北征 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 217
北徵 10回目(全12回)


#9までの要旨
757年粛宗の至徳二載の秋。特別に天子の御恩寵を被って仰せにより、鄜州のあばら家へ帰ることを許された。今、天下はどこでも治安が悪く、無政府状態のところ多くなっているのだ、だからわたしの胸中の心配は増えつづけていったい何時終わるのだろうか。
心配を胸に、最初は徒歩ですすんでいくと、わたしがこの路で出会うこの里の人々の多くは傷をうけていた。そしてやっと馬を駆ることができ、鳳翔の方を振り返るとはるか遠くの山々が重なっていた。少量を過ぎ、邠州を過ぎていた。彌満和深くなり猛虎の声が大空を破りそうな声で唸っているのだ。少し行くと菊が今年の秋の花を変わりなく咲かせていた。山中の果物が多く、橡の実や栗などがあり、「桃源」の伯郷のようだ。自分の処世のまずさと世の移ろいがうまくいっていないことをなげかわしくおもう。そのうちに秦の文公の祭壇を過ぎ、夜更けに戦場跡を通り過ぎた。たくさんの戦死者がそのままにされ、白骨が月明かりに照らされていた。
叛乱軍に掴まって長安に送られ、そこから鳳翔の行在所に逃げ、一年たって、戻ってきた。妻も子供も憐れな恰好であった。
嚢中の帛がないことで寒がってふるえている。それでもおしろいや眉墨をいれた包みものをひろげたので痩せた妻もその顔面に光があるようになった。
家へ帰ったばかりなのでわたしはこんな子供によって自分のこころを慰めている。
その頃、粛宗はウイグルに再度の援軍を要請した。五干人の兵を送り、馬一万匹を駆ってよこした。精鋭部隊であり、おかげで傾性は次第に回復してきた。しかし、世論はウイグルに援軍を出すことが高い代償を払うことになるのではないかと心配しているのだ。


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9
至尊尚蒙塵,幾日休練卒?仰觀天色改,坐覺妖氛豁。
陰風西北來,慘澹隨回紇。其王願助順,其俗善馳突。
送兵五千人,驅馬一萬匹。此輩少為貴,四方服勇決。
所用皆鷹騰,破敵過箭疾。聖心頗虛佇,時議氣欲奪。』
10
伊洛指掌收,西京不足拔。
今後は伊水と洛水の地方、東都の洛陽は掌中の物を指す様にたやすく奪回することができるのだ。だから、長安になるとこれといった優れた大将がいないのでもっと簡単に抜き取れるというものだ。
官軍請深入,蓄銳可俱發。
王朝連合軍は官軍となり進んで叛乱軍の本拠地まで深く攻め入ろうと請け負ってくれている、鋭気を蓄えて回紇一緒に出発する連合軍とすることが良いのである。
此舉開青徐,旋瞻略恆碣。
この軍事同盟による回紇軍との連合を云い洛陽地方までを攻めおとすことは青州・徐州の方面を開くことになるのである。また五嶽の一つ恒山や碣石の門の両の精神的支柱をも略取することになるのである。
昊天積霜露,正氣有肅殺。
大いなる空には霜露が積もっているのだ、天地には正義、正道なる気配はひきしまり悪いものを枯らし、新しい準備をしているのだ。
禍轉亡胡歲,勢成擒胡月。
叛乱軍が皇帝を名乗り、年号を定めていることを滅亡させるときには今の禍は転じるのである。叛乱軍を檎にするときには王朝連合軍の攻める勢もできあがるであろう。
胡命其能久?皇綱未宜絕。』

叛乱軍、異民族らの命運はながつづきできるというものではない、天子の皇道は断絶してはならないはずのものである。』
11
憶昨狼狽初,事與古先別。奸臣竟菹醢,同惡隨蕩析。
不聞夏殷衰,中自誅褒妲。周漢獲再興,宣光果明哲。
桓桓陳將軍,仗鉞奮忠烈。微爾人盡非,於今國猶活。』

