羌村三首 其一 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 220

杜甫は鳳翔から鄜州まで約200キロの道を、閏八月の初めから半月ばかりかかって、馬は与えられなかったために、途中で馬を借りるまでは徒歩で、何人かの下僕を供にして麟遊県―邠州-銅川―宜君県-鄜州・羌村という経路で帰ってきた。
杜甫乱前後の図003鳳翔

「遠愧梁江總,還家尚黑頭。」(遠い昔の人と比べると同じ家へ戻るとはいうものの、梁の江総がまだ黒い頭をしながら家へ還ったのに対して、わたしは年老いてしまったとはいえこの白髪頭で帰るというのはちょっと恥いいものである。)これは左拾位という天子の顔を拝顔できる朝廷の役人であること誇らしく思う裏返しの表現である。
鄜州の羌村に到著し家族にやっとあえた。鄜州は洛交県に治し、羌村は現在の延安市のこうがいである。

 「羌村(きょうそん)三首」の連作は、波乱の一年余をへて家族と再会した喜びが率直に詠われている。
至徳二載 757年 46歳

220.羌村三首
其一
崢嶸赤雲西,日腳下平地。柴門鳥雀噪,歸客千裡至。』
妻孥怪我在,驚定還拭淚。世亂遭飄蕩,生還偶然遂。
鄰人滿牆頭,感嘆亦歔欷。夜闌更秉燭,相對如夢寐。』
其二
晚歲迫偷生,還家少歡趣。嬌兒不離膝,畏我複卻去。
憶昔好追涼,故繞池邊樹。蕭蕭北風勁,撫事煎百慮。』
賴知禾黍收,已覺糟床注。如今足斟酌,且用慰遲暮。』
其三
群雞正亂叫,客至雞鬥爭。驅雞上樹木,始聞叩柴荊。
父老四五人,問我久遠行。手中各有攜,傾榼濁複清。
苦辭酒味薄,黍地無人耕。兵革既未息,兒童盡東徵。
請為父老歌,艱難愧深情。歌罷仰天嘆,四座淚縱橫。


羌村三首其一
崢嶸赤雲西、日脚下平地。
真っ赤な夕焼け雲が西の空高くそびえている。太陽の光は雲の間から光線が足長く射してきて、黄土高原の雄大な平地にまで下がってきている。
柴門鳥雀噪、帰客千里至。』
我が家の粗末な柴の戸では帰りを知らせる鳥や雀ともいえる子供らがうるさく騒いでいる、そこへ突然旅姿の私が千里の遠くからかえりついたのである。』
妻孥怪我在、驚定還拭涙。
妻と子らはわたしがここに存在していたことを不思議に思ったようで、はじめはびっくりしていたが、驚いていたのがおちつくとこんどは泣きじゃくり、あふれる涙を拭うのである。
世乱遭飄蕩、生還偶然遂。
世の中は叛乱で乱れきって、あちこちにただよわされる運命にであってしまった、実際にどこで死ぬかわからないほどの出来事があった、生きて帰るなどいうことはほん偶然のことのようなものである。
隣人満牆頭、感歎亦歔欷。
自分のかえったことを知って近所の人たちも土塀の頭越しにいっぱい集まってきて、嘆きながら我々とともにすすりなきをしてくれる。
夜闌更秉燭、相対如夢寐。』

久しぶりのことなので、夜ふけすぎてもまたあらためて蝋燭の芯をつけかえ、家族同士でむきあっていることがまったく夢をみている様なことで、この私の無事の帰還で集まってくれた現実さが夢のようなことである。

羌村 三首  其の一
崢嶸(そうこう)たる赤雲(せきうん)の西、日脚(にっきゃく) 平地に下る。
柴門(さいもん)  鳥雀(ちょうじゃく)噪(さわ)ぎ、帰客(きかく)    千里より至る。
妻孥(さいど)は我(われ)の在るを怪しみ、驚き定まって還(ま)た涙を拭う。
世乱れて飄蕩(ひょうとう)に遭(あ)い、生還  偶然に遂げたり。
隣人  牆頭(しょうとう)に満ち、感歎して亦(ま)た歔欷(きょき)す。
夜(よる)闌(たけなわ)にして更に燭(しょく)を秉(と)り、相対(あいたい)すれば夢寐(むび)の如し。



現代語訳と訳註
(本文)羌村 三首 其一

崢嶸赤雲西,日腳下平地。
柴門鳥雀噪,歸客千裡至。』
妻孥怪我在,驚定還拭淚。
世亂遭飄蕩,生還偶然遂。
鄰人滿牆頭,感嘆亦歔欷。
夜闌更秉燭,相對如夢寐。』

(下し文) 羌村 三首  其の一
崢嶸(そうこう)たる赤雲(せきうん)の西、日脚(にっきゃく) 平地に下る。
柴門(さいもん)  鳥雀(ちょうじゃく)噪(さわ)ぎ、帰客(きかく)    千里より至る。
妻孥(さいど)は我(われ)の在るを怪しみ、驚き定まって還(ま)た涙を拭う。
世乱れて飄蕩(ひょうとう)に遭(あ)い、生還  偶然に遂げたり。
隣人  牆頭(しょうとう)に満ち、感歎して亦(ま)た歔欷(きょき)す。
夜(よる)闌(たけなわ)にして更に燭(しょく)を秉(と)り、相対(あいたい)すれば夢寐(むび)の如し。

