奉送郭中丞兼太樸卿充隴右節度使三十韻 #4 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 191
御史中丞郭英乂が太僕卿の官を兼ねながら、隴右節度使に充てられたのを送る詩。製作時は757年至徳二載の秋八月。


奉送郭中丞兼太樸卿充隴右節度使三十韻
詔發山西將,秋屯隴右兵。淒涼餘部曲,燀赫舊家聲。
雕鶚乘時去,驊騮顧主鳴。艱難須上策,容易即前程。
斜日當軒蓋,高風卷旆旌。松悲天水冷,沙亂雪山清。#1
和虜猶懷惠,防邊詎敢驚。古來於異域,鎮靜示專徵。
燕薊奔封豕,周秦觸駭鯨。中原何慘黷,遺孽尚縱橫。
箭入昭陽殿,笳吹細柳營。內人紅袖泣,王子白衣行。#2
宸極妖星動,園陵殺氣平。空餘金碗出,無複穗帷輕。
毀廟天飛雨,焚宮火徹明。罘罳朝共落,棆桷夜同傾。
三月師逾整,群凶勢就烹。瘡痍親接戰,勇決冠垂成。#3
妙譽期元宰,殊恩且列卿。
だから世間の美しいうわさばなしではあなたが宰相になられる様に期待しているのだが、天子は特別の御恩を加えられとりあえずあなたを列卿の位に優恩によるおとりたてをされたのだ。
幾時回節鉞,戮力掃欃槍?
いつになったら、あたなは隴右の僻地から節鉞をうけて大方向転換して、唐王朝の中央師団と力をあわせて兵乱の表象ともいうべき禍の不吉なものとされる星をはらいのけてしまわれることであるのか。
圭竇三千士,雲梯七十城。
孔子の魯の国には生け垣の門をくくっている弟子の儒士が三千人もいたし、斉には雲梯で攻むべき不落の城が七十もある。
恥非齊說客,秖似魯諸生。
自分は恥ずかしながら酈食其(れきいき)のように弁舌でもって敵の城を落せることができるというような説客、論客でなく、ただ生け垣をくぐって入るような魯の書生たちみたいな者でしかない。
通籍微班忝,周行獨坐榮。
自分はやっと仕籍を宮中に通じて下位をはずかしめるこでしかなくかたじけないことであるが、あなたは朝廷の列位に於て天子から専席独坐を賜わる程の栄誉をうけておられるのだ。
隨肩趨漏刻,短發寄簪纓。#4

そうしてあなたとは肩をそろえず控えめにして、あとにつき従って朝参の時刻にはまかりいでるつもりである、老衰の短い頭髪ではあるが官吏の実を全うしたいと思っているのだ。

徑欲依劉表,還疑厭隬衡。漸衰那此別,忍淚獨含情。
廢邑狐狸語,空村虎豹爭。人頻墜塗炭,公豈忘精誠。
元帥調新律,前軍壓舊京。安邊仍扈從。莫作後功名。#5

#1
詔して山西の将を発し、秋 隴右(ろうう)の兵を屯せしむ。
凄涼 部曲余る、燀赫(せきかく) 家声旧りたり。
雕鶚(ちょうがく) 時に乗じて去る、驊騮(かりゅう) 主を顧みて鳴く。
艱難 上策を須(ま)つ 容易 前程に即く
斜日 軒蓋(けんがい)に当り、高風 旆旌(はいせい) を巻く。
松悲しみて 天水冷かに、沙乱れて 雪山清し。
#2
虜に和するすら猶 恵に懐(な)つく、辺を防ぐに 詎(なん)ぞ敢て驚かさんや。
古来 異域に於ける、鎮静にして 専征を示す。
燕薊(えんけい) 封豕(ほうし)奔(はし)り、周秦 駭鯨(がいけい)触る。
中原何ぞ慘黷(しんとく)なる、遺孽(いげつ) 尚 縦横たり。
箭は入る昭陽殿、節は吹かる細柳の営。
内人 紅袖(こうしゅう)に泣き、王子白衣行く。
#3
宸極(しんきょく)妖星動き、園陵(えんりょう) 殺気 平かなり。
空しく余す金碗の出づるを、復た穗帷(けいい)の軽き無し。
毀廟(きびょう)天雨を飛ばし、焚宮(ふんきゅう)火明に徹す。
罘罳(ふし) 朝に共に落ち、棆桷(りんかく) 夜 同じく傾く。』
三月 師 逾々整い、羣胡 勢 烹(に)らるるに就く。
瘡痍(そうい) 親(みずか)ら接戦す、勇決(ゆうけつ) 垂成(すいせい)に冠たり。
#4
妙誉(みょうよ) 元宰(げんさい)を期す、殊恩(しゅおん)且つ列卿(れつけい)。
幾時か 節鉞(せつえつ)を廻らし、力を戮(あ)わせて欃槍(ざんそう)を掃わん』
圭竇(けいとう) 三千の士、雲梯(うんてい)七十城。
恥ずらくは 斉の説客に非るを、秖(ただ)魯の諸生(しょせい)に似たり。
通籍(つうせき) 徴班(びはん)を忝(かたじけな)くす、周行(しゅうこう) 独坐 栄ゆ。
肩を随えて漏刻(ろうこく)に趨(おもむ)き、短髪 簪纓(しんえい)に寄す。

