不歸 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1013 杜甫特集700- 302
杜甫、華州へ左遷されてからの作品一覧
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冬末以事之東都,湖城東遇孟雲卿,複歸劉顥宅宿,宴飲散因為醉歌 #2 700- 288
洗兵行 #1 杜甫詩紀頌之の漢詩 特集700- 295
獨立
重題鄭氏東亭
三吏三別
不歸
もう帰らない。
河間尚徵伐,汝骨在空城。
黄河流域、河南一帯は、いまだに平定されず戰が続いている、安慶緒を成敗してもう鄴城には兵士のいなくなってるだろうが、君たちはどうしているのだろうか。そのままでいるのか
從弟人皆有,終身恨不平。
我弟たちにとっては、ひとにはそれぞれ限られた人生があるというものだ、私のように年老いた身にとっては、戦が終わらず、平らげられることがないことへの怨みの気持ちでいる。
數金憐俊邁,總角愛聰明。
金を数え、利害のために賢いすぐれた俊秀をいかさずにおるものにたいして憐れに思う。しかし、叛乱軍の子供じみたことには辟易だが、これからの子供にたいしては道理に通じて聡いものが愛されるのである。
面上三年土,春風草又生。
目の当たりにしたこと、戰の塵埃はもう三年も積重ねられているが、万物が芽生える春の息吹があるということ草花木は帰ってきてまた生まれているではないか。
(歸らず)
河間 尚 徵伐,汝の骨 空城に在り。
從弟!人皆有り,終身!不平を恨む。
金を數えれば俊邁【しゅんまい】を憐れみ,總角【かみたば】ねて 聰明【そうめい】を愛でる。
面上【まのあた】りにして 三年の土,春風は 草を又 生ず。
現代語訳と訳註
(本文) 不歸
河間尚徵伐,汝骨在空城。
從弟人皆有,終身恨不平。
數金憐俊邁,總角愛聰明。
面上三年土,春風草又生。
(下し文)(歸らず)
河間 尚 徵伐,汝の骨 空城に在り。
從弟!人皆有り,終身!不平を恨む。
金を數えれば俊邁【しゅんまい】を憐れみ,總角【かみたば】ねて 聰明【そうめい】を愛でる。
面上【まのあた】りにして 三年の土,春風は 草を又 生ず。
(現代語訳)
もう帰らない。
黄河流域、河南一帯は、いまだに平定されず戰が続いている、安慶緒を成敗してもう鄴城には兵士のいなくなってるだろうが、君たちはどうしているのだろうか。そのままでいるのか
我弟たちにとっては、ひとにはそれぞれ限られた人生があるというものだ、私のように年老いた身にとっては、戦が終わらず、平らげられることがないことへの怨みの気持ちでいる。
金を数え、利害のために賢いすぐれた俊秀をいかさずにおるものにたいして憐れに思う。しかし、叛乱軍の子供じみたことには辟易だが、これからの子供にたいしては道理に通じて聡いものが愛されるのである。
目の当たりにしたこと、戰の塵埃はもう三年も積重ねられているが、万物が芽生える春の息吹があるということ草花木は帰ってきてまた生まれているではないか。
(訳注)
不歸
もう帰らない。
○官を辞することを示唆する。また、家族が帰ってこない。平穏な生活が帰ってこない。五言律詩。【首聯】では黄河流域に平穏な生活が帰らない。【頷聯】自分の親族、自分自身の夢に向けての人生生活が帰ってこない。【頸聯】金を目当てに反乱を起こした奴らに憐れんでいるが、これからの子供の英知を期待する。【尾聯】もう三年になるが自然のいとなみは、「不歸」ではなく、「又生」なのだ。押韻 城。平。明。生。
河間尚徵伐,汝骨在空城。
黄河流域、河南一帯は、いまだに平定されず戰が続いている、安慶緒を成敗してもう鄴城には兵士のいなくなってるだろうが、君たちはどうしているのだろうか。そのままでいるのか
