三川觀水漲二十韻 杜甫 129 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#3


#2
自多窮岫雨,行潦相豗蹙。蓊匒川氣黃,群流會空曲。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。聲吹鬼神下,勢閱人代速。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』
#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。
川流の淵源にこれだけこの広野に水が漲るのを見るに及んで、あべこべに田や下流河江や海から水がぶちまけられるのでないかとおそれるのである。
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
その水勢は沙をただよわすによって山の岸はなくなってしまい、水が大きなたににそそぐによって松や柏もぬけてしまう。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
又その水の勢が丘に乗り越えることによって山の崖門が破壊される、水勢のまわりめぐらせる力は地軸も裂けてしまわせるのだ。
交洛赴洪河,及關豈信宿。
この水流は洛水と交りて黄河の方へ赴くのであるが、潼関へ達するには一泊とはかかるものでなくすぐにも達するほどである。
應沉數州沒,如聽萬室哭。
この分だとさだめし幾つかの州を沈没させてしまうことだろう。万家の人の哭する声を現に聞こえてくるようであるのだ。
穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
水のけがれにごりはすむには至らぬが、風にあれくるう涛はまだ怒りをたくわえている。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』

いつになったら舟や車を自由に交通させて、陰気がうすぐろくたなびかないようになり得るのだろうか。』
#4
浮生有蕩汨,吾道正羈束。人寰難容身,石壁滑側足。
雲雷屯不已,艱險路更跼。』
普天無川梁,欲濟願水縮。因悲中林士,未脫眾魚腹。
舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』


#2
自ら窮岫(きゅうしゅう)の雨多し、行潦(こうろう) 相 豗蹙(かいしゅく)す。
蓊匒(おうこう)として川気(せんき) 黄なり、羣流 空曲に会す。
清晨 高浪を望む、忽ち謂う陰崖 踣(たお)れるかと。
泥(なず)まんことを恐れて蛟龍(こうりゅう) 竄(かく)れ、 危きに登りて 麋鹿(びろく) 聚(あつ)まる。
枯査 抜樹を巻き、礧磈(らいかい)として共に充塞(じゅうそく)す。
声は鬼神を吹きて下す、勢は人代(じんだい)の速かなることを閱(けみ)す。
万穴の帰する有らずんば、何を以ってか 四瀆(しとく)を尊(たっとし)とせん』

3

泉源の漲るを観るに及んで 反って江海の覆(くつが)えるを懼る。

沙を漂わして(きんがん)去り、壑(がく)に漱(そそ)ぎて松柏禿(とく)す。

乗陵(じょうりょう)山門破れ、廻斡(かいあつ) 地軸 裂く。

洛に交りて洪河(こうか)に赴く、関に及ぶ豈に信宿ならんや。

応に数州を沈めて没せしむるなるべし、万室の哭するを聴くが如し。

穢濁(あいだく)殊に未だ清からず、風涛怒り 猶 蓄(たくお)う。

何の時か 舟車を通じて、陰気 (しんとく)ならざらん。


#4
浮生蕩汨有り 吾が道正に羈束せらる
人裏身を容れ難く 石壁滑かにして足を側つ
雲雷屯己まず 艱險路更に跼す』
普天川梁無し 済らんと欲して水の縮まんことを願う
因って悲しむ中林の士 未だ衆魚の腹より脱せず
頭を挙げて蒼天に向う 安んぞ鴻鵠に騎ることを得ん』


現代語訳と訳註
(本文) #3

及觀泉源漲,反懼江海覆。
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
交洛赴洪河,及關豈信宿。
應沉數州沒,如聽萬室哭。
穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』


