奉送郭中丞兼太樸卿充隴右節度使三十韻 #5 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 192
御史中丞郭英乂が太僕卿の官を兼ねながら、隴右節度使に充てられたのを送る詩。製作時は757年至徳二載の秋八月。


奉送郭中丞兼太樸卿充隴右節度使三十韻
詔發山西將,秋屯隴右兵。淒涼餘部曲,燀赫舊家聲。
雕鶚乘時去,驊騮顧主鳴。艱難須上策,容易即前程。
斜日當軒蓋,高風卷旆旌。松悲天水冷,沙亂雪山清。#1
和虜猶懷惠,防邊詎敢驚。古來於異域,鎮靜示專徵。
燕薊奔封豕,周秦觸駭鯨。中原何慘黷,遺孽尚縱橫。
箭入昭陽殿,笳吹細柳營。內人紅袖泣,王子白衣行。#2
宸極妖星動,園陵殺氣平。空餘金碗出,無複穗帷輕。
毀廟天飛雨,焚宮火徹明。罘罳朝共落,棆桷夜同傾。
三月師逾整,群凶勢就烹。瘡痍親接戰,勇決冠垂成。#3
妙譽期元宰,殊恩且列卿。幾時回節鉞,戮力掃欃槍?
圭竇三千士,雲梯七十城。恥非齊說客,秖似魯諸生。
通籍微班忝,周行獨坐榮。隨肩趨漏刻,短發寄簪纓。#4
徑欲依劉表,還疑厭隬衡。
あなたにたよろうかとおもうのだが、いま隴右へゆかれるので、むかし王粲が劉表に依った故事にならって、わたしもすぐにでもついていこうかと思うのだ、また、禰衡がきらわれた様にあなたが自分を嫌がられはしまいかと疑ってしまうのである。
漸衰那此別,忍淚獨含情。
わたしはだんだん歳を重ね、衰えかかってきはじめたのでここでお別れをすることができようものか。ただはふり落ちんとする涙をこらえてひとりでじっと胸のつらさをもちこたえるしかないのである。』
廢邑狐狸語,空村虎豹爭。
叛乱のために、廃墟のようになった県や村では狐や狸が語り合いをしているだけらしい。逃村や略奪、強奪で住む人も無い村では残っているのは虎や豹になって争っているのだ。
人頻墜塗炭,公豈忘精誠。
人々はいまや頻りに塗炭の苦しみにおちいっている、あなたがこの国に対して精真な誠の念を忘れることがありましょうか。
元帥調新律,前軍壓舊京。
元帥、広平王淑俄は新しき銅管を吹いて音調をととのえて軍紀を正し、その前軍の大将李嗣業は長安を占圧する勢いになってきている。
安邊仍扈從。莫作後功名。#5

あなたも隴右の辺境を安寧化されるとそのまま天子の車駕のおともをして都の方へとたちかえられ、他人が功名を立てるのにおくれをとる様なことがあってはなりません。

#1
詔して山西の将を発し、秋 隴右(ろうう)の兵を屯せしむ。
凄涼 部曲余る、燀赫(せきかく) 家声旧りたり。
雕鶚(ちょうがく) 時に乗じて去る、驊騮(かりゅう) 主を顧みて鳴く。
艱難 上策を須(ま)つ 容易 前程に即く
斜日 軒蓋(けんがい)に当り、高風 旆旌(はいせい) を巻く。
松悲しみて 天水冷かに、沙乱れて 雪山清し。
#2
虜に和するすら猶 恵に懐(な)つく、辺を防ぐに 詎(なん)ぞ敢て驚かさんや。
古来 異域に於ける、鎮静にして 専征を示す。
燕薊(えんけい) 封豕(ほうし)奔(はし)り、周秦 駭鯨(がいけい)触る。
中原何ぞ慘黷(しんとく)なる、遺孽(いげつ) 尚 縦横たり。
箭は入る昭陽殿、節は吹かる細柳の営。
内人 紅袖(こうしゅう)に泣き、王子白衣行く。
#3
宸極(しんきょく)妖星動き、園陵(えんりょう) 殺気 平かなり。
空しく余す金碗の出づるを、復た穗帷(けいい)の軽き無し。
毀廟(きびょう)天雨を飛ばし、焚宮(ふんきゅう)火明に徹す。
罘罳(ふし) 朝に共に落ち、棆桷(りんかく) 夜 同じく傾く。』
三月 師 逾々整い、羣胡 勢 烹(に)らるるに就く。
瘡痍(そうい) 親(みずか)ら接戦す、勇決(ゆうけつ) 垂成(すいせい)に冠たり。
#4
妙誉(みょうよ) 元宰(げんさい)を期す、殊恩(しゅおん)且つ列卿(れつけい)。
幾時か 節鉞(せつえつ)を廻らし、力を戮(あ)わせて欃槍(ざんそう)を掃わん』
圭竇(けいとう) 三千の士、雲梯(うんてい)七十城。
恥ずらくは 斉の説客に非るを、秖(ただ)魯の諸生(しょせい)に似たり。
通籍(つうせき) 徴班(びはん)を忝(かたじけな)くす、周行(しゅうこう) 独坐 栄ゆ。
肩を随えて漏刻(ろうこく)に趨(おもむ)き、短髪 簪纓(しんえい)に寄す。
#5
径(ただちに)に劉表(りゅうひょう)に依らんと欲す、還た疑う隬衡(でいこう)を厭(いと)わんかと。
漸(ようや)く衰(おとろ)う 那ぞ此に別れん,淚を忍びて獨り情を含む。』
廃邑(はいゆう) 狐狸(こり) 語り、空邨(くうそん) 虎豹(こひょう)争う。
人頻(しき)りに塗炭(とたん)に墜つ、公豈(こうあ)に精誠(せいせい)を忘れんや。
元帥(げんすい) 新律(しんりつ)を調え、前軍(ぜんぐん) 旧京を圧す。
邊を安じて仍って扈從(こじゅう)し。功名に後(おく)るること作す莫れ

