奉贈鮮於京兆二十韻 杜甫 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 53

長安の市長に任ぜられて間もないころに京兆尹、鮮于仲通に贈った詩。752年天宝11載41歳十二月の作。

奉贈鮮於京兆二十韻 杜甫

王國稱多士,賢良複幾人?
異才應間出,爽氣必殊倫。
始見張京兆,宜居漢近臣。
驊騮開道路,雕鶚離風塵。』
侯伯知何算,文章實致身。
奮飛超等級,容易失沈淪。
脫略磻溪釣,操持郢匠斤。
雲霄今巳逼,台袞更誰親?』
鳳穴鄒皆好,龍門客又新。
義聲紛感激,敗績自逡巡。』
途遠欲何向,天高難重陳。
學詩猶孺子,鄉賦忝嘉賓。
不得同晁錯,籲嗟後郤詵。
計疏疑翰墨,時過憶松筠。』
獻納紆皇眷,中間謁紫宸。
且隨諸彥集,方覬薄才伸。
破膽遭前政,陰謀獨秉鈞。
微生霑忌刻,萬事益酸辛。』
交合丹青地,恩傾雨露辰。
有儒愁餓死,早晚報平津。』


王國稱多士,賢良複幾人?
我が唐王朝は天子のお声がかりで一芸に秀でた人物が多いといわれているが、賢良な人は幾人いるだろうかといえばさほど多くはないだろう。

異才應間出,爽氣必殊倫。
特別非凡の人才も時折出る、そういう人はさわやかな雰囲気でいい影響を与えるだろう。

始見張京兆,宜居漢近臣。
こんどはじめて漢の京兆尹張敞殿がでたが、漢の天子のおそば近くつかえるのにはふさわしいことである。
驊騮開道路,雕鶚離風塵。』
千里の馬にとって前に進むべき道路が開けられた様なもの、又下界の風塵をはなれて雕鶚の猛鳥が空高く飛び立つ様なものなのだ。』

侯伯知何算,文章實致身。
節度使は多くいることは周知のことである。あなたは自己の文章のカを以て高位になられたのである。

奮飛超等級,容易失沈淪。
自己を奮い立たせ飛び上がり超等級の方である、たやすく下位に沈んだりということはないお方である。

脫略磻溪釣,操持郢匠斤。
太公望のような行為は眼中におかないことである、今の地位に居るあなたは公平な文の取り扱いをすること、郢匠が斤を取って寸分の狂いもなかったものを手にしている。

雲霄今巳逼,台袞更誰親?』
君は今雲霄の高位には既にせまっておられる。宰相公に対して他に誰が親しいものがあるというのか。』

鳳穴鄒皆好,龍門客又新。
丹穴の鳳雛ともいうべき貴家の公子等は皆よい方々であり、竜門にもあたいする黄門において新に自分のようなものまで賓客としていただいている。

義聲紛感激,敗績自逡巡。』
諸公子の義侠の精神の評判には自分は心もから感激しているが、受験において落第し続けており、あつかましくも進みでて身辺の事についてお願いしづらくて逡巡しております。』

途遠欲何向,天高難重陳。
めざす前途がなかなか遠く違うようでありどちらに向かうべきかご指導願いたい。天は高くして叫ぶ声もとどき重ねて陳述したのだがそれが届かぬようなのです。

學詩猶孺子,鄉賦忝嘉賓。
こどものときから家庭で詩を学んで、やっと地方試験に及第して喜ばしいことにも賓客のとりあっかいをうけてかたじけなくおもっております。

不得同晁錯,籲嗟後郤詵。
不幸にして晃錯と同じように及第することもできず、またなげかわしく思うことは郤詵よりもおくれてしまった。

計疏疑翰墨,時過憶松筠。』
自分の計画に手抜かりがあるために自分の文辞にさえ疑いはじめたのです、落第つづきで時機を逸したのかもしれないので仕進をやめて、ただ松竹の如く晩節を保とうかと思っている。』

