白水崔少府十九翁高齋三十韻 杜甫 124 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 121-#4



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坐久風頗怒,晚來山更碧。
しばらくここに坐っていた、すると風がおこったようにつよくなった。日も夕方になって山の色はいっそう碧がふかくなってみえる。
相對十丈蛟,欻翻盤渦坼。
川の方面では十丈もあろうかという蛟いる、たちまちのうちに水面にうずまきを作り、くりかえして水面を裂くようにひらくのだ。
何得空裡雷,殷殷尋地脈。
まさか天上の雷がいるのではあるまい、しかし、ごうごうとした音は地面まで尋ねて来て鳴りひびいているのだ。
煙氛藹崷崒,魍魎森慘戚。
靄ガスがもやくやとして山のそびゆる様にあがって高くたち、罔両という怪物もひっそりとしてかなしんでいるかのよう。
昆侖崆峒顛,回首如不隔。』

しかし崑崙山や崆峒山の頂は仙人の棲むところである、頭を回してみまわしてみると遠く隔たっているとはおもわれないのだ。』


-#5
前軒頹反照,巉絕華嶽赤。
兵氣漲林巒,川光雜鋒鏑。
知是相公軍,鐵馬雲霧積。
玉觴淡無味,胡羯豈強敵?
長歌激屋樑,淚下流衽席。』

-#4
坐久しくして風頗る怒る 晩来山更に碧なり
相対す十丈の校 数ち盤渦を和えして塀く
何ぞ得ん空裏の雷 殷殷として地脉を尋ぬるを
煙気高として酋奉 魅魅森として惨戚
良禽畦桐の巌 首を回らせば隔たらざるが如し』



白水崔少府十九翁高齋三十韻 現代語訳と訳註 -#4
(本文)

坐久風頗怒,晚來山更碧。
相對十丈蛟,欻翻盤渦坼。
何得空裡雷,殷殷尋地脉。
煙氛藹崷崒,魍魎森慘戚。
昆侖崆峒巓,回首如不隔。』

(下し文)
坐久しくして風頗る怒る 晩来山更に碧なり。
相対す十丈の蛟(みずち) 欻(たちま)ち盤渦を翻えして坼(ひら)く。
何ぞ得ん空裏の雷 殷殷として地脉(ちみゃく)を尋ぬるを。
煙気 藹(あい)として崷崒(しゅうしゅつ)  魍魎(もうりょう)森として惨戚(さんせき)。
崑崙崆峒の巓(いただき) 首を回らせば隔たらざるが如し』

(現代語訳)
しばらくここに坐っていた、すると風がおこったようにつよくなった。日も夕方になって山の色はいっそう碧がふかくなってみえる。
川の方面では十丈もあろうかという蛟いる、たちまちのうちに水面にうずまきを作り、くりかえして水面を裂くようにひらくのだ。
まさか天上の雷がいるのではあるまい、しかし、ごうごうとした音は地面まで尋ねて来て鳴りひびいているのだ。
靄ガスがもやくやとして山のそびゆる様にあがって高くたち、罔両という怪物もひっそりとしてかなしんでいるかのよう。
しかし崑崙山や崆峒山の頂は仙人の棲むところである、頭を回してみまわしてみると遠く隔たっているとはおもわれないのだ。』


  
(語訳と訳註)-#4
坐久風頗怒,晚來山更碧。

しばらくここに坐っていた、すると風がおこったようにつよくなった。日も夕方になって山の色はいっそう碧がふかくなってみえる。


相對十丈蛟,欻翻盤渦坼。
川の方面では十丈もあろうかという蛟いる、たちまちのうちに水面にうずまきを作り、くりかえして水面を裂くようにひらくのだ。
十丈蛟 十丈の身長あるみずち、白水の川の水中の魔物をいう。○盤渦 わにまぐうずまき。○ 水面を裂開することをいう。


何得空裡雷,殷殷尋地脈。
まさか天上の雷がいるのではあるまい、しかし、ごうごうとした音は地面まで尋ねて来て鳴りひびいているのだ。
何得 反語:得ず という意、そうはありえないのに、なんでそうであるのかととがめていうこころ。○空裡雷 空中で鳴るかみなり。○殷殷 雷の鳴る音のさま。○尋地脉 地脉までたずね来てそこで鳴る。これは実景を叙している「盤渦坼」を形容してきょうちょうしているのである。水の渦巻き音が雷のごとく地面まで尋ね来たようであること。

 
煙氛藹崷崒,魍魎森慘戚。
靄ガスがもやくやとして山のそびゆる様にあがって高くたち、罔両という怪物もひっそりとしてかなしんでいるかのよう。
○煙氛 靄ガス(わるいき)。○ もやくやとして。○崷崒 高峻なさま。○魍魎 中国の自然界の精鬼。罔両・美豆波ともいう。『淮南子』には、「罔両は状は三歳の小児の如し、色は赤黒し、目は赤く耳は長く、美しい髪をもつ」と記される。『本草綱目』には、「罔両は好んで亡者の肝を食べる。それで『周礼』に、戈(ほこ)を執って壙(つかあな)に入り、方良(罔両)を駆逐する、とあるのである。本性、罔両は虎と柏とを怖れす。また、弗述(ふつじゆつ)というのがいて、地下にあり死人の脳を食べるが、その首に柏を挿すと死ぬという。つまりこれは罔両である」と記されている。。○ しずかにたちならぶさま。○惨威 かなしみうれえる。

 
昆侖崆峒巓,回首如不隔。』
しかし崑崙山や崆峒山の頂は仙人の棲むところである、頭を回してみまわしてみると遠く隔たっているとはおもわれないのだ。』
昆侖崆峒 崑崙山、崆峒山、渭水を挟んで左右に聳える山であるが、ともに仙人の居る山。朝廷、皇居を意味するもの。