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奉送郭中丞兼太樸卿充隴右節度使三十韻 現代語訳と訳註
(本文) #5

徑欲依劉表,還疑厭隬衡。漸衰那此別,忍淚獨含情。
廢邑狐狸語,空村虎豹爭。人頻墜塗炭,公豈忘精誠。
元帥調新律,前軍壓舊京。安邊仍扈從。莫作後功名。#5

(下し文) #5
径(ただちに)に劉表(りゅうひょう)に依らんと欲す、還た疑う隬衡(でいこう)を厭(いと)わんかと。
漸(ようや)く衰(おとろ)う 那ぞ此に別れん,淚を忍びて獨り情を含む。』
廃邑(はいゆう) 狐狸(こり) 語り、空邨(くうそん) 虎豹(こひょう)争う。
人頻(しき)りに塗炭(とたん)に墜つ、公豈(こうあ)に精誠(せいせい)を忘れんや。
元帥(げんすい) 新律(しんりつ)を調え、前軍(ぜんぐん) 旧京を圧す。
邊を安じて仍って扈從(こじゅう)し。功名に後(おく)るること作す莫れ


(現代語訳)
あなたにたよろうかとおもうのだが、いま隴右へゆかれるので、むかし王粲が劉表に依った故事にならって、わたしもすぐにでもついていこうかと思うのだ、また、禰衡がきらわれた様にあなたが自分を嫌がられはしまいかと疑ってしまうのである。
わたしはだんだん歳を重ね、衰えかかってきはじめたのでここでお別れをすることができようものか。ただはふり落ちんとする涙をこらえてひとりでじっと胸のつらさをもちこたえるしかないのである。』
叛乱のために、廃墟のようになった県や村では狐や狸が語り合いをしているだけらしい。逃村や略奪、強奪で住む人も無い村では残っているのは虎や豹になって争っているのだ。
人々はいまや頻りに塗炭の苦しみにおちいっている、あなたがこの国に対して精真な誠の念を忘れることがありましょうか。
元帥、広平王淑俄は新しき銅管を吹いて音調をととのえて軍紀を正し、その前軍の大将李嗣業は長安を占圧する勢いになってきている。
あなたも隴右の辺境を安寧化されるとそのまま天子の車駕のおともをして都の方へとたちかえられ、他人が功名を立てるのにおくれをとる様なことがあってはなりません。



(訳注)#5
徑欲依劉表,還疑厭隬衡。

径(ただちに)に劉表(りゅうひょう)に依らんと欲す、還た疑う隬衡(でいこう)を厭(いと)わんかと。
あなたにたよろうかとおもうのだが、いま隴右へゆかれるので、むかし王粲が劉表に依った故事にならって、わたしもすぐにでもついていこうかと思うのだ、また、禰衡がきらわれた様にあなたが自分を嫌がられはしまいかと疑ってしまうのである。
依劉表 劉表が三国の時、荊州の長官であったとき、魏の王粲が往って彼に依った。今、王粲を以て自ずから比し、劉表を以て郭嘉に此する。○厭禰衡 後漢の禰衡は文才があったが、曹操は彼を穀そうと思い、黄祖が性急であることを知って祖のもとに赴かせたところ、祖はついに彼を殺した。禰㤚を以て自ずから比す。厭うとは郭がいとうこと。

