獨立 杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1016 杜甫詩集700-303



獨立
空外一鷙鳥,河間雙白鷗。
はるかな天空に一羽の猛鳥がいる。黄河の流れの間に二羽の白い羽のかもめがいる。(一鷙鳥は安禄山で河北で叛乱した。雙白鷗は玄宗を指すもの)
飄搖搏擊便,容易往來遊。
動揺して定まらないこと(数年前から、安禄山が叛乱を起すといわれてきたのを玄宗と楊貴妃とは安禄山を可愛がった)、その間隙をついて襲ったのだ。はっきりしていること(安禄山のもとに傭兵が集結していたし、不満を持っていた潘鎮・節度使も呼応していた)は、不満の者たちの往来を自由にさせていたことだ。
草露亦多濕,蛛絲仍未收。
草に着いた露に更に高温多湿な状態が加わった(ただでさえ自由に兵力を整えていたものに朝廷玄宗の頽廃、楊国忠と安禄山の対立激化をいう)。そして蜘蛛の糸で覆われてしまったのだがいまだにそれを治め平定することができないのだ。
天機近人事,獨立萬端憂。

天子のきまぐれな機嫌が近頃の人事の差配にあらわれた。こうして、官を辞して独立するとしてもすべての事柄に心配事がありすぎるのが現状なのだ。


獨り立つ
空外に 一鷙鳥あり,河間に 雙いの白鷗ある。
飄搖して 搏擊の便,容易にして 往來を遊ぶ。
草露あり 亦 多濕なり,蛛絲 仍【な】お未だ收らん。
天機にして 近ごろの人事あり,獨立すれども 萬端の憂。


五言律詩。【首聯】【頷聯】【頸聯】【尾聯】で構成。同じ四分割の絶句の起承転結の一線の曲折にはならない。中の【頷聯】【頸聯】については対句が絶対条件である。


現代語訳と訳註
(本文)
獨立
空外一鷙鳥,河間雙白鷗。
飄搖搏擊便,容易往來遊。
草露亦多濕,蛛絲仍未收。
天機近人事,獨立萬端憂。


(下し文)
獨り立つ
空外に 一鷙鳥あり,河間に 雙いの白鷗ある。
飄搖して 搏擊の便,容易にして 往來を遊ぶ。
草露あり 亦 多濕なり,蛛絲 仍【な】お未だ收らん。
天機にして 近ごろの人事あり,獨立すれども 萬端の憂。


(現代語訳)
はるかな天空に一羽の猛鳥がいる。黄河の流れの間に二羽の白い羽のかもめがいる。(一鷙鳥は安禄山で河北で叛乱した。雙白鷗は玄宗を指すもの)
動揺して定まらないこと(数年前から、安禄山が叛乱を起すといわれてきたのを玄宗と楊貴妃とは安禄山を可愛がった)、その間隙をついて襲ったのだ。はっきりしていること(安禄山のもとに傭兵が集結していたし、不満を持っていた潘鎮・節度使も呼応していた)は、不満の者たちの往来を自由にさせていたことだ。
草に着いた露に更に高温多湿な状態が加わった(ただでさえ自由に兵力を整えていたものに朝廷玄宗の頽廃、楊国忠と安禄山の対立激化をいう)。そして蜘蛛の糸で覆われてしまったのだがいまだにそれを治め平定することができないのだ。
天子のきまぐれな機嫌が近頃の人事の差配にあらわれた。こうして、官を辞して独立するとしてもすべての事柄に心配事がありすぎるのが現状なのだ。


(訳注)
獨立

一人立つ。孤独な状態に置かれる。758年左拾遺を授かった直後、房琯を弁護することにより、粛宗の逆鱗に触れて以来、朝廷内で約一年疎外され、後、華州へ左遷。その間、ほとんど仕事らしきもの、公と思われる詩文はない。すべて私的なものである。この詩題は、杜甫が、詩人として生きていくこと決意した詩といわれている。詩題としてより、内容的に薄い感じである。