#5
径(ただちに)に劉表(りゅうひょう)に依らんと欲す、還た疑う隬衡(でいこう)を厭(いと)わんかと。
漸(ようや)く衰(おとろ)う 那ぞ此に別れん,淚を忍びて獨り情を含む。』
廃邑(はいゆう) 狐狸(こり) 語り、空邨(くうそん) 虎豹(こひょう)争う。
人頻(しき)りに塗炭(とたん)に墜つ、公豈(こうあ)に精誠(せいせい)を忘れんや。
元帥(げんすい) 新律(しんりつ)を調え、前軍(ぜんぐん) 旧京を圧す。
邊を安じて仍って扈從(こじゅう)し。功名に後(おく)るること作す莫れ

宮島(7)

奉送郭中丞兼太樸卿充隴右節度使三十韻 現代語訳と訳註
(本文) #4

妙譽期元宰,殊恩且列卿。幾時回節鉞,戮力掃欃槍?
圭竇三千士,雲梯七十城。恥非齊說客,秖似魯諸生。
通籍微班忝,周行獨坐榮。隨肩趨漏刻,短發寄簪纓。

(下し文) #4
妙誉(みょうよ) 元宰(げんさい)を期す、殊恩(しゅおん)且つ列卿(れつけい)。
幾時か 節鉞(せつえつ)を廻らし、力を戮(あ)わせて欃槍(ざんそう)を掃わん』
圭竇(けいとう) 三千の士、雲梯(うんてい)七十城。
恥ずらくは 斉の説客に非るを、秖(ただ)魯の諸生(しょせい)に似たり。
通籍(つうせき) 徴班(びはん)を忝(かたじけな)くす、周行(しゅうこう) 独坐 栄ゆ。
肩を随えて漏刻(ろうこく)に趨(おもむ)き、短髪 簪纓(しんえい)に寄す。


(現代語訳)
だから世間の美しいうわさばなしではあなたが宰相になられる様に期待しているのだが、天子は特別の御恩を加えられとりあえずあなたを列卿の位に優恩によるおとりたてをされたのだ。
いつになったら、あたなは隴右の僻地から節鉞をうけて大方向転換して、唐王朝の中央師団と力をあわせて兵乱の表象ともいうべき禍の不吉なものとされる星をはらいのけてしまわれることであるのか。
孔子の魯の国には生け垣の門をくくっている弟子の儒士が三千人もいたし、斉には雲梯で攻むべき不落の城が七十もある。
自分は恥ずかしながら酈食其(れきいき)のように弁舌でもって敵の城を落せることができるというような説客、論客でなく、ただ生け垣をくぐって入るような魯の書生たちみたいな者でしかない。
自分はやっと仕籍を宮中に通じて下位をはずかしめるこでしかなくかたじけないことであるが、あなたは朝廷の列位に於て天子から専席独坐を賜わる程の栄誉をうけておられるのだ。
そうしてあなたとは肩をそろえず控えめにして、あとにつき従って朝参の時刻にはまかりいでるつもりである、老衰の短い頭髪ではあるが官吏の実を全うしたいと思っているのだ。


(訳注)"#4
妙譽期元宰,殊恩且列卿。

妙誉(みょうよ) 元宰(げんさい)を期す、殊恩(しゅおん)且つ列卿(れつけい)。
だから世間の美しいうわさばなしではあなたが宰相になられる様に期待しているのだが、天子は特別の御恩を加えられとりあえずあなたを列卿の位に優恩によるおとりたてをされたのだ。
妙譽 巧妙な世上の美しいうわさばなし。○元宰 宰相。○殊恩 天子の特別のおぼしめし。○列卿 卿の例位にあるもの。御史中丑は正四品下、太僕寺卿は従三品である。今英乂は中丞にして卿を兼ねるのは優恩による。