○河間 黄河流域、河南一帯。○徵伐 叛乱軍に対する征伐の戦いをしている。○汝骨 ここでいう汝は次句の従弟に対して○空城 兵士がいなくなった城郭。
從弟人皆有,終身恨不平。
我弟たちにとっては、ひとにはそれぞれ限られた人生があるというものだ、私のように年老いた身にとっては、戦が終わらず、平らげられることがないことへの怨みの気持ちでいる。
○從弟 杜甫の親族、異母弟。済南に避難していた。杜亞は河西の判官に赴ている。 ○人皆有 ひとにはそれぞれ限られた人生がある。自然の草花には季節が廻って芽吹いてくるという最終句にかかる。○終身 若い従弟に対して、自分は年老いている。この身を終わろうとしている。○恨不平 恨みに思うことは平定されない、平穏でないこと。安史の乱により、死に直面し、家族とは離散してしまったこと。
數金憐俊邁,總角愛聰明。
金を数え、利害のために賢いすぐれた俊秀をいかさずにおるものにたいして憐れに思う。しかし、叛乱軍の子供じみたことには辟易だが、これからの子供にたいしては道理に通じて聡いものが愛されるのである。
○數金 金を数える。金で雇われて兵士になる。この頃、武芸者に対して、通常以上の金が支払われた。武力を頼りに略奪をおこない蓄財していくものが多かった。それに対し、文人の詩歌に対する評価、売文はほとんどなかった。平穏時には、売文はそこそこあったのだ。○憐 憐れむ。心配する。○俊邁 すぐれていること。俊秀。晋書『陸喜傳』「神情俊邁。」○總角 髪を束ねる。こどもをしめす。叛乱軍に対して幼稚な子供という表現をしている。○聰明 道理に通じてさといやつ。書経『皐陶謨』「天聰明、自我民聰明。」(天の聰明は、我が民の聰明に自【した】がう。)
面上三年土,春風草又生。
目の当たりにしたこと、戰の塵埃はもう三年も積重ねられているが、万物が芽生える春の息吹があるということ草花木は帰ってきてまた生まれているではないか。
○面上 目の当たりにしたことなど。○三年土 安史の乱が始まって三年経過している。○春風 万物が芽生える春の息吹のこと。○草 草花。草木。強く生きていく人々。○又生 また生まれてくる。
二年前の春は叛乱軍に拘束され長安で迎えた春であった。どちらも官に対して、仕事に対しての思い入れは皆無で、春の息吹に生きていく力を感じている。詩人として生きていくこと、詩人の矜持についてはどちらも、強いものを感じる。
春望
(本文)
國破山河在,城春草木深。
感時花濺涙,恨別鳥驚心。
烽火連三月,家書抵萬金。
白頭掻更短,渾欲不勝簪。
(下し文)
國 破れて 山河 在り,城 春にして 草木 深し。
時に 感じては 花にも 涙を 濺(そそ)ぎ,別れを 恨んでは 鳥にも 心を驚かす。
烽火 三月(さんげつ)に 連なり,家書 萬金に 抵(あ)たる。
白頭 掻けば 更に 短く,渾(すべ)て簪(しん)に勝(た)へざらんと欲す。
(現代語訳)
春の眺め
天下の唐王朝の都が破壊されたが、とりまく山河自然は存在を示している。破壊された長安の街に春の息吹がよみがえる、草木が茂って来たではないか。
自然というものは時節の変転、春の息吹を感じ、させて花を開いているのだが、叛乱軍に破壊尽くされた唐王朝に春はこないので花を見ても涙を流すだけなのだ。自分にとっても、家族との別離をうらめしく思い、鳥が自由に飛び交い、一族群れを為している姿を見るにつけても、心を痛めているのだ。
長安郊外での戦火は三ヶ月も続いたが、期待を裏切り、無駄なものであった。こんなとき、もし家族からの手紙があったとしたら、それは万金にあたいするもので極めて貴重なのである。
白髪頭を掻けば、苦労で老けた髪は一層短く、少なくなった。 こんなに髪が少なくなってほとんど、まげを止めるカンザシを挿すにもたえないような状態になってしまった。
