述懐 #2 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 179
    
述懐 #1 五韻十句
去年潼関破、妻子隔絶久。今夏草木長、脱身得西走。
麻鞋見天子、衣袖露両肘。朝廷愍生還、親故傷老醜。
涕涙授拾遺、流離主恩厚。柴門雖得去,未忍即開口。
#2 
寄書問三川,不知家在否?
自分は今また新しく手紙をだして三川鄜州羌村の家族の様子をたずねている、いったいわが家は現に存在しているのかどうか知ることができない。
比聞同罹禍,殺戮到雞狗。
このごろ聞けば、どこの家も同様に戦争の兵禍にかかって鶏や家畜、犬までも殺されてしまったともいう。
山中漏茅屋,誰複依戶牖。
あの山の中の雨もりのする茅屋のいえなのだ、そこでは誰かが、また以前の様に戸や窓にさびしくよりそっているだろう。
摧頹蒼松根,地冷骨未朽。
また殺されていれば家族のものは、あの囲いのくずれ、くだけた松の樹の根もとにいるのだろう、地面は冷たくその下に埋められて骨はまだ朽ちずにいることであろう。(そうであってもなんにもしてやれないのだ)
幾人全性命?盡室豈相偶?
こんなむごたらしいことがあっていいのか、無事でいきながらえ得るものが幾人あるというのだ? 一家全員一人も欠けずそってならんで坐ることがはたしてできるのだろうか?
嶔岑猛虎場,鬱結回我首。

こんなことを考えて、けわしい山の向こうの猛虎のはびこれる地方がある、家族とは深く心むすぼれているので首をふりむけてながめやることで私の心のうちが伝わることであろう。』

#3
自寄一封書,今已十月後。反畏消息來,寸心亦何有?
漢連初中興,生平老耽酒。沈思歡會處,恐作窮獨叟。

去年  潼関(どうかん)破れ、妻子  隔絶(かくぜつ)すること久し。
今夏(こんか)  草木(くさき)長じ、身を脱して西に走るを得たり。
麻鞋(まあい)  天子に見(まみ)え、衣袖(いしゅう)  両肘(りょうちゅう)を露(あらわ)す。
朝廷  生還(せいかん)を愍(あわれ)み、親故(しんこ)   老醜(ろうしゅう)を傷(いた)む。
涕涙(ているい) 拾遺(じゅうい)を授けらる、流離(りゅうり)  主恩(しゅおん)厚し。
柴門(さいもん)  去(ゆ)くを得(う)と雖(いえど)も、未だ即ち口を開くに忍(しの)びず。
#2
書を寄せて三川(さんせん)に問うも家の在るや否(いな)やを知らず
此(このご)ろ聞く 同じく禍(わざわい)に罹(かか)りて殺戮 鶏狗(けいく)に到ると
山中の漏茅屋(ろうぼうおく)誰(たれ)か復(ま)た戸牖(こゆう)に依(よ)らん
蒼松(そうしょう)の根に摧頽(さいたい)すとも地(ち)冷やかにして 骨未だ朽ちざらん
幾人か性命(せいめい)を全うする室(しつ)を尽くして 豈(あに)相偶(あいぐう)せんや
嶔岑(きんしん)たる猛虎の場(じょう)鬱結(うつけつ)して我が首(こうべ)を廻(めぐ)らす
#3
一封の書を寄せし自(よ)り、今は已(すで)に十月の後(のち)なり。
反(かえ)って畏(おそ)る  消息の来たらんことを、寸心(すんしん)  亦(ま)た何か有らん。
漢運(かんうん)  初めて中興し、生平(せいへい)  老いて酒に耽(ふけ)る。
歓会(かんかい)の処(ところ)を沈思(ちんし)し、窮独(きゅうどく)の叟(そう)と作(な)らんことを恐る。


述懐 #2 五韻十句 現代語訳と訳註
 (本文) #2 

寄書問三川,不知家在否?
比聞同罹禍,殺戮到雞狗。
山中漏茅屋,誰複依戶牖。
摧頹蒼松根,地冷骨未朽。
幾人全性命?盡室豈相偶?
嶔岑猛虎場,鬱結回我首。

(下し文) #2
書を寄せて三川(さんせん)に問うも家の在るや否(いな)やを知らず
此(このご)ろ聞く 同じく禍(わざわい)に罹(かか)りて殺戮 鶏狗(けいく)に到ると
山中の漏茅屋(ろうぼうおく)誰(たれ)か復(ま)た戸牖(こゆう)に依(よ)らん
蒼松(そうしょう)の根に摧頽(さいたい)すとも地(ち)冷やかにして 骨未だ朽ちざらん
幾人か性命(せいめい)を全うする室(しつ)を尽くして 豈(あに)相偶(あいぐう)せんや
嶔岑(きんしん)たる猛虎の場(じょう)鬱結(うつけつ)して我が首(こうべ)を廻(めぐ)らす

