喜聞官軍已臨賊寇 二十韻 #4 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 226


杜甫が羌村の家族のもとで日を過ごしているあいだに、唐の王朝軍は回紇(ウイグル)の援軍を加えて連合軍とし、長安への進攻を開始していた。すなわち757年9月中旬、粛宗の皇子である広平王李俶(のちの代宗)を総司令官とし、朔方軍で功勲のあった郭子儀を副司令官とし、十五万の連合軍は、鳳翔を出発して東に向かったのである。
9月27日には長安の西郊に着いて陣を布き、安守忠・李帰仁の率いる十万の安史軍(この時史忠明の軍本体は幽州に帰っていた。)と戦って翌28日には長安に入城したのである。長安が安禄山の叛乱軍に落ちてから一年三か月ぶりのことであった。史忠明軍のいない安史軍はひとまず正面衝突を回避して、10月18日には洛陽も奪還され、安慶緒は北方の鄴城(河南省安陽)に逃れた。粛宗は、洛陽奪還の翌日、十月十九日には鳳翔を出発し、十月二十三日に長安に帰った。
杜甫は鄜州の羌村で、王朝軍の長安進攻を知り「官軍の己に賊寇に臨むを聞くを喜ぶ二十韻」をつくり、入城を知って、「京を収む三首」を作って、その歓喜の情を表わしている。


<#3 の要旨>
唐王朝軍の連合軍が長安に迫って、長安城の郊外を制圧した。鳳翔の行在所にはウイグルの兵士が警護をしている。状況だが、間もなく天子、粛宗が長安の都に入城されるであろう。
入城されたなら、これだけ多くの人が亡くなったのであるから喩え叛乱軍が降参しても許さず、生かしておいてはならない。
前軍の長として李嗣業は蘇武の如き見印たる節をもち、左将の僕固懐恩は呂虔の如き刀を佩びている。(これ以上ない布陣である。)
国運の艱難もやっとこれでなくなり、陰陽二気、五行思想で四時の気の調和する時運にもいちどであおうとしている。


喜聞官軍已臨賊寇 二十韻

#1
胡虜潛京縣,官軍擁賊壕。鼎魚猶假息,穴蟻欲何逃。」
帳殿羅玄冕,轅門照白袍。秦山當警蹕,漢苑入旌旄。
#2
路失羊腸險,雲橫雉尾高。五原空壁壘,八水散風濤。
今日看天意,遊魂貸爾曹。乞降那更得,尚詐莫徒勞。」
#3
元帥歸龍種,司空握豹韜。前軍蘇武節,左將呂虔刀。
兵氣回飛鳥,威聲沒巨鰲。戈鋌開雪色,弓矢向秋毫。
天步艱方盡,時和運更遭。誰雲遺毒螫,已是沃腥臊。」
#4
睿想丹墀近,神行羽衛牢。
天子は今の御考えは、長安大明王宮の御所の丹墀のそばに帰れると思され、その行幸のときには飾り立てた御警衛の行列がかたくお守りをするものである。
花門騰絕漠,拓羯渡臨洮。
遠い沙漠に飛騰している回紇の騎兵軍団、臨桃をわたって来た安西の拓羯、彼等はいずれも援兵にやって来るのだ。
此輩感恩至,羸浮何足操。
花門・拓羯の兵士たちは唐の天子に対する御恩を感じて参加している。叛乱軍の強いやつ等を退治してくれればそれでよいので、どうして老幼のような弱い兵士などをとらえる必要がありはしないのだ。
鋒先衣染血,騎突劍吹毛。
味方の前鋒隊はまっさきかけて戦い、戦衣は血にそまるのだ、また、味方の騎隊は突出してそのふりかざす剣は毛皮の吹く毛をきりたつばかり切れ味がよいものだ。
喜覺都城動,悲連子女號。
これまでの状況は、戦死者の遺族である子女等が悲しんで泣き叫んでいるのをみると気の毒に思うのであるが、長安城の人の大体は大喜びでその喜びのために城郭内が揺れ動くかのように自覚するのである。
家家賣釵釧,只待獻春醪。」