獻納紆皇眷,中間謁紫宸。
そのうちに、三大礼において賦を献上したために天子からお目をかけられて紫宸殿で謁見を仰せつけられた。

且隨諸彥集,方覬薄才伸。
しばらく他の英才の人々の集りに随伴したのです、やっとこれでいささかの才能をのばすことができるかとこいねがっております。

破膽遭前政,陰謀獨秉鈞。
ところが驚いたことには前宰相(李林甫)というものに遭遇したのです。陰謀をし、ただひとり国権を握っていたのです。

微生霑忌刻,萬事益酸辛。』
自分の徴少な生活もこの人の猜忌で残忍なやりかたで水をかけられたのです。一事が万事ますますつらいことになってきたところです。』

交合丹青地,恩傾雨露辰。
あなたは袞竜衣を身につける地位の人と交際親密であられ、人に対しては時に従い雨露のように恩恵を注ぎかけられるお方である。

有儒愁餓死,早晚報平津。』
今ここに自分の様な儒者がおり、餓えて死にはしないかと心配しています。はやければありがたいのですが、この有様を平津侯である宰相におしらせしてくださいますか。




鮮京兆尹に二十韻をお贈りもうしあげます 杜甫

我が唐王朝は天子のお声がかりで一芸に秀でた人物が多いといわれているが、賢良な人は幾人いるだろうかといえばさほど多くはないだろう。
特別非凡の人才も時折出る、そういう人はさわやかな雰囲気でいい影響を与えるだろう。
こんどはじめて漢の京兆尹張敞殿がでたが、漢の天子のおそば近くつかえるのにはふさわしいことである。
千里の馬にとって前に進むべき道路が開けられた様なもの、又下界の風塵をはなれて雕鶚の猛鳥が空高く飛び立つ様なものなのだ。』

節度使は多くいることは周知のことである。あなたは自己の文章のカを以て高位になられたのである。
自己を奮い立たせ飛び上がり超等級の方である、たやすく下位に沈んだりということはないお方である。
太公望のような行為は眼中におかないことである、今の地位に居るあなたは公平な文の取り扱いをすること、郢匠が斤を取って寸分の狂いもなかったものを手にしている。
君は今雲霄の高位には既にせまっておられる。宰相公に対して他に誰が親しいものがあるというのか。』
丹穴の鳳雛ともいうべき貴家の公子等は皆よい方々であり、竜門にもあたいする黄門において新に自分のようなものまで賓客としていただいている。
諸公子の義侠の精神の評判には自分は心もから感激しているが、受験において落第し続けており、あつかましくも進みでて身辺の事についてお願いしづらくて逡巡しております。』

めざす前途がなかなか遠く違うようでありどちらに向かうべきかご指導願いたい。天は高くして叫ぶ声もとどき重ねて陳述したのだがそれが届かぬようなのです。
こどものときから家庭で詩を学んで、やっと地方試験に及第して喜ばしいことにも賓客のとりあっかいをうけてかたじけなくおもっております。
不幸にして晃錯と同じように及第することもできず、またなげかわしく思うことは郤詵よりもおくれてしまった。
自分の計画に手抜かりがあるために自分の文辞にさえ疑いはじめたのです、落第つづきで時機を逸したのかもしれないので仕進をやめて、ただ松竹の如く晩節を保とうかと思っている。』

そのうちに、三大礼において賦を献上したために天子からお目をかけられて紫宸殿で謁見を仰せつけられた。
しばらく他の英才の人々の集りに随伴したのです、やっとこれでいささかの才能をのばすことができるかとこいねがっております。
ところが驚いたことには前宰相(李林甫)というものに遭遇したのです。陰謀をし、ただひとり国権を握っていたのです。
自分の徴少な生活もこの人の猜忌で残忍なやりかたで水をかけられたのです。一事が万事ますますつらいことになってきたところです。』