(現代語訳)
真っ赤な夕焼け雲が西の空高くそびえている。太陽の光は雲の間から光線が足長く射してきて、黄土高原の雄大な平地にまで下がってきている。
我が家の粗末な柴の戸では帰りを知らせる鳥や雀ともいえる子供らがうるさく騒いでいる、そこへ突然旅姿の私が千里の遠くからかえりついたのである。』
妻と子らはわたしがここに存在していたことを不思議に思ったようで、はじめはびっくりしていたが、驚いていたのがおちつくとこんどは泣きじゃくり、あふれる涙を拭うのである。
世の中は叛乱で乱れきって、あちこちにただよわされる運命にであってしまった、実際にどこで死ぬかわからないほどの出来事があった、生きて帰るなどいうことはほん偶然のことのようなものである。
自分のかえったことを知って近所の人たちも土塀の頭越しにいっぱい集まってきて、嘆きながら我々とともにすすりなきをしてくれる。
久しぶりのことなので、夜ふけすぎてもまたあらためて蝋燭の芯をつけかえ、家族同士でむきあっていることがまったく夢をみている様なことで、この私の無事の帰還で集まってくれた現実さが夢のようなことである。


(訳注)
崢嶸赤雲西、日脚下平地。
真っ赤な夕焼け雲が西の空高くそびえている。太陽の光は雲の間から光線が足長く射してきて、黄土高原の雄大な平地にまで下がってきている。
〇崢たかくそびえるさま。○赤雲西 赤雲は夕焼けの赤いくも。とり西とは「西より」の意、下句の「日脚」と関係する。○日脚 太陽の光線の横あし。雲間を透して斜めに地上に続いた太陽光線をいう。杜甫『茅屋爲秋風所破歌』「雨脚如麻未断絶」とつかう。○平地 黄土高原の雄大な平地において日が落ちるに従って光線は地平線と平行するようになる。平原の雄大さを強調する語の使い方である。


柴門鳥雀噪、帰客千里至
我が家の粗末な柴の戸では帰りを知らせる鳥や雀ともいえる子供らがうるさく騒いでいる、そこへ突然旅姿の私が千里の遠くからかえりついたのである。』
鳥雀噪 鵠(かささぎ)がさわげば旅人がかえってくると故事がある。杜甫の詩では子供らが騒がしくしていることを雀に喩える。故事の意味と実際の騒ぎとをとったものである。○帰客 もどってきた旅人。


妻孥怪我在、驚定還拭涙。
妻と子らはわたしがここに存在していたことを不思議に思ったようで、はじめはびっくりしていたが、驚いていたのがおちつくとこんどは泣きじゃくり、あふれる涙を拭うのである。
妻孥 妻子。○怪我在 在は存在、生存をいう。○驚定定とはおちつくこと。


世乱遭飄蕩、生還偶然遂。
世の中は叛乱で乱れきって、あちこちにただよわされる運命にであってしまった、実際にどこで死ぬかわからないほどの出来事があった、生きて帰るなどいうことはほん偶然のことのようなものである。
飄蕩 あちらこちらとただよわされる、漂泊の生活をいう。○生還 いきてもどる。○偶然遂 ふとなしとげ得た、予定はできなかったことをいう。


隣人満牆頭、感歎亦歔欷。
自分のかえったことを知って近所の人たちも土塀の頭越しにいっぱい集まってきて、嘆きながら我々とともにすすりなきをしてくれる。
隣人 近所の人たち。○牆頭 我が家の土塀の頭越し。○亦 彼等もまた我等とともに。○歔欷 すすりなきする。


夜闌更秉燭、相対如夢寐。
久しぶりのことなので、夜ふけすぎてもまたあらためて蝋燭の芯をつけかえ、家族同士でむきあっていることがまったく夢をみている様なことで、この私の無事の帰還で集まってくれた現実さが夢のようなことである。
夜闌 闌はさかりをすぎるころ。○更秉燭 さらにろうそくをとって火をつけたす。夜を徹しての長話を意味する。○相対 家人とむきあう。○如夢寐 ねて夢をみているようだ、自分で自分の存在が疑われることをいう。ほっぺをつねってみるという意味のこと。
 


解説
 「羌村三首」 其一 は、杜甫自身、黄土高原の雄大な夕景色がまず印象的に描かれている。杜甫が前年この景色を見るのは華族で命からがら逃げのびてきたときである。唐王朝も玄宗皇帝は蜀に逃げ、上皇になり、霊武に行在所を置く、不安定な状況下の中に有った。家族と別れることを前提とした景色と家族と一緒になれるという景色の違いをこの詩の見どころであるといえる。今見る平原は夢のようなものと映っていたのである。杜甫は夕刻に到着した。馬に乗り従者を従えた杜甫が通ると門のあたりで、帰りを知らせる鳥が騒いでくれた。迎えた家族の喜び、近所の人のようすが、時間の経過を追っていきいきと描かれ、杜甫の誠実な性格が表れている。

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