晦日尋崔戢李封 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 118
正月のみそかに崔戢、及び李封をたずねた詩。製作時は天宝十五載正月である。


晦日尋崔戢李封#1
朝光入甕牖,屍寢驚敞裘。
貧乏家屋の丸い土窓に朝の日光がさしこんできた、死んだようにうつ伏せてねていたわたしは目をさましてやぶれた着物を着ているのに驚いた。
起行視天宇,春氣漸和柔。
それから起きだして歩き始め空をよく眺めてみたのだ、もう春の気配がふわりとやわらかに感じられてくるようだ。
興來不暇懶,今晨梳我頭。
かく風流な趣向の気持ちがうごいてくるとぶしょうをやっている暇はない、きょうの朝は、いつもとちがって自分の頭髪をくしできれいにとかすのである。(友を訪問する用意をする)。
出門無所待,徒步覺自由。』
この家の門から出かけるに他人に借りてまで持っていくものは何もない、自分の足で歩くのは自由でぐあいがいいとおもう。』
杖藜複恣意,免值公與侯。
あかぎの杖をつきつつゆくのもきままでいい。公だの侯だのという官僚連中にあう世話がないというものだ。
晚定崔李交,會心真罕儔。
わたしは崔、李の二君とは最近知り合ったが、こんなに自分の心にぴったりあうことは真のことで類い稀なことである。
每過得酒傾,二宅可淹留。
この二人を訪問するたびに酒を傾けることを得ている、この二人の家ならばながく逗留とするこができるのである。
喜結仁裡歡,況因令節求。』

二君のような「仁者の居る里」でたがいによろこびかわすことのできるのはとてもうれしいことなのだ、ましてきょうの訪問は正月の晦日という祝日にあたって訪ねられたのということがまことにうれしいのである。』




(晦日 尋崔戢李封を尋ぬ)#1
朝光嚢隙に入る 戸寝微衷に驚く
起行して天字を視る 春気漸く和柔なり
興来って媚なるに暇あらず 今最我が頭を杭る
門を出づるに待つ所無し 徒歩自由なるを覚ゆ』
杖葬復た意を窓にす 公と侯とに値うことを免る
晩に定む崖李の交り 会心兵に博学なり
過ぐる毎に酒を得て傾く 二宅掩留す可し
仁里の懐を結ぶことを喜ぶ 況や令節に因て求むるをや』



晦日尋崔戢李封#1 現代語訳と訳註 
(本文)

朝光入甕牖,屍寢驚敞裘。起行視天宇,春氣漸和柔。
興來不暇懶,今晨梳我頭。出門無所待,徒步覺自由。』
杖藜複恣意,免值公與侯。晚定崔李交,會心真罕儔。
每過得酒傾,二宅可淹留。喜結仁裡歡,況因令節求。』

(下し文)
朝光嚢隙に入る 戸寝微衷に驚く。
起行して天字を視る 春気漸く和柔なり。
興来って媚なるに暇あらず 今最我が頭を杭る。
門を出づるに待つ所無し 徒歩自由なるを覚ゆ。』
杖葬復た意を窓にす 公と侯とに値うことを免る。
晩に定む崖李の交り 会心兵に博学なり。
過ぐる毎に酒を得て傾く 二宅掩留す可し。
仁里の懐を結ぶことを喜ぶ 況や令節に因て求むるをや。』


(現代語訳)
貧乏家屋の丸い土窓に朝の日光がさしこんできた、死んだようにうつ伏せてねていたわたしは目をさましてやぶれた着物を着ているのに驚いた。
それから起きだして歩き始め空をよく眺めてみたのだ、もう春の気配がふわりとやわらかに感じられてくるようだ。
かく風流な趣向の気持ちがうごいてくるとぶしょうをやっている暇はない、きょうの朝は、いつもとちがって自分の頭髪をくしできれいにとかすのである。(友を訪問する用意をする)。
この家の門から出かけるに他人に借りてまで持っていくものは何もない、自分の足で歩くのは自由でぐあいがいいとおもう。』