空外一鷙鳥,河間雙白鷗。
はるかな天空に一羽の猛鳥がいる。黄河の流れの間に二羽の白い羽のかもめがいる。(一鷙鳥は安禄山で河北で叛乱した。雙白鷗は玄宗を指すもの)
空外 はるかな天空。杜甫『擣衣詩』「用い盡くす閨中の力、君聽け空外の音を。」(用盡閨中力、君聽空外音。)○ 猛鳥の意。ワシやタカなど、他の動物を捕らえて食う鳥。猛禽(もうきん)。安史軍を指す。 ○河間 黄河の流れのあいだに。今の河北省献縣の東南。また、河北省河間縣。安史軍の拠点。○白鷗 はねの白いカモメ。鮑照『還都道中作詩』「騰沙鬱黄霧、飜浪揚白鷗。」(沙を騰げて黄霧を鬱にし、浪を飜して白鷗を揚ぐ。)


飄搖搏擊便,容易往來遊。
動揺して定まらないこと(数年前から、安禄山が叛乱を起すといわれてきたのを玄宗と楊貴妃とは安禄山を可愛がった)、その間隙をついて襲ったのだ。はっきりしていること(安禄山のもとに傭兵が集結していたし、不満を持っていた潘鎮・節度使も呼応していた)は、不満の者たちの往来を自由にさせていたことだ。
飄搖 ひるがえり、ゆらぐ。動揺して定まらない様子。張華『鷦鷯賦』「提挈萬里、飄搖逼畏。」(挈して萬里に提、飄搖として逼り畏そ。)○搏擊便 (1)手でうつこと。殴ること。 (2)攻めること。うち負かすこと。容易 ○往來遊。


草露亦多濕,蛛絲仍未收。
草に着いた露に更に高温多湿な状態が加わった(ただでさえ自由に兵力を整えていたものに朝廷玄宗の頽廃、楊国忠と安禄山の対立激化をいう)。そして蜘蛛の糸で覆われてしまったのだがいまだにそれを治め平定することができないのだ。
草露 草に置くつゆ。はかないもののたとえにいう。○亦多濕 湿気が多いこと。湿度が高いこと。また、そのさま。○蛛絲 蜘蛛の糸。安史軍が下方句を拠点として勢いが衰えていない。○仍未收 戦がおさまっていない。


天機近人事,獨立萬端憂。
天子のきまぐれな機嫌が近頃の人事の差配にあらわれた。こうして、官を辞して独立するとしてもすべての事柄に心配事がありすぎるのが現状なのだ。
天機 1 造化の秘密。天地自然の神秘。 2 生まれつきの才能。 3 天子の機嫌。天気。○近人事 房琯のグループは一切左遷された。○獨立 ○萬端 ある物事についての、すべての事柄。諸般。


(杜甫の言う「天機近人事」とは)
安禄山が反乱を起こし洛陽長安が陥落し、玄宗は退位し蜀へ逃走。粛宗は北辺の霊武に行在所を置いた。この霊武には朔方軍の司令官として郭子儀がいた。ここしか頼るところがなかった。郭子儀しか成果を上げていないし、顔真卿兄弟などを軽視し、適切な作戦がとられていない。兵力はウイグルの援軍を得なくても唐王朝の軍隊を整備し、適切な配備をしておればよかったが、奸臣、宦官の言いなりで、作戦はことごとく失敗した。ただ、安禄山の側も、史思明が范陽に帰り一枚岩ではなかった。史思明は粛宗の唐と安禄山の燕大国と史思明の三権鼎立を模索していた。この時、ウイグルは安禄山、史思明にも一部兵士を出していた。そのことに以上に恐れをなした粛宗はウイグルに泣きついた格好で援軍を依頼した。唐軍の諸公の中にはウイグル援軍を不満に思うものは少なくなかった。少なくとも敵に回さなければよい程度の対応すればよかったのである。焦った対応で安禄山を過大評価し、作戦を誤った。

 杜甫はこの間、役立つことを一切させてもらっていないばかりか、状況も知らせれていなかったものと思われる。
 安禄山は息子安慶緒に殺害され、史思明は安慶緒と一定の距離をとり始めていたことで、唐王朝軍は長安洛陽を奪還し得たのであるが、ここでさらに、王朝内を固めていかなければいけない時期に、粛宗は房琯グループの一掃ということで、まじめな軍人、文人を左遷させたのだ。高適、厳武、杜甫と仲の良かったものは誰もいなくなった。高適は永王璘の叛乱を抑え功績をあげていた。厳武は長安、洛陽奪還に功績をあげていた。功績について一切報われることはなく左遷された。朝廷内には郭子儀だけであった。しかし、粛宗は宦官の意見を取り入れていた。