漸衰那此別,忍淚獨含情。』
漸(ようや)く衰(おとろ)う 那ぞ此に別れん,淚を忍びて獨り情を含む。』
わたしはだんだん歳を重ね、衰えかかってきはじめたのでここでお別れをすることができようものか。ただはふり落ちんとする涙をこらえてひとりでじっと胸のつらさをもちこたえるしかないのである。』
漸衰 自ずからいう、だんだん老衰する。○那此別 どうしてここに別れられよう。○含情 むねのうちにつらさをじっともちこたえている。


廢邑狐狸語,空村虎豹爭。
廃邑(はいゆう) 狐狸(こり) 語り、空邨(くうそん) 虎豹(こひょう)争う。
叛乱のために、廃墟のようになった県や村では狐や狸が語り合いをしているだけらしい。逃村や略奪、強奪で住む人も無い村では残っているのは虎や豹になって争っているのだ。
廃邑 廃墟のようになった県や村。○狐狸語 きつね、たぬきがかたりあう。○空邸人なきむら。○虎豹争 虎や豹がけんかをする。狐狸、虎豹は盗賊をたとえていう。廃邑、空村は兵乱にあらされた地方をいう。


人頻墜塗炭,公豈忘精誠。
人頻(しき)りに塗炭(とたん)に墜つ、公豈(こうあ)に精誠(せいせい)を忘れんや。
人々はいまや頻りに塗炭の苦しみにおちいっている、あなたがこの国に対して精真な誠の念を忘れることがありましょうか。
 人々。○墜塗炭 「尚書」仲他之語に「民ハ塗炭二墜ツ」とみえる、泥や炭火のなかにおちたほどの苦しみをうけること。○ 郭嘉をさすことで、ここでは、郭英乂をさす。○精誠 朝廷に対してはげみ、誠をつくす。


元帥調新律,前軍壓舊京。
元帥(げんすい) 新律(しんりつ)を調え、前軍(ぜんぐん) 旧京を圧す。
元帥、広平王淑俄は新しき銅管を吹いて音調をととのえて軍紀を正し、その前軍の大将李嗣業は長安を占圧する勢いになってきている。
元帥 広平王淑供(玄宗の子)をさす。○調新律 律は銅管のふえ、その音によって羣衆をととのえる、調は音声をととのえること。この意味は、新らたに軍紀を整備することをいう。集結し、忠誠を誓い、軍を整備すること言う。○前軍 李嗣業の軍をさす。淑の配下に嗣業をおき、部曲を整えて長安を回復させようとした。○旧京 長安。


安邊仍扈從。莫作後功名。』
邊を安じて仍って扈從(こじゅう)し。功名に後(おく)るること作す莫れ 
あなたも隴右の辺境を安寧化されるとそのまま天子の車駕のおともをして都の方へとたちかえられ、他人が功名を立てるのにおくれをとる様なことがあってはなりません。
安辺 辺地(陳右)を安寧化ならしめる。○ そのまま。○扈從 扈はあとに従うこと、扈從とは天子の奉賀のあとにつきしたがうことをいう。○後功名他 人が功名をたてるのよりもおくれる。


郭嘉 (かく か、170年 - 207年)は中国後漢末期の武将・政治家。字は奉孝(ほうこう)。郭奕の父、郭深・郭敞(『世語』)の祖父、郭猟の高祖父。頴川郡陽翟県の人。『三国志』魏志に伝がある。曹操に仕えた軍師の1人。曹操の覇業を助けたが若死し、曹操に惜しまれた。


劉表 (りゅう ひょう、漢安元年(142年) ? - 建安13年(208年)8月)は、後漢末期の政治家・儒学者。字は景升(けいしょう)。山陽郡高平県[1]の人。前漢の景帝の第4子である魯恭王・劉余の子孫[2]。後漢の統制力が衰えた後に荊州に割拠した。


隬衡 魏の禰衛は「鸚鵡賦」を即座に作り一字を改めなかったという。
禰衡は自分は発狂したと仕官を断ってしまった。しかし曹操は才能を重んじていたので、又、孔融のべた褒めを聞いていたので殺そうとはしなかった。
劉表の元では文才を発揮し、また劉表に対しては下手に出た。しかし、その配下に対しては傲慢な態度をとったうえ、酷評を行なったため、劉表配下の面々から恨まれた。このため、讒言により劉表の不興を買って遠ざけられた。
劉表の家臣で黄祖の子・黄射と友人になり、黄射の仲介で黄祖と出会う。黄祖は禰衡をはじめは高く評価したが、次第に禰衡が傲慢な態度をとるようになったため、遂に堪忍袋の緒が切れた。そして部下に禰衡の処刑を命じ、その部下も禰衡を恨んでいたので、早速殺してしまった。禰衡は死の直前まで黄祖を罵り続けた。黄祖は禰衡を殺したことを後に悔いたという。 彼の死後、黄射は彼の遺体を鸚鵡洲という地(現湖北省武漢市)に埋葬した。

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