曲江二首 其二 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 245
曲江二首 其二
朝回日日典春衣、毎日江頭尽酔帰。
自分は朝廷からもどる、日々に春のきものを質において銭にかえ、曲江のほとりでいつも十分の酔をきわめて帰るのである。
酒債尋常行処有、人生七十古来稀。
酒の借金はわずかな額でめずらしいことではなくどこにいてもあるものだし、古来人が生きることは七十までいきるのはまれである。(そう長生きができるものではないから酔いたいのだ。)
穿花蛺蝶深深見、点水蜻蜓款款飛。
花のしげみを奥ふかくいりこむ蛺蝶は奥のほうに見えているし、水面にお尻をチョコンとつけるとんぼは緩やかに飛んでいかにも晩春だ。
伝語風光共流転、暫時相賞莫相違。
わたしは言伝をする、「我は風光と共に心も流転し揺れ動く、しばしその時、眺めを賞賛しあい、お互いにその本音のところで相違のないものにしてもらいたい」と。
曲江 二首 其の二
朝【ちょう】より回【かえ】って 日日春衣【しゅんい】を典し、毎日 江頭【こうとう】に酔いを尽して帰る。
酒債【しゅさい】 尋常 行く処に有り、人生七十 古来稀【まれ】なり。
花を穿(うが)つ蛺蝶【ょうちょう】は深深として見え、水に点ずる蜻蜓【せいてい】は款款【かんかん】として飛ぶ。
語を伝う風光「 共に流転【るてん】して、暫時【ざんじ】相賞【あいしょう】して相違うこと莫(な)かれ」と。
現代語訳と訳註
(本文) 曲江二首 其二
朝回日日典春衣、毎日江頭尽酔帰。
酒債尋常行処有、人生七十古来稀。
穿花蛺蝶深深見、点水蜻蜓款款飛。
伝語風光共流転、暫時相賞莫相違。
(下し文) 曲江 二首 其の二
朝【ちょう】より回【かえ】って 日日春衣【しゅんい】を典し、毎日 江頭【こうとう】に酔いを尽して帰る。
酒債【しゅさい】 尋常 行く処に有り、人生七十 古来稀【まれ】なり。
花を穿(うが)つ蛺蝶【ょうちょう】は深深として見え、水に点ずる蜻蜓【せいてい】は款款【かんかん】として飛ぶ。
語を伝う風光「 共に流転【るてん】して、暫時【ざんじ】相賞【あいしょう】して相違うこと莫(な)かれ」と。
(現代語訳)
自分は朝廷からもどる、日々に春のきものを質において銭にかえ、曲江のほとりでいつも十分の酔をきわめて帰るのである。
酒の借金はわずかな額でめずらしいことではなくどこにいてもあるものだし、古来人が生きることは七十までいきるのはまれである。(そう長生きができるものではないから酔いたいのだ。) 花のしげみを奥ふかくいりこむ蛺蝶は奥のほうに見えているし、水面にお尻をチョコンとつけるとんぼは緩やかに飛んでいかにも晩春だ。
わたしは言伝をする、「我は風光と共に心も流転し揺れ動く、しばしその時、眺めを賞賛しあい、お互いにその本音のところで相違のないものにしてもらいたい」と。
(訳注) 曲江二首 其二
七言律詩。【首聯】【頷聯】【頸聯】【尾聯】で構成。同じ四分割の絶句の起承転結の一線の曲折にはならない。中の【頷聯】【頸聯】については対句が絶対条件である。
朝回日日典春衣、毎日江頭尽酔帰。 【首聯】
自分は朝廷からもどる、日々に春のきものを質において銭にかえ、曲江のほとりでいつも十分の酔をきわめて帰るのである。
○朝回 朝廷よりかえる。○典 質におく。○江頭 江は曲江。頭はほとり。○尽酔 十分によう。
酒債尋常行処有、人生七十古来稀。 【頷聯】
酒の借金はわずかな額でめずらしいことではなくどこにいてもあるものだし、古来人が生きることは七十までいきるのはまれである。(そう長生きができるものではないから酔いたいのだ。)
○酒債 飲酒料金の負債。○尋常 あたりまえ、めずらしくもなく。○行処 でかけてゆく先き先き。○人生(一句) 古諺であろう。『禮記』に「人生十年曰幼,學。二十曰弱,冠。三十曰壯,有室。四十曰強,而仕。五十曰艾,服官政。六十曰耆,指使。七十曰老,而傳。」とある。この句に基づいて、白居易に「人生七十稀,我年幸過之。」や「得見成陰否,人生七十稀。」の句がある。 ・人生:人が生きる。人が生きている間。人の生命。左氏『成公二』「人生実難。其有不獲死乎」(人生実に難し。其れ死を獲ざる有らん乎)律詩の不可欠としてこの聯の対句は酒債:人生、尋常:七十、行処有:古来稀である。○尋常 わずかな距離、ひろさ、土地。あるいは、「一尋=八尺」「一常=十六尺(一尋の倍)」と、やはり数になるからということもある。
穿花蛺蝶深深見、点水蜻蜓款款飛。 【頸聯】
花のしげみを奥ふかくいりこむ蛺蝶は奥のほうに見えているし、水面にお尻をチョコンとつけるとんぼは緩やかに飛んでいかにも晩春だ。
○穿花 穿とは花のしげみを奥ふかくいりこむこと。○峡蚊 蝶々。○深深 おくふかいさま。○点水 点はぼちぼちと尻でたたくさま。○蛸挺 とんぼ。○欺欺 緩緩と同じ、ゆるやか。
伝語風光共流転、暫時相賞莫相違。 【尾聯】
わたしは言伝をする、「我は風光と共に心も流転し揺れ動く、しばしその時、眺めを賞賛しあい、お互いにその本音のところで相違のないものにしてもらいたい」と。
○伝語 ことづてする、風光に向かっていう。○風光 春景色。○共 我、汝(風光)とともに。○流転 移転、漂泊、排禍等の意。○相賞 風光を賞する。○莫相違 汝、我と違背することなかれ。
一つには、安史の乱の始まりから、叛乱軍に捕縛され、逃げ出し、そして「北征」し、鳳翔に戻り、又、鄜州羌村に、そして鳳翔へ、その後、長安に帰ったが、別には、朝廷の中での疎外感、自分の理想は、隠遁して「半官半隠」と心も流転している。風に、光にと行き来してみたいということも理解できる。杜甫の精神的な不安定さがピークと考えられる。
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