奉和賈至舍人早朝大明宮 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 236


中書舎人である賈至が作った「早朝大明宮」の詩を和した作。乾元元年の春左拾遺として長安にあって作る。

奉和賈至舍人早朝大明宮  杜甫
賈至舎人が初めて大明宮の朝礼に参列して作った詩に和し奉る
五夜漏聲催曉箭,九重春色醉仙桃。
夜の水どけいのしたたりの音がだんだん暁の時刻に近づいてきて、九重の禁中の春の曙の色が桃花の紅の酔ったような時節になった。
旌旗日暖龍蛇動,宮殿風微燕雀高。
このとき参内してみると日光暖かにしてたてられた旌旗には竜蛇のすがたが動いているし、宏壮な宮殿の軒端には風がかすかに吹いて燕や雀が高くとんでいる。
朝罷香煙攜滿袖,詩成珠玉在揮毫。
このとき賈舎人はもはや朝廷の参賀もすんで殿中の香煙をそのまま袖にたずさえて戻り来り、できあがった詩を筆をとって書き付けると珠玉のようなりっぱなものができあがっている。
欲知世掌絲綸美。池上於今有鳳毛。

なるほど賈君の御家は代々詔勅を起草する家系であって、その世襲がいかにみごとであるかを知りたいとおもう、現に今も鳳凰池上に鳳毛とも評すべき君が居らるるのをみればわかることである。


(賈至舎人が早【つと】に大明宮に朝するを和し奉る)
五夜の漏声【ろうせい】暁箭【ぎょうせん】を催す、九重の春色仙桃【せんとう】酔う。
旌旗【せいき】日 暖【あたた】かにして竜蛇【りゅうだ】動き、宮殿 風 徴【び】にして燕雀【えんじゃく】高し。
朝【ちょう】罷【や】みて 香煙【こうえん】携【たずさ】えて 袖に満つ、詩成りて珠玉【しゅぎょく】揮毫【きごう】に在り。
世々 絲綸【しりん】掌【つかさど】るの美を知らんと欲せば、地上 今に於て鳳毛【ほうもう】有り。


長安城郭015


 現代語訳と訳註
(本文)
奉和賈至舍人早朝大明宮
五夜漏聲催曉箭,九重春色醉仙桃。
旌旗日暖龍蛇動,宮殿風微燕雀高。
朝罷香煙攜滿袖,詩成珠玉在揮毫。
欲知世掌絲綸美。池上於今有鳳毛。


(下し文) (賈至舎人が早【つと】に大明宮に朝するを和し奉る)
五夜の漏声【ろうせい】暁箭【ぎょうせん】を催す、九重の春色仙桃【せんとう】酔う。
旌旗【せいき】日 暖【あたた】かにして竜蛇【りゅうだ】動き、宮殿 風 徴【び】にして燕雀【えんじゃく】高し。
朝【ちょう】罷【や】みて 香煙【こうえん】携【たずさ】えて 袖に満つ、詩成りて珠玉【しゅぎょく】揮毫【きごう】に在り。
世々 絲綸【しりん】掌【つかさど】るの美を知らんと欲せば、地上 今に於て鳳毛【ほうもう】有り。


(現代語訳)
賈至舎人が初めて大明宮の朝礼に参列して作った詩に和し奉る
夜の水どけいのしたたりの音がだんだん暁の時刻に近づいてきて、九重の禁中の春の曙の色が桃花の紅の酔ったような時節になった。
このとき参内してみると日光暖かにしてたてられた旌旗には竜蛇のすがたが動いているし、宏壮な宮殿の軒端には風がかすかに吹いて燕や雀が高くとんでいる。
このとき賈舎人はもはや朝廷の参賀もすんで殿中の香煙をそのまま袖にたずさえて戻り来り、できあがった詩を筆をとって書き付けると珠玉のようなりっぱなものができあがっている。
なるほど賈君の御家は代々詔勅を起草する家系であって、その世襲がいかにみごとであるかを知りたいとおもう、現に今も鳳凰池上に鳳毛とも評すべき君が居らるるのをみればわかることである。


(訳注)
奉和賈至舍人早朝大明宮

賈至舎人が初めて大明宮の朝礼に参列して作った詩に和し奉る
 他人の作った詩について我が意をのべて作ること。○賈至 賈曾の子、賈は景巽中に中書舎人であった人。至は字は助鄰、玄宗が蜀に奔ったときこれに従い起居舎人・知制誥を拝命し、玄宗が粛宗に位を伝えられるときの冊文は至がこれを撰した。玄宗は、昔先天の誥命は汝の父が為ったものであるが、今この冊文を汝が又為るのは美を済すというべきであるといわれたという。賈至はさらに中書舎人となった。○早朝 元日の朝早く朝廷へ参賀にでること。○大明宮 唐の長安城には三箇の大内があり、西にあるのを太極宮、これを西内といい、その東にあるのを大明宮、これを東内といい、又東南に興慶宮があり、これを南内という。大明宮は最もしばしば朝を受けた処である。


五夜漏聲催曉箭,九重春色醉仙桃。
夜の水どけいのしたたりの音がだんだん暁の時刻に近づいてきて、九重の禁中の春の曙の色が桃花の紅の酔ったような時節になった。
五夜 五行思想で夜の時間を甲乙丙丁戊の五つに分かつ。○漏声 水時計の水のしたたるおと。○暁箭 水時計に鋳金の人形を作り、その人形は左手に箭を抱き右の手で刻をさし示すようにしかけである、箭は今の針の用をなす。〇九重春色 禁中の春景色。○酔仙桃 曙色の紅なのを形容していったもの。「仙桃の紅なること酔えるが如し」の意であり、これを用いてまた春色をたとえている。