(現代語訳)
自分は今また新しく手紙をだして三川鄜州羌村の家族の様子をたずねている、いったいわが家は現に存在しているのかどうか知ることができない。
このごろ聞けば、どこの家も同様に戦争の兵禍にかかって鶏や家畜、犬までも殺されてしまったともいう。
あの山の中の雨もりのする茅屋のいえなのだ、そこでは誰かが、また以前の様に戸や窓にさびしくよりそっているだろう。
また殺されていれば家族のものは、あの囲いのくずれ、くだけた松の樹の根もとにいるのだろう、地面は冷たくその下に埋められて骨はまだ朽ちずにいることであろう。(そうであってもなんにもしてやれないのだ)
こんなむごたらしいことがあっていいのか、無事でいきながらえ得るものが幾人あるというのだ? 一家全員一人も欠けずそってならんで坐ることがはたしてできるのだろうか?
こんなことを考えて、けわしい山の向こうの猛虎のはびこれる地方がある、家族とは深く心むすぼれているので首をふりむけてながめやることで私の心のうちが伝わることであろう。』


(訳注)
寄書問三川,不知家在否?

自分は今また新しく手紙をだして三川鄜州羌村の家族の様子をたずねている、いったいわが家は現に存在しているのかどうか知ることができない。
寄書 手紙をやる。〇三川 鄜州地方のことで羌村の方をいう。三川觀水漲二十韻 杜甫 127 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#1
家在否 自分の家が存在しているかどうか。野党、盗賊、叛乱軍、王朝軍それぞれが略奪、強盗をしていた。
 
比聞同罹禍,殺戮到雞狗。
このごろ聞けば、どこの家も同様に戦争の兵禍にかかって鶏や家畜、犬までも殺されてしまったともいう。
○同罷禍 自分の家も他の家と同じく戦争の兵禍にかかった。○殺戮 ころす。○到雞狗 鶏や家畜、犬までも。


山中漏茅屋,誰複依戶牖。
あの山の中の雨もりのする茅屋のいえなのだ、そこでは誰かが、また以前の様に戸や窓にさびしくよりそっているだろう。
山中漏茅屋 漏茅屋は雨のもれるかやぶきの家。○依戶牖 戸や窓によりそって立つ。


摧頹蒼松根,地冷骨未朽。
また殺されていれば家族のものは、あの囲いのくずれ、くだけた松の樹の根もとにいるのだろう、地面は冷たくその下に埋められて骨はまだ朽ちずにいることであろう。(そうであってもなんにもしてやれないのだ)
○摧頹 くだけ、くずれる。壁が剥がれ落ちる。○地冷骨未朽この二句は杜甫の心配がどうしようもないところまで至っていて、2年前、餓死で死んだ子供のことと重ねて家族全体が死んでしまったのではないかということを言っている。この時無政府状態で、すべての人間が、野党盗賊に変身して略奪、殺戮を行っていた。杜甫は、自分が経験し、目の前で見てきているので、心配でたまらなかったのだ

自京赴奉先縣詠懷五百字 杜甫 105 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700-105-1参照

 
幾人全性命?盡室豈相偶?
こんなむごたらしいことがあっていいのか、無事でいきながらえ得るものが幾人あるというのだ? 一家全員一人も欠けずそってならんで坐ることがはたしてできるのだろうか?
全性命 無事にいきながらえる。○尽室 一家全体かけることなく。○相偶 偶とはならんで坐ることをいう。


嶔岑猛虎場,鬱結回我首。
こんなことを考えて、けわしい山の向こうの猛虎のはびこれる地方がある、家族とは深く心むすぼれているので首をふりむけてながめやることで私の心のうちが伝わることであろう。』
嶔岑 嶔岑は山のけわしいさま。

三川觀水漲二十韻 杜甫 127 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 127-#1

彭衙行 杜甫 132 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132 -#1

王砅「送重表姪王秋評事便南海」 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 131

猛虎場 野盗、盗賊、叛乱軍のはびこる地をいう、家族のいる方向であるが、即ち鄜州へは、その盗賊、叛乱軍の向こう側にいるということをいう。○鬱結 心のむすぼれること。○廻我首 鄜州、羌村の方へと首をふりむけること。


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