遣興三首 其二 <227>杜甫 遣興22首の⑥番 kanbuniinkai紀頌之の漢詩ブログ1097 杜甫特集700- 330


遣興三首 其一   
興味のあること、風流なことを思ってみる。其の一。
下馬古戰場,四顧但茫然。
秦州城の附近の古戦場へきて馬から降りる、四方を振り返ってみるとただ茫漠としており、なんのとりとめもない景色である。
風悲浮雲去,黃葉墮我前。
秋の風は悲しそうに吹いて浮き雲が飛び去っている、黄ばんだ木の葉はわたしの前にと散り落ちる。
朽骨穴螻蟻,又為蔓草纏。
地上に横たわっている戦死者の朽ちた骨のまわりには「けら」や「あり」が穴をつくっている、そしてまたは蔓草が絡ったりしている。
故老行嘆息,今人尚開邊。
通りかかる老人たちが道すがら嘆きつつ語ってくれる、今時の人はいまだにこの辺鄙な地方を開き領土の拡大しようとしておるのであるか。
漢虜互勝負,封疆不常全。
それから、我が唐のくにと胡の異民族とは戦をしては一勝一敗で、国境は一進一退いつも完全を保ちうるというわけにいかないのだ。
安得廉頗將,三軍同晏眠?
どうしたならば、むかしの廉頗のような名将を得ることができて、唐王朝軍の全軍が一緒に遅くまで眠っていることができるようになれるのであろうか。
其二    
興を遣る 三首 其の二
高秋登塞山,南望馬邑州。
高秋の時にわたしは辺境の山にのぼって、南の方、馬邑州の方をながめる。
降虜東擊胡,壯健盡不留。
いま降参したこの附近の異民族軍たちは東方・東都あたりで叛乱軍を討伐にでかけているので、壮健なものはすっかり居なくなっている。
穹廬莽牢落,上有行雲愁。
だから曾て彼らがつかっていたテント小屋も陰気にさびしそうにつらなっており、その上の方にはうれいに満ちた雲がとんでいる。
老弱哭道路,願聞甲兵休。
老人やふ婦女、子供たちは道にで慟哭している、願うことなら戦争が終わって平和になったということを聞きたいものだといっている。
鄴中事反覆,死人積如丘。
鄴城のいくさの様子は今年初めからすっかり反対になり、唐諸侯連合軍は大敗、死人のしかばねが積まれてまるで丘のようになっている。
諸將已茅土,載驅誰與謀?

このとき武将たちは茅土をうけて王侯に封ぜられたのである。(それで、功を焦り、大敗した厚顔無恥の甚しいものではないか。)自分は憂えながら馬を駆るのであるが、誰がはたして安史軍を征伐することができるはかりごとを有しているというのか。

(興を遣る 三首 其の二)
高秋【こうしゅう】寒山【かんざん】に登りて、南馬【、いなみのうま】邑州【ゆうしゅう】を望む。
降虜【こうりょ】東胡を撃ち、壮健【そうけん】なるは尽く留まらず。
穹廬【きゅうろ】莽【もう】として牢落【ろうらく】たり、上に行雲の愁うる有り。
老弱【ろうじゃく】道路に哭【こく】し、願わくは甲兵【こうへい】の休するを聞かんという。
鄴中【ぎょうちゅう】事 反覆【はんぷく】す、死人【しじん】積むこと丘の如し。
諸将【しょしょう】は己に茅土【ぼうど】なり、載【すなわ】ち駆【か】るも誰とともにか謀【はか】らん。


現代語訳と訳註   
(本文)

遣興三首 其二
高秋登塞山,南望馬邑州。
降虜東擊胡,壯健盡不留。
穹廬莽牢落,上有行雲愁。
老弱哭道路,願聞甲兵休。
鄴中事反覆,死人積如丘。
諸將已茅土,載驅誰與謀?


(下し文)
(興を遣る 三首 其の二)
高秋【こうしゅう】寒山【かんざん】に登りて、南馬【、いなみのうま】邑州【ゆうしゅう】を望む。
降虜【こうりょ】東胡を撃ち、壮健【そうけん】なるは尽く留まらず。
穹廬【きゅうろ】莽【もう】として牢落【ろうらく】たり、上に行雲の愁うる有り。
老弱【ろうじゃく】道路に哭【こく】し、願わくは甲兵【こうへい】の休するを聞かんという。
鄴中【ぎょうちゅう】事 反覆【はんぷく】す、死人【しじん】積むこと丘の如し。
諸将【しょしょう】は己に茅土【ぼうど】なり、載【すなわ】ち駆【か】るも誰とともにか謀【はか】らん。


(現代語訳)その二
高秋の時にわたしは辺境の山にのぼって、南の方、馬邑州の方をながめる。
いま降参したこの附近の異民族軍たちは東方・東都あたりで叛乱軍を討伐にでかけているので、壮健なものはすっかり居なくなっている。
だから曾て彼らがつかっていたテント小屋も陰気にさびしそうにつらなっており、その上の方にはうれいに満ちた雲がとんでいる。
老人やふ婦女、子供たちは道にで慟哭している、願うことなら戦争が終わって平和になったということを聞きたいものだといっている。
鄴城のいくさの様子は今年初めからすっかり反対になり、唐諸侯連合軍は大敗、死人のしかばねが積まれてまるで丘のようになっている。
このとき武将たちは茅土をうけて王侯に封ぜられたのである。(それで、功を焦り、大敗した厚顔無恥の甚しいものではないか。)自分は憂えながら馬を駆るのであるが、誰がはたして安史軍を征伐することができるはかりごとを有しているというのか。


