得舎弟消息 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 257

舎弟は家弟に同じ、弟をいう、名は詳でない〈蓋し「得舎弟消息」(得舎弟消息二首 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 160)の詩の舎弟し」同一人。時に弟は前年の河南でおなじであり、杜甫は前年は鳳翔、この時長安に在った。弟のたよりを得て作った詩。758年春の作。

得舎弟消息
風吹紫荊樹、色興春庭暮。
花落辭故枝、風迴返無處。
骨肉恩書重、漂泊難相遇。
猶有涙成河、經天復東注。

風が庭前の紫荊樹を吹きかかっている、樹の色が春のさかりの庭の色をおなじようにしながら暮れてゆく。
その花はもとの枝から辞し去るように私や親の元から去って、それが「叛乱」の風に吹きつけられ、もとの枝へかえろうとしてもかえるべき処さえない。
漂泊の身の上で、このような叛乱という難儀のために互に出遭うことは難しい、だからこそ、この際の血を分けた兄弟の手紙はことに重んずべきものである。
今もなお、わたしの涙が天の河にながれ出て、それが大空をわたっておまえの居る東の方へむけてそそぎつつあるのだ。

(舎弟の消息を得たり)
風は吹く紫荊樹、色は春庭と暮る。
花落ちて故枝を辞す、風迴りて返るに処無し。
骨肉恩書重し、漂泊相遇い難し。
猶涙の河を成す有り 天を経りて復た東に注ぐ。

現代語訳と訳註
(本文) 得舎弟消息
風吹紫荊樹、色興春庭暮。
花落辭故枝、風迴返無處。
骨肉恩書重、漂泊難相遇。
猶有涙成河、經天復東注。

(下し文) (舎弟の消息を得たり)
風は吹く紫荊樹、色は春庭と暮る。
花落ちて故枝を辞す、風迴りて返るに処無し。
骨肉恩書重し、漂泊相遇い難し。
猶涙の河を成す有り 天を経りて復た東に注ぐ。

(現代語訳)
風が庭前の紫荊樹を吹きかかっている、樹の色が春のさかりの庭の色をおなじようにしながら暮れてゆく。
その花はもとの枝から辞し去るように私や親の元から去って、それが「叛乱」の風に吹きつけられ、もとの枝へかえろうとしてもかえるべき処さえない。
漂泊の身の上で、このような叛乱という難儀のために互に出遭うことは難しい、だからこそ、この際の血を分けた兄弟の手紙はことに重んずべきものである。
今もなお、わたしの涙が天の河にながれ出て、それが大空をわたっておまえの居る東の方へむけてそそぎつつあるのだ。


(訳注)得舎弟消息
756年 安禄山が反乱を起こして、洛陽近郊にいた実弟の消息だけが分かって、詠ったものである。杜甫は叛乱軍に軟禁されており、互いに詳しいことは、云えなかったものである。
得舎弟消息二首 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 160
遠方にいる弟との再会が困難なさまを、 「客人の到来を告げるとされる烏鵲 (カササギ)」 と 「兄弟の情愛の象徴とされる鶺鴒 (セキレイ)」 とを対にして詠う。
得舎弟消息 二首 其二 杜甫 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 161 


風吹紫荊樹、色興春庭暮。
風が庭前の紫荊樹を吹きかかっている、樹の色が春のさかりの庭の色をおなじようにしながら暮れてゆく。
○紫荊樹 「続斉諧記」に、田広・田臭・田慶の兄弟三人が財を分け、最後に堂前の一株の紫荊樹を三分しようとしてこれを切りかけたが、たちまち樹が枯れて、まるで火の燃えるようなさまになったので切るのをやめた。するとまたもとのように勢いよく茂ったので、兄弟達は兄の言葉に感動し、三人抱き合って泣き出した。 「決して樹を切るまい」 そう誓った言葉に応じるかのように、枯れたはずの紫荊が生き返り、葉を茂らせ、花をつけた。 兄弟はこの奇跡に感じ入り、元通り一つ家に住むことにした。 (六朝『続斉諧記』)


花落辭故枝、風迴返無處。
その花はもとの枝から辞し去るように私や親の元から去って、それが「叛乱」の風に吹きつけられ、もとの枝へかえろうとしてもかえるべき処さえない。
○辭故枝 落花または落葉がもとの樹枝を離れることを子弟が父母の郷をはなれて居ることに用いるのは、六朝以来の習わしである。○風迴 過は吹きめぐること。花もしたがって吹かれる。去っていくだけでなく戻ってくることをいう。○返 枝にかえる。


骨肉恩書重、漂泊難相遇。
漂泊の身の上で、このような叛乱という難儀のために互に出遭うことは難しい、だからこそ、この際の血を分けた兄弟の手紙はことに重んずべきものである。
○骨肉 兄弟のちすじ。○恩書 恩愛の情のこもった手紙。○重 貴重なこと。倒句でよむ。


猶有涙成河、經天復東注。
今もなお、わたしの涙が天の河にながれ出て、それが大空をわたっておまえの居る東の方へむけてそそぎつつあるのだ。
○猶 今もなお。○河 あまのがわら。○経天 経はわたる、つながる、上句の河の縁語。○東注 東方に向かってそそぐ、河南は長安の東にある。