#9
至尊(しそん)は尚(な)お蒙塵(もうじん)す、幾の日か卒(そつ)を練るを休(や)めん。
仰いで天色(てんしょく)の改まるを観(み)、坐(そぞろ)に妖氛(ようふん)の豁(かつ)なるを覚(おぼ)ゆ。
陰風(いんぷう)  西北より来たり、惨澹(さんたん)として回紇(かいこつ)に随う。
其の王は助順(じょじゅん)を願い、其の俗(ぞく)は馳突(ちとつ)を善(よ)くす。
兵を送る  五千人、馬を駆(か)る  一万匹。
此の輩(はい) 少(わか)きを貴(とうと)しと為(な)し、四方(しほう) 勇決(ゆうけつ)に服す。
用うる所は皆な鷹(たか)のごとく騰(あが)り、敵を破ることは箭(や)の疾(と)きに過(す)ぐ。
聖心は頗(すこぶ)る虚佇(きょちょ)し、時議(じぎ)は気の奪われんと欲(ほっ)す。』

#10
伊洛(いらく)  掌(たなごころ)を指(さ)して収めん、西京(せいけい)も抜くに足らざらん。
官軍  深く入らんことを請(こ)う、鋭(えい)を蓄(たくわ)えて倶(とも)に発す可し。
此の挙(きょ)  青徐(せいじょ)を開かん、旋(たちま)ち恒碣(こうけつ)を略するを瞻(み)ん。
昊天(こうてん) 霜露を積み,正氣 肅殺(しゅくさつ)たる有り。
禍は轉ぜん 胡を亡ぼさん歲(とし),勢は成らん 胡を擒(とりこ)にせん月。
胡の命 其れ能く久しからんや?皇綱(こうこう)未だ宜しく絕つべからず。』

#11
憶う昨(さく) 狼狽(ろうばい)の初め,事は古先と別なり。
奸臣 竟に菹醢(そかい)せられ,同惡(どうあく)隨って蕩析(とうせき)す。
聞かず  夏殷(かいん)の衰えしとき、中(うち)の自ら褒妲(ほうだつ)を誅(ちゅう)せしを。
周漢(しゅうかん) 再興するを獲(え)しは、宣光(せんこう)  果たして明哲(めいてつ)なればなり。
桓桓(かんかん)たり  陳(ちん)将軍、鉞(えつ)に仗(よ)りて忠烈を奮(ふる)う。
爾(なんじ)微(な)かりせば人は尽(ことごと)く非(ひ)ならん、今に於(お)いて国は猶(な)お活(い)く。


現代語訳と訳註
(本文) 10
伊洛指掌收,西京不足拔。
官軍請深入,蓄銳可俱發。
此舉開青徐,旋瞻略恆碣。
昊天積霜露,正氣有肅殺。
禍轉亡胡歲,勢成擒胡月。
胡命其能久?皇綱未宜絕。』


(下し文) #10
伊洛(いらく)  掌(たなごころ)を指(さ)して収めん、西京(せいけい)も抜くに足らざらん。
官軍  深く入らんことを請(こ)う、鋭(えい)を蓄(たくわ)えて倶(とも)に発す可し。
此の挙(きょ)  青徐(せいじょ)を開かん、旋(たちま)ち恒碣(こうけつ)を略するを瞻(み)ん。
昊天(こうてん) 霜露を積み,正氣 肅殺(しゅくさつ)たる有り。
禍は轉ぜん 胡を亡ぼさん歲(とし),勢は成らん 胡を擒(とりこ)にせん月。
胡の命 其れ能く久しからんや?皇綱(こうこう)未だ宜しく絕つべからず。』


