重過何氏五首 其二 杜甫 :kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 69
(就職活動中 長安郊外 杜曲の家)


重過何氏五首 其二
山雨樽仍在、沙沈榻未移。
山の雨が降っている前日の酒樽がなおそのままに放置されている、砂の窪みには腰掛けがそのまま移されずにある。
犬迎曾宿客、鴉護落巣児。
犬はかつての泊り客であったわたしを出迎えてくれるし、からすは巣に生み落としたばかりの雛たちをまもり、歓迎してくれる。
雲薄翠徴寺、天清黄子陂。
薄くかかった雲が翠徴寺のあたりにあるが、黄子陂のあたりはあお空がいっぱいに広がっている。

向來幽興極、歩履過東籬。

これまでの静寂な自然に対する興趣がここで極点に達し、草履をつっかけて東の垣根の外に出てしまった。


山の雨が降っている前日の酒樽がなおそのままに放置されている、砂の窪みには腰掛けがそのまま移されずにある。
犬はかつての泊り客であったわたしを出迎えてくれるし、からすは巣に生み落としたばかりの雛たちをまもり、歓迎してくれる。
薄くかかった雲が翠徴寺のあたりにあるが、黄子陂のあたりはあお空がいっぱいに広がっている。

これまでの静寂な自然に対する興趣がここで極点に達し、草履をつっかけて東の垣根の外に出てしまった。


山雨 樽は仍(な)お在り、沙沈んで榻は末だ移されず。
犬は迎う 曾宿の客、鴉は護る 落巣の児。
雲は薄し 翠徴寺、天は清し 黄子陂。
向来 幽興極まり、歩屣 東籬を過ぐ




山雨樽仍在、沙沈榻未移。
山の雨が降っている前日の酒樽がなおそのままに放置されている、砂の窪みには腰掛けがそのまま移されずにある。
樽仍在 酒を飲みに来訪している杜甫に酒樽や腰掛をそのままにさせていて、自由に飲んでくれということだろう。この将軍は、半官半隠のイメージをもってここに棲んでいると思われる。 



犬迎曾宿客、鴉護落巣児。
犬はかつての泊り客であったわたしを出迎えてくれるし、からすは巣に生み落としたばかりの雛たちをまもり、かんげいしてくれる。
落巣児 落巣は絡巣に同じく、巣の周辺をめぐっていならぶ雛をいう。巣に生み落としたばかりの雛、巣の外に落っこちそうな雛もいる、歓迎しているさまをいう。
 

雲薄翠徴寺、天清黄子陂。
薄くかかった雲が翠徴寺のあたりにあるが、黄子陂のあたりはあお空がいっぱいに広がっている。
翠徴寺 終南山の上にある寺。○黄子陂 池の名。




向來幽興極、歩履過東離。
これまでの静寂な自然に対する興趣がここで極点に達し、草履をつっかけて東の垣根の外に出てしまった。
向來 従来。これまで。さい前から。 ○幽興 静寂な自然に対する興趣。この詩は時間経過が隠遁者の感覚であり、半日くらいの変化を詠っている。そのくらい個々の自然に溶け込み、けだるさを喜んで詠っている。○東籬 籬は柴や竹で編んで作った垣根。
陶淵明「飲酒其五」
結廬在人境,而無車馬喧。
問君何能爾,心遠地自偏。
采菊東籬下,悠然見南山。
山氣日夕佳,飛鳥相與還。
此中有眞意,欲辨已忘言。
廬を結ぶに 人境に在り,而して車馬の喧(かまびす)しき無し。
君に問ふ 何ぞ能く爾ると,心 遠ければ 地 自ら偏(かたよ)る。
菊を采(と)る 東籬の下(もと),悠然として 南山を見る。
山氣 日夕に佳(よ)く,飛鳥 相ひ與(とも)に還(かへ)る。
此の中に 眞意有り,辨んと欲して 已(すで)に言を忘る。

客至   杜甫
舍南舍北皆春水、但見群鷗日日來。
花徑不曾緣客掃、篷門今始為君開。
盤飧市遠無兼味、樽酒家貧只舊醅。
肯與鄰翁相對飲、隔籬呼取盡餘杯。
舎南(しゃなん)舎北(しゃほく)皆 春水(しゅんすい)、但見る群鷗の日日に來るを
花径 曾(かつ)て客に縁って掃(はら)わず、篷門(ほうもん)今始めて君が為に開く
盤飧(ばんそん)市 遠くして兼味(けんみ)無く、樽酒(そんしゅ) 家貧にして只だ旧醅(きゅうばい)あるのみ
肯(あえ)て隣翁と相(あい)対して飲まんや、籬(まがき)を隔てて呼び取りて余杯(よはい)を尽さしめん


隠者と籬と酒、静寂な自然に対する興趣、山に向かって座る。杜甫のイメージは陶淵明の「飲酒其五」を意識して詠っている。


○韻  移、児、陂、籬。