魏將軍歌  杜甫 : kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 誠実な詩人杜甫特集700- 104
杜甫の詩 700首 一日1首
将軍魂某のことについてよんだ。其の名は未詳。製作時は天宝末年、安禄山の叛乱直前の作。杜甫44歳


魏將軍歌
將軍昔著從事衫,鐵馬馳突重兩銜。
将軍は昔、幕府の下官としての衫を著て防御装着した馬に乗って、馬の口には二重の口ばみをかませ敵陣へ馳突した。
披堅執銳略西極,昆侖月窟東嶄岩。』
そうして堅い甲宵を被り、鋭い剣戟を執って西極の地方を略取したのだ、崑崙、月窟のはるか西までいったから長嶺や月窟が東に高く聾えてみえるというほどの処まですすんだのだ。』
君門羽林萬猛士,惡若哮虎子所監。
天子の御門のなかの羽林軍には万人もの猛士がいて、その猛悪さは怒りほえる虎のようであるが、それ等のものどもは君の監督の下にあるのである。
五年起家列霜戟,一日過海收風帆。』
君は一朝にして青海地方を過ぎて其の威力を以て騒乱を鎮めて兵船の帆を巻いてしまい、わずか五年の年月のうちに身分の低い家の出身が門に戦士をたてならべるほどの身分になられたのである。』

平生流輩徒蠢蠢,長安少年氣欲盡。
平生の同輩の者たちは徒らに虫のようにうごめいている。長安の勢いのいい青年たちも君に対しては意気消滅せんばかりである。
魏侯骨聳精爽緊,華嶽峰尖見秋隼。』
君はまことに骨格はそびえて、精神は緊粛である、たとえば華山の峰の尖ったところへ秋の隼が飛んでいる様のここちがするのである。』

星躔寶校金盤陀,夜騎天駟超天河。
君は雑金でつくった馬具の装飾の星の動きのようにめぐっている馬にのって天上の河を超えられる。
攙槍熒惑不敢動,翠蕤雲旓相蕩摩。』
すると攙槍、熒惑の如き妖悪の星も静かにして動くことなく、君の儀伎たる翠蕤、雲旓等の旗が互にうごいてすれあうようだ、君の威力はすばらしいものだ。』
吾為子起歌都護;酒闌插劍肝膽露,
自分は君のために起ちあがって「丁都護」の歌をうたう。そうして酒興もすがれになりかくるころ舞いの剣をさやにおさめて胸の奥そこまでをさらけだす。
鉤陳蒼蒼玄武暮。
その時は鈎陳・玄武の星座いずれも蒼々たる色をして日はまったく暮れている。
萬歲千秋奉聖明,臨江節士安足數!』

君は千年も万年も聖明の天子を奉戴して忠勤をするであろう。かの臨江の節士などは君にくらべるとかぞえたてるだけの値打ちもない。




魏将軍歌
将軍昔著く従事の診、鉄馬馳突して両街を重ぬ
塾を被り鏡を執りて西極を略す、良禽月窟東に斬巌たり』
君門羽林の万の猛士、悪嘩虎の若くなるは子が監する所
五年家より起って霜戟を列し、一日海を過ぎて風帆収まる』
平生の流輩徒に蕎蕎たり、長安の少年気尽きんと欲す
魂侯骨奪えて精爽緊なり、華岳峯尖りて秋草を見る』
星のごとくに纏れる宝校(餃)金の盤陀、夜天銅に騎って天河を超ゆ
橡槍l焚惑敢て動かず、率直雲衛相蕩摩す』
吾子が為めに起って都護を歌う、酒関に剣を捕みて肝胆露わる、釣陳は蒼蒼として玄武は暮る
万歳千秋明主を奉ぜん、臨江の節士安んぞ数うるに足らん』