あなたは袞竜衣を身につける地位の人と交際親密であられ、人に対しては時に従い雨露のように恩恵を注ぎかけられるお方である。
今ここに自分の様な儒者がおり、餓えて死にはしないかと心配しています。はやければありがたいのですが、この有様を平津侯である宰相におしらせしてくださいますか。』


鮮於京兆に二十韻を贈り奉る 杜甫

王国士多しと称せらる 賢艮復た幾人ぞ
異才応に間出すぺし 爽気必ず殊倫なり
始めて見る張京兆 宜しく漢の近臣に居るべし
驊騮道路開く 雕鶚風塵を離る』
侯伯知る何算 文章実に身を致せり
奮飛等級を超え 容易沈淪を失す
磻渓の釣を脱略して 郢匠の斤を操持す
雲霄今巳に逼る 台袞 更に誰か親しまん』
鳳穴 鄒 皆好し 竜門 客 又 新なり
義声 紛として感激す 敗績 自ら逡巡たり』
途遠くして何くに向わんと欲する 天高くして重ねて陳べ難し
詩を学ぶは猶お孺子なりき 郷賦嘉賓を黍くす
晁錯に同じきを得ず 呼嗟郤詵に後れたり
計疎にして翰墨を疑い 時過ぎて松筠を憶う』
献納皇眷を紆らす 中間紫宸に謁す
且く随う諸彦の集るに 万に覬う薄才の伸びんことを
破胆前政の 陰謀独り鈞を秉るに遭う
徴生忌刻に霑う 万事益々酸辛なり』
交りは合す丹青の地 恩は雨露を傾くる辰
儒有り餓死せんことを愁う 早晩平津に報ぜん』



鮮于 鮮于は姓、名は仲通。蜀の富豪で楊国忠に資金を提供したために、国忠に後に引き上げられた。仲通は天宝九載に剣南節度副大使となり、十一載に至って京兆尹に拝した。楊国忠が相となったのは、十一載十一月であるから仲通が京兆尹となったのは其の後のことであろう。○京兆 京兆尹(長安の市長)。




奉贈鮮於京兆二十韻 杜甫


王國稱多士,賢良複幾人?
我が唐王朝は天子のお声がかりで一芸に秀でた人物が多いといわれているが、賢良な人は幾人いるだろうかといえばさほど多くはないだろう。
○王国 天子の国、唐王朝をいう。○多士 人物の多いこと。○賢艮 かしこくよき人物。○復幾 人幾人ぞとは幾人かある、あまり多くはあるまいということ。
 
異才應間出,爽氣必殊倫。
特別非凡の人才も時折出る、そういう人はさわやかな雰囲気でいい影響を与えるだろう。
○異才 特別非凡の才。○間出 時折出る。まじわりいでる。○爽気 雰囲気のさっぱりしたこと。○殊倫 特殊の傑出せるたぐい。
 
始見張京兆,宜居漢近臣。
こんどはじめて漢の京兆尹張敞殿がでたが、漢の天子のおそば近くつかえるのにはふさわしいことである。
○張京兆 漢の京兆戸張敞をいう。名官であったので仲通にたとえる。京兆尹は長安の市長。。○漢近臣 漢は唐を意味し、近臣は天子のおそぼちかくつかえる臣。

驊騮開道路,雕鶚離風塵。』
千里の馬にとって前に進むべき道路が開けられた様なもの、又下界の風塵をはなれて雕鶚の猛鳥が空高く飛び立つ様なものなのだ。』
○驊騮 千里の馬。○開 そのゆくべき道が前にあらわれることをいう。○雕鶚 たかのたぐい、鶚は雕より大きい。○離風塵 下界をはなれて空高くとぶ。
 


