三川觀水漲二十韻 杜甫 128 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#2

#1
我經華原來,不複見平陸。
北上惟土山,連天走窮穀。
火雲無時出,飛電常在目。』
#2
自多窮岫雨,行潦相豗蹙。
若し万穴の水の帰著する所が無かったなら、どうして四瀆の大川が尊ばれる値打ちがあろう。(四瀆の尊きはこれらの洪水をひきうけて集めるところにある。)』
蓊匒川氣黃,群流會空曲。
だからおのずとゆきづまった山、穴のある山には雨が多くふってくる、道路上を歩くことできないほどながれだす雨水は水と水とがぶつかり合って號濁音をたてている。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。
川面にはこんもり繁り、かさなりあっており、濁流の気が流れを黄色している、さまざまの流れが一緒になってさびしい山の隈にあつまってながれているのだ。
恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
きよらかな朝をむかえたがこうした高い浪をながめている、奥まった日陰の崖がこの道に倒れてこないかときゅうにおもったのだ。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。
蛟が畏れ暴れて、水流が濁流になり、蚊竜もどこかへにげかくれるのだ、あぶなそうな高い処へあがって麋鹿があっまっているようだ。
聲吹鬼神下,勢閱人代速。
枯れた浮き木は抜けて、流れてきた筏のようになった大木を一緒に巻き込んで、うず高く重なっていっぱいになっているのだ。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』

土石流の声の凄まじさは、天から陰陽道の神々を吹きおろすかのようである、そして水の勢のはやさは人世の経過の速さをうかがい知ることでるほどのものなのである。
#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
交洛赴洪河,及關豈信宿。
應沉數州沒,如聽萬室哭。
穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』


#1
我 華原を経て来る、復た平陸を見ず。
北上すれば惟 土山、連天窮谷に走る。
火雲出づるや時無し、飛電 常に目に在り。』

#2
自ら窮地の雨多し 行潦豗蹙極愛す
蓊匒として川気黄なり 羣流空曲に会す
清晨高浪を望む 忽ち謂う陰崖の踣るるかと
泥まんことを恐れて蛟龍竄れ 危きに登りて麋鹿聚まる
枯査抜樹を巻き 礧磈として共に充塞す
声は鬼神を吹きて下す  勢は人代の速かなるを閱す
万穴の帰する有らずんば 何を以てか四瀆を尊しとせん』

#3
泉源の滞るを観るに及んで 反って江海の覆えるを憤る
抄を漂わして折岸去り 峯に激ぎて松柏禿す
乗陵山門破れ 廻斡地軸裂く
洛に交りて洪河に赴く 関に及ぶ豈に信宿ならんや
応に数州を沈めて没せしむるなるべし 万室の宍するを聴くが如し
穢濁殊に未だ清からず 風涛怒り猶蓄う
何の時か舟車を通じて 陰気黲黷ならざらん』
杜甫乱前後の図003鳳翔


三川觀水漲二十韻 現代語訳と訳註
(本文) #2

自多窮岫雨,行潦相豗蹙。
蓊匒川氣黃,群流會空曲。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。
恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。
聲吹鬼神下,勢閱人代速。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』


(下し文) #2

自ら窮岫(きゅうしゅう)の雨多し、行潦(こうろう) 相 豗蹙(かいしゅく)す。
蓊匒(おうこう)として川気(せんき) 黄なり、羣流 空曲に会す。
清晨 高浪を望む、忽ち謂う陰崖 踣(たお)れるかと。
泥(なず)まんことを恐れて蛟龍(こうりゅう) 竄(かく)れ、 危きに登りて 麋鹿(びろく) 聚(あつ)まる。
枯査 抜樹を巻き、礧磈(らいかい)として共に充塞(じゅうそく)す。
声は鬼神を吹きて下す、勢は人代(じんだい)の速かなることを閱(けみ)す。
万穴の帰する有らずんば、何を以ってか 四瀆(しとく)を尊(たっとし)とせん』


