北征 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 214

北徵 #7(全12回)

#6までのあらすじ
757年粛宗の至徳二載の秋。特別に天子の御恩寵を被って仰せにより、鄜州のあばら家へ帰ることを許された。今、天下はどこでも治安が悪く、無政府状態のところ多くなっているのだ、だからわたしの胸中の心配は増えつづけていったい何時終わるのだろうか。
心配を胸に、最初は徒歩ですすんでいくと、わたしがこの路で出会うこの里の人々の多くは傷をうけていた。そしてやっと馬を駆ることができ、鳳翔の方を振り返るとはるか遠くの山々が重なっていた。少量を過ぎ、邠州を過ぎていた。彌満和深くなり猛虎の声が大空を破りそうな声で唸っているのだ。少し行くと菊が今年の秋の花を変わりなく咲かせていた。山中の果物が多く、橡の実や栗などがあり、「桃源」の伯郷のようだ。自分の処世のまずさと世の移ろいがうまくいっていないことをなげかわしくおもう。そのうちに秦の文公の祭壇を過ぎ、夜更けに戦場跡を通り過ぎた。たくさんの戦死者がそのままにされ、白骨が月明かりに照らされていた。
叛乱軍に掴まって長安に送られ、そこから鳳翔の行在所に逃げ、一年たって、戻ってきた。妻も子供も憐れな恰好であった。

6
況我墮胡塵,及歸盡華發。經年至茅屋,妻子衣百結。
慟哭松聲回,悲泉共幽咽。平生所嬌兒,顏色白勝雪。
見耶背面啼,垢膩腳不襪。床前兩小女,補綴才過膝。
7
海圖拆波濤,舊繡移曲折。
彼女等は上着の「ちょっき」をきているがそれは模様の海図の波濤はひきさかれているし、繍い模様の位置がうつっていて曲ったり折れたりしている。
天吳及紫鳳,顛倒在短褐。
すなわち天呉の絵、紫鳳のかたちに及んでいる、丈が短くなった粗末な毛織りの上にきる「ちょっき」の上であちこち顛倒してみえている。
老夫情懷惡,數日臥嘔泄。
これをみてはわたしは胸のうちがきもちわるくなって、はいたり、くだしたりして、二三日は臥せてしまった。
那無囊中帛,救汝寒凜栗?
どうしてわたしに汝等が嚢中の帛がないことで寒がってふるえているのを救うことのできうることができるというのか。
粉黛亦解苞,衾裯稍羅列。
それでもおしろいや眉墨をいれた包みものがほどかれるやら、かいまきや、ひとえ寝まきもだんだんとならべられた。
瘦妻面複光,癡女頭自櫛。

痩せた妻もその顔面に光があるようになった、としわの行かない娘たちも自分自身で頭の髪をとかしたりした。

8
學母無不為,曉妝隨手抹。移時施朱鉛,狼籍畫眉闊。
生還對童稚,似欲忘饑渴。問事競挽須,誰能即嗔喝?
翻思在賊愁,甘受雜亂聒。新婦且慰意,生理焉得說?』

#6
況(いわ)んや我は胡塵(こじん)に堕(お)ち、帰るに及んで尽(ことごと)く華髪(かはつ)なり。
年(とし)を経(へ)て茅屋(ぼうおく)に至れば、妻子  衣(ころも)は百結(ひゃくけつ)なり。
慟哭(どうこく)すれば松声(しょうせい)廻(めぐ)り、悲泉(ひせん)は共に幽咽(ゆうえつ)す。
平生(へいぜい)  嬌(きょう)とする所の児(じ)、顔色(がんしょく)  白くして雪にも勝(まさ)る。
耶(ちち)を見て面(おもて)を背(そむ)けて啼(な)く、垢膩(こうじ)して脚(あし)に襪(たび)はかず。
床前(しょうぜん)の両小女、補綴(ほてつ)して 才(わず)かに膝(ひざ)を過ごす。
#7
海図(かいず)は波涛を拆(さ)き、旧繍(きゅうしゅう)は移りて曲折(きょくせつ)たり。
天呉(てんご)  及び紫鳳(しほう)、顛倒(てんとう)して裋褐(じゅかつ)に在り。
老父  情懐(じょうかい)悪(あ)しく、嘔泄(おうせつ)して臥(ふ)すこと数日なり。
那(なん)ぞ囊中(のうちゅう)の帛(きぬ)無からんや、汝(なんじ)の寒くして凛慄(りんりつ)たるを救わん。
粉黛(ふんたい) 亦た苞(つつみ)を解き、衾裯(きんちゅう) 稍(やや)羅列(られつ)す。
痩妻は面(おもて)をば復(ま)た光(かがや)かせ、痴女(ちじょ)は頭(こうべ)をば自ら櫛(くし)けずる。

#8
母を学(まね)びて為(な)さざるは無く、曉妝(ぎょうしょう)  手に随(したが)いて抹す。
時(とき)を移して朱鉛(しゅえん)を施(ほどこ)せば、狼藉(ろうぜき)として画眉(がび)闊(ひろ)し。
生還して童稚(どうち)に対すれば、飢渇(きかつ)を忘れんと欲(ほっ)するに似たり。
事を問うて競(きそ)うて鬚(ひげ)を挽(ひ)くも、誰か能(よ)く即ち嗔喝(しんかつ)せん。
翻(ひるがえ)って賊に在りし愁いを思いて、甘んじて雑乱(ざつらん)の聒(かまびす)しきを受く。
新たに帰りて且(か)つ意を慰(なぐさ)む、生理(せいり)  焉(いずく)んぞ説くことを得ん。