将軍は昔、幕府の下官としての衫を著て防御装着した馬に乗って、馬の口には二重の口ばみをかませ敵陣へ馳突した。
そうして堅い甲宵を被り、鋭い剣戟を執って西極の地方を略取したのだ、崑崙、月窟のはるか西までいったから長嶺や月窟が東に高く聾えてみえるというほどの処まですすんだのだ。』
天子の御門のなかの羽林軍には万人もの猛士がいて、その猛悪さは怒りほえる虎のようであるが、それ等のものどもは君の監督の下にあるのである。
君は一朝にして青海地方を過ぎて其の威力を以て騒乱を鎮めて兵船の帆を巻いてしまい、わずか五年の年月のうちに身分の低い家の出身が門に戦士をたてならべるほどの身分になられたのである。』
平生の同輩の者たちは徒らに虫のようにうごめいている。長安の勢いのいい青年たちも君に対しては意気消滅せんばかりである。
君はまことに骨格はそびえて、精神は緊粛である、たとえば華山の峰の尖ったところへ秋の隼が飛んでいる様のここちがするのである。』
君は雑金でつくった馬具の装飾の星の動きのようにめぐっている馬にのって天上の河を超えられる。
すると攙槍、熒惑の如き妖悪の星も静かにして動くことなく、君の儀伎たる翠蕤、雲旓等の旗が互にうごいてすれあうようだ、君の威力はすぼらしいものだ。』
自分は君のために起ちあがって「丁都護」の歌をうたう。そうして酒興もすがれになりかくるころ舞いの剣をさやにおさめて胸の奥そこまでをさらけだす。
その時は鈎陳・玄武の星座いずれも蒼々たる色をして日はまったく暮れている。
君は千年も万年も聖明の天子を奉戴して忠勤をするであろう。かの臨江の節士などは君にくらべるとかぞえたてるだけの値打ちもない。


(魂魏将軍の歌)
將軍昔著從事衫,鐵馬馳突重兩銜。
将軍は昔、幕府の下官としての衫を著て防御装着した馬に乗って、馬の口には二重の口ばみをかませ敵陣へ馳突した
従事衫 妻窟英は務衫(しごと服)と解き、浦起竜は戎衣(いくさごろも)と解いている。しかし幕府の従事(下僚)であったことをいうのであろう。衫はうすいうわざ。○鉄馬 介馬(馬用鎧を装着した馬)をいう。○重両銜 銜は馬の口勘(くちばみのかね)、重ぬとは二箇をかませること。戦うとき故、馬にも厳重にしたくさせる。
 

披堅執銳略西極,昆侖月窟東嶄岩。』
そうして堅い甲宵を被り、鋭い剣戟を執って西極の地方を略取したのだ、崑崙、月窟のはるか西までいったから長嶺や月窟が東に高く聾えてみえるというほどの処まですすんだのだ。』
被堅 甲冑をきる。○執鋭 するどい剣戟を手にとる。○ 土地を取ること。○西極 西のはての国。○崑崙、月窟 出に西方にある山と地。○東嶄巌 嶄巌は山石の高くけわしいさま。東にとは昆侖、月窟は西地にあるが、将軍はそれよりも西のはてへ進んだため昆侖、月窟が東方に聳えるように見えるようになる。

君門羽林萬猛士,惡若哮虎子所監。
天子の御門のなかの羽林軍には万人もの猛士がいて、その猛悪さは怒りほえる虎のようであるが、それ等のものどもは君の監督の下にあるのである。
君門 天子の門。○羽林 天子直轄の軍の名、近衛兵のことで、ほかに龍武軍、神策軍で参軍。〇 多いことをいう。○惡若哮虎 悪は猛悪なこと、虎の怒りほえることをいう。○ 魏将軍をさす。○ 監督する。○起家 卑しい家の地位より起こることをいう。
 

五年起家列霜戟,一日過海收風帆。』
君は一朝にして青海地方を過ぎて其の威力を以て騒乱を鎮めて兵船の帆を巻いてしまい、わずか五年の年月のうちに身分の低い家の出身が門に戦士をたてならべるほどの身分になられたのである。』
列霜戟 霜はよくみがいて白くひかる刃の色をいう、戟ははこ、三晶(三位)ほどの官になれば門に乗戟(柄を彩色の漆池でぬる)をならべる。○一日 一朝、一日。○過海 吐蕃の青海地方を過ぎることをいう。○収風帆 青海方面の乱がしずまったので風にはらませた兵船の帆を収め巻いて都へかえる。五年一日の二句は置きかえでみる。



平生流輩徒蠢蠢,長安少年氣欲盡。
平生の同輩の者たちは徒らに虫のようにうごめいている。長安の勢いのいい青年たちも君に対しては意気消滅せんばかりである。
流輩 同輩。○蠢蠢 虫のようにうごき、動かされる。○気欲尽 意気を出し尽くす。

