夜宴左氏荘 杜甫 紀頌之の漢詩ブログ杜甫詩 特集  12 (就職活動する。)
夜左氏の別荘の宴に出席したことをのべたもの。
742年 天宝1載31歳 洛陽での作
   
夜宴左氏荘         
夜 左氏の荘に宴した
風林繊月落、衣露浄琴張。
そぞろに風がわたる林に新月の細い月も沈んで夜も更けた、衣上に露の降りる澄み切った夜に琴の弦を張った穢れのない綺麗な琴の調がしみわたる。
暗水流花径、春星帯草堂。
暗がりで水流れており荘園の花咲く小路、春の星が草堂をやわらかくつつんでいる。 
検書焼燭短、看剣引盃長。
書籍でしらべものをしていたら、いつのまにか、蝋燭が短くなっていた、剣を見ていると酒杯を重ねあげてはなせない。
詩罷聞呉詠、扁舟意不忘。

宴席で詩を作って読み上げおわると、江南の音調でこの詩を詠う者がいた、その音調を聞いたら自分が小船で呉越に遊歴した当時のことを思い出されて忘れることはない。


夜 左氏の荘に宴した
そぞろに風がわたる林に新月の細い月も沈んで夜も更けた、衣上に露の降りる澄み切った夜に琴の弦を張った穢れのない綺麗な琴の調がしみわたる。
暗がりで水流れており荘園の花咲く小路、春の星が草堂をやわらかくつつんでいる。 
書籍でしらべものをしていたら、いつのまにか、蝋燭が短くなっていた、剣を見ていると酒杯を重ねあげてはなせない。
宴席で詩を作って読み上げおわると、江南の音調でこの詩を詠う者がいた、その音調を聞いたら自分が小船で呉越に遊歴した当時のことを思い出されて忘れることはない。


夜 左氏の荘に宴す
風林(ふうりん)  繊月(せんげつ)落ち
衣露(いろ)  浄琴(じょうきん)張る
暗水(あんすい)は花径(かけい)に流れ
春星(しゅんせい)は草堂を帯(お)ぶ
書を検(けん)して  燭(しょく)を焼くこと短く
剣を看(み)て  盃(さかずき)を引くこと長し
詩罷(や)みて  呉詠(ごえい)を聞く
扁舟(へんしゅう)  意(い)  忘れず


夜宴左氏荘
○左氏荘 左氏が何人であるかは未詳。その荘の所在も詳かでないが、或は河南に在るかという。

風林繊月落、衣露浄琴張。
そぞろに風がわたる林に新月の細い月も沈んで夜も更けた、衣上に露の降りる澄み切った夜に琴の弦を張った穢れのない綺麗な琴の調がしみわたる。
風林 風のわたる林。○繊月 細くなった月。新月のこと。○衣露 衣上におりた露。 ○浄琴 穢れのない綺麗な琴の調。○ 琴の弦をはる。

暗水流花径、春星帯草堂。
暗がりで水流れており荘園の花咲く小路、春の星が草堂をやわらかくつつんでいる。 
暗水 くらがりの水。○花径 花のさいているこみち。○ とりかこむこと。

検書焼燭短、看剣引盃長。
書籍でしらべものをしていたら、いつのまにか、蝋燭が短くなっていた、剣を見ていると酒杯を重ねあげてはなせない。
検書 検はしらべること。○焼燭短 短の字は燭へかかる。更に長からんことを望む意がある。○引杯長 引とは口もとへひきよせること、長とは時間の久しきにわたることをいう。

詩罷聞呉詠、扁舟意不忘。
宴席で詩を作って読み上げおわると、江南の音調でこの詩を詠う者がいた、その音調を聞いたら自分が小船で呉越に遊歴した当時のことを思い出されて忘れることはない。
詩罷 席上で、詩をつくりおわること。○呉詠 呉は今の江蘇省地方、呉詠とは江南の音調で詩をうたうこと。○扁舟 小さくひらべたい舟。これは開元十九年、作者が年二十歳にして、呉越に遊んだことを憶いおこした

 「扁舟意不忘。」(小船で呉越に遊歴した当時のことを思い出されて忘れることはない。)で詩を終わらせていることで、そ前の句の「聞呉詠」(江南の音調でこの詩を詠う者がいた)ということをぐっと引き立て、夜宴の主を引き立てる役割をこなしている。それでいて自分の詩をきっちり売り込んでいる。五言句の中にこれだけの情報と想像力を描き立たせる杜甫の天才的なところである。