夏夜嘆 <223-#2>杜甫詩kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1082 杜甫特集700- 325


田舎の官吏としての自分の立場に、いやでも多くの矛盾を感じたにちがいない。その間、人間関係の煩わしい事情もあったかも知れぬ。華州を去ってゆこうとする頃、「立秋後過す」という詩に、「官ヲ罷ムルモ亦夕人二由ル.」と詠じているのを見ると、なにかかくれた事情があったようにも想像される。そうでなくても、すでに朝廷から排斥される房琯一派につながる者とされている杜甫に、政治上の山路は与えられるべくもない。ともかく、杜甫にとって、華州司功参軍という役人仕事をつづけることはもはや苦痛であった。こうして、暫く立った立秋には官を辞して秦州に紀行の旅に出るのである。


夏夜嘆
永日不可暮,炎蒸毒中腸。
安得萬裡風,飄搖吹我裳?
昊天出華月,茂林延疏光。
仲夏苦夜短,開軒納微涼。」
#2
虛明見纖毫,羽蟲亦飛揚。
うつろなあかりのなかで非常に小さいものを見る、羽ありかシラミがまた飛び跳ねあがった。
物情無巨細,自適固其常。
物のようす、性質、世間のありさまというものにおおきいもちいさいもないものだ、自分の心にかなった生活をすることそのもの日常的に心がけているものである。
念彼荷戈士,窮年守邊疆。
兵士たちに国の守りを背負わせているから、これらのことはこころにおもいつづけていられる。もともと年を極めてみると北方・西方の異民族との辺境を守る者である。
何由一洗濯,執熱互相望?」

どういう方法でひとたびわだかまりや苦労を捨てさっぱりすることができるだろうか、きっと、こんなに暑い折柄であれば互いにそのことを望んでいるだろう。

#3
竟夕擊刁鬥,喧聲連萬方。
青紫雖被體,不如早還鄉。
北城悲笳發,鸛鶴號且翔。
況複煩促倦,激烈思時康。」


(夏の夜の嘆き)  #1
日 永くして暮る可からず,炎蒸 中腸 毒さる。
安んぞ得んや萬裡の風,飄搖 我裳に吹かんや?
昊天 華月出でて,茂林 疏光延ぶ。
仲夏 夜短かくして苦しむ,軒を開きて微涼を納む。」
#2
虛明 纖毫を見る,羽蟲 亦 飛び、揚がる。
物情 巨細 無し,自適 其の常なるに固る。
彼の念うこと戈士に荷わせ,窮年 邊疆を守る。
何んぞ由なるや一たびの洗濯,執熱 互いに相望まん?」

#3
竟に夕には刁鬥【ちょうとう】を擊つ,喧聲 萬方に連らなる。
青紫 被體と雖ども,早に鄉に還えるに如かず。
北城 笳發を悲しみ,鸛鶴 號且翔。
況んや複た促倦を煩らわし,激烈 時に康んじることを思う。」


現代語訳と訳註
(本文)
#2
虛明見纖毫,羽蟲亦飛揚。
物情無巨細,自適固其常。
念彼荷戈士,窮年守邊疆。
何由一洗濯,執熱互相望?」


(下し文) #2
虛明 纖毫を見る,羽蟲 亦 飛び、揚がる。
物情 巨細 無し,自適 其の常なるに固る。
彼の念うこと戈士に荷わせ,窮年 邊疆を守る。
何んぞ由なるや一たびの洗濯,執熱 互いに相望まん?」


(現代語訳) #2
うつろなあかりのなかで非常に小さいものを見る、羽ありかシラミがまた飛び跳ねあがった。
物のようす、性質、世間のありさまというものにおおきいもちいさいもないものだ、自分の心にかなった生活をすることそのもの日常的に心がけているものである。
兵士たちに国の守りを背負わせているから、これらのことはこころにおもいつづけていられる。もともと年を極めてみると北方・西方の異民族との辺境を守る者である。
どういう方法でひとたびわだかまりや苦労を捨てさっぱりすることができるだろうか、きっと、こんなに暑い折柄であれば互いにそのことを望んでいるだろう。


(訳注) #2
虛明見纖毫,羽蟲亦飛揚。

うつろなあかりのなかで非常に小さいものを見る、羽ありかシラミがまた飛び跳ねあがった。
虛明 虚1 備えのないこと。油断。すき。「敵の―に付け入る」2 事実でないこと。うそ。いつわり。「―と実が入りまじる」⇔実(じつ)。3 中身・実体がないこと。むなしいこと。うつろ。から。○纖毫  (1)細い毛。 (2)きわめてわずかなこと。また、非常に小さいことのたとえ。○羽蟲  (1)ハジラミの別名。 (2)ハアリの通称。 ... 羽蟲と同じ種類の言葉. 虫に関連する言葉 • 林檎綿虫(りんごわたむし) 根喰葉虫(ねくいはむし) 羽虫(はむし) 喇叭虫(らっぱむし) 「羽蟲」(鳥)・「毛蟲」(獣)・「鱗蟲」(魚および爬虫類)・「介蟲」(カメ、甲殻類および貝類)・「裸蟲」(ヒト)


物情無巨細,自適固其常。
物のようす、性質、世間のありさまというものにおおきいもちいさいもないものだ、自分の心にかなった生活をすることそのもの日常的に心がけているものである。
物情 1 物のようす・性質。 2 世人の心情。世間のありさま。 ○自適 思うがままに楽しむこと。自分の心にかなった生活をする。自分で行く。


念彼荷戈士,窮年守邊疆。
兵士たちに国の守りを背負わせているから、これらのことはこころにおもいつづけていられる。もともと年を極めてみると北方・西方の異民族との辺境を守る者である。
念彼「法華経(普門品)」「念彼観音力」観音菩薩の力を念ずればの意。○【か】中国の殷・周時代から前漢時代にかけて,もっともよく使用された中国独特の武器で,戟(げき)とあわせて句兵(こうへい)と総称される。長い柄の先端に,柄と直角に短剣状のものをとりつけたもので,敵の首や頭にうちこんで,手前に引き倒したり,斬りつけたりするものである。やや湾曲した両刃の短剣の部分を援(えん),その下についた長くのびた部分を胡(こ)といい,内(ない)と呼ばれる部分を柄に通して戈を安定させる。柄は古名で柲(ひつ)といわれ,木や竹を合わせたものがある。○窮年 窮年累世とは。意味や解説。自分の一生から孫子の代までも。▽「窮年」は人の一生涯。「累世」は子々孫々の意。「年を窮め、世を累【かさ】ぬ」


何由一洗濯,執熱互相望?」
どういう方法でひとたびわだかまりや苦労を捨てさっぱりすることができるだろうか、きっと、こんなに暑い折柄であれば互いにそのことを望んでいるだろう。
洗濯 (1)衣服などを洗って汚れを落としきれいにすること。 「川で―する」 (2)わだかまりや苦労を捨てさっぱりすること。○執熱 執熱不濯 読み:しゅうねつふたく 意味:熱いものを手で直接掴めないので、先ずは水を入れてからでないと洗えないということから転じて、困難を克服するためには、賢人を起用しなければならないのに、それをしないことのたとえ。

杜甫が旅の目的地を秦州と決めた理由としては、洛陽は胡賊が迫っていて危険であり(九月には史思明の攻撃によって再び陥落)、長安は飢饉で物価高。それに比べて秦州には従姪の杜佐が住んでいたし、また房棺に親しい者として先ごろ長安を追放された僧の賛公もそこにいた、などのことが考えられよう。