房兵曹胡馬詩 杜甫 紀頌之の漢詩ブログ杜甫詩 特集   9
五言律詩。
兵曹参軍事の任にある房氏の所有する西方産の馬についてのべた詩。 開元29年 741年 三十歳ごろの作とされる。


房兵曹胡馬詩
房兵曹の胡馬の詩
胡馬大宛名、鋒稜痩骨成。
この外国産の大宛国の名誉にそむかない名馬であり、骨のすがたが痩せて肥えていない骨組みが十分にできあがっている。
竹批双耳峻、風入四蹄軽。
竹をそいだようにそばだつふたつの耳、、四つの蹄はそのあいだに風を吸いこんでかるがると走ってゆく。
所向無空闊、真堪託死生。
この馬の向かうところ空間はつぎつぎと制覇されてゆく、これほどの馬なら命をあずけるのに真に十分に任せることができる。
驍騰有如此、万里可横行。

こんな元気のいい馬を持っているあなたは、万里の遠方へでも自由自在に行くことができよう。


この外国産の大宛国の名誉にそむかない名馬であり、骨のすがたが痩せて肥えていない骨組みが十分にできあがっている。
竹をそいだようにそばだつふたつの耳、、四つの蹄はそのあいだに風を吸いこんでかるがると走ってゆく。
この馬の向かうところ空間はつぎつぎと制覇されてゆく、これほどの馬なら命をあずけるのに真に十分に任せることができる。
こんな元気のいい馬を持っているあなたは、万里の遠方へでも自由自在に行くことができよう。


(下し文)房兵曹の胡馬の詩
胡馬(こば)  大宛(たいえん)の名(な)
鋒稜(ほうりょう)  痩骨(そうこつ)成る
竹批(そ)いで  双耳(そうじ)峻(するど)く
風入って  四蹄(してい)軽(かろ)し
向かう所  空闊(くうかつ)無く
真に死生(しせい)を託するに堪(た)えたり
驍騰(ぎょうとう)  此(かく)の如き有らば
万里  横行(おうこう)す可し

房兵曹胡馬詩
房兵曹 房は姓、名は未詳。兵曹は兵曹参軍事の官をいう。○胡馬 胡は塞外の地方をさす、ここは外国産の馬をさして胡馬という。

胡馬大宛名、鋒稜痩骨成。
この外国産の大宛国の名誉にそむかない名馬であり、骨のすがたが痩せて肥えていない骨組みが十分にできあがっている。
大宛名 大宛は漠代に西域地方に在った国の名。漢の武帝は大宛より天馬を得たことがある。名とは名を負っている駿馬であるとの意。大宛(フェルガーナ)種の駿馬。 ○鋒稜 みね、とがり、骨のすがたをいう。 ○痩骨 肉のやせた骨。馬は「肉の肥えたのを貴わず、筋骨たくましきものを貴し」とする。 ○ 十分にできあがる。

竹批双耳峻、風入四蹄軽。
竹をそいだようにそばだつふたつの耳、、四つの蹄はそのあいだに風を吸いこんでかるがると走ってゆく。
竹批 竹の幹をはすかいにそぐことをいう、耳の尖っている形容。「馬の耳は小さくして鋭く、状は竹筒をごとくなるを欲す。」(斉民要術)。 ○双耳 左右二つのみみ。 ○ さかし、するどし。 ○風入 風が入りこむ。馬が走るときは、風がおのずから四足の間に生ずる。 〇四蹄 蹄はひづめ。

所向無空闊、真堪託死生
この馬の向かうところ空間はつぎつぎと制覇されてゆく、これほどの馬なら命をあずけるのに真に十分に任せることができる。
所向 どこえいこうと。○無空潤 空潤とはひろびろとした処、百里千里の平野をさす。無とは馬によって空間を制覇し、空間をなくすこと。○ この馬にまかせる。○死生 乗り手の死生。

驍騰有如此、万里可横行。
こんな元気のいい馬を持っているあなたは、万里の遠方へでも自由自在に行くことができよう。
驍騰 驍は勇武なこと、騰ほおどりあがる、馬のいさましいすがた。○横行 ほしいままにゆく。


房兵曹は洛陽の友人のひとりで、名馬を所有していた。杜甫は馬が好きで、多くの詩を残しているが、この五言律詩は、馬が大宛種の駿馬で、贅肉のないひきしまった体をよく詠っている。特に、「竹批いで 双耳峻く」は名句とされ、後世でも駿馬の形容に使われている。蹄は風を吸うように軽々と空をけってゆく、このような馬であれば死生を託するに足りると軽快にいい。結びの二句は、こんなに良い馬を持っていることは君にとって前途洋洋だと贈っている。当時、軍人にとって、出世の最大要件であったので、こういう表現をしたのである。
詩の形は、はじめ二句で導入、四句でその馬の良さを詠い、結び(尾聯)二句で抱負を述べる若き杜甫の律詩である。