畫鷹  杜甫 紀頌之の漢詩ブログ杜甫詩 特集  10 (青年期・就活の詩)
五言律詩。絵にかいた鷹についてよんだ詩。
天宝1載 742年 31歳


畫 鷹              
素練風霜起、蒼鷹画作殊。
鷹を書いた絵絹がある。鷹の羽の勢いで風を呼び、練り絹の白い面からや霜がわき起こるかとおもわれるのは、青黒い鷹の絵の出来映えが素晴しいからだ。
㩳身思狡兎、側目似愁胡。
その鷹は肩を怒らせてはすばしこい兎を狙おうとしているのであろうか、その横目に睨んでいる心配顔のトルコ人に似ている。
絛鏇光堪擿、軒楹勢可呼。
足をくくるひもの環輪は手で摘み取ることができそうに光っており、軒端の柱のあたりで呼べばすぐにも飛び出しそうな勢いがある。
何当撃凡鳥、毛血灑平蕪。

いつかは凡鳥どもをたたき伏せ、毛や血を平原に撒き散らすことであろう。


鷹を書いた絵絹がある。鷹の羽の勢いで風を呼び、練り絹の白い面からや霜がわき起こるかとおもわれるのは、青黒い鷹の絵の出来映えが素晴しいからだ。
その鷹は肩を怒らせてはすばしこい兎を狙おうとしているのであろうか、その横目に睨んでいる心配顔のトルコ人に似ている。
足をくくるひもの環輪は手で摘み取ることができそうに光っており、軒端の柱のあたりで呼べばすぐにも飛び出しそうな勢いがある。
いつかは凡鳥どもをたたき伏せ、毛や血を平原に撒き散らすことであろう。


画 鷹
素練(それん)   風霜(ふうそう)起こり
蒼鷹(そうよう)  画作(がさく)殊(こと)なり
身を㩳(そびやか)して狡兎(こうと)を思い
目を側(そばだ)てて愁胡(しゅうこ)に似たり
絛鏇(とうせん)  光  摘(つ)むに堪(た)え
軒楹(けんえい)  勢い呼ぶ可し
何(いつ)か当(まさ)に凡鳥(ぼんちょう)を撃ちて
毛血(もうけつ)  平蕪(へいぶ)に灑(そそ)ぐべき



畫 鷹  
杜甫は4年にわたる山東方面の遊学から帰り、就職活動のためや、知遇を得るために、貴族の館に出入りを始めた。この詩は出来上がってきた絵画に詩を書き添えた題画である。 
           

素練風霜起、蒼鷹画作殊。
鷹を書いた絵絹がある。鷹の羽の勢いで風を呼び、練り絹の白い面からや霜がわき起こるかとおもわれるのは、青黒い鷹の絵の出来映えが素晴しいからだ。
素練 しろい練絹。白絹で顔料が付きやすく練っているもの。○風霜起 鷹の羽の勢いが風であり、絹面の白さと獲物を狙う寒々とした光景を連想させる霜をいう。○蒼鷹 ごましおの羽色のたか。○画作 画のできぐあい。○ 尋常でない。秀逸であること。


㩳身思狡兎、側目似愁胡。
その鷹は肩を怒らせてはすばしこい兎を狙おうとしているのであろうか、その横目に睨んでいる心配顔のトルコ人に似ている。
攫身 渡は心に従って健に作るべきである。字の誤りであり、優は疎に同じく、そびやかすこと。身をそびやかすとは肩を怒らすようにすること。〇狡兎 ずるいうさぎ。○側目 よこめににらむ。○愁胡 心配顔のトルコ人。晋の孫楚の「鷹の賦」に「深目蛾眉、状は愁胡に似たり」とある。鷹の目つきを愁胡にたとえることは晋の孫楚の「鷹ノ賦」にある。

絛鏇光堪擿、軒楹勢可呼。
足をくくるひもの環輪は手で摘み取ることができそうに光っており、軒端の柱のあたりで呼べばすぐにも飛び出しそうな勢いがある。
絛鏇 鷹の足をくくったひもを通す金属の環輪。・ さなだひも。・ ろくろ仕掛けの金環。鷹の足をさなだひもでくくり、この環につないでおく。○光堪擿 光とは鋲のうごくにつれひかることをいう。擿つまんでとりさることをいう。○軒楹 のきば、はしら。○ 鷹の猛き勢い。○可呼 呼ぶとはこの鷺にかけごえをして猟をさせることをいう。

何当撃凡鳥、毛血灑平蕪。
いつかは凡鳥どもをたたき伏せ、毛や血を平原に撒き散らすことであろう。
何当 何は何時の義。 ○凡鳥 烏雀の類。○平蕪 蕪とは荒野をいう。


韻字 殊・胡・呼・蕪。