紫宸殿退朝口號 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 238



758年乾元元年春、左拾遺であったときの作。
 臘日 杜甫 紀頌之の漢詩ブログ 
 送鄭十八虔貶台州司戶、傷其臨老隋賊之故閲馬面別情見於詩
 宣政殿退朝晚出左掖
 紫宸殿退朝口號 このページに掲げる詩
 春宿左省
 晚出左掖
 題省中院壁
 奉和賈至舍人早朝大明宮
 送賈閣老出汝州

 
紫宸殿も東内に属する。南より北へ順次に含元殿・宜政殿・紫辰殿がある。宜政は前殿にして紫辰は便殿である。口号とは口ずから吟ずること。此の詩は紫辰殿へ朝して、とき口ずさんだ作である。○便殿 貴人の休息のために設けた御殿のこと。


紫宸殿退朝口號
戶外昭容紫袖垂,雙瞻御座引朝儀。
紫宸殿の戸の外に昭容の女官が紫色の袖を垂れて、左右にわかれて各々殿内の御座の方へ目をやりつつ朝儀の位置にみちびき入れる。
香飄合殿春風轉,花覆千宮淑景移。
紫宸殿内には春風に香気が吹きまわされてくまなくひるがえる、居並ぶ群臣のうえに花影を被っていて春の日暖かな光は経過していく。
晝漏稀聞高閣報,天顏有喜近臣知。
外庭の高き閣から時間を知らせてくるが殿内おくふかく稀に漏刻の音も聞えてくる。この日は天子の御顔もにこやかで喜ばしいこと、近侍の臣の知るとおりである。
宮中每出歸東省,會送夔龍集鳳池。

わたしはいつもこの御殿から退出して東内の方、門下省の執務室の方へかえるの、その時はいつも夔龍といわれる宰相、大臣がたが中書省の方へお集まりになるのをうちそろって鳳池の辺でお見送りするのである。


(紫后殿より退朝するとき口号)
戸外の昭容 紫袖【しゆう】垂る、御座を双降【そうこう】して朝儀【ちょうぎ】を引く。
香 飄【ひるがえ】りて合殿【ごうでん】春風転じ、花千官を覆いて淑景【しゅくけい】移る。
昼漏【ちゅうろう】聞こゆる稀にして高閣報じ、天顔【てんがん】喜び有って近臣知る。
宮中より毎【つね】に出でて東省に帰る、会送す夔竜【きりゅう】の鳳池に集まるを。


現代語訳と訳註
(本文)
紫宸殿退朝口號
戶外昭容紫袖垂,雙瞻御座引朝儀。
香飄合殿春風轉,花覆千宮淑景移。
晝漏稀聞高閣報,天顏有喜近臣知。
宮中每出歸東省,會送夔龍集鳳池。


(下し文) (紫后殿より退朝するとき口号)
戸外の昭容 紫袖【しゆう】垂る、御座を双降【そうこう】して朝儀【ちょうぎ】を引く。
香 飄【ひるがえ】りて合殿【ごうでん】春風転じ、花千官を覆いて淑景【しゅくけい】移る。
昼漏【ちゅうろう】聞こゆる稀にして高閣報じ、天顔【てんがん】喜び有って近臣知る。
宮中より毎【つね】に出でて東省に帰る、会送す夔竜【きりゅう】の鳳池に集まるを。


(現代語訳)
紫宸殿の戸の外に昭容の女官が紫色の袖を垂れて、左右にわかれて各々殿内の御座の方へ目をやりつつ朝儀の位置にみちびき入れる。
紫宸殿内には春風に香気が吹きまわされてくまなくひるがえる、居並ぶ群臣のうえに花影を被っていて春の日暖かな光は経過していく。
外庭の高き閣から時間を知らせてくるが殿内おくふかく稀に漏刻の音も聞えてくる。この日は天子の御顔もにこやかで喜ばしいこと、近侍の臣の知るとおりである。
わたしはいつもこの御殿から退出して東内の方、門下省の執務室の方へかえるの、その時はいつも夔龍といわれる宰相、大臣がたが中書省の方へお集まりになるのをうちそろって鳳池の辺でお見送りするのである。


