後出塞五首 其一 杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集 95

後出塞五首の背景 概要
755年天宝十四年、杜甫は前年、山東から国子監司業(国立大学教授)として長安に帰ってきた蘇源明や、広文館博士の鄭度と、酒を都合しては文学論をたたかわせている。
安禄山は北方にあって着々と反乱の準備をととのえており、二月には、配下にいる漢人の将軍三十二名をすべて蕃将に代えたいと請い、朝廷の許可を得ている。また七月には、蕃将二十二人に兵六千人を率いさせ、馬三千頭を献上したいと玄宗に願い出た。北方で兵を挙げたときに都で内応させようという計画であったものだが、安禄山を信用しきっていた玄宗も、これだけは許可せずに冬まで延期させた。

杜甫は、このような事態を背景にして、「後出塞」五首を作っている。それは、この年の三月、村人に見送られて薊門(幽州の花陽)に出征した一兵士が、将軍(安禄山)の軍に従って奚・契丹の軍と戦うが、戦いに勝った将軍の位はますます高くなってくこと、その驕りは天子を軽んじることが目立ち始め、ついにこの兵士は脱走して故郷に帰ってくるが、わが里は荒れ果てて人一人いない空村になっていた、という筋である。その中で作者杜甫は、「後出塞」五首其四で
主將位益崇、気騎凌上都。
邊人不敢議、議者死路衢。
主将 位は益ます崇く、気は驕りて上都を凌ぐ。
辺人 敢えて議せず、議する者は路衢に死なん

にあるように、安禄山の目に余る行為は、誰もが知るところであった。しかし、玄宗は安禄山にかぎらず、誰れであってもその権威で、圧倒することはできない位弱体化し、頽廃していたのである。したがって、だれが反乱を企ててもおかしくない状況になっていたのである。朝廷内は楊貴妃一族と高力士を筆頭に宦官が大きな力を持ってきており、皇帝自身は楊貴妃に骨抜きにされていたので、正論が通る時代では全くなくなっていたのである。




後出塞五首 其一
男兒生世間。及壯當封侯。
男児はこの世に生れた以上は、壮年になるころには侯の位に命じられるべきである。
戰伐有功業。焉能守舊丘?
戦で相手を征伐をすれば勲功となる。勲功は侯に封ぜられるのだからどうして故郷の丘を守ってじっとしていいものか。
召募赴薊門,軍動不可留。』
募集に応じて将兵され薊門の方へと赴いた、しかし、軍が動くものであり、一つ所に留まっているわけにはゆかないのだ。』

千金買馬鞍,百金裝刀頭。
思い起こせば、自分も千金を費して馬の鞍など馬具を装備し、百金をだして刀具の装備をしてこれから出掛けたのだ。
閭裡送我行,親戚擁道周。
このとき集村や邑人たちは自分の出征するのを見送ってくれ、親戚の者どもは道の曲ったあたりまで自分を取り囲んでくれた。
斑白居上列,酒酣進庶羞。
その中で斑白の老人が上席にいた、その人から酒宴たけなわになるころ、自分にさまざまのご馳走を進めてくれたのだ。
少年別有贈,含笑看吳鉤。』

青年のわかき人はこの出征に対し贈り物をしてくれた。にっこりとして貰った吳鉤の剣の贈りものをまことに嬉しく思い、見つめるのであった。

 

男児世間に生る 壮なるに及びては当に侯に封ぜらるべし

戦伐すれば功業有り 焉ぞ能く旧丘を守らん

召募せられて前門に赴く 軍動いて留まる可らず』


千金馬鞭(鞍)を装い 百金刀頭を装う

閭裡我が行を送り 親戚道周を擁す

斑白なるは上列に居る 酒酣にして庶羞を進む

少年は別に贈有り 笑を含みて呉を看る』





後出塞五首  訳註と解説


(本文)
男兒生世間。及壯當封侯。
戰伐有功業。焉能守舊丘?
召募赴薊門,軍動不可留。』

千金買馬鞍,百金裝刀頭。
閭裡送我行,親戚擁道周。
斑白居上列,酒酣進庶羞。
少年別有贈,含笑看吳鉤。』

(下し文)
男児世間に生る 壮なるに及びては当に侯に封ぜらるべし。
戦伐すれば功業有り 焉ぞ能く旧丘を守らん。
召募せられて前門に赴く 軍動いて留まる可らず。』

千金馬鞍(鞭)を装い 百金刀頭を装う。
閭裡我が行を送り 親戚道周を擁す。
斑白なるは上列に居る 酒酣にして庶羞を進む。
少年は別に贈有り 笑を含みて呉鉤を看る。』

(現代語訳)
男児はこの世に生れた以上は、壮年になるころには侯の位に命じられるべきである。
戦で相手を征伐をすれば勲功となる。勲功は侯に封ぜられるのだからどうして故郷の丘を守ってじっとしていいものか。
募集に応じて将兵され薊門の方へと赴いた、しかし、軍が動くものであり、一つ所に留まっているわけにはゆかないのだ。

