北征 #6(全12回)杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 213

北徵 #6(全12回)

#5までのあらすじ
757年粛宗の至徳二載の秋。特別に天子の御恩寵を被って仰せにより、鄜州のあばら家へ帰ることを許された。今、天下はどこでも治安が悪く、無政府状態のところ多くなっているのだ、だからわたしの胸中の心配は増えつづけていったい何時終わるのだろうか。
心配を胸に、最初は徒歩ですすんでいくと、わたしがこの路で出会うこの里の人々の多くは傷をうけていた。そしてやっと馬を駆ることができ、鳳翔の方を振り返るとはるか遠くの山々が重なっていた。少量を過ぎ、邠州を過ぎていた。彌満和深くなり猛虎の声が大空を破りそうな声で唸っているのだ。少し行くと菊が今年の秋の花を変わりなく咲かせていた。山中の果物が多く、橡の実や栗などがあり、「桃源」の伯郷のようだ。自分の処世のまずさと世の移ろいがうまくいっていないことをなげかわしくおもう。そのうちに秦の文公の祭壇を過ぎ、夜更けに戦場跡を通り過ぎた。たくさんの戦死者がそのままにされ、白骨が月明かりに照らされていた。

 
北徵(北征) 6
#5
坡陀望鄜畤,岩穀互出沒。我行已水濱,我僕猶木末。
鴟梟鳴黃桑,野鼠拱亂穴。夜深經戰場,寒月照白骨。
潼關百萬師,往者敗何卒?遂令半秦民,殘害為異物。』

#6
況我墮胡塵,及歸盡華發。
まして、わたしは蘆子関から霊武に向かう際、安史軍・叛乱軍に掴まってしまった。そのためそれを逃れていろいろあり、いま家へ帰るにあたって、自分の髪の毛がすっかり白髪になってしまっているのだ。
經年至茅屋,妻子衣百結。
掴まってから一年目に鄜州羌村の茅星へ来てみると妻や子はぼろをつぎあわせた衣をきている。
慟哭松聲回,悲泉共幽咽。
慟哭すると松風の声が吹きめぐり、悲しげな泉の水さえ自分等とともにむせびなきしている。
平生所嬌兒,顏色白勝雪。
ひごろ甘やかして威張らせておいたいたずらっ子の男の子どもは栄養不良で顔色が雪よりもまっ白である。
見耶背面啼,垢膩腳不襪。
彼はこのおやじのわたしを見てそっぽを向いて泣き出すしまつだ。みると彼の脚は垢や油が汚く付いていて、くつたびもはいていないのだ。
牀前兩小女,補綴才過膝。
寝る牀の前には二人の女の子がいるが、彼女等はほころびをつづりあわせた著物をきているがその着丈はやっと膝がかくれるほどである。

7
海圖拆波濤,舊繡移曲折。天吳及紫鳳,顛倒在短褐。
老夫情懷惡,數日臥嘔泄。那無囊中帛,救汝寒凜栗?
粉黛亦解苞,衾裯稍羅列。瘦妻面複光,癡女頭自櫛。

#5
坡陀(はだ)として鄜畤を望めば,岩穀(がんこく)互いに出沒す。
我が行 已に水濱(すいひん),我が僕(ぼく)猶 木末(ぼくまつ)。
鴟梟(しちょう)は黄桑(こうそう)に鳴き、野鼠(やそ)は乱穴(らんけつ)に拱(きょう)す。
夜 深(ふ)けて戦場を経(ふ)れば、寒月(かんげつ)  白骨を照らす。
潼関(どうかん)  百万の師(いくさ)、往者(さきには) 散ずるところ何ぞ卒(すみや)かなりし。
遂に半秦(はんしん)の民をして、残害(ざんがい)して異物と為(な)らしむ。』