侯伯知何算,文章實致身。
節度使は多くいることは周知のことである。あなたは自己の文章のカを以て高位になられたのである。
○侯伯 諸侯をいうのであるが、唐の時代には諸侯はないので、地方の節度使をさしている。○何算 いかに算するをしる。多くあって算できない。○致身 身を高位に致す。
 
奮飛超等級,容易失沈淪。
自己を奮い立たせ飛び上がり超等級の方である、たやすく下位に沈んだりということはないお方である。
○失沈倫 上の超等殻と同じことを反面より言ったまでである。
 
脫略磻溪釣,操持郢匠斤。
太公望のような行為は眼中におかないことである、今の地位に居るあなたは公平な文の取り扱いをすること、郢匠が斤を取って寸分の狂いもなかったものを手にしている。
○脱略 眼中におかないこと。○磻溪釣 周の呂尚(太公望)の故事、『佩文韻府』引『水経注』「渭水之右、磻渓水注之、東南隅有石室、蓋太公所居也」。大公は渭水の右、磻渓水の注ぐ処に釣を垂れていて文王に迎えられた。○操持 手にとる。○郢匠斤 文章が間違いのない正しいものと評価されること。○郢匠の事は「荘子」に見える。郢(楚の都)の人体像に鼻のあたまに漆喰をぬっているものがあり、邦の匠(大工)石というものが斤(まさかり)をふりまわしてその漆喰をけずりとったところ少しも鼻を傷つけなかったという。削りにおいて寸分の狂いがないことをいう。
 
雲霄今巳逼,台袞更誰親?』
君は今雲霄の高位には既にせまっておられる。宰相公に対して他に誰が親しいものがあるというのか。』
○雲霄 そら、くものうえのおおぞら、高い地位をいう。〇台袞 三台、兗衣のこと。三公は天の三台星に対し、又三公は袞(竜のついている衣)をきる。暗に楊国忠をさしている。三公は袞(竜のついている衣)赤の服は天子の最も信任の篤い臣下に贈られるもので、これを袞竜衣(こんりょうい)という。 .赤地の服の両袖に竜の刺繍をつけた袞竜衣を身につけ、頭には冕(べん)と呼ばれる(玉すだれの)冠を被っている。○更誰親 仲通ほど親しいものはだれもない。


■ここから鮮于に対してとお願いの前段。
鳳穴鄒皆好,龍門客又新。
丹穴の鳳雛ともいうべき貴家の公子等は皆よい方々であり、竜門にもあたいする黄門において新に自分のようなものまで賓客としていただいている。
○鳳穴 鳳穴とは鳳凰の住居をいい、ここは鮮于氏の家門をさす。○鄒 ひな。鳳凰の児をいい、仲通の子供をさす。○竜門 黄河にある懸瀑の名、陝西省同州府韓城県にある。鯉魚がこの滝をのぼるり竜となるということから竜門という。ここでは鮮于氏に竜門をあてていう。○客 賓客、杜甫自ずからをいう。

義聲紛感激,敗績自逡巡。』
諸公子の義侠の精神の評判には自分は心もから感激しているが、受験において落第し続けており、あつかましくも進みでて身辺の事についてお願いしづらくて逡巡しております。』
○義声 義侠なりとの評判、これは鮮于氏の諸子についていう、この句によれば作者は蓋し諸公子と交際があったものと思われる。○感激 作者がはげしく感動する。○敗績 「左伝」に大いに崩れることを敗績というとみえる、戦に大負けすること。ここ者が試験に失敗したことに用いる。○逡巡 ためらって前へ進みでぬこと。
 


■ここからは開元中の落第について。
途遠欲何向,天高難重陳。
めざす前途がなかなか遠く違うようでありどちらに向かうべきかご指導願いたい。天は高くして叫ぶ声もとどき重ねて陳述したのだがそれが届かぬようなのです。
○途遠 目的とする処まで距離が遠い。○天高 天は有形の天をいうが裏面には天子の居をさす。○重陳 かさねて陳述する、言いのべる。


