贈衛八処士 #3 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ 杜甫特集700- 294
乾元2年 759年 48歳


贈衛八処士 
処士たる衛某におくった詩。処士とは仕えず隠遁しおる者をいう。衛某に関しては其の人、其の地、共に明かでない。乾元二年春作者が華州にあったとき其の家を訪うたのであろうと

贈衛八処士
人生不相見、動如参与商。
今夕復何夕、共此燈燭光。』
少壮能幾時、鬢髪各已蒼。
訪旧半為鬼、驚呼熱中腸。--①
焉知二十載、重上君子堂。
昔別君未婚、男女忽成行。
怡然敬父執、問我来何方。』
問答未及已、駆児羅酒漿。--②
夜雨剪春韮、新炊間黄粱。
それから夜の雨ふりのなか春の「にら」を切り取り、あなたらしくご飯を炊いて、米麦のほかに黄梁【あわ】をまぜてくれる。
主称会面難、一挙累十觴。
主人たる君は、「おたがいの面会はなかなか容易ではないぞ」という。それで自分は一いきに十盃ぐらいつづけさまにのむのである。
十觴亦不酔、感子故意長。
その十盃を飲んだけれども酔わないのだ。ただただ君の親切心、気遣いが前とかわらず続いていることをふかく感ずるのである。
明日隔山岳、世事両茫茫。』--③

この親切な君と語り合うのも今夜だけで、明日にもなって別れをしておたがいに山をへだてる様になればそれからさきは両方とも世事の前途あてどもないことになってしまうのである。(それを思うから酔いがまわらないのだ。)

(衛八処士に贈る)
#1
人生  相【あい】見ざる、動【やや】もすれば参【さん】と商【しょう】との如し
今夕【こんせき】 復【ま】た何の夕べぞ、此の灯燭【とうしょく】の光を共にす。』
少壮 能【よ】く幾時ぞ、鬢髪【びんぱつ】  各々已に蒼【そう】たり。
旧を訪【と】えば  半ば鬼と為る、驚き呼んで中腸【ちゅうちょう】熱(ねつ)す
#2
焉【いずく】んぞ知らん  二十載【さい】、重ねて君子【くんし】の堂に上らんとは。
昔 別れしとき 君【きみ】未だ婚せざりしに、児女【じじょ】  忽ち行【こう)を成す。
怡然【いぜん】として父の執【とも】を敬【うやま】い、我に問う  何れの方【かた】より来たるやと。
問答  未だ已【や】むに及ばざるに、児【じ】を駆【か】って酒漿【しゅしょう】を羅【つら】ぬ。
#3
夜雨【やう】 春韮【しゅんきゅう】を剪【き】り、新炊(しんすい】  黄粱【こうりょう】を間【まじ】う。
主【しゅ】は称す 会面【かいめん)難【かた】し、一挙 十觴【じつしょう】を累【かさ】ねよと。
十觴も亦た酔わず、子(し)が故意(こい】の長きに感ず。
明日【めいじつ】 山岳を隔【へだ】てば、世事【せいじ】   両【ふた】つながら茫茫【ぼうぼう)たらん。


現代語訳と訳註
(本文)

夜雨剪春韮、新炊間黄粱。
主称会面難、一挙累十觴。
十觴亦不酔、感子故意長。
明日隔山岳、世事両茫茫。』--③


(下し文) #3
夜雨【やう】 春韮【しゅんきゅう】を剪【き】り、新炊(しんすい】  黄粱【こうりょう】を間【かん】す。
主【しゅ】は称す 会面【かいめん)難【かた】し、一挙 十觴【じつしょう】を累【かさ】ねよと。
十觴も亦た酔わず、子(し)が故意(こい】の長きに感ず。
明日【めいじつ】 山岳を隔【へだ】てば、世事【せいじ】   両【ふた】つながら茫茫【ぼうぼう)たらん。


(現代語訳)
それから夜の雨ふりのなか春の「にら」を切り取り、あなたらしくご飯を炊いて、米麦のほかに黄梁【あわ】をまぜてくれる。
主人たる君は、「おたがいの面会はなかなか容易ではないぞ」という。それで自分は一いきに十盃ぐらいつづけさまにのむのである。
その十盃を飲んだけれども酔わないのだ。ただただ君の親切心、気遣いが前とかわらず続いていることをふかく感ずるのである。
この親切な君と語り合うのも今夜だけで、明日にもなって別れをしておたがいに山をへだてる様になればそれからさきは両方とも世事の前途あてどもないことになってしまうのである。(それを思うから酔いがまわらないのだ。)


(訳注)
夜雨剪春韭,新炊間黃粱。

夜雨【やう】 春韮【しゅんきゅう】を剪【き】り、新炊(しんすい】  黄粱【こうりょう】を間【まじ】う。
それから夜の雨ふりのなか春の「にら」を切り取り、あなたらしくご飯を炊いて、米麦のほかに黄梁【あわ】をまぜてくれる。
 きりとる。○春韮 春のにら。○新炊 あらたにかしぐ、あたらしくごほんをたく。○ まぜる。○黃梁 よいあわ。


主稱會面難,一舉累十觴。
主【しゅ】は称す 会面【かいめん)難【かた】し、一挙 十觴【じつしょう】を累【かさ】ねよと。
主人たる君は、「おたがいの面会はなかなか容易ではないぞ」という。それで自分は一いきに十盃ぐらいつづけさまにのむのである。
 主人衛某。○ 口でいう。〇一挙 一たび手をあげ、うごかしで。○ つづけさまにのむ。〇十鰻 さかずき十杯 


十觴亦不醉,感子故意長。
十觴も亦た酔わず、子(し)が故意(こい】の長きに感ず。
その十盃を飲んだけれども酔わないのだ。ただただ君の親切心、気遣いが前とかわらず続いていることをふかく感ずるのである。
 作者がよう。○ 衛をさす。○故意長 従前どおりの親切心がいままでつづいている。


明日隔山嶽,世事兩茫茫!
明日【めいじつ】 山岳を隔【へだ】てば、世事【せいじ】   両【ふた】つながら茫茫【ぼうぼう)たらん。
この親切な君と語り合うのも今夜だけで、明日にもなって別れをしておたがいに山をへだてる様になればそれからさきは両方とも世事の前途あてどもないことになってしまうのである。(それを思うから酔いがまわらないのだ。)
山岳 いずれの山か詳かでない、彼我両地の中間にあるもの。○世事 世上の人事。○ 君も我も両方ともにの意。○茫茫 世事の常なくはかり知ることができぬさまをいう。