(訳注)
戶外昭容紫袖垂,雙瞻御座引朝儀。
紫宸殿の戸の外に昭容の女官が紫色の袖を垂れて、左右にわかれて各々殿内の御座の方へ目をやりつつ朝儀の位置にみちびき入れる。
戸外 殿の戸のそと。○昭容 女官の階級の名、正二品の位。唐代の制度では、後宮の職官は、内官・宮官・内侍省の3部門で構成されていた。内官とは妃妾のことで、四夫人(貴妃、淑妃、徳妃、賢妃。正一品)、九嬪(昭儀、昭容、昭媛、修儀、修容、修媛、充儀、充容、充媛。正二品)、二十七世婦(婕妤、美人、才人。正三品~正五品)、八十一御妻(宝林、御女、采女。正六品~正八品)を指す。正六品以下が宮官であり、宮中内の職務に携わる女官たちのことである。尚宮(総務的な仕事)・尚儀(礼楽に携わる)・尚服(衣服に携わる)・尚食(食事に携わる)・尚寝(居住空間に携わる)・尚功(工芸に携わる)の六尚に分けられて職務に従事し、また宮正が置かれて、後宮内の不正の取り締まりに従事した。内侍省は宦官たちである。○紫袖垂 むらさきの袖をながくたれる。○双瞻 ならびみる、左右の各列から昭容が御座へ目をつけること、昭容は左右各一人、文武の両班の葦臣を前導して殿内に入る。る。○御座 天子の座。○引朝儀 引はみちびくこと、朝儀は参朝の儀列をいう。昭容が前導するときは羣臣に面して後向き歩行をしつつ御座の方へと進む。昭容が御座への注目する際には少しく上体を斜にして、半ばうしろむきの姿勢をとる。


香飄合殿春風轉,花覆千宮淑景移。
紫宸殿内には春風に香気が吹きまわされてくまなくひるがえる、居並ぶ群臣のうえに花影を被っていて春の日暖かな光は経過していく。
香飄 香は花香。飄はただよう。○合殿 入口の闔殿から殿内全体をいう。○ 吹き転ずること。香煙が動いていること。○花覆 花は殿庭の花、覆とは実際におおうのではなく、附近に多く咲いている故かくいう。○淑景移 淑景はよき日かげ、春日の暖かな光をいう。移とは時刻のかわること、この時、殿中で上奏を受けるので時間の経過することをいう。


晝漏稀聞高閣報,天顏有喜近臣知。
外庭の高き閣から時間を知らせてくるが殿内おくふかく稀に漏刻の音も聞えてくる。この日は天子の御顔もにこやかで喜ばしいこと、近侍の臣の知るとおりである。
昼漏 日中のの漏刻(みずどけい)。此の句は上下倒抒でよむ。○高閣報 高閣より報知し来たる、外庭の高閣において宮女がこれを掌って刻を報ずるというもの。○天顔 天子のおかお。○近臣 近侍の臣、参野列の天子に近い家臣をいう。杜甫も左拾遺だからその内の一人である。

唐朝 大明宮2000

宮中每出歸東省,會送夔龍集鳳池。
わたしはいつもこの御殿から退出して東内の方、門下省の執務室の方へかえるの、その時はいつも夔龍といわれる宰相、大臣がたが中書省の方へお集まりになるのをうちそろって鳳池の辺でお見送りするのである。
宮中毎出 毎出宮中としてみる。この毎の字は帰の字までへかかる。出は退出。○東省 東内、門下省をさす。○会送 同僚が相会して送る。○夔龍 古代、舜の時の臣、夔は音楽を典奏し、竜は民言を天子につたえることをつかさどった。ここでは唐の大臣宰相をさす。○ 夔竜等が集まることをいう。○鳳池 賈至が『早朝大明宮呈両省僚友』で「銀燭朝熏紫陌長、禁城春色暁蒼蒼。千條弱柳垂青瑣、百囀流鶯繞建章。劍佩聲髄玉墀歩、衣冠身惹御爐香。共沐恩波鳳池上、朝朝染翰侍君王。」中書省にある池をいう。長安大明宮図確認すると門下省側には龍首池があり、龍のように曲がりくねり長い池がある。賈至は故事にならって鳳池としたのだろう。