學詩猶孺子,鄉賦忝嘉賓。
こどものときから家庭で詩を学んで、やっと地方試験に及第して喜ばしいことにも賓客のとりあっかいをうけてかたじけなくおもっております。
○学詩 家庭にて詩をまなぶことをいう。○孺子 童子。○郷賦 地方にて詩賦の試験をうけることをいう。〇番嘉賓 黍は辱くする、謙遜の辞。嘉賓とはよき賓客。唐の制度では地方の試験に及第すると、地方官がこ賓客として招き要し、「詩経」小雅の「鹿鳴」の詩をうたって京師へ送った。


不得同晁錯,籲嗟後郤詵。
不幸にして晃錯と同じように及第することもできず、またなげかわしく思うことは郤詵よりもおくれてしまった。
○晁錯 ちょうそ 漢の文帝の時、高等で及第し中大夫に選ばれた。文帝の治世にその命により、秦の時代の焚書坑儒により廃れてしまった尚書(書経)を、当時90余歳の伏生のもとに派遣されて学んだ。そこから文帝より信任を得て政治に参加し始め、匈奴対策などを立案していた。また同じく太子の劉啓(のちの景帝の教育係にもなった。○呼嗟 ああ、の辞。○郤詵 げきしん 郤詵(生没年不詳)は字を広基といい、済陰郡単父県の人である。尚書左丞の郤晞の子。博学多才で、並はずれて優れていて、細かいことにはとらわれない性格であった。晋の郤詵(げきしん)が進士に合格したとき、「桂林の一枝を得たにすぎない」と帝に言ったという「晋書」郤詵伝の故事
 
計疏疑翰墨,時過憶松筠。』
自分の計画に手抜かりがあるために自分の文辞にさえ疑いはじめたのです、落第つづきで時機を逸したのかもしれないので仕進をやめて、ただ松竹の如く晩節を保とうかと思っている。』
○計疎分の計りごとに手ぬかりのあること。○疑翰墨 翰墨は筆墨、文辞のことをさす。疑とはその価値についぅこと。文辞のすぐれている者は及第すべきはずであるのに及第を得なかったので疑いが生じたのである。時機を逸したこと。○松筠 筠は竹色をいうことばであるが竹を意味する。松竹とはその歳晩になっも変易しない青線の色についていう、不変の色はこれを人の節操をあらわす。


ここからは、賦を献じたため玄宗より召し試みられたことをのべる。
獻納紆皇眷,中間謁紫宸。
そのうちに、三大礼において賦を献上したために天子からお目をかけられて紫宸殿で謁見を仰せつけられた。
○献納 三大礼の賦を献じたをいう。○紆 紆回の紆、わざわざこちらへむけてくださる、敬語となる。○皇眷皇は天子(玄宗)をさす。眷はめをかけてくださること、ふりむきもしないというのは愛する念のないことであり、ふりむ寵愛の念のあることである。○中間 そのうちに。○紫宸 正殿の名。

且隨諸彥集,方覬薄才伸。
しばらく他の英才の人々の集りに随伴したのです、やっとこれでいささかの才能をのばすことができるかとこいねがっております。
○諸彥 もろもろのひいでた人々。その時作者と同じく召しだされたものをさす。○覬 冀(こいねがう)と同じ。○薄才伸 薄我が才能、謙透していう。

破膽遭前政,陰謀獨秉鈞。
ところが驚いたことには前宰相(李林甫)というものに遭遇したのです。陰謀をし、ただひとり国権を握っていたのです。
○破膽 驚くこと。○前政 前の政権をとった人、即ち前宰相李林甫をいう、作は前の京師の試験にも、この天子の召試にもみな李林甫の妨害によって及第することを得なかった。○かげのたくらみ。○秉鈞 宰相たる者は一国の公平を手にするものであるということを独りで独占する。


