送樊二十三侍禦赴漢中判官 #4 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 176
(樊二十三侍禦が漢中判官に赴くを送る)
侍御史の官である樊某が漢中王の判官となって任に赴くのを送る詩。製作時は757年至徳二載の初め、鳳翔の行在所に赴いたころの作。
(4回目)


#4
廻風吹獨樹,白日照執袂。
君に別れようとすれば、路傍の一本木を吹きまわしの風が枝を鳴らして吹いてくる、真昼の太陽が別れを惜しんで袖袂をつかまえる手に照らしてくれる。
慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
わたしは蒼煙がただよう樹根にむかって慟哭した、周囲には閉ざされた門のような山々がいくえにも立っているのだ。
居人莽牢落,遊子封迢遞。
この居残る自分は茫漠としているけれど地方官を頑張れば中央政府で高官になれるよ。(私のように中央にいるだけでは出世はしないのだ。)旅人たる君はこの上り坂のように役人としての坂を上っていくのだ。
徘徊悲生離,局促老一世。』
自分は辺りをさまよいながら君との生きわかれを悲しくおもい、この局面をどう促進していくかということと老いゆくこの残りの人生をどう生きていくのか思うのである。
陶唐歌遺民,後漢更列帝。
陶唐の歌は永く遺民に歌われて忘れらるることないのだ、後漢は光武帝の以後幾人か代々と天子が受け継がれたように、この唐王朝もその様に遺民はその徳をしたい、その君は幾代もつづいてくれることであろう。
恨無匡複姿,聊欲從此逝。』

ただこれまで天子の過失を正し、王朝、朝廷を回復させるものはいなかったのが悔やまれる、このまま回復できないものなら今からここをたち去って山林へゆこうとおもうのである。


廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』

送樊二十三侍禦赴漢中判官 現代語訳と訳註
(本文) #4

廻風吹獨樹,白日照執袂。
慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
居人莽牢落,遊子封迢遞。
徘徊悲生離,局促老一世。』
陶唐歌遺民,後漢更列帝。
恨無匡複姿,聊欲從此逝。』


(下し文) #4
廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』


(現代語訳) #4
君に別れようとすれば、路傍の一本木を吹きまわしの風が枝を鳴らして吹いてくる、真昼の太陽が別れを惜しんで袖袂をつかまえる手に照らしてくれる。
わたしは蒼煙がただよう樹根にむかって慟哭した、周囲には閉ざされた門のような山々がいくえにも立っているのだ。
この居残る自分は茫漠としているけれど地方官を頑張れば中央政府で高官になれるよ。(私のように中央にいるだけでは出世はしないのだ。)旅人たる君はこの上り坂のように役人としての坂を上っていくのだ。
自分は辺りをさまよいながら君との生きわかれを悲しくおもい、この局面をどう促進していくかということと老いゆくこの残りの人生をどう生きていくのか思うのである。
陶唐の歌は永く遺民に歌われて忘れらるることないのだ、後漢は光武帝の以後幾人か代々と天子が受け継がれたように、この唐王朝もその様に遺民はその徳をしたい、その君は幾代もつづいてくれることであろう。
ただこれまで天子の過失を正し、王朝、朝廷を回復させるものはいなかったのが悔やまれる、このまま回復できないものなら今からここをたち去って山林へゆこうとおもうのである。


(訳注) #4
廻風吹獨樹,白日照執袂。

君に別れようとすれば、路傍の一本木を吹きまわしの風が枝を鳴らして吹いてくる、真昼の太陽が別れを惜しんで袖袂をつかまえる手に照らしてくれる。
○廻風 ふきまわす風。○獨樹 一本の大木、これはたまたま別処にあったものを写す。○照執袂 執袂とは別れを惜しんであいての袖袂をつかまえること、そのうえに太陽がてりかかる。


慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
わたしは蒼煙がただよう樹根にむかって慟哭した、周囲には閉ざされた門のような山々がいくえにも立っているのだ。
蒼煙根   根とは上の独樹の根であり、そのうえに青煙がよこたわる。○山門 門の如く立っている山峰。〇万重 いくえにも。


居人莽牢落,遊子封迢遞。
この居残る自分は茫漠としているけれど地方官を頑張れば中央政府で高官になれるよ。(私のように中央にいるだけでは出世はしないのだ。)旅人たる君はこの上り坂のように役人としての坂を上っていくのだ。
居人 此の句は自分のことをいっている。居人はここに居残る人。○ 茫漠としてたよりないさま。○牢落 おちぶれるさまをいうのだが、杜甫が落ちぶれているというのではない。唐の制度は地方官として良い官僚としての実績を重ねないと高官にはなれないということが前提にある。相手が昇っていくことを強調するための謙遜の語。○遊子 これから青雲に向かって旅ゆく人のことを言う。ここでは樊をさす。○迢遞 高低があって且つはるかなさま。鳳翔から太白山の横の峠に向かい漢水を目指すので山道を登ったものと思われる。


