痩馬行 #1 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 258

騎馬兵には、少なくとも二頭以上所有していて、交互に乗り換えながら、進軍する。普通以上の地位であれは数頭いるので、捨てられる馬が当然いる。誰にも面倒を見てもらえない馬と、朝廷で、疎外感をもっている杜甫とが重なる。杜甫の詩の多くは、長安の東、南の地の詩が多い。


痩馬行
東郊瘦馬使我傷,骨骼硉兀如堵牆。
長安の城の東の野原に痩せた馬がいて、之をみると自分はかなしくなる、この馬の骨組はでこぼこ浮きだし、側面からみると土塀が立っている様なのだ。
絆之欲動轉欹側,此豈有意仍騰驤?
これを縄でつなごうとしているのだが、動いてとしていよいよ體を直立しようとはしない、その様子では、この馬は痩せてしまって、以前のように躍り上がろうとする気持ちがまだあるのだろうか。
細看六印帶官字,眾道三軍遺路旁。
仔細にみるとこの馬には官でおした焼き印が六箇所ばかりある、このあたりの人々のいうには官軍がみちばたにすてたのだそうだ。
皮幹剝落雜泥滓,毛暗蕭條連雪霜。』
その皮は傷などの糜爛が剥げて落ちてそのままになっている、泥や汚い滓が混ざっており、毛の艶はきえうせてさびしく真っ白い色がつづいている状態だ。』

去歲奔波逐餘寇,驊騮不慣不得將。
士卒多騎內廄馬,惆悵恐是病乘黃。
當時歷塊誤一蹶,委棄非汝能周防。
見人慘澹若哀訴,失主錯莫無晶光。
天寒遠放雁為伴,日暮不收烏啄瘡。
誰家且養願終惠,更試明年春草長。』

東郊の痩馬【しゅうば】  我をして傷(いた)ましむ、骨骼 侓兀【ろつこつ】として堵墻【としょう】の如し。
之を絆【ほだ】さむとすれば 動かんと欲して転【うたた】欹側【いそく】す、此れ豈に仍【な】お騰驤【とうじょう】せんとするに意有るか。
細かに看れば 六印【ろくいん】官字【かんじ】を帯【お】ぶ、衆は道【い】う  三軍路旁【ろぼう】に遺【のこ】すと。
皮は乾きて剥落【はくらく】し泥滓【でいし】雑【まじ】わり、毛は暗くして蕭條【しょうじょう】として雪霜連る。』

去歳【きょさい】  奔波【ほんは】して余寇【よこう】を逐【お】う、驊騮【かりゅう】には慣【な】れず 将【ひき】いることを得ず。
士卒は多く騎【の】る内厩【ないきゅう】の馬、惆悵【ちょうちょう】恐る 是れ病める乗黄【じょうこう】なりしならんことを。
当時  歴塊【れきかい】  誤って一蹶【いっけつ】す、委棄【いき】せらるること 汝が能く周防【しゅうぼう】するに非ず。
人を見て惨澹【さんたん】 哀訴【あいそ】するが若【ごと】く、主を失いて錯莫【さくばく】晶光【せいこう】無し。
天寒く遠く放たれて雁【がん】を伴と為【な】し、日暮れて収められず 烏【からす】瘡【きず】を啄【ついば】む。
誰が家にか 且つ養【やしな】わん 願わくは恵【けい】を終えんことを、更に試みん  明年【めいねん】春草の長きに。』
駿馬02

現代語訳と訳註
(本文) 痩馬行
東郊瘦馬使我傷,骨骼硉兀如堵牆。
絆之欲動轉欹側,此豈有意仍騰驤?
細看六印帶官字,眾道三軍遺路旁。
皮幹剝落雜泥滓,毛暗蕭條連雪霜。』