思い起こせば、自分も千金を費して馬の鞍など馬具を装備し、百金をだして刀具の装備をしてこれから出掛けたのだ。
このとき集村や邑人たちは自分の出征するのを見送ってくれ、親戚の者どもは道の曲ったあたりまで自分を取り囲んでくれた。
その中で斑白の老人が上席にいた、その人から酒宴たけなわになるころ、自分にさまざまのご馳走を進めてくれたのだ。
青年のわかき人はこの出征に対し贈り物をしてくれた。にっこりとして貰った吳鉤の剣の贈りものをまことに嬉しく思い、見つめるのであった。


(訳註)
男兒生世間。及壯當封侯。
男児はこの世に生れた以上は、壮年になるころには侯の位に命じられるべきである。
及壮封侯 後漢の班超・梁辣、などが述べている。

戰伐有功業。焉能守舊丘?
戦で相手を征伐をすれば勲功となる。勲功は侯に封ぜられるのだからどうして故郷の丘を守ってじっとしていいものか。
旧丘 故郷のおかをいう。○召募 上から召されつのられる。



召募赴薊門,軍動不可留。』
募集に応じて将兵され薊門の方へと赴いた、しかし、軍が動くものであり、一つ所に留まっているわけにはゆかないのだ。』
薊門 関の名、今河北省順天府薊州にある。安禄山の根拠地の方面である。



千金買馬鞍,百金裝刀頭。
自分も千金を費して馬の鞍など馬具を装備し、百金をだして刀具の装備をしてこれから出掛けるのだ。
 装飾する。○馬鞭 鞭を鞍に作る本があるが、鞍の方がよろしいであろう。○刀頭 刀具、馬の環。



閭裡送我行,親戚擁道周。
このとき集村や邑人たちは自分の出征するのを見送ってくれ、親戚の者どもは道の曲ったあたりまで自分を取り囲んでくれた。
閭裡 閭も裡も二十五家をさす。ここは自分の村をいう。○ だきかかえる、包囲状をなすこと。○道周 周とは道の曲りめをいう。

 
斑白居上列,酒酣進庶羞。
その中で斑白の老人が上席にいた、その人から酒宴たけなわになるころ、自分にさまざまのご馳走を進めてくれたのだ。
斑白 ごましおあたまの老人。○上列 上席。○進庶羞 進とは行者の前へもちだすこと、庶羞はもろもろのすすめもの、御馳走の品々。

少年別有贈,含笑看吳鉤。』
青年のわかき人はこの出征に対し贈り物をしてくれた。にっこりとして貰った吳鉤の剣の贈りものをまことに嬉しく思い、見つめるのであった。』
少年 青年のわかき人。○ 行者に対する贈りもの、即ち次句の吳鉤。○含笑 行者がにっこりする、吳鉤を贈られたのがうれしいのである。○吳鉤 呉の地方でできる攣曲したつるぎ。



韻  侯/丘、留、/頭、周、羞、鉤。



後出塞五首其一
男兒生世間,及壯當封侯。戰伐有功業,焉能守舊丘?
召募赴薊門,軍動不可留。千金買馬鞍,百金裝刀頭。
閭裡送我行,親戚擁道周。斑白居上列,酒酣進庶羞。
少年別有贈,含笑看吳鉤。

男児世間に生る 壮なるに及びては当に侯に封ぜらるべし。
戦伐すれば功業有り 焉ぞ能く旧丘を守らん。
召募せられて前門に赴く 軍動いて留まる可らず。
千金馬鞍(鞭)を装い 百金刀頭を装う。
閭裡我が行を送り 親戚道周を擁す。
斑白なるは上列に居る 酒酣にして庶羞を進む。
少年は別に贈有り 笑を含みて呉鉤を看る。



其二
朝進東門營,暮上河陽橋。落日照大旗,馬鳴風蕭蕭。
平沙列萬幕,部伍各見招。中天懸明月,令嚴夜寂寥。
悲笳數聲動,壯士慘不驕。借問大將誰,恐是霍嫖姚。

其三
古人重守邊,今人重高勛。豈知英雄主,出師亙長雲。
六合已一家,四夷且孤軍。遂使貔虎士,奮身勇所聞。
拔劍擊大荒,日收胡馬群。誓開玄冥北,持以奉吾君。

其四
獻凱日繼踵,兩蕃靜無虞。漁陽豪俠地,擊鼓吹笙竽。
雲帆轉遼海,粳稻來東吳。越羅與楚練,照耀輿台軀。
主將位益崇,氣驕淩上都。邊人不敢議,議者死路衢。

其五
我本良家子,出師亦多門。將驕益愁思,身貴不足論。
躍馬二十年,恐孤明主恩。坐見幽州騎,長驅河洛昏。
中夜問道歸,故裡但空村。惡名幸脫兔,窮老無兒孫。