現代語訳と訳註
(本文)

海圖拆波濤,舊繡移曲折。
天吳及紫鳳,顛倒在短褐。
老夫情懷惡,數日臥嘔泄。
那無囊中帛,救汝寒凜栗?
粉黛亦解苞,衾裯稍羅列。
瘦妻面複光,癡女頭自櫛。


(下し文) #7
海図(かいず)は波涛を拆(さ)き、旧繍(きゅうしゅう)は移りて曲折(きょくせつ)たり。
天呉(てんご)  及び紫鳳(しほう)、顛倒(てんとう)して裋褐(じゅかつ)に在り。
老父  情懐(じょうかい)悪(あ)しく、嘔泄(おうせつ)して臥(ふ)すこと数日なり。
那(なん)ぞ囊中(のうちゅう)の帛(きぬ)無からんや、汝(なんじ)の寒くして凛慄(りんりつ)たるを救わん。
粉黛(ふんたい) 亦た苞(つつみ)を解き、衾裯(きんちゅう) 稍(やや)羅列(られつ)す。
痩妻は面(おもて)をば復(ま)た光(かがや)かせ、痴女(ちじょ)は頭(こうべ)をば自ら櫛(くし)けずる。

(現代語訳)
彼女等は上着の「ちょっき」をきているがそれは模様の海図の波濤はひきさかれているし、繍い模様の位置がうつっていて曲ったり折れたりしている。
すなわち天呉の絵、紫鳳のかたちに及んでいる、丈が短くなった粗末な毛織りの上にきる「ちょっき」の上であちこち顛倒してみえている。
これをみてはわたしは胸のうちがきもちわるくなって、はいたり、くだしたりして、二三日は臥せてしまった。
どうしてわたしに汝等が嚢中の帛がないことで寒がってふるえているのを救うことのできうることができるというのか。
それでもおしろいや眉墨をいれた包みものがほどかれるやら、かいまきや、ひとえ寝まきもだんだんとならべられた。
痩せた妻もその顔面に光があるようになった、としわの行かない娘たちも自分自身で頭の髪をとかしたりした。


(訳注)⑦
海圖拆波濤,舊繡移曲折。
彼女等は上着の「ちょっき」をきているがそれは模様の海図の波濤はひきさかれているし、繍い模様の位置がうつっていて曲ったり折れたりしている。
波濤 図の模様。○旧綸 ふるいぬいとり、これは著もののきれ地にぬいをしたもの。○移曲折 場所がかわっておれまがる。


天吳及紫鳳,顛倒在短褐。
すなわち天呉の絵、紫鳳のかたちに及んでいる、丈が短くなった粗末な毛織りの上にきる「ちょっき」の上であちこち顛倒してみえている。
天呉「山海経」にみえる勤物、かっぱの類、虎身人面、八首八足八尾、背青黄色のものである。○紫鳳 紫毛ある鳳凰。天呉も紫鳳もみな繍の模様。○顛倒 位置がひっくりかえる。○短褐 丈が短くなった粗末な毛織りの上にきるちょっき。


老夫情懷惡,數日臥嘔泄。
これをみてはわたしは胸のうちがきもちわるくなって、はいたり、くだしたりして、二三日は臥せてしまった。
○老夫 おやじ、杜甫自ずからをいう。○情懐悪 むねのうちが気持ちがわるくなること。○嘔泄 はいたり、くだしたりする。


那無囊中帛,救汝寒凜栗?
どうしてわたしに汝等が嚢中の帛がないことで寒がってふるえているのを救うことのできうることができるというのか。
嚢中帛 ふくろの中のきぬ。○ こどもらをさす。○凛慄 ぶるぶるふるえる。○倒句として解釈する。


粉黛亦解苞,衾裯稍羅列。
それでもおしろいや眉墨をいれた包みものがほどかれるやら、かいまきや、ひとえ寝まきもだんだんとならべられた。
粉黛 おしろい、まゆずみ。○解苑 葱は包の仮借字、つつみものをいう、解はほどくこと。○衾裯 衾はかいまき、裯はひとえねまき。○ ようやく、しだいに。○羅列 ならべられる。


瘦妻面複光,癡女頭自櫛。
痩せた妻もその顔面に光があるようになった、としわの行かない娘たちも自分自身で頭の髪をとかしたりした。
痩妻 やせたつま。○面復光 すこしかおにつやがでる。○癡女 智意のゆかぬむすめ。○ かみをとかす。


blogram投票ボタン

毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
05rihakushi350

李白詩350首kanbuniinkai紀頌之のブログ

700Toho shi

kanbuniinkai11の頌之漢詩 杜甫詩700首



800tousouSenshu
kanbuniinkai10 頌之の漢詩 唐宋詩人選集 Ⅰ李商隠150首 Ⅱ韓退之(韓愈)Ⅶ孟郊
各詩人についてはブログ内の検索を利用したほうが良い場合もあります。
burogutitl770

http://kanshi100x100.blog.fc2.com/


唐宋詩 
(Ⅰ李商隠Ⅱ韓退之(韓愈))
李白詩INDEX02
李商隠INDEX02
杜甫詩INDEX02