(現代語訳)
だからおのずとゆきづまった山、穴のある山には雨が多くふってくる、道路上を歩くことできないほどながれだす雨水は水と水とがぶつかり合って號濁音をたてている。
川面にはこんもり繁り、かさなりあっており、濁流の気が流れを黄色している、さまざまの流れが一緒になってさびしい山の隈にあつまってながれているのだ。
きよらかな朝をむかえたがこうした高い浪をながめている、奥まった日陰の崖がこの道に倒れてこないかときゅうにおもったのだ。
蛟が畏れ暴れて、水流が濁流になり、蚊竜もどこかへにげかくれるのだ、あぶなそうな高い処へあがって麋鹿があっまっているようだ。
枯れた浮き木は抜けて、流れてきた筏のようになった大木を一緒に巻き込んで、うず高く重なっていっぱいになっているのだ。
土石流の声の凄まじさは、天から陰陽道の神々を吹きおろすかのようである、そして水の勢のはやさは人世の経過の速さをうかがい知ることでるほどのものなのである。

若し万穴の水の帰著する所が無かったなら、どうして四瀆の大川が尊ばれる値打ちがあろう。(四瀆の尊きはこれらの洪水をひきうけて集めるところにある。)』

(訳注)

自多窮岫雨,行潦相豗蹙。
だからおのずとゆきづまった山、穴のある山には雨が多くふってくる、道路上を歩くことできないほどながれだす雨水は水と水とがぶつかり合って號濁音をたてている。
○窮岫 ゆきづまった山、穴のある山を岫という。○行潦 道路上を歩くことできないほどながれだす雨水。○豗蹙 豗はかまびすしい、水と水とがぶつかり合って號濁音をたててやかましいこと。蹙は水が相い迫ってちぢめあうこと。

蓊匒川氣黃,群流會空曲。
川面にはこんもり繁り、かさなりあっており、濁流の気が流れを黄色している、さまざまの流れが一緒になってさびしい山の隈にあつまってながれているのだ。
○蓊匒 蓊はしげるさま、匒はかさなるさま。○川気 川面の濁流の気。○群流 多くの水流。○ あつまる。○空曲 さびしい山の隈。

清晨望高浪,忽謂陰崖踣。
きよらかな朝をむかえたがこうした高い浪をながめている、奥まった日陰の崖がこの道に倒れてこないかときゅうにおもったのだ。
○清晨 きよらかな朝。すがすがしい朝○陰崖 日光をうけぬがけ。

恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
蛟が畏れ暴れて、水流が濁流になり、蚊竜もどこかへにげかくれるのだ、あぶなそうな高い処へあがって麋鹿があっまっているようだ。
 濁流。蛟が畏れ暴れて、水流が濁流になることを示す。○ にげかくれる。○登危 危は高くあやうい場所をいう。

枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。
枯れた浮き木は抜けて、流れてきた筏のようになった大木を一緒に巻き込んで、うず高く重なっていっぱいになっているのだ。
○枯 査は桂と同じ、いかだ、これは水中の浮き木をいう。○ まきこむ。○抜樹 あたらしく根からぬけた樹木。○礧磈 石のかさなるさま。○充塞 みちふさがる。今でいう土石流ということであろう。

聲吹鬼神下,勢閱人代速。
土石流の声の凄まじさは、天から陰陽道の神々を吹きおろすかのようである、そして水の勢のはやさは人世の経過の速さをうかがい知ることでるほどのものなのである。
声吹 水の声は風が鬼神を吹きおろすようだという意。○鬼神 鬼は隠の神、神は陽の神。どちらも霊妙な働きを持つ超自然の存在。○ 水勢。〇人代速 人間の過ぎ去った過去が速かにすぎ去ったこと。光陰矢のごとしの人生の経過しているさま。杜甫この時45歳、アットいう間に経過したのだ。洪水の流れを人生に経過に見ることはあまり例がない。

不有萬穴歸,何以尊四瀆。』
若し万穴の水の帰著する所が無かったなら、どうして四瀆の大川が尊ばれる値打ちがあろう。(四瀆の尊きはこれらの洪水をひきうけて集めるところにある。)』
○萬穴 雲が湧き出、大水のもとが巌谷の穴から出てくると思われていた。○四瀆 ほかの大河と交わらず海に流れており、江水(長江)、河水(黄河)、淮水(淮河)とともに「華夏四瀆」と称された。


○押韻 蹙。曲。踣。踣。鹿。塞。速。瀆。』