城内の家々の婦人たちが簪、腕飾りを売って、それで買って春の一番の芳しい酒を連合軍がはいって来たら奉げてやろうと待っているのである。


喜聞官軍己臨賊寇二十韻
(官軍己に賊寇に臨むと聞くを喜ぶ 二十韻)
#1
胡騎京県に潜み、官軍賊壕を擁す。
鼎魚(ていぎょ)猶息を仮す、穴蟻何に逃れんと欲する。」
帳殿玄冤(げんべん)羅(つらな)り、轅門(えんもん)白袍照る。
秦山警蹕(けいひつ)に当る 漢苑旌旄(せいぼう)に入る。
#2
路は羊腸の険を失す、雲横わりて雉尾(ちび)高し。
五原空しく壁塁(へきるい)、八水風涛(ふうとう)散ず。
今日天意を看るに、遊魂(ゆうこん)爾が曹に貸す。』
降を乞うも那(なん)ぞ更に得ん 詐を尚(たっと)ぶは徒に労する莫らんや。
#3
元帥竜種(りょうしゅ)に帰し、司空豹韜(ひょうとう)を握る。
前軍 蘇武が節、左将 呂虔(りょけん)が刀。
兵気 飛鳥(ひちょう)を回(か)えす、威声(いせい) 巨鰲を没せしむ。
戈鋌(かせん) 雪色開き、弓矢 秋毫(しゅうごう)に向う。
天歩(てんぽ) 艱 方(まさ)に尽く、時和 運 更に遭う。
誰か云う毒螫を遺すと、己に是れ 腥臊(せいそう)に沃(そそ)ぐ。」
#4
睿想 丹墀(たんち)近く、神行 羽衛(うえい)牢(かた)し。
花門 絶漠に騰(あが)り、拓羯(たくけつ)臨洮(りんとう)を渡る。
此の輩恩に感じて至る、羸浮(るいふ)何ぞ操るに足らん。
鋒 先(さきだ)ちて 衣血に染む、騎 突きて 剣毛(けんけ)を吹く。
喜びは覺ゆ 都城の動くを、悲みは連(ともな)う 子女の號(さけ)ぶを。
家家 釵釧を売り 只だ待つ春醪を献ずるを』


現代語訳と訳註
(本文) #4

睿想丹墀近,神行羽衛牢。
花門騰絕漠,拓羯渡臨洮。
此輩感恩至,羸浮何足操。
鋒先衣染血,騎突劍吹毛。
喜覺都城動,悲連子女號。
家家賣釵釧,只待獻春醪。」


(下し文) #4
睿想 丹墀(たんち)近く、神行 羽衛(うえい)牢(かた)し。
花門 絶漠に騰(あが)り、拓羯(たくけつ)臨洮(りんとう)を渡る。
此の輩恩に感じて至る、羸浮(るいふ)何ぞ操るに足らん。
鋒 先(さきだ)ちて 衣血に染む、騎 突きて 剣毛(けんけ)を吹く。
喜びは覺ゆ 都城の動くを、悲みは連(ともな)う 子女の號(さけ)ぶを。
家家 釵釧を売り 只だ待つ春醪を献ずるを』


(現代語訳)
天子は今の御考えは、長安大明王宮の御所の丹墀のそばに帰れると思され、その行幸のときには飾り立てた御警衛の行列がかたくお守りをするものである。
遠い沙漠に飛騰している回紇の騎兵軍団、臨桃をわたって来た安西の拓羯、彼等はいずれも援兵にやって来るのだ。
花門・拓羯の兵士たちは唐の天子に対する御恩を感じて参加している。叛乱軍の強いやつ等を退治してくれればそれでよいので、どうして老幼のような弱い兵士などをとらえる必要がありはしないのだ。
味方の前鋒隊はまっさきかけて戦い、戦衣は血にそまるのだ、また、味方の騎隊は突出してそのふりかざす剣は毛皮の吹く毛をきりたつばかり切れ味がよいものだ。
これまでの状況は、戦死者の遺族である子女等が悲しんで泣き叫んでいるのをみると気の毒に思うのであるが、長安城の人の大体は大喜びでその喜びのために城郭内が揺れ動くかのように自覚するのである。
城内の家々の婦人たちが簪、腕飾りを売って、それで買って春の一番の芳しい酒を連合軍がはいって来たら奉げてやろうと待っているのである。


