大雲寺贊公房四首 其三 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 167
杜甫は叛乱軍の拘束中に大雲寺の僧贊公の宿坊に泊まった時に書いたものである。


其三
燈影照無睡,心清聞妙香。
灯火の揺らめきで影がゆれるそのともし火に照らされて寝つけないまま過ごしている、、「妙香の気」がきこえてくるようで、心はとても清々しく気持ちにさせてくれるのである。
夜深殿突兀,風動金瑯璫。
夜もふけて戸外の仏殿をみると突兀とたかくそびえている、風は風鈴を動かしてその音がチリンチリンとなっている。
天黑閉春院,地清棲暗芳。
天空はまっくろで春の奥庭がとじられている、其の地は清らかにしてなかに暗がりの草花のかおりがやどり、はぐくまれているのだ。
玉繩迥斷絕,鐵鳳森翱翔。
天帝の乗り物に連なる北斗の玉縄星は屋根の上のはるかかなたにとだえてみえる、鉄製の鳳の風見鶏がしずかに翅を広げ飛ぼうとしている。
梵放時出寺,鐘殘仍殷床。
そのうちに坊さんのお経を読む声が高くなりだして寺のそとまで流れでてきている、暁をつげる鐘の音はその余韻がのこって寝床までひびいてくるのだ。
明朝在沃野,苦見塵沙黃。』
朝になってこの寺院を辞し去って城外の肥沃な原野に身を置いたならば、街が荒れ果て、黄色の砂塵が吹き惑うのにこまることだろう。

大雲寺の贊公房 四首 其の三

燈影照らして睡る無し 心清くして妙香を聞く
夜深くして殿突兀たり 風動かして金瑯璫たり
天黒くして春院閉ず  地清くして暗芳棲む
玉縄迥に断絶す 鉄鳳森として翱翔す
梵放たれて時に寺を出づ 鐘残って仍牀に殷たり
明朝沃野に在らん 塵沙の黄なるを見るに苦しむ


現代語訳と訳註
(本文) 其三

燈影照無睡,心清聞妙香。
夜深殿突兀,風動金瑯璫。
天黑閉春院,地清棲暗芳。
玉繩迥斷絕,鐵鳳森翱翔。
梵放時出寺,鐘殘仍殷床。
明朝在沃野,苦見塵沙黃。』


(下し文)
燈影照らして睡(ねむ)る無し、心清くして妙香を聞く。
夜深くして殿突(でんとつ)兀(ごつ)たり、風動かして金瑯璫たり。
天黒くして春院閉ず、地清くして暗芳棲む。
玉縄迥に断絶す、鉄鳳森として翱翔す。
梵放たれて時に寺を出づ、鐘残って仍牀に殷たり。
明朝沃野に在らん、塵沙の黄なるを見るに苦しむ。

(現代語訳)
灯火の揺らめきで影がゆれるそのともし火に照らされて寝つけないまま過ごしている、、「妙香の気」がきこえてくるようで、心はとても清々しく気持ちにさせてくれるのである。
夜もふけて戸外の仏殿をみると突兀とたかくそびえている、風は風鈴を動かしてその音がチリンチリンとなっている。
天空はまっくろで春の奥庭がとじられている、其の地は清らかにしてなかに暗がりの草花のかおりがやどり、はぐくまれているのだ。
天帝の乗り物に連なる北斗の玉縄星は屋根の上のはるかかなたにとだえてみえる、鉄製の鳳の風見鶏がしずかに翅を広げ飛ぼうとしている。
そのうちに坊さんのお経を読む声が高くなりだして寺のそとまで流れでてきている、暁をつげる鐘の音はその余韻がのこって寝床までひびいてくるのだ。
朝になってこの寺院を辞し去って城外の肥沃な原野に身を置いたならば、街が荒れ果て、黄色の砂塵が吹き惑うのにこまることだろう。


(訳注)
燈影照無睡,心清聞妙香。

灯火の揺らめきで影がゆれるそのともし火に照らされて寝つけないまま過ごしている、、「妙香の気」がきこえてくるようで、心はとても清々しく気持ちにさせてくれるのである。
○聞妙香 寺であるから香の気がすることをいう。「維摩経」に衆香国において菩薩が香樹の下に坐して妙香を聞くと一切を獲るという、その心をかけていったものであろう。


夜深殿突兀,風動金瑯璫。
夜もふけて戸外の仏殿をみると突兀とたかくそびえている、風は風鈴を動かしてその音がチリンチリンとなっている。
突兀 たかいさま。兀 1.高くて上が平らなさま。2.高くそびえるさま。3.禿たさま。4.無知なさま。5.動かないさま。
 鈴。○填嗜 音のさま。チリンチリン。


天黑閉春院,地清棲暗芳。
天空はまっくろで春の奥庭がとじられている、其の地は清らかにしてなかに暗がりの草花のかおりがやどり、はぐくまれているのだ。
棲暗芳 棲とはやどり、はぐくまれていること。暗芳はくらがりの草花のかおり。


玉繩迥斷絕,鐵鳳森翱翔。
天帝の乗り物に連なる北斗の玉縄星は屋根の上のはるかかなたにとだえてみえる、鉄製の鳳の風見鶏がしずかに翅を広げ飛ぼうとしている。
玉縄 北斗の玉衛星の北の両星をいう。天帝の乗り物と見立てることから玉衡の北にあるという星の名をいう。○鉄鳳 屋根の棟の中央にすえつけ回旋式を以て風の方向にむく所の鉄製の鳳風。風見鶏。○ しずかに立ちならぶさま。○翱翔 翔は翅をひろげてとぶ、翔はめぐりてとぶ。


梵放時出寺,鐘殘仍殷床。
そのうちに坊さんのお経を読む声が高くなりだして寺のそとまで流れでてきている、暁をつげる鐘の音はその余韻がのこって寝床までひびいてくるのだ。
梵放 梵は梵唄、坊さんのお経を読む声、放は高ごえが外部へもれだすこと。○ やっぱり。○殷床 殷は音のひびくさま、床は寝台。


明朝在沃野,苦見塵沙黃。』
朝になってこの寺院を辞し去って城外の肥沃な原野に身を置いたならば、街が荒れ果て、黄色の砂塵が吹き惑うのにこまることだろう。
沃野 こえた原野。肥沃な原野。「関中ノ地ハ、沃野千里」という。これは京師の近郊、即ち杜曲の家へかえるとき経過すべき原野をさしているのであろう。○塵沙黄 街が荒れ果て、黄色の砂塵が吹き惑うことをいう。