義鶻行 #4 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 263
(義鶻行ぎこつこう)

義理ある鶻のことをよんだうたである。
鶻は「あおだか」の類、「ぬくめどり」という猛鳥である。

   コツ、ハイタカ(haitaka),はやぶさ、ワシタカ科の

季節 

鶻

杜陵の住居に近い潏水のほとりにおいて樵夫よりきいた話で、鶻が蒼鷹のために白蛇を殺し、子鷹を食った仇を討ったことを述べている。
乾元元年 758年 47歳長安での作。
 

義鶻行【ぎこつこう】
陰崖有蒼鷹,養子黑柏顛。白蛇登其巢,吞噬恣朝餐。』
雄飛遠求食,雌者鳴辛酸。力強不可製,黃口無半存。
其父從西歸,翻身入長煙。斯須領健鶻,痛憤寄所宣。』
#2
鬥上捩孤影,咆哮來九天。修鱗脫遠枝,巨顙坼老拳。
高空得蹭蹬,短草辭蜿蜒。折尾能一掉,飽腸皆已穿。』
#3
生雖滅眾雛,死亦垂千年。物情可報複,快意貴目前。
茲實鷙鳥最,急難心炯然。功成失所往,用舍何其賢!』
#4
近經潏水湄,此事樵夫傳。
ちかごろわたし(杜甫)は潏水のほとりをとおったとき、このはなしを樵夫がかたりつたえてくれた。
飄蕭覺素發,凜欲沖儒冠。
その内容は、ぞっとするほどで白髪を風にそよがせるのがわかるのだ、聞くほどに髪がたちあがって冠をつきさすがごとくにおもわれた。
人生許與分,只在顧盼間。
人生をいきぬくには他人に対し意気相許すという情分のおこることはある、ただ、それはちょっとした瞬間にあるというものである。
聊為義鶻行,永激壯士肝。』

そういうこともあって、世上の人に「義鶻行」という詩にしたのだ。天下の壮士の忠義の肝腸を激励なればとおもっている。
 
義鶻行 #1
陰崖の二蒼鷹【そうよう】、 子を養う黒柏【こくはく】の顛【いただき】。
白蛇【はくだ】其の巣に登り、 吞噬【とんぜい】朝餐【ちょうさん】を恣【ほしいまま】にす。』
雄飛びて遠く食を求む、 雌者【ししゃ】鳴いて辛酸【しんさん】なり。
力強くして制す可らず、 黄口【こうこう】半存する無し。
其の父西従【よ】り帰る、 身を翻えして長煙に入る。
斯須【ししゅ】健鶻【けんこつ】を領す、 痛憤【つうふん】宣【の】ぶる所に寄す。』
#2
斗【たちま】ち上りて孤影【こえい】を捩【れっ】し、 咆哮【ほうこう】して九天より来る。
修鱗【しゅうりん】遠枝【えんし】より脱す、 巨顙【きょそう】老拳【ろうけん】に坼く。
高空に蹭蹬【そうとう】たるを得、 短草に蜿蜒【えんえん】たるを辞す。
折尾能く一たび掉【ふる】う、 飽腸【ほうちょう】皆己に穿【うが】たる。』
#3 
生衆【せいしゅう】雛【すう】を滅【ほろぼ】すと雖も、 死も亦千年に垂る。
物情報復有り、 快意目前なるを貴ぶ。
茲實【これじつ】に鷙鳥【しちょう】の最なり、 急難に心桐然【けいぜん】たり。
功成りて往く所を失う、 用舎何ぞ其れ賢なる。』
#4
近【ちかご】ろ潏水【いつすい】の湄【ほとり】を経【ふ】、 此の事樵夫【しょうふ】伝【つと】う。
飄蕭【ひょうしょう】素髪の 凛として、儒冠【じゅかん】を衝かんと欲するを覚ゆ。
人生許与【きょよ】の分、 只だ顧盼【こはん】の間に在り。
聊【いささか】か義鶴行を為【つく】り、 用て壮士の肝を激せしむ。』


現代語訳と訳註
(本文)

近經潏水湄,此事樵夫傳。
飄蕭覺素發,凜欲沖儒冠。
人生許與分,只在顧盼間。
聊為義鶻行,永激壯士肝。』


(下し文)
#4
近【ちかご】ろ潏水【いつすい】の湄【ほとり】を経【ふ】、 此の事樵夫【しょうふ】伝【つと】う。
飄蕭【ひょうしょう】素髪の 凛として、儒冠【じゅかん】を衝かんと欲するを覚ゆ。
人生許与【きょよ】の分、 只だ顧盼【こはん】の間に在り。
聊【いささか】か義鶴行を為【つく】り、 用て壮士の肝を激せしむ。』


(現代語訳)
ちかごろわたし(杜甫)は潏水のほとりをとおったとき、このはなしを樵夫がかたりつたえてくれた。
その内容は、ぞっとするほどで白髪を風にそよがせるのがわかるのだ、聞くほどに髪がたちあがって冠をつきさすがごとくにおもわれた。
人生をいきぬくには他人に対し意気相許すという情分のおこることはある、ただ、それはちょっとした瞬間にあるというものである。
そういうこともあって、世上の人に「義鶻行」という詩にしたのだ。天下の壮士の忠義の肝腸を激励なればとおもっている。
長安 五原八水00

(訳注)#4
近經潏水湄,此事樵夫傳。

ちかごろわたし(杜甫)は潏水のほとりをとおったとき、このはなしを樵夫がかたりつたえてくれた。
潏水 長安の杜陵にある。皇子陵より西北流して渭水に入る。
 

飄蕭覺素發,凜欲沖儒冠。
その内容は、ぞっとするほどで白髪を風にそよがせるのがわかるのだ、聞くほどに髪がたちあがって冠をつきさすがごとくにおもわれた
諷薫 風にふかれるさま。○素髪 しらが。○凛 ひきしまり、ぞっとするさま。○沖儒冠 髪がたちあがって冠をつきさそうとする。儒冠は儒者のかんむり、自己の冠をいう。


人生許與分,只在顧盼間。
人生をいきぬくには他人に対し意気相許すという情分のおこることはある、ただ、それはちょっとした瞬間にあるというものである。
許与分 許与は我が意気を人にゆるしあたえること。分は情分、分誼、あいてあいてに応ずる心づくし。○顧扮 ちょっとよこをふりむいてみること、つかのまをいう。


聊為義鶻行,永激壯士肝。』
そういうこともあって、世上の人に「義鶻行」という詩にしたのだ。天下の壮士の忠義の肝腸を激励なればとおもっている。
○激 はげます。○壮士 天下の勇壮な人たち。