(下し文)
東郊の痩馬【しゅうば】  我をして傷(いた)ましむ、骨骼 侓兀【ろつこつ】として堵墻【としょう】の如し。
之を絆【ほだ】さむとすれば 動かんと欲して転【うたた】欹側【いそく】す、此れ豈に仍【な】お騰驤【とうじょう】せんとするに意有るか。
細かに看れば 六印【ろくいん】官字【かんじ】を帯【お】ぶ、衆は道【い】う  三軍路旁【ろぼう】に遺【のこ】すと。
皮は乾きて剥落【はくらく】し泥滓【でいし】雑【まじ】わり、毛は暗くして蕭條【しょうじょう】として雪霜連る。』

(現代語訳)
長安の城の東の野原に痩せた馬がいて、之をみると自分はかなしくなる、この馬の骨組はでこぼこ浮きだし、側面からみると土塀が立っている様なのだ。
これを縄でつなごうとしているのだが、動いてとしていよいよ體を直立しようとはしない、その様子では、この馬は痩せてしまって、以前のように躍り上がろうとする気持ちがまだあるのだろうか。
仔細にみるとこの馬には官でおした焼き印が六箇所ばかりある、このあたりの人々のいうには官軍がみちばたにすてたのだそうだ。
その皮は傷などの糜爛が剥げて落ちてそのままになっている、泥や汚い滓が混ざっており、毛の艶はきえうせてさびしく真っ白い色がつづいている状態だ。』


(訳注)
痩馬行
東郊瘦馬使我傷,骨骼硉兀如堵牆。

長安の城の東の野原に痩せた馬がいて、之をみると自分はかなしくなる、この馬の骨組はでこぼこ浮きだし、側面からみると土塀が立っている様なのだ。
東郊 長安の城の東の野外。○骨骼 はねぐみ。○硉兀 骨だかいさま。○堵牆 ついじ、かき、骨体が壁のごとくに立つことをいう。


絆之欲動轉欹側,此豈有意仍騰驤?
これを縄でつなごうとしているのだが、動いてとしていよいよ體を直立しようとはしない、その様子では、この馬は痩せてしまって、以前のように躍り上がろうとする気持ちがまだあるのだろうか。
 なわでからげる。○欲動 馬がうごこうとする。○ いよいよ。○欹側 そばだち、かたむく。直立せぬこと。○ 馬のその態度をさす。○ いままでのように。○騰驤 おどってあがる、馬のいさむさま。


細看六印帶官字,眾道三軍遺路旁。
仔細にみるとこの馬には官でおした焼き印が六箇所ばかりある、このあたりの人々のいうには官軍がみちばたにすてたのだそうだ。
細看 くわしくみる。〇六印 六か所の焼き印、一に六を火に作る、火印ならば焼き印をいう。○帯官字 唐の官馬は其の種類用途如何により馬の尾側、左右牌(もも)、左右縛(かた)、項(うなじ)、頼(ほお)等に焼き印を押した。其の文字には年時・牧監の名があり、竜形・三花の印があり、又、「官」の字、「飛」の字、「風」の字、「賜」の字、「出」の字の印があった。この馬は六か所に官で押した印のあるものであろう。上旬をもし「火印」とするならば帯官字は「官」の字をおぶと解すべきである。○衆道 衆人がいう。〇三軍 王朝軍の陣勢。神策軍、龍武軍、羽林軍がそれぞれ上中下、左右中央、地方にあった。天子の軍。国軍。○ 遺棄する。


皮幹剝落雜泥滓,毛暗蕭條連雪霜。』
その皮は傷などの糜爛が剥げて落ちてそのままになっている、泥や汚い滓が混ざっており、毛の艶はきえうせてさびしく真っ白い色がつづいている状態だ。』
皮乾 脂肪光沢のなくなったさま。○剥落 剥げ落ちている。傷などの糜爛が剥げて落ちてそのままになっている。はげちょろ。○泥滓 どろ、にごりかす。○毛暗 暗とは光沢を失ったことをいう。○蕭條 草木の間を風が抜けるときに起こす音を指し、さびしいさま。○連雪霜 雪霜連と同じ、雪霜とは白っぽい色をたとえていう。馬の病むときは毛のさきがほこりを帯び、色つやがわるく、そのさまが雪霜のつらなっているのに似る。