前出塞九首 其二 杜甫紀頌之の漢詩ブログ誠実な詩人杜甫特集 41
五言律詩



前出塞九首 其二
出門日已遠,不受徒旅欺。
我が家の門を出てから日に日に距離が遠くなってきた、陣中の仕事も仲間のあなどりをも受けぬようになる。
骨肉恩豈斷?男兒死無時。
親子兄弟の恩愛の情はどんなときでも断ちきれるものではないのであるが、戦に出た男児は死ぬ時をえらばないものである。
走馬脫轡頭,手中挑青絲。
自分は馬を走らせておもづらのはなかわをはずして青糸の手綱を手中に手繰り上げた。
捷下萬仞岡,俯身試搴旗。

すばやく万仞の高い岡からかけくだり、地面に身を俯せながら旗を抜き取る稽古をしてみる。


我が家の門を出てから日に日に距離が遠くなってきた、陣中の仕事も仲間のあなどりをも受けぬようになる。
親子兄弟の恩愛の情はどんなときでも断ちきれるものではないのであるが、戦に出た男児は死ぬ時をえらばないものである。
自分は馬を走らせておもづらのはなかわをはずして青糸の手綱を手中に手繰り上げた。
すばやく万仞の高い岡からかけくだり、地面に身を俯せながら旗を抜き取る稽古をしてみる。

門を出でて日に己に遠し、 徒旅の欺(あなどり)を受けず。
骨肉恩豈に断えんや、 男児死するに時無し。
馬を走らせて轡頭(ひとう)を脫し、手中に青糸を挑(かか)げ。
捷(と)く万仞(ばんじん)の岡より下り、身を俯して試に旗を搴(むきと)る。



出門日已遠,不受徒旅欺。
我が家の門を出てから日に日に距離が遠くなってきた、陣中の仕事も仲間のあなどりをも受けぬようになる。
出門:門は家の門。 徒旅:徒は成卒、旅とは衆。衆卒を徒旅という、なかまのもの。 :だますことではなく、あなどること。こばかにされる。 

骨肉恩豈斷?男兒死無時。
親子兄弟の恩愛の情はどんなときでも断ちきれるものではないのであるが、戦に出た男児は死ぬ時をえらばないものである。
骨肉:親子兄弟。 恩豊断:ふりきろうとしても実はたちきれぬことをいう。 無時:一定の時のないことをいう、いつでも死すべき時には死なねばならぬの意。 
 

走馬脫轡頭,手中挑青絲。
自分は馬を走らせておもづらのはなかわをはずして青糸の手綱を手中に手繰り上げた。
脱轡頭:轡頭とは馬韁(ばきゅう馬のはなかわ、おもづら)のこと。脱とは蓋しかけてある鐶から馬韁をはずすことであろう。 青糸:これは轡頭からつづく手綱をいう。 



捷下萬仞岡,俯身試搴旗。
すばやく万仞の高い岡からかけくだり、地面に身を俯せながら旗を抜き取る稽古をしてみる。
:はやく。仞:八尺。 :身からだを地面へむけてうつむく。



出塞兵士の物語 2
 この当時の唐の国は、世界一の領土を誇った強大な国であった。国の制度も、律令国家として、最も進んだくにであった。租庸調の人民への負担と貿易など国力は周辺諸国を圧倒していた。しかし、北方と、西方については、生活様式の違いが大きく唐への帰属(漢化)はなかなかできないものであり、周辺の局地戦は、季節が巡るように繰り返された。広大な領土を守るため、常時兵力補充が行われた。
 戦で勲功をあげれば、出身がなんであろうと出世した。徴兵によって狩出されたものが勲功をあげることはなく、異民族、騎馬民族出身者が、手柄を立てのし上がっていったのである。哥舒翰、安禄山など異民族出身者である。
 杜甫の出塞九首は、その名もない兵士の物語なのだ。第二話は、訓練をしてやっと仲間の兵士から小ばかにされなくなったところまでである。