微生霑忌刻,萬事益酸辛。』
自分の徴少な生活もこの人の猜忌で残忍なやりかたで水をかけられたのです。一事が万事ますますつらいことになってきたところです。』
○徴生 あるかなきかの生活、自己の徴少な生活をいう。○霑 希望に対して水をかけ、その余波をうけたことをいう。○忌刻 猜忌で残忍なこと。○万事 一事が万事。○酸辛 つらいこと。


■以下は鮮于に援助のお願い
交合丹青地,恩傾雨露辰。
あなたは袞竜衣を身につける地位の人と交際親密であられ、人に対しては時に従い雨露のように恩恵を注ぎかけられるお方である。
○交合 合とは一致すること、交際がくいちがいにならずぴったりあうこと。○丹青地 公卿の地位をいう。.赤地の服の両袖に青の竜の刺繍をつけた袞竜衣を身につける地位の人。○恩 鮮于から作者に対する恩恵。○傾雨露 雨露は恩恵をたとえていう、傾くとは我が方へぶちまけること。○辰 時と同じ。

有儒愁餓死,早晚報平津。』
今ここに自分の様な儒者がおり、餓えて死にはしないかと心配しています。はやければありがたいのですが、この有様を平津侯である宰相におしらせしてくださいますか。
○有儒 儒とは時に染まらず節操を曲げない自分を指す。○早晩 はやければありがたい。○報 我が境遇についてつげしらせる。○平津 漢の公孫弘をいう。弘は丞相となり、平津侯に封ぜられ、東閣を開いて賢士を招いた。ここは時の宰相楊国忠をさす。



奉贈鮮於京兆二十韻 杜甫

王國稱多士,賢良複幾人?
異才應間出,爽氣必殊倫。
始見張京兆,宜居漢近臣。
驊騮開道路,雕鶚離風塵。』

王国士多しと称せらる 賢艮復た幾人ぞ
異才応に間出すぺし 爽気必ず殊倫なり
始めて見る張京兆 宜しく漢の近臣に居るべし
驊騮道路開く 雕鶚風塵を離る』


侯伯知何算,文章實致身。
奮飛超等級,容易失沈淪。
脫略磻溪釣,操持郢匠斤。
雲霄今巳逼,台袞更誰親?』

侯伯知る何算 文章実に身を致せり
奮飛等級を超え 容易沈淪を失す
磻渓の釣を脱略して 郢匠の斤を操持す
雲霄今巳に逼る 台袞 更に誰か親しまん』


鳳穴鄒皆好,龍門客又新。
義聲紛感激,敗績自逡巡。』

鳳穴 鄒 皆好し 竜門 客 又 新なり
義声 紛として感激す 敗績 自ら逡巡たり』


途遠欲何向,天高難重陳。
學詩猶孺子,鄉賦忝嘉賓。
不得同晁錯,籲嗟後郤詵。
計疏疑翰墨,時過憶松筠。』

途遠くして何くに向わんと欲する 天高くして重ねて陳べ難し
詩を学ぶは猶お孺子なりき 郷賦嘉賓を黍くす
晁錯に同じきを得ず 呼嗟郤詵に後れたり
計疎にして翰墨を疑い 時過ぎて松筠を憶う』


獻納紆皇眷,中間謁紫宸。
且隨諸彥集,方覬薄才伸。
破膽遭前政,陰謀獨秉鈞。
微生霑忌刻,萬事益酸辛。』

献納皇眷を紆らす 中間紫宸に謁す
且く随う諸彦の集るに 万に覬う薄才の伸びんことを
破胆前政の 陰謀独り鈞を秉るに遭う
徴生忌刻に霑う 万事益々酸辛なり』


交合丹青地,恩傾雨露辰。
有儒愁餓死,早晚報平津。』

交りは合す丹青の地 恩は雨露を傾くる辰
儒有り餓死せんことを愁う 早晩平津に報ぜん』