徘徊悲生離,局促老一世。
自分は辺りをさまよいながら君との生きわかれを悲しくおもい、この局面をどう促進していくかということと老いゆくこの残りの人生をどう生きていくのか思うのである。
徘徊 さまよう。○悲生離 此の句も樊との生別をかなしむ自分のことをいっている。○局促 杜甫自身のこの局面をどう促進していくかということ。○老一世 老いゆくこの残りの人生。


陶唐歌遺民,後漢更列帝。
陶唐の歌は永く遺民に歌われて忘れらるることないのだ、後漢は光武帝の以後幾人か代々と天子が受け継がれたように、この唐王朝もその様に遺民はその徳をしたい、その君は幾代もつづいてくれることであろう。
陶唐 陶は山々が連なっていることであり唐王朝が幾久しく続いていくことを歌った歌の題名である。第二代皇帝太宗の時期から唄われたとされる。昔時唐民が陶唐の歌を謳歌したごとくに、今の唐民は唐を思うことをいうのである。○後漢更列帝 更二列帝 代々の帝がつぎつぎにかわったことをいう。これは代わったことをいうのが主ではなく、光武帝の中興があってその後永く続いたことをいうのであり、唐も亦た大宗によってきずかれたように粛宗の中興が以後あるであろうというのである。


恨無匡複姿,聊欲從此逝。
ただこれまで天子の過失を正し、王朝、朝廷を回復させるものはいなかったのが悔やまれる、このまま回復できないものなら今からここをたち去って山林へゆこうとおもうのである。
匡複姿 君の過失を正し、王室を回復するの資質。○従此逝 逝とは去ること、ここを去って山林中に向かって往き隠れること、此よりとは今よりということ。この句もここを去ることが言いたいわけでなく、ここに留まって、王朝を回復させたことを強調するための反語である。
 

送樊二十三侍禦赴漢中判官

#1
威弧不能弦,自爾無寧歲。川穀血橫流,豺狼沸相噬。』
天子從北來,長驅振凋敞。頓兵岐梁下,卻跨沙漠裔。
二京陷未收,四極我得製。蕭索漢水清,緬通淮湖稅。』
#2
使者紛星散,王綱尚旒綴。南伯從事賢,君行立談際。
坐知七曜歷,手畫三軍勢。冰雪淨聰明,雷霆走精銳。』
#3
幕府輟諫官,朝廷無此例。至尊方旰食,仗爾布嘉惠。
補闕暮徵入,柱史晨徵憩。正當艱難時,實藉長久計。』
#4
廻風吹獨樹,白日照執袂。慟哭蒼煙根,山門萬重閉。
居人莽牢落,遊子封迢遞。徘徊悲生離,局促老一世。』
陶唐歌遺民,後漢更列帝。恨無匡複姿,聊欲從此逝。』

威弧(いこ) 弦する能(あた)わず、 爾(しか)りし自(よ)り寧歳(ねいさい)無し。
川谷(せんこく )血横(けつおう) 流す 豺狼(さいろう) 沸(ふつ)として 相 噬(か)む。』
天子 北従り来り、 長駆(ちょうく) 凋敞(ちょうへい)を振(すく)う。
兵を頓す 岐梁(きりょう)の下、 卻って沙漠(さばく)の裔(えい)に跨(またが)る。
二京 陥(おちい)りて 未だ収めざるも 四極(しきょく)我 製するを得。
蕭索(しょうさく) 漢水 清し 緬(はるか)に准湖(わいこ)の税を通ず。』
使者紛としで星散す、王綱(おうこう)尚旒綴(りゅうてい)す。
南伯(なんぱく)従事賢なり、君行きて立談の際。
坐(そぞ)ろに知る七曜暦 手(てずか)ら画す三軍の勢。
泳雪(ひょうせつ)聡明(そうめい)浄(きよ)く、雷霆(らいてい) 精鋭(せいえい)走る。』
幕府 諌官(かんかん)を輟(綴つづる) 朝廷 此の例無し。
至尊(しそん)方(まさ)に旰食(かんしょく)す 爾(なんじ)に仗(よ)って嘉恵(かけい)を布(し)く。
補闕(ほけつ)暮に徴(め)し入る 柱史(ちゅうし)晨(あした)に征(ゆ)かんとして憩(けい)す。
正に艱難(かんなん)の時に当る 実に長久(ちょうきゅう)の計に藉(よ)る』
廻風(かいふう) 独樹を吹く、白日 執袂(しっぺい)を照らす。
慟哭(どうこく)す 蒼煙(そうえん)の根、 山門 万重(ばんちょう) 閉ず。
居人 莽(もう)として 牢落たり、 遊子 方(まさ)に 迢遞(ちょうてい)たり。
徘徊(はいかい) 生離(せいり)を悲しむ、 局促(きょくそく) 一世に老ゆ。』
陶唐(とうとう) 遺民(いみん)に歌わる 後漢列帝(れつてい)を更(こ)う。
匡複(きょうふく)の資(し) 恨む無し、 聊(いささ)か此(これ)従り逝(ゆ)かんと欲す。』


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