題鄭牌亭子 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 270

(鄭県の亭子に題す)
華州の鄭県にある亭にかきつけた詩、実はそこにある竹に題した詩である。作者が華州へ赴任しょうとするときの作である。

題鄭縣亭子
鄭縣亭子澗之濱,戶牖憑高發興新。
鄭県の宿場の傍、谷間の水辺にある、その宿場の戸や窓から高処に寄って眺めると新しく興が沸き起こる。
雲斷岳蓮臨大路,天晴宮柳暗長春。
雲が途絶えて華岳の蓮峰が大道にさしかかっており、空は晴れ渡って河向かいの長春宮のあたりに柳が小暗く見えている。
巢邊野雀欺群燕,花底山蜂趁遠人。
やや近くでは燕の巣の傍へ野の雀が群がってやって来てそれをあなどっており、花樹のあいだを通って行く人を山蜂が同じようにどこまでもとくっついて行く。(遠景近景ともにおもしろい。あるいは、朝廷内のことを揶揄しているのか)
更欲題詩滿青竹,晚來幽獨恐傷神。

そこでわたしは宿場の傍の青竹の幹にもっと詩をかきつけていっぱいになるほどにしようかと思うのだが、いかにせん、夕方になって。竹藪の奥深い所、寂しく一人でいることで、いろんなおもい、心の傷が浮かんでくる。(だからこのまま竹林の奥にひっそりと棲みたいものだ。)

 (鄭県の亭子に題す)
鄭県【ていけん】の亭子【ていし】澗【かん】の浜【ひん】、戶牖【こゆう】 高きに憑【よ】れば発興【ほつきょう】新なり。
雲断えて岳蓮【がくれん】大路【たいろ】に臨み、天晴れて宮柳【きゅうりゅう】長春【ちょうしゅん】に暗し。
巣辺【そうへん】には野雀【やじゃく】羣【むら】がりて燕を欺【あなど】り、花底【かてい】には山蜂【さんぽう】遠く人を趁【お】う。
更に詩を題して青竹に満【み】てんと欲するも、晩来幽独【ゆうどく】にして恐らくは神を傷【いた】ましめん。

杜甫乱前後の図003鳳翔
 

現代語訳と訳註
(本文) 題鄭縣亭子

鄭縣亭子澗之濱,戶牖憑高發興新。
雲斷岳蓮臨大路,天晴宮柳暗長春。
巢邊野雀欺群燕,花底山蜂趁遠人。
更欲題詩滿青竹,晚來幽獨恐傷神。


(下し文) (鄭県の亭子に題す)
鄭県【ていけん】の亭子【ていし】澗【かん】の浜【ひん】、戶牖【こゆう】 高きに憑【よ】れば発興【ほつきょう】新なり。
雲断えて岳蓮【がくれん】大路【たいろ】に臨み、天晴れて宮柳【きゅうりゅう】長春【ちょうしゅん】に暗し。
巣辺【そうへん】には野雀【やじゃく】羣【むら】がりて燕を欺【あなど】り、花底【かてい】には山蜂【さんぽう】遠く人を趁【お】う。
更に詩を題して青竹に満【み】てんと欲するも、晩来幽独【ゆうどく】にして恐らくは神を傷【いた】ましめん。


(現代語訳)
鄭県の宿場の傍、谷間の水辺にある、その宿場の戸や窓から高処に寄って眺めると新しく興が沸き起こる。
雲が途絶えて華岳の蓮峰が大道にさしかかっており、空は晴れ渡って河向かいの長春宮のあたりに柳が小暗く見えている。
やや近くでは燕の巣の傍へ野の雀が群がってやって来てそれをあなどっており、花樹のあいだを通って行く人を山蜂が同じようにどこまでもとくっついて行く。(遠景近景ともにおもしろい。あるいは、朝廷内のことを揶揄しているのか)
そこでわたしは宿場の傍の青竹の幹にもっと詩をかきつけていっぱいになるほどにしようかと思うのだが、いかにせん、夕方になって。竹藪の奥深い所、寂しく一人でいることで、いろんなおもい、心の傷が浮かんでくる。(だからこのまま竹林の奥にひっそりと棲みたいものだ。)


(訳注)
題鄭縣亭子

鄭県の宿場か、駅である。あずまやの壁に題したもの。普段なら、詩が湧き上がってくる情景であるのに夕暮れと長安の都から遠ざかってゆく身を詠ったもの。758年晩夏、高式顔との出会い別れたがその直後の作であろう。左遷の赴任途中である。


鄭縣亭子澗之濱,戶牖憑高發興新。
(鄭県の亭子澗の浜、戶牖 高きに憑れば発興新なり。)
鄭県の宿場の傍、谷間の水辺にある、その宿場の戸や窓から高処に寄って眺めると新しく興が沸き起こる。
鄭県 華州の城郭にくっついて置かれた県の名。○亭子 ちん、四阿、小さな休み場所。あずまや。子は助詞。亭:宿場、宿駅、○ たにの水、鄭県にある西渓をいう。○ ほとり。○戸牖 牖はかべの窓、この二字は副詞にみるべきである。○憑高 たかいところによってながめる、戸牖からながめる。○発興 興味をおこす。


雲斷岳蓮臨大路,天晴宮柳暗長春。
(雲断えて岳蓮大路に臨み、天晴れて宮柳長春に暗し。)

雲が途絶えて華岳の蓮峰が大道にさしかかっており、空は晴れ渡って河向かいの長春宮のあたりに柳が小暗く見えている。
岳蓮 華山の姿をいう、華山は華州の東南にある。蓮は蓮花峰をいう、山頂に池があって千葉蓮花(かさなりのはちす)が派生する様子から名づけられたという。○大路 街道をさす。○宮柳 長春宮のやなぎ。官柳は官よりうえたやなぎをいう。○ 葉のしげって薄暗くかすんでいるさまをいう。○長春 宮の名、陝西省同州府朝邑県にあり、黄河をへだてて華州よりは東北にあたる、肉眼ではそのあたりまでは見えないであろうがさように感ぜられることをいう。


巢邊野雀欺群燕,花底山蜂趁遠人。
(巣辺には野雀羣がりて燕を欺り、花底には山蜂遠く人を趁う。)
やや近くでは燕の巣の傍へ野の雀が群がってやって来てそれをあなどっており、花樹のあいだを通って行く人を山蜂が同じようにどこまでもとくっついて行く。(遠景近景ともにおもしろい。あるいは、朝廷内のことを揶揄しているのか)
 つばめのすをいう。○ 俗用のときは欺侮の義、あなどること。○花底 百花の中央をつきぬけることをいう。○ あとからおいついてくること。


更欲題詩滿青竹,晚來幽獨恐傷神。
(晩来幽独にして恐らくは神を傷ましめん。)
そこでわたしは宿場の傍の青竹の幹にもっと詩をかきつけていっぱいになるほどにしようかと思うのだが、いかにせん、夕方になって。竹藪の奥深い所、寂しく一人でいることで、いろんなおもい、心の傷が浮かんでくる。(だからこのまま竹林の奥にひっそりと棲みたいものだ。)
滿青竹 青竹ははえている竹の幹をいう。満はいっぱいにかきつける。○幽独 しずかにただひとりいる。竹藪の奥深い所を示す。隠遁者のつかう言葉である。○傷神 こころをいたましめ、かなしましめる。

韻は、新、春、人、神。