(訳注)
遣興三首 其二

(興を遣る 三首 其の二)
秦州に至って身に危険を感じることがなくなったので、折にふれて思いをやるために作った詩である。詩中の事実によると759年乾元二年9月の始め、重陽の節句、秋の作、洛陽陥落の前と考える。


高秋登塞山,南望馬邑州
高秋【こうしゅう】塞山【さいざん】に登りて、南馬【、いなみのうま】邑州【ゆうしゅう】を望む。
高秋の時にわたしは辺境の山にのぼって、南の方、馬邑州の方をながめる。
高秋 天高き秋。○塞山 辺境の山。〇南望 秦州よりさして南の方をのぞむ。○馬邑州 唐の開元十七年秦州と成州との間に置いた州名で宝応元年成州の塩井にうつした。秦州都督府に属する。


降虜東擊胡,壯健盡不留。
降虜【こうりょ】東胡を撃ち、壮健【そうけん】なるは尽く留まらず。
いま降参したこの附近の異民族軍たちは東方・東都あたりで叛乱軍を討伐にでかけているので、壮健なものはすっかり居なくなっている。
降虜 秦州附近の降参した異民族軍をいう。○ 安・史の残党をいう。○壮健 降虜の壮健なもの。○留 いのこる。


穹廬莽牢落,上有行雲愁。
穹廬【きゅうろ】莽【もう】として牢落【ろうらく】たり、上に行雲の愁うる有り。
だから曾て彼らがつかっていたテント小屋も陰気にさびしそうにつらなっており、その上の方にはうれいに満ちた雲がとんでいる。
穹廬 テントをはったイオ。○ はっきりしないさま。○牢落 さびしいさま。○ テントの上方。○行雲 とんでゆく雲。


老弱哭道路,願聞甲兵休。
老弱【ろうじゃく】道路に哭【こく】し、願わくは甲兵【こうへい】の休するを聞かんという。
老人やふ婦女、子供たちは道にで慟哭している、願うことなら戦争が終わって平和になったということを聞きたいものだといっている。
老弱 居民の老いたもの、よわいもの、弱とは婦児をさす。○甲兵休 よろい、武器の事の終わること、戦のなくなることをいう。


鄴中事反覆,死人積如丘。
鄴中【ぎょうちゅう】事 反覆【はんぷく】す、死人【しじん】積むこと丘の如し。
鄴城のいくさの様子は今年初めからすっかり反対になり、唐諸侯連合軍は大敗、死人のしかばねが積まれてまるで丘のようになっている。
鄴中 鄴城のこと、河南省の彰徳府臨漳県。

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事反覆 唐王朝軍が勝つとおもったのに反対にひっくりかえって大敗したこと。○如丘 多いことをいう。死人のしかばねが積まれてまるで丘のようになっているさまをいう。


諸將已茅土,載驅誰與謀?
諸将【しょしょう】は己に茅土【ぼうど】なり、載【すなわ】ち駆【か】るも誰とともにか謀【はか】らん。
このとき武将たちは茅土をうけて王侯に封ぜられたのである。(それで、功を焦り、大敗した厚顔無恥の甚しいものではないか。)自分は憂えながら馬を駆るのであるが、誰がはたして安史軍を征伐することができるはかりごとを有しているというのか。
諸将 官軍の諸将。朔方大将軍孫守亮ら九人を異姓王とし、李商臣ら十三人を同姓王となした等の事をさす。○茅土 王侯に封ずること。「尚書」(禹貢)の「蕨の貢は惟れ士の五色」の句の注に、王者が諸侯を建てるときには、これを封ずる方位に従って、その五行思想に言う方位の色の士(東方は青色、南方は赤、西は白、北は黒、中央は黄)を割いてこれに与えて社を立てさせ、その土は黄土をもっておおい、白い茅をもってつつむ、とみえる。因って王侯に封ぜられることを茅土という。此の句は厚顔無恥の甚しいものではないかと憤激してのべたものである。○載駆 「詩経」(載馳)に、「載馳載駆、帰唱衛侯」(載ち馳せ載ち駆り、帰って衛侯を唱わん)とみえる、載駆の二字はこれより借用したものであるが、ここは単に自己が馬を駆る意である、第一首に「下馬」とあり、作者は馬にのっていたのである。○謀 安史軍を征伐することができるはかりごとを有しているのか。




遣興三首 其二
高秋登塞山,南望馬邑州。
降虜東擊胡,壯健盡不留。
穹廬莽牢落,上有行雲愁。
老弱哭道路,願聞甲兵休。
鄴中事反覆,死人積如丘。
諸將已茅土,載驅誰與謀?
(興を遣る 三首 其の二)
高秋【こうしゅう】寒山【かんざん】に登りて、南馬【、いなみのうま】邑州【ゆうしゅう】を望む。
降虜【こうりょ】東胡を撃ち、壮健【そうけん】なるは尽く留まらず。
穹廬【きゅうろ】莽【もう】として牢落【ろうらく】たり、上に行雲の愁うる有り。
老弱【ろうじゃく】道路に哭【こく】し、願わくは甲兵【こうへい】の休するを聞かんという。
鄴中【ぎょうちゅう】事 反覆【はんぷく】す、死人【しじん】積むこと丘の如し。
諸将【しょしょう】は己に茅土【ぼうど】なり、載【すなわ】ち駆【か】るも誰とともにか謀【はか】らん。