#6
況(いわ)んや我は胡塵(こじん)に堕(お)ち、帰るに及んで尽(ことごと)く華髪(かはつ)なり。
年(とし)を経(へ)て茅屋(ぼうおく)に至れば、妻子  衣(ころも)は百結(ひゃくけつ)なり。
慟哭(どうこく)すれば松声(しょうせい)廻(めぐ)り、悲泉(ひせん)は共に幽咽(ゆうえつ)す。
平生(へいぜい)  嬌(きょう)とする所の児(じ)、顔色(がんしょく)  白くして雪にも勝(まさ)る。
耶(ちち)を見て面(おもて)を背(そむ)けて啼(な)く、垢膩(こうじ)して脚(あし)に襪(たび)はかず。
床前(しょうぜん)の両小女、補綴(ほてつ)して 才(わず)かに膝(ひざ)を過ごす。

#7
海図(かいず)は波涛を拆(さ)き、旧繍(きゅうしゅう)は移りて曲折(きょくせつ)たり。
天呉(てんご)  及び紫鳳(しほう)、顛倒(てんとう)して裋褐(じゅかつ)に在り。
老父  情懐(じょうかい)悪(あ)しく、嘔泄(おうせつ)して臥(ふ)すこと数日なり。
那(なん)ぞ囊中(のうちゅう)の帛(きぬ)無からんや、汝(なんじ)の寒くして凛慄(りんりつ)たるを救わん。
粉黛(ふんたい) 亦た苞(つつみ)を解き、衾裯(きんちゅう) 稍(やや)羅列(られつ)す。
痩妻は面(おもて)をば復(ま)た光(かがや)かせ、痴女(ちじょ)は頭(こうべ)をば自ら櫛(くし)けずる。

現代語訳と訳註
(本文)

況我墮胡塵,及歸盡華發。
經年至茅屋,妻子衣百結。
慟哭松聲回,悲泉共幽咽。
平生所嬌兒,顏色白勝雪。
見耶背面啼,垢膩腳不襪。
床前兩小女,補綴才過膝。

(下し文) #6
況(いわ)んや我は胡塵(こじん)に堕(お)ち、帰るに及んで尽(ことごと)く華髪(かはつ)なり。
年(とし)を経(へ)て茅屋(ぼうおく)に至れば、妻子  衣(ころも)は百結(ひゃくけつ)なり。
慟哭(どうこく)すれば松声(しょうせい)廻(めぐ)り、悲泉(ひせん)は共に幽咽(ゆうえつ)す。
平生(へいぜい)  嬌(きょう)とする所の児(じ)、顔色(がんしょく)  白くして雪にも勝(まさ)る。
耶(ちち)を見て面(おもて)を背(そむ)けて啼(な)く、垢膩(こうじ)して脚(あし)に襪(たび)はかず。
床前(しょうぜん)の両小女、補綴(ほてつ)して 才(わず)かに膝(ひざ)を過ごす。

(現代語訳) 
まして、わたしは蘆子関から霊武に向かう際、安史軍・叛乱軍に掴まってしまった。そのためそれを逃れていろいろあり、いま家へ帰るにあたって、自分の髪の毛がすっかり白髪になってしまっているのだ。
掴まってから一年目に鄜州羌村の茅星へ来てみると妻や子はぼろをつぎあわせた衣をきている。
慟哭すると松風の声が吹きめぐり、悲しげな泉の水さえ自分等とともにむせびなきしている。
ひごろ甘やかして威張らせておいたいたずらっ子の男の子どもは栄養不良で顔色が雪よりもまっ白である。
彼はこのおやじのわたしを見てそっぽを向いて泣き出すしまつだ。みると彼の脚は垢や油が汚く付いていて、くつたびもはいていないのだ。
寝る牀の前には二人の女の子がいるが、彼女等はほころびをつづりあわせた著物をきているがその着丈はやっと膝がかくれるほどである。