(下し文) #3

泉源の漲るを観るに及んで 反って江海の覆(くつが)えるを懼る。

沙を漂わして坼岸(きんがん)去り、壑(がく)に漱(そそ)ぎて松柏禿(とく)す。

乗陵(じょうりょう)山門破れ、廻斡(かいあつ) 地軸 裂く。

洛に交りて洪河(こうか)に赴く、関に及ぶ豈に信宿ならんや。

応に数州を沈めて没せしむるなるべし、万室の哭するを聴くが如し。

穢濁(あいだく)殊に未だ清からず、風涛怒り 猶 蓄(たくお)う。

何の時か 舟車を通じて、陰気 黲黷(しんとく)ならざらん。』


(現代語訳)
川流の淵源にこれだけこの広野に水が漲るのを見るに及んで、あべこべに田や下流河江や海から水がぶちまけられるのでないかとおそれるのである。
その水勢は沙をただよわすによって山の岸はなくなってしまい、水が大きなたににそそぐによって松や柏もぬけてしまう。
又その水の勢が丘に乗り越えることによって山の崖門が破壊される、水勢のまわりめぐらせる力は地軸も裂けてしまわせるのだ。
この水流は洛水と交りて黄河の方へ赴くのであるが、潼関へ達するには一泊とはかかるものでなくすぐにも達するほどである。
この分だとさだめし幾つかの州を沈没させてしまうことだろう。万家の人の哭する声を現に聞こえてくるようであるのだ。
水のけがれ濁りは清むには至らないが、風にあれくるう涛はまだ怒りをたくわえている
いつになったら舟や車を自由に交通させて、陰気がうすぐろくたなびかないようになり得るのだろうか。』


(訳注)#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。

川流の淵源にこれだけこの広野に水が漲るのを見るに及んで、あべこべに田や下流河江や海から水がぶちまけられるのでないかとおそれるのである。
泉源 淵源。泉は淵の代字。
 
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
その水勢は沙をただよわすによって山の岸はなくなってしまい、水が大きなたににそそぐによって松や柏もぬけてしまう。
漂沙 水勢が沙をただよわす。土石流の様な濁流を言う。○坼岸去 坼は堤と同じく岸または界の意、去とはくずれてなくなること。土手の決壊。○漱壑 水が大きなたににそそぎこむ。○禿 髪がぬけてはげになるように樹木が無くなることをいう。


乘陵破山門,回斡裂地軸。
又その水の勢が丘に乗り越えることによって山の崖門が破壊される、水勢のまわりめぐらせる力は地軸も裂けてしまわせるのだ。
乗陵 水勢がのぼりしのぐ。○破山門 左右の山崖がこわれる。○廻斡 水勢がめぐり、めぐらす。○地軸 大地をささえるじく。


交洛赴洪河,及關豈信宿。
この水流は洛水と交りて黄河の方へ赴くのであるが、潼関へ達するには一泊とはかかるものでなくすぐにも達するほどである。
交洛 水流が洛水にまじわる、この洛水は延安府より麟州を経て同州府に入り朝邑県において黄河に会する川をいう。○決河 大きな河、黄河をさす。○及関 関は潼関をいう、洛水は黄河に入って潼関のところへつきあたる、及ぶとはそこへ達することをいう。〇信宿 再宿を信という、一晩や二晩ということ。この時叛乱軍と哥舒翰率いる国軍が潼関で対峙していた。


應沉數州沒,如聽萬室哭。
この分だとさだめし幾つかの州を沈没させてしまうことだろう。万家の人の哭する声を現に聞こえてくるようであるのだ。
万室 万家。


穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
水のけがれ濁りは清むには至らないが、風にあれくるう涛はまだ怒りをたくわえている。


何時通舟車?陰氣不黲黷。』
いつになったら舟や車を自由に交通させて、陰気がうすぐろくたなびかないようになり得るのだろうか。』
○何時 いつか、この二字は下旬までにかかる。○陰気 雨ぐもりの気。○黲黷 垢がつき黒いこと。前の聯の清を受けての垢、黷は謀叛、叛乱軍を示している。


覆。禿。軸。宿。哭。蓄。黷。