あかぎの杖をつきつつゆくのもきままでいい。公だの侯だのという官僚連中にあう世話がないというものだ。
わたしは崔、李の二君とは最近知り合ったが、こんなに自分の心にぴったりあうことは真のことで類い稀なことである。
この二人を訪問するたびに酒を傾けることを得ている、この二人の家ならばながく逗留とするこができるのである。
二君のような「仁者の居る里」でたがいによろこびかわすことのできるのはとてもうれしいことなのだ、ましてきょうの訪問は正月の晦日という祝日にあたって訪ねられたのということがまことにうれしいのである。』


(訳註)
朝光入甕牖,屍寢驚敞裘。

乏家屋の丸い土窓に朝の日光がさしこんできた、死んだようにうつ伏せてねていたわたしは目をさましてやぶれた着物を着ているのに驚いた。
朝光 朝の日光。○甕牖 甕牖縄枢 おうようじょうすう貧しく粗末な家の形容。かめの口のように小さな丸窓と縄を枢(とぼそ:戸の開閉をする軸)の代わりにした家の意。(「甕」はかめ、「牖」は窓。)○甕牖 戸は屍(しかばね)、死人の如く下ぶしになってねることをいう。○敞裘 やぶれた毛ごろも。
 
起行視天宇,春氣漸和柔。
それから起きだして歩き始め空をよく眺めてみたのだ、もう春の気配がふわりとやわらかに感じられてくるようだ。
起行 おきてあるく。○天字 やねに似た天空。○春氣 春の陽気 ○漸和柔 ふわりとやわらかに感ぜられる


興來不暇懶,今晨梳我頭。
かく風流な趣向の気持ちがうごいてくるとぶしょうをやっている暇はない、きょうのあさは、いつもとちがって自分の頭髪をくしできれいにとかすのである。(友を訪問する用意をする)。
不暇懶 ぶしょうをしているひまがない。○今晨 きょうのあさ○ 頭髪をくしでとかす。


出門無所待,徒步覺自由。』
この家の門から出かけるに他人に借りてまで持っていくものは何もない、自分の足で歩くのは自由でぐあいがいいとおもう。』
出門 わが家の門からでかける。○無所待 待つとはそれを誰かに借りなければならいということ。車馬僕従の類をさす。○徒歩 長安の杜曲の時には馬で歩いた。ここは初めて徒歩であるのであろう。


杖藜複恣意,免值公與侯。
あかぎの杖をつきつつゆくのもきままでいい。公だの侯だのという官僚連中にあう世話がないというものだ。
枚褒 あかぎの杖をつく。〇恣意 かってにする。○免值 世話がない○公與侯 貴爵をもつ人。この時、人狩りが行われていた。王朝軍、反乱軍側のどちらも明確にすると危険だった。


晚定崔李交,會心真罕儔。
わたしは崔、李の二君とは最近知り合ったが、こんなに自分の心にぴったりあうことは真のことで類い稀なことである。
晩定 晩年になってからきめる。○崔李交 崔戢・李封との交際。○会心 我が心にぴったりあうこと。○罕儔 類い稀なこと。罕:めったにない。儔:同じ仲間。等しい。匹敵する。

每過得酒傾,二宅可淹留。
この二人を訪問するたびに酒を傾けることを得ている、この二人の家ならばながく逗留とするこができるのである。
毎過 過とはこちらから先方の宅へ過訪すること。〇二宅 雀、李との宅。○掩留 ひさしく逗留する。


喜結仁裡歡,況因令節求。』
二君のような「仁者の居る里」でたがいによろこびかわすことのできるのはとてもうれしいことなのだ、ましてきょうの訪問は正月の晦日という祝日にあたって訪ねられたのということがまことにうれしいのである。』
結・歡 たがいによろこびかわすこと。○仁裡 仁者のおる賂処。雀李の居地をさす。文字は「論語」に本づく。○令節 唐の時は正月晦日を令節とした、令節は祝日。○ 尋ねてゆくことをいう。


○押韻 裘。柔。頭。由。』侯。儔。留。求。』