三川觀水漲二十韻 杜甫 130 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#4

危険の迫った白水県を去り、多くの避難民に混じって洛河ぞいに華原を経てさらに北に進んだ。
「三川觀水漲二十韻」(三川にて水の漲るを観る)には、その途中の様子を次のように記す。「華原を過ぎてからは、もはや平らな土地は見られない。北に向かってゆくが、ただ土山が続いているばかり。来る日も来る日も、せばまった深い谷間を通ってゆく。空には赤くやけた雲が時となくわき立ち、電光がきらめく。山が深いために雨がよく降り、道は川になって激流がぶつかりあう」。その中を杜甫の一行は手を引きあって進んでゆく。

このとき、杜甫の遠い親戚にあたる王砅一家もいっしょに避難したが、のちに770年大暦五年、といえは、杜甫が亡くなる年に浮州で、南海に使者として赴く王砅を送る際に作った「送重表姪王秋評事便南海」(重表姪の王秋評事の南海に使いするを送る)には、避難の途中における危難のさまが詠われている。131 王砅「送重表姪王秋評事便南海」


#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
交洛赴洪河,及關豈信宿。
應沉數州沒,如聽萬室哭。
穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』
#4
浮生有蕩汨,吾道正羈束。
浮き草のような生活は水の早き流れに漂うようなものである、わたしの生きる道はこのように他からしばられているのだ。
人寰難容身,石壁滑側足。
世渡りの上手い世界には身を容れおくことがむずかしい、それでいて、このような山中へはいってくればここではまた石壁の路がすべるようなので足の指先、足の外側に力を入れて歩くのだ。
雲雷屯不已,艱險路更跼。』
雲雷の雨水の難儀は止みそうにない、山行の急坂はその路はさらに進みづらくなってきた。』
普天無川梁,欲濟願水縮。
見渡すにかぎりどこにも舟橋は無い、川を渡ることができるためには水量の減ずるのを願うばかりである。
因悲中林士,未脫眾魚腹。
それにつけて悲しむのはこの山林に居る人々のことだ、彼等はまだ魚の腹からのがれることはできずにいるのだ。
舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』

わたしは頭をあげて天をむかってみている、どうしたならば鴻や鵠などの鳥にのって空へ駆け上がってこの水災(叛乱軍の戦火)からのがれることができるであろうかと。


束。足。跼。縮。腹。鵠。
#3
泉源の漲るを観るに及んで 反って江海の覆(くつが)えるを懼る。
沙を漂わして坼岸(きんがん)去り、壑(がく)に漱(そそ)ぎて松柏禿(とく)す。
乗陵(じょうりょう)山門破れ、廻斡(かいあつ) 地軸 裂く。
洛に交りて洪河(こうか)に赴く、関に及ぶ豈に信宿ならんや。
応に数州を沈めて没せしむるなるべし、万室の哭するを聴くが如し。
穢濁(あいだく)殊に未だ清からず、風涛怒り 猶 蓄(たくお)う。
何の時か 舟車を通じて、陰気 黲黷(しんとく)ならざらん。』

4

浮生 蕩汨(とういつ)有り、吾が道正に羈束(きそく)せらる。

人寰 身を容れ難く、石壁滑かにして足を側(そばだ)つ。

雲雷 屯(ちゅん)己まず 艱險(かんけん) 路更に跼(きょく)す。』

普天 川梁 無し、済(わた)らんと欲して水の縮(ちじ)まんことを願う。

因って悲しむ中林の士 未だ衆魚の腹より脱せず。

頭を挙げて蒼天に向う、安んぞ鴻鵠(こうこく)に騎()ることを得ん。』



三川觀水漲二十韻 現代語訳と訳註
(本文) #4

浮生有蕩汨,吾道正羈束。
人寰難容身,石壁滑側足。
雲雷屯不已,艱險路更跼。』
普天無川梁,欲濟願水縮。
因悲中林士,未脫眾魚腹。
舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』

(下し文) #4
浮生 蕩汨(とういつ)有り、吾が道正に羈束(きそく)せらる。
人寰 身を容れ難く、石壁滑かにして足を側(そばだ)つ。
雲雷 屯(ちゅん)己まず 艱險(かんけん) 路更に跼(きょく)す。』
普天 川梁 無し、済(わた)らんと欲して水の縮(ちじ)まんことを願う。
因って悲しむ中林の士 未だ衆魚の腹より脱せず。
頭を挙げて蒼天に向う、安んぞ鴻鵠(こうこく)に騎(の)ることを得ん。』


(現代語訳)
浮き草のような生活は水の早き流れに漂うようなものである、わたしの生きる道はこのように他からしばられているのだ。
世渡りの上手い世界には身を容れおくことがむずかしい、それでいて、このような山中へはいってくればここではまた石壁の路がすべるようなので足の指先、足の外側に力を入れて歩くのだ。
雲雷の雨水の難儀は止みそうにない、山行の急坂はその路はさらに進みづらくなってきた。』
見渡すにかぎりどこにも舟橋は無い、川を渡ることができるためには水量の減ずるのを願うばかりである。
それにつけて悲しむのはこの山林に居る人々のことだ、彼等はまだ魚の腹からのがれることはできずにいるのだ。
わたしは頭をあげて天をむかってみている、どうしたならば鴻や鵠などの鳥にのって空へ駆け上がってこの水災(叛乱軍の戦火)からのがれることができるであろうかと。


