新安吏 杜甫 三吏三別詩<215>#2 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1022 杜甫詩集700- 305 


三吏三別:三吏;
2. 新安の吏 2.石蒙の吏 3.潼関の吏
三吏三別:三別;
4.新婚の別れ 5.無家の別れ 6.垂老の別れ

1.新安吏 

1019304新安吏 #1
1022305新安吏 #2
1025306新安吏 #3


新安吏
 *原注 収京収京後作。雖収両京。賦猶充斥。
客行新安道、喧呼聞點兵。
借問新安吏、縣小更無丁。
府帖昨夜下、次選中男行。
中男絕短小、何以守王城。』
#2
肥男有母送、瘦男獨伶俜。
中男のなかに太った男がいて、そのかれの母親が見送りにきている。また痩せた男がいるがそれはひとり寄る辺なく淋しそうに見えている。
白水暮東流、青山猶哭聲。
道端の渓流に暮れ残る白き光をうかべて東に向かって流れてゆく、あたりの春霞にけむる青山に見送る人々の慟哭の声がやまず、絶えることなく響いている。
莫自使眼枯、收汝淚縱橫。
(以下杜甫の語)あなたがたはそんなに泣いて、泣きつくして涙がかれてしまったたらいけない。ともかくそのように縦横に乱れおとす涙を抑えられて収めることにしてくれ。
眼枯即見骨、天地終無情。』

泣き涸らしてもしも骨がでるほどに見えてしまうことにでもなってしまう、この状況を天地はついに情のないものでいたしかたのないものだ。』(作者の語つづく)

我軍取相州、日夕望其平。
豈意賊難料、歸軍星散營。
就糧近故壘、練卒依舊京。
掘壕不到水、牧馬役亦輕。
況乃王師順、撫養甚分明。
送行勿泣血、僕射如父兄。』


(新安の吏)
 *原注 京を収めて後作る。両京を収むと雖も賊猶を充斥する。
客 行く新安の道、喧呼【けんこ】兵を點ずるを聞く。
新安の吏に借問すれば、「縣小にして更に丁無し。
府帖 昨夜下り、次選 中男行く。」と。
中男絕【はなは】だ短小なり、何を以てか王城を守らん。』
#2
肥男【ひだん】は母の送る有り、瘦男【そうだん】は獨り伶俜【れいへい】たり。
白水暮に東流し、青山【せいざん】猶ほ哭聲【こくせい】。
自から眼をして枯らしむる莫かれ、汝が淚の縱橫たるを收めよ。
眼枯れ即ち骨を見【あら】わすも、天地は終【つい】に情無し。』

我が軍 相州を取る、日夕【にっせき】其の平らかならんことを望む。
豈に意【おも】わんや賊の料【はか】り難く、歸軍して營に星散す。
糧に就きて故壘【こるい】に近づき、卒を練って舊京【きゅうけい】に依る。
壕を掘るも 水に到らず、馬を牧する役も亦輕し。
況んや乃ち王師は順なるをや、撫養【ぶよう】甚【はなは】だ分明なり。
送行するも血に泣くこと勿かれ、僕射【ぼくや】は父兄【ふけい】の如し。


現代語訳と訳註
(本文) #2

肥男有母送、瘦男獨伶俜。
白水暮東流、青山猶哭聲。
莫自使眼枯、收汝淚縱橫。
眼枯即見骨、天地終無情。』


(下し文)#2
肥男【ひだん】は母の送る有り、瘦男【そうだん】は獨り伶俜【れいへい】たり。
白水暮に東流し、青山【せいざん】猶ほ哭聲【こくせい】。
自から眼をして枯らしむる莫かれ、汝が淚の縱橫たるを收めよ。
眼枯れ即ち骨を見【あら】わすも、天地は終【つい】に情無し。』


(現代語訳)#2
中男のなかに太った男がいて、そのかれの母親が見送りにきている。また痩せた男がいるがそれはひとり寄る辺なく淋しそうに見えている。
道端の渓流に暮れ残る白き光をうかべて東に向かって流れてゆく、あたりの春霞にけむる青山に見送る人々の慟哭の声がやまず、絶えることなく響いている。
(以下杜甫の語)あなたがたはそんなに泣いて、泣きつくして涙がかれてしまったたらいけない。ともかくそのように縦横に乱れおとす涙を抑えられて収めることにしてくれ。
泣き涸らしてもしも骨がでるほどに見えてしまうことにでもなってしまう、この状況を天地はついに情のないものでいたしかたのないものだ。』(作者の語つづく)


(訳注) #2
肥男有母送、瘦男獨伶俜。

中男のなかに太った男がいて、そのかれの母親が見送りにきている。また痩せた男がいるがそれはひとり寄る辺なく淋しそうに見えている。
中男 唐では民を年齢によって黄・小・中・丁・老などに区別する。年次によってちがいがあるが、天宝三歳には十八歳以上を中男とし、二十三歳以上を丁とした、ここは丁が無いので中男をとることをいう。○肥男、痩男 中男についての肥痩をいう、肥はふとり痩はやせた体格のものをいう。○母送 ははおやが見おくりにきている、こえた男はこの母に愛してそだてられたものであろう、これに反してやせた男は母もなくみじめな境遇のものであろう。○伶俜 ひとりぼっちのさま。


白水暮東流、青山猶哭聲。
道端の渓流に暮れ残る白き光をうかべて東に向かって流れてゆく、あたりの春霞にけむる青山に見送る人々の慟哭の声がやまず、絶えることなく響いている。
白水 しろく暮れのこる渓流。○東流 東とは男のゆく方向をいう。戦は東方向になる。○青山 春霞の山、附近の山をいう。○ ゆく人はすでに見えないのになおの意。○笑声 母やその他の見送る人人の哭くこえ、「肥男」より「青山」までの四句は叙事叙景をはさむ。


莫自使眼枯、收汝淚縱橫。
(以下杜甫の語)あなたがたはそんなに泣いて、泣きつくして涙がかれてしまったたらいけない。ともかくそのように縦横に乱れおとす涙を抑えられて収めることにしてくれ。
美白使眼枯 此の句より末尾の「僕射」の句までは作者が送行者をなぐさめる語である。慰めの形で、戦争に駆り立てる状況にしている政治体制を批判している。○眼枯 あまりに泣きつくして涙が枯れ尽くしてしまったことをいう。○ とりかたづける。○縦横 次第もなくながれるさま。


眼枯即見骨、天地終無情。』
泣き涸らしてもしも骨がでるほどに見えてしまうことにでもなってしまう、この状況を天地はついに情のないものでいたしかたのないものだ。』(作者の語つづく)
即見骨 もしもの意、○見骨 はなきかなしみやせて顔面の骨をあらわすにいたることをいう。○天地終無情 天地はつれない、とは戦争にゆかなければいけない状況を変えるようにはしてくれない。