幾時回節鉞,戮力掃欃槍?』
幾時か 節鉞(せつえつ)を廻らし、力を戮(あ)わせて欃槍(ざんそう)を掃わん』
いつになったら、あたなは隴右の僻地から節鉞をうけて大方向転換して、唐王朝の中央師団と力をあわせて兵乱の表象ともいうべき禍の不吉なものとされる星をはらいのけてしまわれることであるのか。』
幾時 何の時と同じ。○回節鉞 節鉞とは天子より軍権を御委任あるしるしとして賜わる鉞(まさかり)。回とは隴右道の方面から長安の方へと方向転換することをいう。○戮力 中央の人々とカを合わせること。○掃欃槍 目標槍はほうき星、兵乱の象、禍の不吉なものとされる星、掃とははらいのけること。


圭竇三千士,雲梯七十城。
圭竇(けいとう) 三千の士、雲梯(うんてい)七十城。
孔子の魯の国には生け垣の門をくくっている弟子の儒士が三千人もいたし、斉には雲梯で攻むべき不落の城が七十もある。
圭竇 門の傍の生け垣のくぐり穴、その穴の頂辺が将棋のこまの頭のような鋭角である飾り気の全くないさまをいう。貧士の居宅のさま。 〇三千 多いことをいう。これは孔子の弟子三千人と数えなくていうものと同様な数値。○雲梯 「墨子」に楚の荘王が公輸椴をして雲梯を作って宋を攻めさせたという話がある。雲梯は雲まで届く高いはしごで、これを用いて敵城にのぼる。城郭の壁の高さが15m以上あったとされるから。20m~25m以上の梯子であろうか。〇七十城 漢の酈食其は弁舌を振って斉の七十余城を降らしめたという話がある。張良、韓信の時代。・漢の酈食其 身長は8尺ほどあり読書を好んだが、貧乏で家業を持たなかった。のちに村の門番となるが、周囲からは「狂生(気狂い先生)」と呼ばれ相手にされなかった。韓信が斉攻略が進んでいるときに、酈食其は進言して斉との和平交渉に臨み、その弁舌で以って斉の七十余城を一旦帰順せしめることに成功する。杜甫ができることは弁舌、詩文で戦うことができるということをいうものである。


恥非齊說客,秖似魯諸生。
恥ずらくは 斉の説客に非るを、秖(ただ)魯の諸生(しょせい)に似たり。
自分は恥ずかしながら酈食其(れきいき)のように弁舌でもって敵の城を落せることができるというような説客、論客でなく、ただ生け垣をくぐって入るような魯の書生たちみたいな者でしかない。
斉説客 説客は弁舌でもって戦う、ネゴシエーター遊説の人、即ち酈食其を杜甫自身という。○魯諸生 魯の国の書生たち、魯には儒学を修める人物が多い。 


通籍微班忝,周行獨坐榮。
通籍(つうせき) 徴班(びはん)を忝(かたじけな)くす、周行(しゅうこう) 独坐 栄ゆ。
自分はやっと仕籍を宮中に通じて下位をはずかしめるこでしかなくかたじけないことであるが、あなたは朝廷の列位に於て天子から専席独坐を賜わる程の栄誉をうけておられるのだ。
通籍 名ふだを宮中に通じておく、仕官すること。○微班 つまちない位列、左拾遺は従八品上である。〇 その位をはずかしめる、謙遜の辞。○周行 「詩経」巻耳の詩にみえる。「周ノ列位」ととく。周の列位とは周の朝廷の臣をさす。○独坐栄 後漢の宜乗という者が御史中丞となったとき、光武帝は彼に司隷校尉・尚書令と並に席を専らにして坐ることを許したので、都人たちは彼らを三独坐と号したという。今英叉もさようの待遇をうけて栄をになうという意。


隨肩趨漏刻,短發寄簪纓。
肩を随えて漏刻(ろうこく)に趨(おもむ)き、短髪 簪纓(しんえい)に寄す。
そうしてあなたとは肩をそろえず控えめにして、あとにつき従って朝参の時刻にはまかりいでるつもりである、老衰の短い頭髪ではあるが官吏の実を全うしたいと思っているのだ。
随肩 我が肩を先方のあとにしたがえること、つまりはすかいに一歩後れてあるく、郭のあとにつくことをいう。○趨漏刻 漏刻は水どけい、参朝の時刻をいう。趨はおもむく、はしる、でかけてゆくこと。○短髪 作者が老境に入って髪がみじかくなる。○寄簪纓 寄とは我が身を寄託しておくこと。簪纓は冠をとめるかんざし、ひも、官吏の礼装。

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