(訳注) #4

浮生有蕩汨,吾道正羈束。
浮き草のような生活は水の早き流れに漂うようなものである、わたしの生きる道はこのように他からしばられているのだ。
浮生 浮き草のような生活。○蕩汨 蕩はうごく、汨は水のはやく流れるさま。○羈束 きずなをつけ、しばられる。

人寰難容身,石壁滑側足。
世渡りの上手い世界には身を容れおくことがむずかしい、それでいて、このような山中へはいってくればここではまた石壁の路がすべるようなので足の指先、足の外側に力を入れて歩くのだ。
人寰 人の存在する区域、世界。こびへつらいの世界。世渡りの上手い世界。○容身 わがからだをいれておく。○側足 足をそばだてる。足の指先、足の外側に力を入れて歩くことを言う。

雲雷屯不已,艱險路更跼。』
雲雷の雨水の難儀は止みそうにない、山行の急坂はその路はさらに進みづらくなってきた。』
 なやみ、難儀。○ せぐくまる。ちじこまる。馬が進まない。


普天無川梁,欲濟願水縮。
見渡すにかぎりどこにも舟橋は無い、川を渡ることができるためには水量の減ずるのを願うばかりである。
普天 天下じゅう。○川梁 梁はふなはし。○水縮 縮はちぢむ、量の減ずること。水嵩が減ること。

因悲中林士,未脫眾魚腹。
それにつけて悲しむのはこの山林に居る人々のことだ、彼等はまだ魚の腹からのがれることはできずにいるのだ。
中林士 林中土と同じ、山林のなかの集落の者。○衆魚腹 衆は集落、多くの魚の腹、山崩れが起きれば飲み込まれる。叛乱軍に襲撃されれば、殺されてしまう。盆地の集落が魚の腹の中という表現をしたのだ。
前#3にでている
漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。
『大雨でで手が決壊し、山の木々や土砂崩れが起きそうだ』ということを受けている。杜甫たちが少し高い所に来て盆地状の集落を見ていること。


舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』
わたしは頭をあげて天をむかってみている、どうしたならば鴻や鵠などの鳥にのって空へ駆け上がってこの水災(叛乱軍の戦火)からのがれることができるであろうかと。
○安得 希望の辞。○騎鴻鵠 この鳥にのって水災(叛乱軍の戦火)より離脱するのである。


○押韻 束。足。跼。縮。腹。鵠。




三川觀水漲二十韻
#1
我經華原來,不複見平陸。北上惟土山,連天走窮穀。
火雲無時出,飛電常在目。』
#2
自多窮岫雨,行潦相豗蹙。蓊匒川氣黃,群流會空曲。
清晨望高浪,忽謂陰崖踣。恐泥竄蛟龍,登危聚麋鹿。
枯查卷拔樹,礧磈共沖塞。聲吹鬼神下,勢閱人代速。
不有萬穴歸,何以尊四瀆。』

#3
及觀泉源漲,反懼江海覆。漂沙坼岸去,漱壑松柏禿。
乘陵破山門,回斡裂地軸。交洛赴洪河,及關豈信宿。
應沉數州沒,如聽萬室哭。穢濁殊未清,風濤怒猶蓄。
何時通舟車?陰氣不黲黷。』
#4
浮生有蕩汨,吾道正羈束。人寰難容身,石壁滑側足。
雲雷屯不已,艱險路更跼。』
普天無川梁,欲濟願水縮。因悲中林士,未脫眾魚腹。
舉頭向蒼天,安得騎鴻鵠?』

#1
我 華原を経て来る、復た平陸を見ず。
北上すれば惟 土山、連天窮谷に走る。
火雲出づるや時無し、飛電 常に目に在り。』
#2
自ら窮岫(きゅうしゅう)の雨多し、行潦(こうろう) 相 豗蹙(かいしゅく)す。
蓊匒(おうこう)として川気(せんき) 黄なり、羣流 空曲に会す。
清晨 高浪を望む、忽ち謂う陰崖 踣(たお)れるかと。
泥(なず)まんことを恐れて蛟龍(こうりゅう) 竄(かく)れ、 危きに登りて 麋鹿(びろく) 聚(あつ)まる。
枯査 抜樹を巻き、礧磈(らいかい)として共に充塞(じゅうそく)す。
声は鬼神を吹きて下す、勢は人代(じんだい)の速かなることを閱(けみ)す。
万穴の帰する有らずんば、何を以ってか 四瀆(しとく)を尊(たっとし)とせん』
#3
泉源の漲るを観るに及んで 反って江海の覆(くつが)えるを懼る。
沙を漂わして坼岸(きんがん)去り、壑(がく)に漱(そそ)ぎて松柏禿(とく)す。
乗陵(じょうりょう)山門破れ、廻斡(かいあつ) 地軸 裂く。
洛に交りて洪河(こうか)に赴く、関に及ぶ豈に信宿ならんや。
応に数州を沈めて没せしむるなるべし、万室の哭するを聴くが如し。
穢濁(あいだく)殊に未だ清からず、風涛怒り 猶 蓄(たくお)う。
何の時か 舟車を通じて、陰気 黲黷(しんとく)ならざらん。』
#4
浮生 蕩汨(とういつ)有り、吾が道正に羈束(きそく)せらる。
人寰 身を容れ難く、石壁滑かにして足を側(そばだ)つ。
雲雷 屯(ちゅん)己まず 艱險(かんけん) 路更に跼(きょく)す。』
普天 川梁 無し、済(わた)らんと欲して水の縮(ちじ)まんことを願う。
因って悲しむ中林の士 未だ衆魚の腹より脱せず。
頭を挙げて蒼天に向う、安んぞ鴻鵠(こうこく)に騎(の)ることを得ん。』

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