哀王孫 杜甫141  kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 140-#2


■哀王孫(王孫を哀む)  #2
「王孫を哀しむ」詩は、賊に描らえられて間もなくの作で、賊軍の厳しい捜索の目をのがれて町なかに身を潜めている皇族に出会い、その惨めな様子を哀れみ、力づけたものである。

安禄山の乱に逃げ遅れた皇族が零落して民間に潜んでおるのを見てあわれにおもって作った詩である。製作時は756年至徳元載(即ち天宝十五載)の九月頃の作で、掴まって初めて書いたもの。。


哀王孫 #1
長安城頭頭白烏,夜飛延秋門上呼;
又向人家啄大屋,屋底達官走避胡。」
金鞭斷折九馬死,骨肉不得同馳驅。
腰下寶玦青珊瑚,可憐王孫泣路隅。』
#2
問之不肯道姓名,但道困苦乞為奴。
私はその人に「あなた姓名は?」と尋ねたのです、その人は姓名をいわない、ただ「非常に困っているから奴僕でもよいから助けてくれ」といわれる。
已經百日竄荊棘,身上無有完肌膚。
既に過ぎたこの百日ばかり、荊棘のあいだをにげかくれしていたのだろう、おからだの上は傷だらけで無傷完全な肌の部分がないのである。
高帝子孫盡隆準,龍種自與常人殊。
漢の高祖の御子孫は御先祖の血統をひいてみんな鼻筋が通っている面相でおられる、どうしても竜の種は竜でただの人間とはおのずとちがっているということだ。
豺狼在邑龍在野,王孫善保千金軀。』

いま豺や狼のように残虐で略奪強奪の限りを尽くした安禄山の叛乱軍は都邑へはいりこんできた、天子の竜は野へのがれておられるということなのだ。高宗のお孫のあなたは千金の貴いおからだを無事にお保ちくださるさることが善いことなのだ。』
#3
不敢長語臨交衢,且為王孫立斯須。
昨夜春風吹血腥,東來橐駝滿舊都。
朔方健兒好身手,昔何勇銳今何愚?」
竊聞天子已傳位,聖德北服南單於。
花門剺面請雪恥,慎勿出口他人狙。
哀哉王孫慎勿疏,五陵佳氣無時無。』

○押韻 烏,呼。胡。/死,驅。隅。/名,奴。膚。殊。軀。/衢,須。都。愚。/位,於。狙。無。

王孫を哀れむ #1
長安城頭頭白の烏、夜 延秋 門上に飛んで呼ぶ。
又人家に向って大屋に啄む、屋底の達官走って胡を遅く」
金鞭折断して九馬は死す、骨肉も同じく馳駆する を 得ず。
腰下の宝珠青珊瑚、憐れむべし 王孫路隅に泣く。』

#2
之に問えども 肯て 姓名を這わず、但だ 這う困苦なり乞う奴と為らんと
己に百日 刑疎に 窺する を 経たり、身上 完き 肌膚 有ること無し。
高帝の子孫は 尽く隆準、竜種 自ら常人と殊なり。
財狼 邑に在り 竜野に在り、王孫 善く 保てよ 千金の姫。』
#3
敢て 長話して 交衝に臨まず、且つ王孫の為めに立つこと斯須。
昨夜 東風 血を吹いて過し、東乗の秦乾は旧都に満つ。
朔方の健児は 好身手、昔 何ぞ勇鋭に今何ぞ愚なる。』
縞に聞く 天子 己に位を伝うと、聖徳 北服せしむ南単干。
花門 面を嘗きて 恥を雪がんと請う、憤みてロより出す勿れ他人に狙われん。
哀しい哉 王孫 慎みて疎なること勿れ、五陵の佳気は時として無きは無し。』


哀王孫 #2 現代語訳と訳註
(本文) #2

問之不肯道姓名,但道困苦乞為奴。
已經百日竄荊棘,身上無有完肌膚。
高帝子孫盡隆準,龍種自與常人殊。
豺狼在邑龍在野,王孫善保千金軀。』

(下し文) #2
之に問えども肯て姓名を這わず、但だ這う困苦なり乞う奴と為らんと
己に百日刑疎に窺するを経たり、身上完き肌膚有ること無し
高帝の子孫は尽く隆準、竜種自ら常人と殊なり
財狼邑に在り竜野に在り、王孫善く保てよ千金の姫』

(現代語訳)
私はその人に「あなた姓名は?」と尋ねたのです、その人は姓名をいわない、ただ「非常に困っているから奴僕でもよいから助けてくれ」といわれる。
既に過ぎたこの百日ばかり、荊棘のあいだをにげかくれしていたのだろう、おからだの上は傷だらけで無傷完全な肌の部分がないのである。
漢の高祖の御子孫は御先祖の血統をひいてみんな鼻筋が通っている面相でおられる、どうしても竜の種は竜でただの人間とはおのずとちがっているということだ。
いま豺や狼のように残虐で略奪強奪の限りを尽くした安禄山の叛乱軍は都邑へはいりこんできた、天子の竜は野へのがれておられるということなのだ。高宗のお孫のあなたは千金の貴いおからだを無事にお保ちくださるさることが善いことなのだ。』


哀王孫 #2 (訳注)
問之不肯道姓名,但道困苦乞為奴。

私はその人に「あなた姓名は?」と尋ねたのです、その人は姓名をいわない、ただ「非常に困っているから奴僕でもよいから助けてくれ」といわれる。
問之 之は王孫をさす。


已經百日竄荊棘,身上無有完肌膚。
既に過ぎたこの百日ばかり、荊棘のあいだをにげかくれしていたのだろう、おからだの上は傷だらけで無傷完全な肌の部分がないのである。
百日 数十日を過ぎれば百日というのが詩に日數であること方、8月か9月である。杜甫が捕まったのが8月であるから、計算的にもあう。○ かくれる。○荊棘 いばらやとげの中であるから、街の中野宿して逃げ回ったのだろう。○完肌膚 傷つかずして完全なはだ。


高帝子孫盡隆準,龍種自與常人殊。
漢の高祖の御子孫は御先祖の血統をひいてみんな鼻筋が通っている面相でおられる、どうしても竜の種は竜でただの人間とはおのずとちがっているということだ。
高帝子孫 高帝は漢の高祖、ここは唐の高宗をさす。○隆準 準は鼻、隆は高。鼻筋が通っている面相。○竜種 竜の種子、竜は天子をさす。


豺狼在邑龍在野,王孫善保千金軀。』
いま豺や狼のように残虐で略奪強奪の限りを尽くした安禄山の叛乱軍は都邑へはいりこんできた、天子の竜は野へのがれておられるということなのだ。高宗のお孫のあなたは千金の貴いおからだを無事にお保ちくださるさることが善いことなのだ。』
財狼 豺や狼、実際に残虐で略奪強奪の限りを尽くした安禄山の叛乱軍をいう。○竜在野 竜は玄宗をさし、宮殿から野に逃げたのである。