(現代語訳) ⑩
今後は伊水と洛水の地方、東都の洛陽は掌中の物を指す様にたやすく奪回することができるのだ。だから、長安になるとこれといった優れた大将がいないのでもっと簡単に抜き取れるというものだ。
王朝連合軍は官軍となり進んで叛乱軍の本拠地まで深く攻め入ろうと請け負ってくれている、鋭気を蓄えて回紇一緒に出発する連合軍とすることが良いのである。
この軍事同盟による回紇軍との連合を云い洛陽地方までを攻めおとすことは青州・徐州の方面を開くことになるのである。また五嶽の一つ恒山や碣石の門の両の精神的支柱をも略取することになるのである。
大いなる空には霜露が積もっているのだ、天地には正義、正道なる気配はひきしまり悪いものを枯らし、新しい準備をしているのだ。
叛乱軍が皇帝を名乗り、年号を定めていることを滅亡させるときには今の禍は転じるのである。叛乱軍を檎にするときには王朝連合軍の攻める勢もできあがるであろう。
叛乱軍、異民族らの命運はながつづきできるというものではない、天子の皇道は断絶してはならないはずのものである。』


(訳注)10
伊洛指掌收,西京不足拔。

今後は伊水と洛水の地方、東都の洛陽は掌中の物を指す様にたやすく奪回することができるのだ。だから、長安になるとこれといった優れた大将がいないのでもっと簡単に抜き取れるというものだ。
伊洛 伊水・洛水、共に洛陽付近を流れ、黄河に灌ぐ。○指掌収 手のひらにあるものを指さす如く容易に奪回する。○西京 長安。東都が洛陽であり、共に天子の在所がある。この時叛乱軍の都を洛陽としていて、両方の都がともに、抑えられていた。○不足抜 抜きとるほどのものがない、容易に抜くことができることをいう。


官軍請深入,蓄銳可俱發。
王朝連合軍は官軍となり進んで叛乱軍の本拠地まで深く攻め入ろうと請け負ってくれている、鋭気を蓄えて回紇一緒に出発する連合軍とすることが良いのである。
深入 叛乱軍の本拠地までふかく攻め入る。○蓄鋭 鋭気をたくわえる。○可倶発 倶発とは回紇の援兵といっしょに出発すること。


此舉開青徐,旋瞻略恆碣。
この軍事同盟による回紇軍との連合を云い洛陽地方までを攻めおとすことは青州・徐州の方面を開くことになるのである。また五嶽の一つ恒山や碣石の門の両の精神的支柱をも略取することになるのである。
此挙 この軍事同盟による回紇軍との連合を云い洛陽地方までを攻めおとすこと。○青徐 禹王の定めた天下の九州のうちの二州の名、青州・徐州は水陸の要衝であり、共に山東にある。O旋瞻 みるであろう。○略 取ること。○恆碣 恒山・碣石。恒山は山西省にあり、碣石は河北省の東北部境の海中にあったという石門。両方とも古来より精神的支柱になるもの。


昊天積霜露,正氣有肅殺。
大いなる空には霜露が積もっているのだ、天地には正義、正道なる気配はひきしまり悪いものを枯らし、新しい準備をしているのだ。
昊天 大いなる空、夏のそらを昊天といい、秋のそらを曼天という。○正気 正義、正道なる気。○粛殺 ひきしまり物を枯らす。


轉亡胡歲,勢成擒胡月。
叛乱軍が皇帝を名乗り、年号を定めていることを滅亡させるときには今の禍は転じるのである。叛乱軍を檎にするときには王朝連合軍の攻める勢もできあがるであろう。
禍転 禍が転じて福となることをいう。○ 叛乱軍をいう。○ 叛乱軍が皇帝を名乗り、年号を定めていること。 叛乱軍が宮殿をのっとっていること。ただ時のこと。○ 王朝連合軍の攻める勢。


胡命其能久?皇綱未宜絕。』
叛乱軍、異民族らの命運はながつづきできるというものではない、天子の皇道は断絶してはならないはずのものである。』
胡命 叛乱軍の運命。異民族の命運。○皇綱 天子の皇道をいう。叛乱軍の大義が決起の当初は一定程度あったのだが、安禄山が皇帝を名乗り、個利個略の争いをしたのである。その都度、政略の強いものが政権を担い殺し合ったのだ。このような叛乱軍が世の中を治めていく力はないといっているのだ。

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