(訳注)
睿想丹墀近,神行羽衛牢。
天子は今の御考えは、長安大明王宮の御所の丹墀のそばに帰れると思され、その行幸のときには飾り立てた御警衛の行列がかたくお守りをするものである。
零想 天子のみおもい。○丹墀 御所のあかすなを敷いた土えん。丹の庭から階段謁見場所に至るすべて赤く作られている。○神行 天子の行をいう。○羽衛 羽をかざったはたさしものをたて並べた警衛。


花門騰絕漠,拓羯渡臨洮。
遠い沙漠に飛騰している回紇の騎兵軍団、臨桃をわたって来た安西の拓羯、彼等はいずれも援兵にやって来るのだ。
花門 回紇ウイグルをさす。堡の名であるが回紇種族(ウイグル騎馬民族)そのものをさす。元来、居延海(寧夏省の西北境にある湖水)の北にある要塞の名であるが、当時その地点は回紇の領土としていたところからこの名前を使った。『唐書』地理志「甘州寧寇軍の東北に、居延海あり、又北三百里にして、花門山堡あり、又東北千里にして、回紇の衙帳に至る。」○ 勢いよく飛びあがる。騎馬兵であること。○絶漠 遠い沙漠。四方の地の果ては絶壁となって、海となる。○拓羯 拓羯は夷語、戦士の義という。ここでは安西(唐時交河城或は亀茲に都護府を置いた)の兵をさす。○臨洮 甘粛省鞏昌府岷州治。

 
此輩感恩至,羸浮何足操。
花門・拓羯の兵士たちは唐の天子に対する御恩を感じて参加している。叛乱軍の強いやつ等を退治してくれればそれでよいので、どうして老幼のような弱い兵士などをとらえる必要がありはしないのだ。
○此輩 花門・拓羯をさす。○唐の天子の恩。〇歳停 つかれたとりこ、賊中の老幼のとりこをいう。○ 執に同じ、とらえること。


鋒先衣染血,騎突劍吹毛。
味方の前鋒隊はまっさきかけて戦い、戦衣は血にそまるのだ、また、味方の騎隊は突出してそのふりかざす剣は毛皮の吹く毛をきりたつばかり切れ味がよいものだ。
○鋒先 先は先だちすすむこと、鋒は官軍の鋭鋒。○騎突 突は突き出ること、騎は官軍の騎兵。○剣吹毛 千将の名剣は吹く毛や遊べる塵を決つという。


喜覺都城動,悲連子女號。
これまでの状況は、戦死者の遺族である子女等が悲しんで泣き叫んでいるのをみると気の毒に思うのであるが、長安城の人の大体は大喜びでその喜びのために城郭内が揺れ動くかのように自覚するのである。
喜覚、悲憐 書は都城の人に、悲は子女に属す、覚と憐とは作者に属す。○都城動 都城は長安をいう。動はさわぐことの甚しいことをいう。○子女号 男子女児等の泣きさけぶこと、これはなかには戦死者の家族のあることをいう、此の句は喜覚の句が主で、倒句のように読む。


家家賣釵釧,只待獻春醪。」
城内の家々の婦人たちが簪、腕飾りを売って、それで買って春の一番の芳しい酒を連合軍がはいって来たら奉げてやろうと待っているのである。
釵釧 簪、腕飾り。○ 官軍にささげる、たてまつる。○春醪 春の一番の芳しい酒。


hinode0200

blogram投票ボタン

毎日それぞれ一首(長詩の場合一部分割掲載)kanbuniinkai紀 頌之の漢詩3ブログ
05rihakushi350

李白詩350首kanbuniinkai紀頌之のブログ

700Toho shi

kanbuniinkai11の頌之漢詩 杜甫詩700首

800tousouSenshu
kanbuniinkai10 頌之の漢詩 唐宋詩人選集 Ⅰ李商隠150首 Ⅱ韓退之(韓愈)Ⅶ孟郊
各詩人についてはブログ内の検索を利用したほうが良い場合もあります。
burogutitl770

http://kanshi100x100.blog.fc2.com/


唐宋詩 
(Ⅰ李商隠Ⅱ韓退之(韓愈))350
李白詩INDEX02
李商隠INDEX02
杜甫詩INDEX02