魏侯骨聳精爽緊,華嶽峰尖見秋隼。』
君はまことに骨格はそびえて、精神は緊粛である、たとえば華山の峰の尖ったところへ秋の隼が飛んでいる様のここちがするのである。』
醜侯 侯は敬称、君の琴○精爽 精神。○ ひきしまる。○華岳(一句)たとえである。華岳は華山、五岳の一つ、華州にある。○秋隼 隼ははやぶさ、鷹の類。

星躔寶校金盤陀,夜騎天駟超天河。
君は雑金でつくった馬具の装飾の星の動きのようにめぐっている馬にのって天上の河を超えられる。
星纏宝校 校の字は軟に作るべきである。顔延年の「滞日馬賊」に「宝餃星纏」とあるのに本づく。銃は鞍勘などの馬具の装飾であるという。星纏とは星の動きのようにめぐることで、星をちりばめたようであることをいう。○金盤陀 盤陀は破撃仏像などを鉾かして鋳た金属、銅と金との雜りがね。金盤陀は装飾の実質をいう。○天駟 房星のこと、ここは天厩の馬を言のであろう。○天河 天の河、宮苑の水をたとえていう。



攙槍熒惑不敢動,翠蕤雲旓相蕩摩。』
すると攙槍、熒惑の如き妖悪の星も静かにして動くことなく、君の儀伎たる翠蕤、雲旓等の旗が互にうごいてすれあうようだ、君の威力はすぼらしいものだ。』
攙槍 妖星。○攙槍 火星、上の星は兵乱の象。○不敢動動きださぬ、というのは兵乱の起こらぬことをいう。○翠蕤 雲旓 翠蕤とは素翠の羽のふさふさと垂れていることをいい、旗のこと。雲頂とは雲のようなはたをいう。旗は儀任に用いる。○蕩摩 うごきすれあう。「星纏」以下の四句は宿衛の軍容をいい、将軍の威が禍乱をしずめるのに足ることをいう。



吾為子起歌都護;酒闌插劍肝膽露。
自分は君のために起ちあがって「丁都護」の歌をうたう。そうして酒興もすがれになりかくるころ舞いの剣をさやにおさめて胸の奥そこまでをさらけだす。
歌都護 劉宋の時、武帝の「丁都護歌」に「督護北二征キ去ル、前鋒平カナラサル無シ、朱門ニハ高蓋ヲ垂ラシ、永世二功名ヲ揚グ」とある。また宋の高祖の時、高祖の娘が徐達之という者に嫁したが、達之は魯軌という者に警れた。高祖は因って督護丁旿に命じて達之の屍を収めてかりうめさせた。達之の妻が丁旿を呼んで葬りの事を問うたところが、毎に間うに「丁都護」と呼んだ、その声はいと哀れであった。後人は因って歌とした。作者は何人の作をうたったか不明であるが武帝の歌の類をうたったのであろう。○酒闌 闌はさかりすぎ。○插劍 このとき剣舞を為し舞をやめて剣をさやにはさんだのである。○肝胆 露心中をさらけ出す。



鉤陳蒼蒼玄武暮。
その時は鈎陳・玄武の星座いずれも蒼々たる色をして日はまったく暮れている。
鉤陳 玄武鉤陳は星宿の名、天の紫宮の中に六星があり、これにかたどって天子の殿前にも鉤陳の位置がある。玄武も星の名、「漢書」天文志に「北宮ニハ玄武虚危アリ、其ノ南二衆星アリ、羽林天軍トイウ」とみえる。玄武星が碁に見えるのは秋節であるという。此の句は星宿をかりて宿衛のことをいい兼ねて時候をあらわす。又此の句は単句(一句だけで独立する句)である。○蒼蒼、暮此の二語は蓋し鈎陳235と玄武とに共用の語であり、どちら碁々としてくれることをいう。



萬歲千秋奉聖明,臨江節士安足數!』
君は千年も万年も聖明の天子を奉戴して忠勤をするであろう。かの臨江の節士などは君にくらべるとかぞえたてるだけの値打ちもない。
臨江節士漢の景帝は太子を廃して臨江王となしたが、王は後に自殺した。時の人は彼を悲しんで歌を作った。「漢書」芸文志に「臨江王及ビ愁思ノ節士ノ歌詩四第」とみえる。節士が臨江の人であるか香かは不明であるが、節士は臨江王のことを思った忠実の人とみえる。○安足数かぞえるねうちがない、将軍の忠実心は節士以上である。