義鶻行 #3 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 262
(義鶻行ぎこつこう)

義理ある鶻のことをよんだうたである。鶻は「あおだか」の類、「ぬくめどり」という猛鳥である。
杜陵の住居に近い潏水のほとりにおいて樵夫よりきいた話で、鶻が蒼鷹のために白蛇を殺し、子鷹を食った仇を討ったことを述べている。
乾元元年 758年 47歳長安での作。
 

義鶻行【ぎこつこう】
陰崖有蒼鷹,養子黑柏顛。白蛇登其巢,吞噬恣朝餐。』
雄飛遠求食,雌者鳴辛酸。力強不可製,黃口無半存。
其父從西歸,翻身入長煙。斯須領健鶻,痛憤寄所宣。』

鬥上捩孤影,咆哮來九天。修鱗脫遠枝,巨顙坼老拳。
高空得蹭蹬,短草辭蜿蜒。折尾能一掉,飽腸皆已穿。』
#3
生雖滅眾雛,死亦垂千年。
この蛇は生きているときは多くの子鷹を食いたやしたが、死んではみじめな手本を千年の後までたれ残すことになった。
物情可報複,快意貴目前。
すべて事物においては報復ということがあるというものである、だからこの蛇が鶻にかたきうちされたことは眼前におこったことで愉快さは一層である。
茲實鷙鳥最,急難心炯然。
この鶻のした行為はつよい猛鳥といわれる鳥のうちいちばんなのである、こうした急難の折にそれを救ってやる心はかくも光り輝いているのだ。
功成失所往,用舍何其賢!』

仇討ちが成功したら、どこへいったかわからなくなってしまった。その進退を示すのに『用舎行蔵』ということはなんと賢者のなすべきことではないか。』

近經潏水湄,此事樵夫傳。飄蕭覺素發,凜欲沖儒冠。
人生許與分,只在顧盼間。聊為義鶻行,永激壯士肝。』
 
義鶻行 #1
陰崖の二蒼鷹【そうよう】、 子を養う黒柏【こくはく】の顛【いただき】。
白蛇【はくだ】其の巣に登り、 吞噬【とんぜい】朝餐【ちょうさん】を恣【ほしいまま】にす。』
雄飛びて遠く食を求む、 雌者【ししゃ】鳴いて辛酸【しんさん】なり。
力強くして制す可らず、 黄口【こうこう】半存する無し。
其の父西従【よ】り帰る、 身を翻えして長煙に入る。
斯須【ししゅ】健鶻【けんこつ】を領す、 痛憤【つうふん】宣【の】ぶる所に寄す。』
#2
斗【たちま】ち上りて孤影【こえい】を捩【れっ】し、 咆哮【ほうこう】して九天より来る。
修鱗【しゅうりん】遠枝【えんし】より脱す、 巨顙【きょそう】老拳【ろうけん】に坼く。
高空に蹭蹬【そうとう】たるを得、 短草に蜿蜒【えんえん】たるを辞す。
折尾能く一たび掉【ふる】う、 飽腸【ほうちょう】皆己に穿【うが】たる。』
#3 
生衆【せいしゅう】雛【すう】を滅【ほろぼ】すと雖も、 死も亦千年に垂る。
物情報復有り、 快意目前なるを貴ぶ。
茲實【これじつ】に鷙鳥【しちょう】の最なり、 急難に心桐然【けいぜん】たり。
功成りて往く所を失う、 用舎何ぞ其れ賢なる。』

#4
近【ちかご】ろ潏水【いつすい】の湄【ほとり】を経【ふ】、 此の事樵夫【しょうふ】伝【つと】う。
飄蕭【ひょうしょう】素髪の 凛として、儒冠【じゅかん】を衝かんと欲するを覚ゆ。
人生許与【きょよ】の分、 只だ顧盼【こはん】の間に在り。
聊【いささか】か義鶴行を為【つく】り、 用て壮士の肝を激せしむ。』


現代語訳と訳註
(本文)

生雖滅眾雛,死亦垂千年。
物情可報複,快意貴目前。
茲實鷙鳥最,急難心炯然。
功成失所往,用舍何其賢!』

(下し文)#3 
生衆【せいしゅう】雛【すう】を滅【ほろぼ】すと雖も、 死も亦千年に垂る。
物情報復有り、 快意目前なるを貴ぶ。
茲實【これじつ】に鷙鳥【しちょう】の最なり、 急難に心桐然【けいぜん】たり。
功成りて往く所を失う、 用舎何ぞ其れ賢なる。』


(現代語訳)
この蛇は生きているときは多くの子鷹を食いたやしたが、死んではみじめな手本を千年の後までたれ残すことになった。
すべて事物においては報復ということがあるというものである、だからこの蛇が鶻にかたきうちされたことは眼前におこったことで愉快さは一層である。
この鶻のした行為はつよい猛鳥といわれる鳥のうちいちばんなのである、こうした急難の折にそれを救ってやる心はかくも光り輝いているのだ。
仇討ちが成功したら、どこへいったかわからなくなってしまった。その進退を示すのに『用舎行蔵』ということはなんと賢者のなすべきことではないか。』


(訳注)#3
生雖滅眾雛,死亦垂千年。

この蛇は生きているときは多くの子鷹を食いたやしたが、死んではみじめな手本を千年の後までたれ残すことになった。
垂千年 垂とは躯【むくろ】を垂れ晒【さら】すことを後世までのこすことをいう。
 

物情可報複,快意貴目前。
すべて事物においては報復ということがあるというものである、だからこの蛇が鶻にかたきうちされたことは眼前におこったことで愉快さは一層である。
物情 事物の実情。○報復 しかえし。○快意 こころよいこと。○貴目前 目のまえ手近にみるほど貴くありがたい。


茲實鷙鳥最,急難心炯然。
この鶻のした行為はつよい猛鳥といわれる鳥のうちいちばんなのである、こうした急難の折にそれを救ってやる心はかくも光り輝いているのだ。
 鶻のした行為をさす。○鷲鳥 つよいとり。○ いちばん。○急難 危急難難を救うことをいう ○心桐然 心、公明正大なことをいう。
 

功成失所往,用舍何其賢!』
仇討ちが成功したら、どこへいったかわからなくなってしまった。その進退を示すのに『用舎行蔵』ということはなんと賢者のなすべきことではないか。』
功成 功とは蛇を殺したことをさす。○失所往 ゆくえがわからなくなる。○用舎 世に用いられると出て自己の道を行い、捨てられると退いて身を隠す行蔵の義。用舎行蔵は『論語、述而』 「子謂顔淵曰、用之則行、舎之則蔵。唯我興爾有是夫。」(子顔淵【がんえん】に謂ひて曰はく、之を用ふれば則ち行ひ、之を舎【す】つれば則ち蔵【かく】る。唯我と爾【なんぢ】と是れ有るかな)。

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