前出塞九首 其八 杜甫 紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 47
天宝10載751年 40歳



前出塞九首 其八
單於寇我壘,百裡風塵昏。
敵の吐蕃の王が急襲して攻め入ってきた、百里もあるばかりのあいだ蹴立てる塵で真っ暗になった。
雄劍四五動,彼軍為我奔。
雄劍という長剣を敵に向けて四、五回振り動かした、このはたらきによって敵軍は奔走して行った。
虜其名王歸,繫頸授轅門。
そのことで敵の名王を捕虜にして帰ったのだ、王の首を縄でくくって我が軍門にひきわたした。
潛身備行列,一勝何足論?

そしてこっそり行列のなかへからだをこっそりひっこめている。一度の勝ったぐらいでどうだというのだ、全勝を得るまでは得意になってはならないのだ。


敵の吐蕃の王が急襲して攻め入ってきた、百里もあるばかりのあいだ蹴立てる塵で真っ暗になった。
雄劍という長剣を敵に向けて四、五回振り動かした、このはたらきによって敵軍は奔走して行った。
そのことで敵の名王を捕虜にして帰ったのだ、王の首を縄でくくって我が軍門にひきわたした。
そしてこっそり行列のなかへからだをこっそりひっこめている。一度の勝ったぐらいでどうだというのだ、全勝を得るまでは得意になってはならないのだ。



前出塞九首 其の八
単干我が壘に寇す 百里風塵昏し
雄剣四五動き 彼の軍我が為めに奔る
其の名王を虜にして帰り 頸を繋ぎて轅門に授く
身を潜めて行列に備わる 一勝何ぞ論ずるに足らん




單於寇我壘,百裡風塵昏。
敵の吐蕃の王が急襲して攻め入ってきた、百里もあるばかりのあいだ蹴立てる塵で真っ暗になった。
単干 匈奴の酋長、ここは吐蕃の王をいう。○ 防塁。 ○ 急襲して攻め入る、こちらへ侵入してくる。
 

雄劍四五動,彼軍為我奔。
雄劍という長剣を敵に向けて四、五回振り動かした、このはたらきによって敵軍は奔走して行った。
○雄剣 ウィキペディアには次の通りである。干将・莫耶(かんしょう・ばくや。干将は本来干將。莫耶は莫邪とも)とは、中国における名剣、もしくはその剣の製作者である夫婦の名である。剣については干将が陽剣(雄剣)、莫耶が陰剣(雌剣)である(この陰陽は陰陽説に基づくものであるため、善悪ではない)。また、干将は亀裂模様(龜文)、莫耶は水波模様(漫理)が剣に浮かんでいたとされる(『呉越春秋』による)。なお、この剣は作成経緯から、鋳剣(鋳造によって作成された剣)である。〇四五動 四、五回振り動かす。



虜其名王歸,繫頸授轅門。
そのことで敵の名王を捕虜にして帰ったのだ、王の首を縄でくくって我が軍門にひきわたした。
○其 単干の軍をさす。○名王 単干の部下の有名な王。○繋頸 くびを縄でつなぐ。○授 ひきわたすことをいう。○轅門 軍営の門、むかしは陣営の門は車の柁棒をむかい合わせにならべてつくるという。



潛身備行列,一勝何足論?
そしてこっそり行列のなかへからだをこっそりひっこめている。一度の勝ったぐらいでどうだというのだ、全勝を得るまでは得意になってはならないのだ。
潜身 からだをこっそりひっこめる。〇備行列 部隊の行列のなかへくわわっている。○何足論 論じてことごとしくいいたてるに足らぬ、これは全勝を得るまでは得意にならぬことをいう。



出塞のものがたり  8
 騎馬民族の戦法は奇襲戦にあったのであろうが、との戦いに対して、長剣は有効な武器であっただろう。馬の足を拂われそうで、逃げていったのもよくわかる。
かわいた砂漠に防塁を築いている。敵からすれば騎馬で一気に乗り越えようとする奇襲したのである。紀元前の春秋戦国の時代の名剣の威力は実績済みのものだ。