるもので、ほかに何かを得たいというようなことはないのです。
煌煌珠宮物,寢處禍所嬰。
こんな煌煌とかがやいた竜宮や宮中の品物は、その上に寝たり居たりしては禍にかかることになるでしょう。」
#3
歎息當路子,干戈尚縱橫。
「なげかわしいことには今権勢の地位にある臣がのさばり、天下には兵乱がまだ縦横にひろがっている。
掌握有權柄,衣馬自肥輕。
彼らは手に権柄をにぎり、論語に言う「軽い衣をきて肥えた馬にのっている」のだ。
李鼎死岐陽,實以驕貴盈。
李鼎が岐陽で死んだのは実はあまりに驕貴をきわめたためである。
來瑱賜自盡,氣豪直阻兵。
来瑱が自殺の罰を賜わったのも気があらくただ兵を恃んだためである。
#4
皆聞黃金多,坐見悔吝生。
聞けば李鼎と驕貴の二人ともみな金銭をたくさんためていたというがそんなことではやがて栄枯盛衰、悔吝の運勢がでてくることは想像されることである。
奈何田舍翁,受此厚貺情。
かようなわけでありますから、どうしてこのいなかの爺いがこのような厚い賜物をくださるおこころをそのままおうけすることができましょう。」
錦鯨卷還客,始覺心和平。
そういうことなので、錦の鯨を巻いてお客どのにおかえしした。それでやっと心が平和になった気持ちになりました。
振我粗席塵,愧客茹藜羹。
そうしてお粗末な一席として、その座の塵を振り払って、お客どのにはあかぎ汁をたべさせるしかないほどで、これはお客に対して、おはずかしいことであります。
(太子の張舎人織成の褥段【じょくだん】を遺る)
客西北より来たり、我に翠織【すいしょく】成を遺る。
鍼を開けば風涛【ふうとう】湧き、中に掉尾【とうび】の鯨有り。
逶迤【いい】水族羅なり、瑣細【ささい】名いうに足らず。
客は云う君が褥【しとね】に充てて、君が終宴の栄を承けしめん。
空堂 魑魅【ちみ】走り、枕を高くすれば形神清しと。』
客の珍重なる意を領す、顧【おも】うに我は公卿に非ず。
之を留むるは不祥ならんことを懼れ、之を施せば柴荊【さいけい】に混ず。
服飾は尊卑を定め、大なる哉 万古の程。
今我一賤の老なり、裋褐【じゅかつ】更に営むこと無し。
煌煌たり珠宮の物、寝処するは禍の嬰【かか】る所なり。』
嘆息す当路の子、千戈尚お縦横なり。
掌握 権柄【けんぺい】有り、衣馬自ずから肥軽【ひけい】。
李鼎【りてい】 岐陽【きよう】に死するは、実に驕貴【きょうき】盈【み】つるを以てなり。
来瑱【らいてん】自尽を賜うは、気豪にして直ちに兵もて阻めばなり。
皆聞く黄金多しと、坐ろに見る悔吝【かいりん】の生ずるを。
奈何ぞ田舎翁、此の厚貺【こうきょう】の情を受けん。』
錦鯨【きんげい】巻きて客に還す、始めて覚ゆ心の和平なるを。
我が粗席の塵を振い 客に藜羹【れいこう】を茄【く】らわしむるに愧ず。』
『太子張舍人遺織成褥段』 現代語訳と訳註
(本文) #4
皆聞黃金多,坐見悔吝生。
奈何田舍翁,受此厚貺情。
錦鯨卷還客,始覺心和平。
振我粗席塵,愧客茹藜羹。
(下し文)
皆聞く黄金多しと、坐ろに見る悔吝【かいりん】の生ずるを。
奈何ぞ田舎翁、此の厚貺【こうきょう】の情を受けん。』
錦鯨【きんげい】巻きて客に還す、始めて覚ゆ心の和平なるを。
我が粗席の塵を振い 客に藜羹【れいこう】を茄【く】らわしむるに愧ず。』
(現代語訳)
聞けば李鼎と驕貴の二人ともみな金銭をたくさんためていたというがそんなことではやがて栄枯盛衰、悔吝の運勢がでてくることは想像されることである。
かようなわけでありますから、どうしてこのいなかの爺いがこのような厚い賜物をくださるおこころをそのままおうけすることができましょう。」
そういうことなので、錦の鯨を巻いてお客どのにおかえしした。それでやっと心が平和になった気持ちになりました。
そうしてお粗末な一席として、その座の塵を振り払って、お客どのにはあかぎ汁をたべさせるしかないほどで、これはお客に対して、おはずかしいことであります。
(訳注)#4
皆聞黃金多,坐見悔吝生。
聞けば李鼎と驕貴の二人ともみな金銭をたくさんためていたというがそんなことではやがて栄枯盛衰、悔吝の運勢がでてくることは想像されることである。
○皆聞 李鼎と驕貴の二人ともみな、富貴のものは誰でも。
○黄金多 かねをたくさんためこむ。かねはいずれも人民のものを搾取、略奪・奪取したもの。
○悔吝 ・悔は後悔、・吝りん【吝】[漢字項目]とは。意味や解説。[音]リン(呉)(漢)[訓]やぶさかしわい物惜しみをする。けち。「吝嗇(りんしょく)/倹吝・慳吝(けんりん)」。
奈何田舍翁,受此厚貺情。
かようなわけでありますから、どうしてこのいなかの爺いがこのような厚い賜物をくださるおこころをそのままおうけすることができましょう。」
○田舎翁 いなかおやじ、自己をいう。
○厚貺 あついたまもの。
以上は更に推しひろめて奪惨の例をひき、縟段をうけるべきではないことをいう。
錦鯨卷還客,始覺心和平。
そういうことなので、錦の鯨を巻いてお客どのにおかえしした。それでやっと心が平和になった気持ちになりました。
○錦鯨 にしきのくじら、禅段の模様。
○還 返す、もどす。
振我粗席塵,愧客茹藜羹。
そうしてお粗末な一席として、その座の塵を振り払って、お客どのにはあかぎ汁をたべさせるしかないほどで、これはお客に対して、おはずかしいことであります。
○粗席 粗末なむしろ、杜甫が客をもてなすこと。。
○茄 食ろう、くわせることをいう。
○藜羹 【れいこう】あかぎのお汁。アカザのあつもの。転じて、粗食。藜羹を食らう者は大牢の滋味を知らず。《「藜羹」は粗食、「大牢」はすばらしいごちそうの意》粗食に慣れた者にはごちそうの味がわからない。つまらない人間には高尚なことや重大なことは理解できないことのたとえ。