旌旗日暖龍蛇動,宮殿風微燕雀高。
このとき参内してみると日光暖かにしてたてられた旌旗には竜蛇のすがたが動いているし、宏壮な宮殿の軒端には風がかすかに吹いて燕や雀が高くとんでいる。
旌旗 旌旗は鳥の羽をばさばさにして頭に飾りにつけているはた、筋は竜を交叉して画いたはた。○竜蛇 はたの模様。○燕雀 これは実物をいう。


朝罷香煙攜滿袖,詩成珠玉在揮毫。
このとき賈舎人はもはや朝廷の参賀もすんで殿中の香煙をそのまま袖にたずさえて戻り来り、できあがった詩を筆をとって書き付けると珠玉のようなりっぱなものができあがっている。
○朝 朝は参朝のこと。朝の参賀がすむ。○香煙 殿上に焚かれた香のけむり。○詩成 詩は賈至の原作をさす。○珠玉 詩の文字のうるわしいことをほめていう。○在揮毫 揮毫のうえに存すということ。揮毫は筆をふるうこと。


欲知世掌絲綸美。池上於今有鳳毛。
なるほど賈君の御家は代々詔勅を起草する家系であって、その世襲がいかにみごとであるかを知りたいとおもう、現に今も鳳凰池上に鳳毛とも評すべき君が居らるるのをみればわかることである。
世掌 代々つかさどる、父子二代の世襲をさす。○絲綸 王の言、即ち詔勅をいう。「礼記」緇衣に「王言は糸の如く、其の出ぞること綸の如し。王言は綸の如く、其の出ぞること綍の如し。」とある。綸はよりいと、綍はなわ、王の言は出だした所は細くても下へ伝わるにつれて大となることをいう。○ みごとなこと。○池上 池は鳳凰池をいう、中書省にある池、賈至の原作に「鳳池」の語がある。龍首池の頭の部分をいう。○鳳毛 晋の桓温が、王劭がその父王導に似ているのを見て「鳳毛有り」と評し、宋の孝武帝が謝鳳の子超宗が文才のあるのを称して「超宗殊に鳳毛有り」といったのは、鳳凰の如き彩毛のあることをいう。この詩句は賈至を比する。

 


 早朝大明宮呈両省僚友 賈至
 銀燭朝熏紫陌長、
 禁城春色暁蒼蒼。
 千條弱柳垂青瑣、
 百囀流鶯繞建章。
 劍佩聲髄玉墀歩、
 衣冠身惹御爐香。
 共沐恩波鳳池上、
 朝朝染翰侍君王。
 銀燭 朝に熏じて 紫陌 長し、禁城の春色 暁に蒼蒼たり。
 千条の弱柳は青瑣に垂れ、百囀の流鶯は建章を繞る。
 剣佩 声を玉墀の歩に随い、衣冠 身には御炉の香を惹けり。
 共に恩波に沐す 鳳池の上とり、朝朝翰を染めて君王に侍す。
 
  
 和賈舎人早朝大明宮之作  王維
 絳幘雞人報暁籌、
 尚衣方進翠雲裘。
 九天閶闔開宮殿、
 万国衣冠拝冕旒。
 日色纔臨仙掌動、
 香煙欲傍袞龍浮。
 朝罷須裁五色詔、
 佩声帰到鳳池頭。
 絳幘【こうさく】の鶏人 暁籌【ぎょうちゅう】を報じ、尚衣【しょうい】方【まさ】に進む 翠雲の裘【きゅう】。
九天の閶闔(しょうこう) 宮殿を開き、万国の衣冠 冕旒【べんりゅう】を拝す
日色 纔【わず】かに仙掌【せんしょう】に臨んで動き、香煙 傍【そ】わんと欲して袞龍【こんりゅう】浮ぶ。
朝【ちょう】罷【や】んで須らく裁すべし 五色の詔、佩声【はいせい】は帰り到る 鳳池の頭【ひとり】。
 奉和中書賈舎人早朝大明宮  岑參
 雞鳴紫陌曙光寒,
 鶯囀皇州春色闌。
 金闕曉鐘開萬戶,
 玉階仙仗擁千官。
 花迎劍珮星初落,
 柳拂旌旗露未乾。
 獨有鳳凰池上客,
 陽春一曲和皆難。
 鶏鳴いて紫陌曙光寒し、鶯囁じて皇州春色闌なり。
 金闕の暁鐘万戸を開き、玉階の仙仗千官を擁す。
 花は剣侃を迎えて星初めて落ち、柳は旋旗を払って露未だ乾かず。
 独り鳳皇池上の客有り、陽春の一曲和すること皆難し。
 奉和賈至舍人早朝大明宮  杜甫
 五夜漏聲催曉箭,
 九重春色醉仙桃。
 旌旗日暖龍蛇動,
 宮殿風微燕雀高。
 朝罷香煙攜滿袖,
 詩成珠玉在揮毫。
 欲知世掌絲綸美。
 池上於今有鳳毛。
 賈至舎人が早【つと】に大明宮に朝するを和し奉る
五夜の漏声【ろうせい】暁箭【ぎょうせん】を催す、九重の春色仙桃【せんとう】酔う。
旌旗【せいき】日 暖【あたた】かにして竜蛇【りゅうだ】動き、宮殿 風 徴【び】にして燕雀【えんじゃく】高し。
朝【ちょう】罷【や】みて 香煙【こうえん】携【たずさ】えて 袖に満つ、詩成りて珠玉【しゅぎょく】揮毫【きごう】に在り。
世々 絲綸【しりん】掌【つかさど】るの美を知らんと欲せば、地上 今に於て鳳毛【ほうもう】有り。