(訳注) 北征 #6
況我墮胡塵,及歸盡華發。

まして、わたしは蘆子関から霊武に向かう際、安史軍・叛乱軍に掴まってしまった。そのためそれを逃れていろいろあり、いま家へ帰るにあたって、自分の髪の毛がすっかり白髪になってしまっているのだ。
堕胡塵 えびすの塵のなかにおちる。安史軍(安禄山軍、史忠明軍、異民族軍、潘鎮諸公軍などこのブログでは、官軍・賊軍という表現はしない<官軍といわれる軍も、唐王朝の軍、当初は、朔方軍とウイグル軍主体であった。杜甫は、王朝軍を建て直すことをしないでウイグルに援軍を求めたことを諌めている。>)の中に陥ったことをいう。蘆子関には、史忠明の軍が抑えており、霊武の郭子儀の朔方軍に粛宗が行在所を置いていた。杜甫は、家族を羌村において北に向かって蘆子関を前に盗賊に馬を奪われ、隠れているところを掴まった。このいきさつは、

王砅「送重表姪王秋評事便南海」 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 131

彭衙行 杜甫 132 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 132 -#1

塞蘆子 #1 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 195

を参照されたい。
 鄜州羌村へ帰る。○華髪 しらが。


經年至茅屋,妻子衣百結。
掴まってから一年目に鄜州羌村の茅星へ来てみると妻や子はぼろをつぎあわせた衣をきている。
経年 年すぎて。ここでは、一年後。○茅屋 かやぶきの家。○百結 むすびめだらけ。破れたところ、擦り切れたところを継ぎ接ぎする事をいう。


慟哭松聲回,悲泉共幽咽。
慟哭すると松風の声が吹きめぐり、悲しげな泉の水さえ自分等とともにむせびなきしている。
慟哭 悲しみのあまり、声をはりあげて泣き叫ぶこと。○松声廻 廻とは風がこだまのように響き渡ること、松声は松かぜのおと。○悲泉 かなしめるが如き泉のおと。○ 我等人間とともに。○幽咽 ひとり静かにむせび泣くこと。


平生所嬌兒,顏色白勝雪。
ひごろ甘やかして威張らせておいたいたずらっ子の男の子どもは栄養不良で顔色が雪よりもまっ白である。
所嬌児 威張らせておいたこども、いたずらっ子ということ。杜甫の子供については月夜 と家族を詠う詩について 

月夜 と家族を詠う詩について 杜甫  kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 150

憶幼子 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 156

得家書 #1 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 181


を参照されたい。


見耶背面啼,垢膩腳不襪。
彼はこのおやじのわたしを見てそっぽを向いて泣き出すしまつだ。みると彼の脚は垢や油が汚く付いていて、くつたびもはいていないのだ。
 爺と同じ、ちちおや、杜甫自ずからをいう。○背面 面をそむける。そっぽを向くこと。○垢膩 あか、あぶら。○ くつたぴ。


牀前兩小女,補綴才過膝。
寝る牀の前には二人の女の子がいるが、彼女等はほころびをつづりあわせた著物をきているがその着丈はやっと膝がかくれるほどである。
 ねだい。○補綴 きもののほつれをおぎないつづる、綴を或は綻に作る、綻はほころぴ。○才 後と同じ、わずかに、やっと。○過膝 ひざからすこしさがる。○海図 海をえがいたもの。

blogram投票ボタン

毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
05rihakushi350

李白詩350首kanbuniinkai紀頌之のブログ

700Toho shi

kanbuniinkai11の頌之漢詩 杜甫詩700首



800tousouSenshu
kanbuniinkai10 頌之の漢詩 唐宋詩人選集 Ⅰ李商隠150首 Ⅱ韓退之(韓愈)Ⅶ孟郊
各詩人についてはブログ内の検索を利用したほうが良い場合もあります。
burogutitl770

http://kanshi100x100.blog.fc2.com/

唐宋詩 
(Ⅰ李商隠Ⅱ韓退之(韓愈))
李白詩INDEX02
李商隠INDEX02
杜甫詩INDEX02